~With コロナ~

2021年11月29日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 10日ほど前、NYとロンドンにいる友人とコロナの話をした際、両都市ともに依然として新規感染者数はかなり大きな数字であるにもかかわらず、人出もかなり戻っており、マスクをしない人も増えているとのことでした。経済活動が回復している国では、今後の見通しについて日本人が述べる懐疑論がなかなか納得されないという話にも意外感がありました。感染者数の増加に伴って欧州各国が規制を強化したことに反対して、クロアチア、オーストリア、ベルギー、オランダ、フランスなど欧州各国でデモが相次ぎ、一部が暴徒化したことにも、英米と共通の考え方を感じました。新規感染者数が低いレベルで安定しているものの、経済活動の回復はまだ道半ばで、引き続き節度のある行動が多く、今後の感染についても経済についても不安視する人が多い日本とは対照的です。国民性もありますが、欧米の人たちと日本人の捉え方、考え方や行動の違いを実感したところでした。

 

 そんな矢先、先週半ば以降、世界の雰囲気が大きく変わりました。ドイツ、オランダなど欧州各国や韓国などで過去最多の感染者数を記録、スロバキアなどではロックダウンも実施。さらに、WHOは南アでの感染が報告されているオミクロン株を新変異株として指定。各国が南ア等との往来を規制し、市場では株価、原油価格などが急落しました。感染力がデルタ株よりも強いと言われるオミクロン株の感染はイスラエル、欧州各国、豪州、カナダなどでも見つかり、不安が広がっています。この新変異株が欧州の感染拡大と関係しているとすれば事態は深刻で、市場も動揺しています。長い間我慢した後の回復感が強かったところほどショックや変化も大きくなるというのも、「Withコロナ」時代の一つの特徴なのでしょう。どのアプローチが正解というのがあるわけではなく、国によって対応は異なります。そうした外の状況にも目を配り、見極めながら、国も企業も個人も、まずは自らの安全を確保しつつ、さまざまな情報を分析してアジャイル[*1]に対応することがますます必要になりそうです。

 


[*1] アジャイル:「俊敏な」「すばやい」という意味から、要求仕様の変更などに対して、機敏かつ柔軟に対応するためのソフトウェア開発手法。ここでは予期しない状況の変化に俊敏かつ柔軟に(臨機応変に)対応することを指す。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。