つかの間の回復、かりそめの安定

2020年12月22日

代表取締役社長
須之部 潔

 この時期、内外のシンクタンクや調査機関から様々な形で「来年の見通し」が発表される。筆者の勤める会社も例外ではなく、2021年の世界情勢・経済見通しを先日、発表した。

 

 21年の世界経済は国・地域によって差はあるが、20年の激しい落ち込みからの回復は確実だ。新型コロナウイルスワクチンの開発と普及が進めば、回復の足取りはよりしっかりする。米国では、予測不可能なことが多かったトランプ政権からよりオーソドックスなバイデン政権に交代する。米中対立など地政学的な情勢に変化はないが、より安定した予見可能性の高い世界になると思われる。そして夏に東京オリンピック・パラリンピックが無事に開催されれば、心理的にも経済の回復と安定の流れに追い風になるだろう。

 

 しかし、こうした流れが力強く続くかというと、残念ながら楽観できない。

 経済の回復は各国の政府当局が財政・金融政策を総動員してなんとか実現を目指している。長く続けることはできない。経済力が弱い国や、収益力が低い産業・企業が立ち行かなくなるリスクも増えてくる。22年には米国は早くも次の中間選挙を迎え、中国も習近平政権の続投がかかる共産党大会が開かれる。ひと波乱あってもおかしくない。加えて国際機関の機能不全、格差の広がりと社会の分断、ポピュリズムのまん延など、新型コロナ禍以前からあった多くの課題は手付かずのままである。

 

 回復はつかの間で、安定もかりそめかもしれないが、21年の干支(えと)は、痛みを伴う衰退と新たな芽吹きが交錯しながら展開するとされる「辛丑(かのと・うし)」。年始の初詣は、課題解決に向けた一定の動きと、機運の醸成が進むことをお願いしようと思う。

2020年12月22日 日本経済新聞 夕刊 5ページ(十字路)掲載

 

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