OPEC減産合意、真の狙い

2016年12月04日

住友商事グローバルリサーチ 代表取締役社長
高井 裕之

 11月30日は石油輸出国機構(OPEC)の半世紀の歴史に残る1日になろう。

 減産合意は困難との大方の予測を覆してOPECは日量120万バレルの減産で合意した。来年初からまずは半年間実施し、その後は見直すという。ロシアなど非OPEC諸国にも協調減産を求めた。詳細は非公開ながら、60万バレルの減産協力を取り付けたとしている。

 

 今回の合意は2つの点で意義がある。1つ目は2014年11月の総会で生産者カルテルの需給調整機能を事実上放棄し、その役割を市場に委ねたが、それを復活させた点だ。

 2つ目は増産凍結ではなく、あえて痛みを伴う減産にまで踏み込んだ点だ。OPECの減産は実に8年ぶりとなる。その意味では2年前に放棄した需給調整機能の復活のみならず、8年前の協調減産にまで踏み込むことでOPECとしての結束力と本気度を世界に示した形だ。

 

 合意成立を受けて北海ブレント原油は急騰し、1バレル50ドル台を回復している。ファンド筋のポジションの整理が進み、軽くなっていたことも背景にあろう。

 今回の合意では価格防衛の意図も否定できないが、それ以上に世界需給のリバランスを加速する意図の方が大きい。在庫増に歯止めをかけ、取り崩しにまで持っていこうという戦略だ。

 

 ここで気になるのが米国のシェールオイルなどの増産リスクである。もしOPECの意図した通りに在庫増が止まっても米国が増産すれば再び在庫は増え始める。

 米国全土には4,000本を超えるダック井戸(最終仕上げ未済の待機井戸)が存在する。油価が恒常的に50ドルを超えて推移すればダック井戸が稼働し始めるだろう。また、シェール企業は先物ヘッジには積極的で、価格上昇局面では先限月には常に売り圧力がかかることも油価の回復を阻む材料だ。

 しかし、米国はそれほど機動的に増産モードに入れないという見方もある。いったん掘削のペースを落としたシェール企業が再度増産に転じるには、資金や機材を調達して解雇した労働者を呼び戻す必要がある。シェール業界には不法移民労働者が少なからずいるとされ、トランプ政権の誕生で労働市場は更に逼迫する可能性もある。

 

 総合的に考えれば、今回合意を受けて油価は今後強含むだろう。シェール増産に半年かかるとすれば、2017年前半は55ドルを挟んだ値動きとなり、年後半は5月のOPEC総会次第となろう。

 

 

2016年12月4日 日経ヴェリタス 22ページ(コモディティウォッチ)掲載

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