米農務省:四半期在庫

2017年10月06日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
舘 美公子


 

◇概要

 

 米農務省は9月30日に四半期在庫報告を発表。今回(9月1日時点)のトウモロコシ・大豆在庫は、2016/17年度の期末在庫及び2017/18年度の期初在庫の確定値、小麦在庫は2017/18年度の第1四半期在庫となる。トウモロコシ在庫は、前年同期比32%増の22億9,500万ブッシェルと、期末在庫としては30年ぶりの高水準を記録、大豆在庫は同53.2%増の3.0億ブッシェルといずれも大幅に増加した。また、農務省は四半期在庫に基づき、2016/17年度生産量を0.1億ブッシェル引き下げた。

 

 9月需給報告の需給予想を前提に置けば、2017/18年度のトウモロコシ期末在庫は22億8,000万ブッシェル(期末在庫率16%)と引き続き過剰在庫気味だが、大豆は4.3億ブッシェル(期末在庫率10%)とやや引き締まりをみせる。小麦は、冬小麦の生産量が減少したため、第1四半期在庫は17億4,100万ブッシェルと前年同期比11%減少となった。

 

 

◇農場内・農場外在庫内訳

 

 トウモロコシ・大豆は、農場内・農場外在庫ともに増加。第3四半期(6月1日時点)の在庫増加率が前年比10%台に収まっていたのに対し、第4四半期は前年比25~112%増と伸び率の拡大が目立つ。背景には、輸出が堅調だった前期に比べ第4四半期は輸出ペースが伸び悩んだことが挙げられる。また、トウモロコシの新穀生産だけで142億ブッシェルと農家の穀物貯蔵能力133億ブッシェル(2016年12月時点)を上回る見通しであり、一部農家はハーベストプレッシャーの掛かる時期に安値での在庫売却を余儀なくされる。これは3年連続の豊作で収入が低迷する農家にとって、更なるマイナス材料となる。

 

 州別でみるとノースダコタ州・ミネソタ州の北部プレーンズにおいて農場在庫増が際立つ。ノースダコタ州の大豆在庫は2016年の36万ブッシェルから980万ブッシェル、ミネソタ州は同370万ブッシェルから1,350万ブッシェルと生産トップの中西部を抑え、農場在庫がそれぞれ全米3位、2位となった。また、トウモロコシ在庫もノースダコタ州で前年比4倍と全米平均の増加率25%を大きく上回った。理由としては、夏場にプレーンズを襲った高温乾燥で新穀の生産減を危惧した農家がヘッジとして在庫を保持していた可能性や、更なる高値を期待して売りそびれた可能性が考えられる。

 

 

◇需要見通し

 

 トウモロコシの6~8月の需要(在庫減少幅)は29.3億ブッシェルと前年比1.3%減少。エタノール需要や飼料需要が前年比で増加したものの、輸出需要の落ち込みを補いきれなかったことが理由。2016/17年度の輸出需要は、不作だったブラジル産トウモロコシの輸出代替で通年では前年比25%以上伸びたが、第4四半期は当該効果が剥落した。大豆については、圧搾高は前年同期比1.6%増加したが、トウモロコシ同様、輸出が伸び悩み需要全体では前年比1.5%減少の6.65億ブッシェルとなった。小麦は、輸出需要は伸びたものの、飼料需要で競合するトウモロコシ価格が下落し、小麦との値差が拡大するなか、飼料需要が50%近く下落し、需要全体では前年比11.9%減少した。

 

 

四半期在庫報告(出所: 米農務省四半期在庫報告-2017年9月29日発表-より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 

農場内在庫(出所:米農務省より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

以上

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