懐疑と共に育つ今年の商品相場

2017年01月15日

住友商事グローバルリサーチ 代表取締役社長
高井 裕之

「相場は悲観の中で生まれ、懐疑と共に育ち、楽観の内に成熟し、幸福の中で消えていく」という相場格言がある。昨年からの商品相場にもこの格言が当てはまるように思う。

「原油、底見えぬ不安」「OPEC崩壊、世界市場かく乱」のヘッドラインが躍ったのが昨年1月の本紙だ。中国株、人民元、原油と次々に急落し世界の金融市場が恐怖におびえたのが2016年の夜明けだった。今から振り返るとあれがまさに悲観のどん底だったのだろう。

 

あれから1年、商品市況は冬景色から一変、春を通り越し初夏の兆しまで感じるようだ。商品指数で見ると昨年1月の底値から2割上昇。鉄鉱石や石炭なども入れれば全体ではもっと上昇している。

 

相場回復の最大の原動力は需給のリバランスだ。商品によって多少の差異はあるが、原油を筆頭に資源は過去数年間、供給過剰の調整期にあり、それは今も続いている。14年から始まった原油需給のリバランスは今年で4年目に入るが、産油国が協調減産に踏み切ることからリバランスが加速すると思われる。

 

地政学的な混乱やドル高などの金融要因を除けば、商品相場は需給リバランスの最終段階にあり再び大崩れすることはないだろう。ただ昨年後半の動きを見ると商品によっては相当先々の期待を先取りした感もあり、調整は必至だ。石炭や鉄鉱石の市況が崩れ始めたのはその兆候と言える。

 

冒頭の格言で言えば今の相場は「懐疑」の最中にある。協調減産が始まった原油も産油国の減産順守に市場はまだ懐疑的だ。中国の供給過剰対策とトランプ政権の大型インフラ投資への過度な期待に振り回された金属系商品もその実効性にいまだ懐疑的だ。

格言が正しければ、昨年悲観の中で生まれた商品相場だが、今年は様々な懐疑と共に育っていくであろう。筆者は17年という年は政治が経済・マーケットを主導する「政主経従」の1年になると考えている。米国の新政権発足に始まり欧州主要国での選挙が続き、それにイランでも大統領選がある。秋には中国で習体制2期目の方向性を決める共産党大会がある。

商品相場はそれらの政治イベントに一喜一憂しながらも需給均衡に向かって着実に育っていくものと考える。弱気は禁物である。

 

2017年1月15日 日経ヴェリタス 22ページ(コモディティーウオッチ) 掲載

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