ミャンマー寺子屋支援~子供たちの未来へ向けて~

2017年02月16日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
片白 恵理子

 2017年1月末、ミャンマーで安倍晋三首相夫人の昭恵さんが名誉顧問を務められているメコン総合研究所(Greater Mekong Initiative、GMI)の寺子屋支援活動に参加してきました。ミャンマーは9割近くが仏教徒。同じ仏教徒の多い日本では江戸時代、寺子屋が全国に普及していましたが、ミャンマーでも王朝時代から寺子屋教育が盛んでした。そのため現在、識字率で世界平均約85%と比較しミャンマーの識字率が90%以上と高いのは寺子屋教育が根付いているためといえます。

 

 寺子屋はミャンマー政府により正規の教育機関と認められており、教科書も公立学校と同じものを使用しています。ですので、寺子屋を卒業した生徒は公立中学校・高校に進学が可能です。

 

 

◆寺子屋はなぜ必要なのか。

寺子屋の小僧たち(筆者撮影)
寺子屋の小僧たち(筆者撮影)

 ミャンマーには公立の小中学校があり学費は無料です。しかし、学校に通うには制服、机、椅子、昼食などの費用が必要です。しかし、それらの費用を支払えないほど貧しく、学校に通えない子供たちがいます。そういった貧しい家庭の子供たちは費用負担が少なく、寄付者から教科書、ノート、鉛筆などを贈与してもらえる寺子屋で学びます。また、親のいない子供たちは寺で小僧となって生活をし、そこの寺子屋で勉強します。寺で生活をする子供たちは大人の僧侶や尼さんと同じ恰好をしています。

 

 

◆寺子屋支援活動

 メコン総合研究所では10年ほど寺子屋支援活動を日本・ミャンマーで根気強く行っています。支援者は日本・ミャンマー双方の個人・法人の方々です。校舎の建設・寄付だけでなく、給食や保健室など日本の学校の優れている学校システムの導入も検討されています。

 

 

 ◆マンダレー、ヤンゴンの寺子屋訪問を通して

寺子屋への寄付金贈呈(筆者撮影)
寺子屋への寄付金贈呈(筆者撮影)

 日本、ミャンマーの支援者による寄付金を贈呈しにマンダレーやヤンゴンにある17の寺子屋を4日間で訪問しました。今回の寄付金はほとんどミャンマー国内の寄付者からの寄付金でした。

 

 寺子屋では、教師が少なく子供たちへの教育も十分とは言えません。寺子屋で教える先生方は僧侶が中心で一般の方も教えていますが、給料はほとんどないかボランティアで無給です。また、寺子屋に通う生徒で大学まで進学する生徒はほとんどいないと聞きました。貧しいため進学ができなかったり、高等教育を受けることにより職業の選択が増えることなどを知らない、つまり知識がなかったりするためです。

 

 

 

 

 例えば、寺子屋で将来何になりたいかと子供たちに質問すると、医者か学校の先生という生徒がほとんどです。それは、他にいろいろな職業があるということを知らない、つまり情報が不足しているからです。様々な情報を子供たちに伝えることが将来への夢や希望を抱けるようになるためにとても大切なことです。

 

壁のない教室(筆者撮影)
壁のない教室(筆者撮影)

 寺子屋への訪問の際、栄養不足の生徒たちを多くみかけました。そのような生徒たちの栄養不足を補うためにも、さらに多くの貧しい子供たちが通えるようになるためにも、給食制度が導入されればいいのですが多くの寺子屋で難しいのが現状です。というのも、寺子屋の建物を訪問し目にした教室の多くは、壁のない教室で、学校としての設備が不足しており衛生面でも給食を支給するには難しいからです。寺子屋の運営は僧侶がお布施や寄付金を集めて運営しているので寺子屋の維持だけでもままならないのです。

 

 

 

 

折り紙の作成(筆者撮影)
折り紙の作成(筆者撮影)

  さて、話は変わりますが、訪問の際、生徒たちが腕を組んでいました。その理由を聞いてみたところ、腕を組むのは敬意を表すためとのことです。ミャンマーの先生はとても尊敬される存在です。「ミンガラバ(こんにちは)」と先生と挨拶をする時も腕を組みます。また、きらきらと目を輝かせ、私たちを歓迎してくれる子供たちにとても純粋さを感じました。

 

 訪問の際、日本のシンガーソングライターのすわじゅんこさんもご一緒でした。すわさんは、訪問先の子供たちと一緒に歌を歌ったりしていました。歌や音楽を通してボランティア活動を行い、日本とミャンマーとの懸け橋として活躍されています。人と人との交流やネットワークを通して、このような支援活動が継続し子供たちが健康で元気に楽しく勉強できればと思います。

以上

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