米農務省四半期在庫について

2016年10月07日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
山野 安規徳


 

◇概要

 

 米農務省は9月30日に四半期在庫報告を発表した。9月1日時点のトウモロコシと大豆の四半期在庫は、前年度(15/16年度)の期末在庫及び今年度(16/17年度)期初在庫の確定値となるため、市場の注目を集める。また、飼料需要はタイムリーな統計が乏しいため、四半期毎の在庫変動から直近3か月の飼料需要を推計する手がかりとしても重要である。米農務省は16/17年度は穀物価格低迷による飼料需要の増加を見込んでおり、今後の飼料需要の趨勢を見極めるためにも足元の状況を把握することが必要となる。

 

 

◇トウモロコシ

 

 トウモロコシの四半期在庫は1,738百万ブッシェルと、9月需給報告の1,717百万ブッシェルを上回り、前年度並みの在庫水準を維持した。2016年6~8月の消費量(在庫減少幅)は前年同期比9.2%増の2,970百万ブッシェルで、価格低迷を背景とした輸出需要増加および家畜数増加による飼料需要増加が窺えた。3~5月期は飼料需要が前年同期比100百万ブッシェル以上減少していたと試算され、トウモロコシの需要減退が懸念されていたが、今期は推計で同80百万ブッシェル増加し、その懸念を払拭する結果となった。

 

 今回の期末在庫報告は、9月需給報告に比べて16/17年度期初在庫を22百万ブッシェル上方修正したが、在庫率を大きく悪化させるほどではない。むしろ10月需給報告で単収見通し引き下げによる生産量の下方修正が予想されており、仮に単収見通しが1ブッシェル下方修正されれば生産量は87百万ブッシェル減少するため、期初在庫の増加分は相殺されるとみられる。

 

 

◇大豆

 

 大豆の四半期末在庫は197百万ブッシェルと、9月需給報告の195百万ブッシェルを上回り、こちらも前年度並みの在庫水準だった。6~8月消費量は、南米の大豆不作を背景に米国産輸出需要が加速したことで、前年度比55%増の680百万ブッシェルとなった。

 

 また、大豆の農場内在庫は前年同期比16%減となった一方、トウモロコシの農場内在庫は同6%増となったが、6~8月の大豆平均価格が前期比10%高と上伸したため、農家が大豆を積極的に売却していたことが窺える。

 

 なお、米農務省は今回の発表に合わせ、米国大豆収穫面積の引き下げにより15/16年度生産高を3,926百万ブッシェルとした。15/16年度生産高は過去最高になるとの見通しだったが、下方修正の結果前年度をわずかに下回り、過去2番目の水準となった。

 

 

◇小麦

 

 小麦在庫に関しては前年同期比20.5%増の2,527百万ブッシェルと、市場予想を上回り9月在庫としては1987年以来の高水準を記録した。価格低迷により飼料需要が増加すると予想されていたが、飼料や食品を含めた推計消費量は前年同期より5百万ブッシェル程度の増加に留まり、飼料需要増加は限定的だったと示唆される。米農務省は9月需給報告で16/17年度の飼料用・その他の消費量は前年度比140%増の330百万ブッシェルと見込んでいるが、小麦価格の更なる割安感がない限り、需要拡大は難しいと考える。

 

 

四半期末在庫報告(出所: 米農務省四半期在庫報告-2016年9月30日発表-より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 

以上

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