大転換した米エネルギー政策

2017年04月09日

住友商事グローバルリサーチ 代表取締役社長
高井 裕之

 

3月末に米国ワシントンに出張してきた。現地でオバマ政権でエネルギー情報局(EIA)局長を5年間務めたアダム・シミンスキー氏に、トランプ政権のエネルギー政策を聞いた。

 

トランプ政権のエネルギー政策である「アメリカ第一エネルギー計画」の特徴として、同氏は次の4点を挙げた。

(1)環境よりも経済成長を優先

(2)前政権の大統領令の撤回と石炭・パイプライン等の規制緩和推進

(3)安全な飲料水の確保とバイアメリカンの推進

(4)エネルギー自給を目指し中東産油国依存からの脱却

 

オバマ政権下のエネルギー政策は環境を重視してきたが、トランプ政権では環境よりも米国経済への恩恵と安全保障を重視するスタンスに方向転換する。

 

トランプ大統領は3月末、クリーンパワー計画(CPP)を撤回する大統領令に署名した。同計画は2014年にオバマ大統領が導入し、州政府に発電所の二酸化炭素排出量を30年までに05年比で32%削減することを義務付けたものだ。パリ協定での米国の削減目標のよりどころになっている。

 

大統領令への反対意見も多いが、もし実現すれば低コストで競争力のあるワイオミング州の炭鉱などは恩恵を被る。しかしトランプ氏が選挙期間中に復活を公約したウェストバージニア州の炭鉱などは生産性が低く増産にはつながらない。米国産の石炭は天然ガスなどの競合燃料に対し経済合理性で劣るため、トランプ大統領が唱える石炭産業の復活は非現実的だ。

 

次はパイプラインだ。オバマ政権下で建設が止まっていたキーストーンXLとダコタ・アクセスについて、トランプ大統領は就任後すぐに建設を推進する大統領令に署名した。パイプラインで使う鋼管などの資材だが、ダコタ・アクセスは既にほぼ完成し、キーストーンも資材調達は終わっている。建設再開がバイアメリカンにすぐつながるわけではなさそうだ。

 

エネルギー自給では、米国は来年から天然ガスの純輸出国となる見込みだ。原油は輸出が増加傾向にあるものの、いまだに純輸入国だ。従って安全保障の観点からは中東情勢に引き続き注意を払う必要がある。

 

シェールオイル生産の損益分岐点は場所によって異なるが、50ドル以上で安定することが望ましく、40ドル台では多くが採算割れだ。6月に期限が到来する減産合意の延長は、イランとロシアがどこまで協力するかが鍵となる。

 

2017年4月9日 日経ヴェリタス 22ページ (コモディティウォッチ掲載)

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