商品相場、トランプよりFRBが左右

社長コラム

2017年05月14日

住友商事グローバルリサーチ 代表取締役社長
高井 裕之

 米大統領選が終わって半年が過ぎた。マーケットを見渡すと、株価の上昇が目立つ。独の21%を筆頭に米国は15%、日本も13%値上がりしている。株式投資家がトランプ政権誕生を最も歓迎しているようだ。

 

 主要6通貨に対する総合的な値動きを示すドル指数は98から年末の利上げを受け103まで上昇するも反落し結局選挙前のレベルに戻っている。米長期金利は1.8%から3月に一時2.6%まで上昇するもその後は緩み足元では2.3%で推移している。

 

 商品相場で最も急騰しているのはコバルトだ。このメタルは銅やニッケルの副産物として産出し、紛争鉱物の産地コンゴが主要な生産国である。電気自動車(EV)用電池需要の活況と供給の不安定さから9割上昇している。

 

 次がパラジウムで2割の上昇。こちらも堅調な自動車向けの触媒需要を背景に欧州で浮動在庫がタイト化し買われている。同じ白金族の白金の地合いが悪いなかでパラジウムを買って白金を売る投機筋も多い。歴史的にこの2つの兄弟メタルの価格が逆転したことは今世紀初めに一度しかない。

 

 原油は年初からの減産合意で上昇してはいるが米国産原油の増産懸念が上値を抑え、年初の勢いはない。

 

 金は僅かに下落した。ドル指数の強弱の裏返しで米ドルが上がる局面では敬遠され下がる局面では選好されている。中東や朝鮮半島の軍事的緊張と欧州の政治的動揺が追い風となったものの、リスク回避の動きが後退し、急速に熱が冷めたようだ。銀は金以上に下げがきつく1割強下落している。

 

 トランプの半年で最も下げたのが石炭・鉄鉱石とニッケルである。鉄鉱石は1割、ニッケルは2割、石炭は3割も下げている。鉄鉱石と石炭は明らかに上げ過ぎの修正とみている。ニッケルはインドネシアの鉱石輸出規制の緩和が背景にあった。

 

 総括するとトランプ政権の誕生は株の投資家には朗報であったもののそれ以外はパッとしない。商品相場は時間の経過とともに、需給のリバランスが進み、底値は堅そうだ。ただ米連邦準備理事会(FRB)の出口戦略次第では金利上昇とドル高が商品相場の重荷になる恐れがある。トランプ大統領よりFRBとイエレン議長の後任人事に注意を払うことが肝要だ。

 

 

2017年5月14日 日経ヴェリタス 22ページ (コモディティウォッチ)掲載

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