再び揺らぐホワイトハウスの勢力図

2018年03月09日

代表取締役社長
高井 裕之

ワシントンで本稿を執筆しているが、当地ではトランプ大統領側近の相次ぐ辞任が連日メディアをにぎわしている。2月には元妻への虐待疑惑から辞任したポーター秘書官に続き、月末には元モデルで長年トランプ氏に仕えたヒックス広報部長が辞意を表明。さらに今月に入ってからは政権発足以来、経済政策全般を支えてきたコーン国家経済会議委員長が政権を去る。

 

ポーター氏の醜聞が明るみに出てから終始、同氏を擁護していたのが大統領の側近中の側近ケリー氏である。2人は共和党主流派として、同氏が首席補佐官に就任した昨年夏以来、コンビで政権を支えてきた。ケリー氏は無秩序だったホワイトハウスに秩序をもたらした人物として知られる。マティス国防長官やマクマスター氏と並び、政権の要を担う良識派の3軍人としても評価が高い。そのケリー氏とマクマスター氏にも辞任の噂が絶えない。

 

一方、復権したとされるのがナバロ通商製造政策局長である。対中強硬姿勢を訴える筋金入りの反自由貿易主義者で、政権発足後には大統領に北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱を促した人物である。しかしその後影響力を失い、コーン氏に仕えるポストに降格されていた。

 

足元ではトランプ大統領がコーン氏など良識派の反対を押し切り、鉄鋼やアルミニウムに追加関税を課すことを決めた。安全保障上の脅威を理由に懲罰的に輸入関税を課すものだが輸入アルミに依存する製造業には大幅なコスト増となる。欧州では対抗措置を検討中と伝えられる。NAFTAの再交渉も進行中で、まさに世界中で貿易戦争が勃発しかねない不穏な動きだ。

 

来週には下院の地方補選もあり選挙を意識した動きもあろう。猫の目のように替わるホワイトハウス内の勢力図だが、大きな節目にきている。

 

2018年3月9日 日本経済新聞 夕刊 5ページ(十字路)掲載

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