原油相場、中東からの視点

2017年02月27日

住友商事グローバルリサーチ 代表取締役社長
高井 裕之

第7回 IEA-IEF-OPEC Symposium on Energy Outlooksにて

 昨年9月の国際エネルギーフォーラムではアルジェでの歴史的な減産合意に至った。今月、サウジの首都リヤドで開催されるそのフォーラムへの出席を兼ねてドバイ、イラン、サウジアラビアを訪れ、地元の専門家にトランプ政権発足後の中東情勢と原油相場の見方について情報収集してきた。

 

 筆者がイランの首都テヘランに滞在した2月10日は38回目の革命記念日だった。トランプ米大統領のイスラム圏を標的にした渡航禁止令もあり、市民らの過激な反米デモなども懸念されたが、拍子抜けするほど穏やかな街の反応であった。一部の強硬派を除いて普通のイラン人は親米である。

 

 イランでは昨年1月の経済制裁の解除から、1年強が過ぎた。原油生産も制裁前の水準を回復、前政権時代には40%超だったインフレも10%を下回った。イラン国民は穏健派のロウハニ政権におおむね満足しているようだ。選挙期間中に核合意の破棄をぶち上げたトランプ大統領もそれが得策ではないことに気づき、矛を収めている。米イラン関係は懸念されたほど悪化もしないが改善もしないといった様子だ。

 

 原油生産は今の産油量が限界との見方が多く、さらなる増産には海外からの投資が不可欠だ。その観点では米国の政権交代によりイラン増産の可能性が遠のいたと見るべきだろう。

 

 一方で減産合意を主導したサウジは、経済構造改革であるビジョン2030を着々と推進している。同計画が発表になった昨年4月以降は計画の実効性につき国内外で懐疑的な声が主流だった。しかし年末に詳細を盛り込んだ予算計画が公表されてからは期待感に変わりつつある。公共料金の引き上げや公務員の給与カットなどで痛みを強いられるサウジ国民だが、真剣に脱石油を目指す国の姿に理解を示しているようである。

 

 油価の回復も大きい。今年の予算油価は1バレル52ドルとみられるが、現況の水準である55ドル前後で安定推移してくれることがサウジ政府にとっては一番望ましい。油価が40ドルに下落すれば財政赤字問題が再燃し、油価が70ドルに急反発すれば構造改革を推進する上での危機意識が薄れる。すなわちサウジは現状での油価の安定推移を望んでいる。

 

 先が読めない米政権をにらんでサウジは外交の米国一本足打法からの転換をもくろんでいる。来月サルマン国王が来日するのもその一環であると見ていいだろう。日本への期待感は非常に高まっている。

 

 

2017年2月26日 日経ヴェリタス 22ページ(コモディティウォッチ)掲載

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