北京/中国 ~建国70周年を迎えた北京の高級住宅事情~

アジア・オセアニア

2019年10月18日

住友商事(中国)有限公司
橋本 淳一

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 2019年、中国は建国70周年の節目の年を迎えています。10月1日に国慶節を迎えた北京の街では、多くの商店に国旗「五星紅旗」が掲げられ、至るところに豪華な花壇の飾りつけが登場するなど、お祝いムードが高まっています。

 

 建国以来の共産党の指導と成果を称え、さらなる発展に向けた国民の奮闘と団結を呼びかけるスローガンが大通り沿いに掲げられているのは、社会主義国家中国らしい昔ながらの光景です。一方で、街中の多くの場所に設置された監視カメラや、顔認証システムなどのIT技術を駆使して駅や空港、ホテルなどで行われる人物照合の光景は、中国社会の新しい変化の側面を表すものと言えましょう。

 

 そんな北京で暮らす外国人にとって中国社会の変化の大きさを最も身近に感じるのは、市民の生活水準の向上です。ここでは、北京の超一等地にある高級マンションの開発事情を通じてその一端を紹介したいと思います。

 

 天安門広場から車で東に15分ほどのところにある「CBD(中央商業地区)」は、当社の北京オフィスを始め多くの外資系企業が入居する高層オフィスビルを中心に、五つ星ホテル、高級ショッピングモールなどが立ち並ぶ北京有数のビジネス・商業エリアです。

 

広大な緑地広場を取り囲む高層マンション群(筆者撮影)
広大な緑地広場を取り囲む高層マンション群(筆者撮影)

 そのCBDの一角にある国貿地区のマンション群は、2008年の北京五輪開催を契機に再開発が行われ、今では多くの外国人駐在員とその家族が暮らす住宅地ですが、もとは国有企業の工場や古びた住宅などが広がる場所でした。開発開始から 10年以上を経た今では計26棟、1,800戸の住宅を有する一大住宅地に姿を変えました。ビジネス街の一角とは思えない広大な緑地広場を取り巻くように高層マンション群が配置された敷地内には、小洒落た(こじゃれた)カフェやイタリア料理店、輸入食品を扱う高級スーパー、ペットショップ、高級美容室などが立ち並び、最近では外国人駐在員だけでなく、多くの中国人富裕層が暮らす高級住宅地として人気を集めています。

 

 中国では住宅の値段を1平方メートル当たりの金額で表わすことが一般的で、ここで最近売買される物件の値段は最低でも1平方メートル当たり10万元(約150万円)。大半が150平方メートルから200平方メートルの3LDKとのことですので、1部屋ざっと2億円から3億円と言えばいかに高額かが分かると思います(注:中国ではグロス面積で表記し売買されることが一般的で、実際の使用面積はこの7掛け程度です)。

 

 また、この数年の新しい変化として、外資系企業勤めの20代後半から30代の若者が親の資金援助を受けて購入するケースも増えており、中にはローンを組まず現金で購入する客もいるそうですから驚きです。その結果でしょうか、開発当初は7割近くあった外国人住民の比率が今では2割程度にまで減ってきていることも目立った変化です。

 

 このような最新事情を聞かせてくれた30代の不動産営業マンに「2億も3億もする家を買える人がそんなに多くいるなんてすごいですね!」と驚きを伝えたところ、返ってきたのは「なんといっても北京は首都ですから」「お客さんも北京で働いているなら検討してみてはどうですか?外国人の場合は1人1軒までしか取得できませんが」という営業トークでした。そんな営業マンの熱心な勧誘を聞きながら、建国から70年の歳月を経て世界2位の経済大国へと発展したこの国の成長の勢いのすさまじさを改めて再認識したのでした。

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