商品相場、低迷期「さらに長く」

社長コラム

2015年12月13日

住友商事グローバルリサーチ 代表取締役社長
高井 裕之

 

Goldman Sachsのトレーディングルーム
Goldman Sachsのトレーディングルーム

 2年ぶりにウォール街を訪ね、意見交換してきた。世界経済は低成長期が続くという点は全員が一致するところ。ただ、ゼロ金利と量的緩和政策に関しては実体経済への効果を疑問視する声と効用を評価する声に分かれた。米国が利上げモードに入り、来年の大統領選挙戦までに金利はさらに上昇するという点は一致する。ドルはさらに数%上昇し、商品と世界の金利水準はしばらく低迷する点も異論はなかった。

 

 コモディティー業界の今年のマントラ(真言)は「安く長く」だったが、ここにきて「安くさらに長く」と低迷期がさらに長引くという雰囲気である。

 

 生産者は新規投資を見送り、既存資産に経営資源を集中させている。リストラでコストを下げ、生産性を上げて生き延びるためキャッシュフローを守る構えだ。価格が半分以下になった今、利益を最大化するにはコストを下げ増産するしかない。幸い資源国通貨安と燃料費減少は生産現場のコスト低減に大きく寄与し、増産を可能にする。相場低迷時の増産は、中東産油国だけの話ではない。

 

 米国原油は今夏に生産のピークをつけ、既に減少に転じている。シェール開発は資本多消費型事業であることから、今の相場があと半年から1年続けば銀行から融資枠を削られ、新規で井戸を掘ることが困難になる。来年の北米原油の鍵を握るのは資金調達力であり、融資の借り換え状況は要注視だ。

 

 非鉄金属は原油やガスよりも長期にわたって相場が生産コストを下回らないと生産量は減らない。鉱山寿命は長くオプション価値を内在するため、膨大な閉山コストを考えればなかなか撤退には踏み切れない。

 

 同じ非鉄でも金だけはまだ下げ余地がありそうだ。生産コストは700ドルを切り、相場はまだ高い。インフレが沈静化しドルと米金利が上昇する中、金価格が大台割れしても驚きはない。

 

 以上が金融筋の見方だが、2008年夏にウォール街は油価200ドルと予言し見事に外れた。机上の理論だけでは相場は読めない。最後は自分の相場観を持つことだ。

 

ニューヨーク Radio City前のクリスマスイルミネーション
ニューヨーク Radio City前のクリスマスイルミネーション

 

 

 

2015年12月13日 日経ヴェリタス 22ページ(コモディティーウオッチ) 掲載

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