OPEC総会について
ホット・トピックス
2016年12月05日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
舘 美公子
先週開催された総会で、OPECは市場予想を上回る成果をあげ注目を集めた。総会では、まず加盟国全体の生産量を日量120万バレル減らし、3250万バレルを上限とすることで合意した(図表①)。OPECが減産で合意するのは、2008年以来8年ぶりとなる。減産開始は2017年1月から6か月間で、減産の順守状況をモニタリングする委員会の設置も決定した。また、今回の減産はOPEC単独ではなく、ロシアをはじめとするOPEC以外の産油国による減産合意も合計日量60万バレル取り付けたと発表。
図表②は今回決定された国ごとの減産割当量と2017年の生産枠を表している。減産割当の交渉過程でイランやイラクが反発したため、調整に難航したが、経済制裁が今年1月に解除されたばかりのイランは増産が認められた。また、武装勢力の攻撃をうけ原油生産が打撃をうけたナイジェリアとリビアは減産の対象外となっている。その他の国は一律10月の産油量から4.5%前後の減産義務を負っている。
今回合意に至った意義は大きく3つある。1つは、OPECが需給調整役として復帰したことである。2014年11月の総会では、需給調整の役割を市場に委ねるとし、減産を拒否したが、今回の減産決定で再び市場の舵取りを担おうとしている。2つめは、OPEC内の対立を乗り越え、増産の凍結ではなく、敢えて痛みを伴う減産にまで踏み込んだことでOPECの結束力と本気度を示した点である。3つめはOPEC以外の産油国も減産に加わることで、OPECが石油市場における影響力を維持していることをアピールできたといえる。
なお、OPECが減産を決定した最大の意図は、原油需給の均衡化を加速させることにある。原油価格の回復ももちろん期待しているが、急激な価格上昇は米国シェールなどの高コスト生産者が台頭するため、望んでいない。今回の減産期間が半年と短いことや、減産規模からみても原油価格上昇よりも石油在庫の増加に歯止めをかけ、市場正常化を図ることに主眼が置かれているといえる。実際、図表③の通り、1月から減産が実施されれば、第1四半期から石油市場は供給不足となり、在庫の取り崩しが進むとみられる。
今後の注目点は、まずOPECおよび非OPEC諸国の減産の履行状況だ。過去の歴史を振り返ってもOPEC全加盟国が産油枠を順守できたことはほとんどなく、今回もサウジを筆頭とする湾岸諸国の減産に限られる可能性は高いといえる(図表④)。また、ロシアは最大で日量30万バレル減産協力を発表しているが、ロシアとオマーン以外で減産支持を明らかにしている国はまだいない。OPECとOPEC以外の産油国は12月10日に会合を行うとしており、ここでの決定も注目される。
米国シェールオイルの増産懸念については、少なくとも今後半年は目立った増産はないと考える。図表⑤の通り、この1年の動向をみると、シェールオイルの追加供給(価格感応度)には、4-6ヶ月のタイムラグがあることがわかっている。一旦掘削のペースを落としたシェール企業が再度増産に転じるには資金や機材を調達し、解雇した労働者を呼び戻す必要があるためである。また、シェール業界には不法移民労働者が少なからずいるとされ、トランプ政権の誕生で労働市場は更に逼迫する可能性もある。
以上を踏まえた今後の価格見通しについて、まず足元では減産合意を評価し価格は10%近く上昇し、50ドルをつけている。来年減産が実行されれば、上期には55ドルを突破する可能性もあると考える。一方、下期にはかけてシェールの増産で価格に下押し圧力がかかり50-55ドルで推移するとみている。一方、減産が実行されなかった場合には現行レンジである40~50ドル台が続くとみられるが、減産合意がなくとも2017年末には自律的に需給がバランスすることから、大幅な下落リスクは後退したと言えるであろう。
以上
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