米農務省需給報告と四半期在庫報告

2017年01月25日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
山野 安規徳


 

◇3つの報告の位置づけ

 

 米農務省は1月12日に1月需給報告、冬小麦作付報告及び四半期在庫報告(12月1日時点)を発表した。今回の需給報告では2016/17年度(9月~8月)米国トウモロコシ・大豆の生産量の確定値が、冬小麦作付報告では16/17年度作付面積の確定値が発表されるため、例年市場の注目を集める。また四半期在庫は、四半期毎の在庫変動から直近3か月(9~11月)の需要動向を確認する手がかりとして重要視されている。

 

 

◇米国大豆:需要は堅調、南米の動向が注視される

 

 16/17年度生産量は前年比9.7%増の4,307百万ブッシェルと過去最高になったことが需給報告内で再確認された。消費量は前年比4.2%増の4,108百万ブッシェルと生産量を下回り、16/17年度期末在庫は前年比115%増の420百万ブッシェル(在庫率10.2%)と見込まれている。

 

 四半期在庫報告で9~11月消費量を確認すると、前年同期比15%増の1,610百万ブッシェルと年度予想(前年比4.2%増)を上回った。特に同時期の輸出検証高は前年同期比約30%増で推移しており、好調な輸出が需要を牽引していることがうかがえる。

 

 さらに、米国の競合となるアルゼンチンでは、作付直後に豪雨に見舞われ、最大10%程度の減産(180百万ブッシェル)が予想されている。この影響は需給報告にまだ反映されていないため、被害状況次第では米国産の輸出見通しが上方修正される可能性がある。一方でブラジルは好天に恵まれ、生産量は3,820百万ブッシェルと過去最高の見通しで、南米の生産状況は明暗分かれる展開となっている。

 

 

◇米国トウモロコシ:需要は全体的に堅調も、飼料需要の伸びが鈍い

 

 16/17年度生産量は前年比11.4%増の15,148百万ブッシェルと、過去最高だった。消費量は前年比6.7%増の14,585百万ブッシェルと輸出、飼料用、圧搾用すべてにおいて増加すると予想されている。16/17年度期末在庫は前年比35.6%増の2,355百万ブッシェル(在庫率16.1%)との見通し。

 

 四半期在庫報告で直近3か月の消費量の経過をみると、前年同期比9.8%増の4,500百万ブッシェルと好調な推移が確認された。しかし、このうち飼料需要については伸びの鈍さが確認された。米農務省は16/17年度の飼料需要を前年比10%増と見込んでいるのに対し、9~11月飼料需要は前年同期比4.6%増の2,280百万ブッシェルだった。1年のうちで飼料需要の最も強い冬季に既に予想を下回る増加幅となっており、このペースで進むならば飼料需要が下方修正される可能性がある。米農務省のQuarterly Hogs and Pigsレポートで12月1日時点の養豚数が過去最大と報告されているにも関わらずトウモロコシの飼料需要の伸びが鈍いのは、他の飼料用作物(DDGSや小麦等)に代替されている可能性が考えられる。

 

 

◇米国小麦:16/17年度冬小麦作付面積は過去2番目の低水準に

 

 16/17年度生産量は前年比12.0%増の2,310百万ブッシェル、消費量は13.9%増の2,224百万ブッシェルと見込まれている。期末在庫は前年比21.5%増の1,186百万ブッシェル(在庫率53.3%)と高水準が続く。

 

 小麦の9~11月消費量は前年同期比33.7%増の472百万ブッシェルと報告され、好調であることが確認された。なかでも食品・飼料用途は前年比40.0%増の260百万ブッシェルで特に好調だったと推計され、小麦が飼料トウモロコシ需要を一部代替したことが示唆された。しかし、今月の需給報告では小麦の飼料需要は前月予想から下方修正されており、米農務省は小麦の飼料需要の増加を一時的と考えているとみられる。

 

 米国冬小麦作付面積は、前年比9.0%減の32.4百万エーカーで史上2番目の低水準だったと発表された。今春の全作物の作付面積が前年と変わらないとするならば、冬小麦作付面積の減少分3.8百万エーカーが、他穀物・油糧種子に転作されることになる。米調査会社インフォーマは2017/18年度のトウモロコシ作付面積を前年比3.7%減(3.5百万エーカー減)、大豆を6.3%増(5.2百万エーカー増)と見込んでいるが、トウモロコシの作付面積の減少幅が予想ほど大きくならない可能性もある。

 

 

1月需給報告(米国)(出所:米農務省より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

四半期在庫報告(出所:米農務省より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

以上

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。