デイリー・アップデート

2025年6月4日 (水)

[ウクライナ/ロシア] 

ウクライナ軍は、ロシア内陸に大規模な無人機(ドローン)空襲を実施してから2日後、ロシア本土とクリミア半島をつなぐクリミア大橋を水中爆発物で打撃した。6月3日、ウクライナ情報機関の保安局(SBU)が、水中にある橋の基礎部分を爆破したと発表。橋は一時、通行止めとなった。一方、ロシア国防省は同日6月3日、ウクライナ北東部スムイ州の集落アンドリーウカを制圧したと発表した。州都スムイまで約20キロメートルに迫り、ロシア軍は、ウクライナ軍によるロシア西部への攻撃を防ぐため「緩衝地帯」設置を目指し、スムイ州で占領地域を拡大させている。また、同日スムイ州で、ロシア軍の多連装ロケット砲による攻撃があり、民間人4人が死亡、約30人が負傷した。ウクライナのゼレンスキー大統領の3日夜の声明では、スーミへの攻撃について、「欧米や世界が停戦と戦争終結への交渉をロシアに求めているにもかかわらず、殺害のない日はない」と強くロシアを非難した。

[韓国] 

6月3日、韓国において尹錫悦前大統領の罷免に伴う大統領選挙が実施され、野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏が当選した。李氏の得票率は49.42%であり、「国民の力」から出馬した金文洙(キム・ムンス)氏は41.15%、「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)氏は8.34%であった。

 

6月4日早朝、中央選挙管理委員会は、李在明氏を新大統領として正式に確定し、午前6時21分より李氏の任期が開始された。通常、大統領が任期満了により交代する場合には引継ぎのための期間が設けられるが、健康上の問題や罷免により任期途中で交代する場合には、新大統領は即座に執務を開始することとなる。李氏は同日4日午前、国立墓地である国立ソウル顕忠院を参拝した後、国会において就任宣誓を行う予定である。

 

2024年12月の非常戒厳以降、約半年間にわたり続いていた政治的空白が終結したことについて、韓国国内ではひとまず安堵の声が広がっている。

 

しかし、米中対立の深刻化や世界経済の不確実性が増す中で、新大統領には極めて困難な政権運営が求められる。李在明氏には「親中・反日」のイメージがつきまとうが、選挙期間中は「実用外交」を掲げ、日米韓の協力の重要性に言及するなど、中立的な姿勢を維持した。中間層の支持を取り込む狙いがあったほか、安全保障および経済の観点からも、現時点で日本との関係を悪化させることは得策ではないとの判断があったとみられる。

 

とはいえ、「韓国のトランプ」とも称される李在明氏の姿勢が今後どのように変化するかは不透明であり、日本側としては当面、新政権の政策動向を慎重に見極めていくことになる。

[ユーロ圏] 

EU統計局(Eurostat)によると、5月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は前年同月比+1.9%だった。上昇率は4月(+2.2%)から縮小し、市場予想(+2.0%)を下回った。また、8か月ぶりにECBの2%目標も下回り、物価上昇ペースの落ち着きを印象づけた。

 

内訳を見ると、食品(+3.3%)は4月(+3.0%)から上昇率を拡大させ、2か月連続の3%台になった。エネルギーは▲3.6%と、4月と同じ縮小率であり、3か月連続で下落した。エネルギー以外の工業財は+0.6%、2月以降同じ伸び率で安定している。サービスは+3.2%となり、4月(+4.0%)から縮小し、2か月ぶりに3%台になった。エネルギーの低下やサービスの落ち着きが、全体の物価上昇率を低下させた。実際、変動が大きい食品・エネルギーを除くコア指数は+2.3%、4月(+2.7%)から縮小し、3月(+2.4)以来となる2%台前半になるなど、物価の基調からもそのような動きが確認できる。

 

国別に見ると、キプロス(+0.4%)やフランス(+0.6%)が1%を下回った一方で、エストニア(+4.6%)やスロバキア(+4.3%)は4%を上回った。また、ドイツ(+2.1%)やイタリア(+1.9%)、スペイン(+1.9%)は2%前後の上昇率だった。

 

物価上昇率の落ち着きを踏まえて、市場では0.25%利下げ観測が高まっている。仮に0.25%引き下げられれば、中銀預金金利は2.0%となり、今回の利下げ局面開始時(4.0%)から半減する計算だ。また、中立金利が2%前後とみられているので、おおむね中立水準まで低下することになる。市場では、ここから一段の利下げがあるのか、それとも据え置きに転じるのかが注目されている。

[南アフリカ(南ア)] 

6月3日、南ア統計局(STATS SA)は2025年第1四半期(2025年1~3月)の実質GDP成長率(前期比、季節調整済み)を+0.3%と発表した。前期の+0.4%から2期連続のプラス成長となった。5月29日に南ア準備銀行(SARB)は2025年通年の成長率を1.2%との見通しを示したが、第1四半期の実績はこれを下回る水準の成長となった。

 

産業別では農業が2期連続の二桁成長となる+15.8%で、GDPの最大の寄与度(+0.4pt)となった。主に園芸と畜産物が好調だった。GDPの3割弱を占める金融・不動産業等も+0.2%成長となった。他方で鉱業がプラチナなど白金族の生産縮小により▲4.1%となったほか、製造業も石油・化学製品、食品・飲料生産等の落ち込みにより2期連続のマイナス成長となる▲2.0%だった。第1四半期は310日ぶりに電力公社エスコムによる計画停電が発生したことにより、電気・ガス・水道も▲2.6%となった。電力・水道供給の不安定な状況が南アの産業全体に依然として負の影響を及ぼしている。

 

需要面では、GDPの7割弱を占める個人消費が+0.4%、輸出も+1.0%成長となったが、固定資本形成が▲1.7%となった。住宅建設の減少が主なマイナス要因となった。

 

南ア銀行大手ネドバンクは2025年の残り3四半期の成長は、インフレの低下に伴う金利の低下、それによる債務返済コストの低下による実質家計所得の回復に支えられるとの見通しを示している。他方で、今期は農業生産の拡大によりプラス成長を維持できたが、農業は2024年第3四半期に天候の影響により▲20.5%の大幅減を記録するなど極めて変動の激しい部門であることに懸念を示す声もある。

 

今回の南アの経済成長の弱さを示す発表を受けて、通貨ランドは一時1ドル=17.90ランドと前日比▲0.3%となったほか、ヨハネスブルグ証券取引所(JSE)のトップ40指数は▲0.4%の下落となった。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

26人が「いいね!」と言っています。