胸突き八丁のプーチン体制

2017年11月08日

住友商事グローバルリサーチ 代表取締役社長
高井 裕之

 100年前の昨日、労働者らが蜂起し、いわゆるボリシェビキ革命がサンクトペテルブルクで勃発、5年間の内戦を経て社会主義国家ソビエト連邦が誕生した。ソ連は69年間続いたのち、1991年に崩壊。15の共和国はそれぞれ独立し現在に至る。

 

 その1つであるロシアの首都モスクワ。先日、四半世紀ぶりに訪れると見違えるような変貌を見せ、人口1,600万人を抱えるメガシティへ発展していた。

 

 最高指導者として今世紀初めから同国を率いるのがプーチン大統領である。来春予定される大統領選に出馬し、再選されれば任期は2024年までだ。世界でも珍しい長期政権となる。同氏には二つのアジェンダがあるという。ロシアを一つの国としてまとめおくこと。そして世界の大国として復活させることだ。

 

 プーチン氏には1990年代は悪夢に映るらしい。ゴルバチョフ政権によるソ連の崩壊とエリツィン時代の混乱である。冷戦時代に米国に対抗できる超大国と一目置かれた祖国の衰退。それが国家保安委員会(KGB)の職員として見てきたプーチン氏の心象風景なのであろう。

 

 プーチン氏は他国に考えを押しつけない。その代わり、他国にも考えを押しつけさせない。南シナ海問題で中国を批判しない代わりに、ウクライナ問題では中国に批判されたくない。シリア問題でも体制転換を狙う米国に軍事介入でノーを突きつける。米国の戦略をシリアに押し付けることへのアンチテーゼだ。旗幟(きし)を鮮明にすることでロシアの威信を見せつけるのもプーチン流である。

 

 ただ、その台所は苦しい。資源安と経済制裁で景気は低迷。年金受給者と公務員、国有企業職員が人口の半分を占める現在の構造では国庫がもたない。革命100周年の節目は、ロシアにとって胸突き八丁への入り口でもある。

 

2017年11月8日 日本経済新聞 夕刊 5ページ(十字路)掲載

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