- [ドイツ/景況感の回復]ifo経済研究所によると、6月の企業景況感指数(2015年=100)は85.6(+1.6ポイント)へ上昇した。直近ピークの2月の88.5から、中東紛争の影響を受けて4月の84.5にかけて低下した後、2か月連続で持ち直した。内訳を見ると、足元の状況を表す現況指数は87.0(+0.9ポイント)へ2か月連続で上昇した。また、先行きを表す期待指数も84.1(+0.2ポイント)へ2か月連続で上昇した。
フューストifo所長は、センチメントは改善していると指摘した。企業は現状をより前向きに捉えている。先行きの見方も、幾分懐疑的ではなくなった。企業は、ビジネス環境がこれまでに比べて不確実ではなくなったと認識しており、地政学的な緊張が緩和することを期待していると総括した。
業種別のバランス指数を見ると、製造業は▲12.8ポイント(+1.9ポイント)へ2か月連続で上昇した。
先行きの期待指数の改善が全体のバランス指数の上昇の主因だった。新規受注減などから現状指数はわずかに下方修正されるなど、足元の状況は引き続き厳しい。サービス業も、▲5.1ポイント(+1.8ポイント)へ2か月連続で上昇した。先行きはおおむね横ばい圏を推移した一方で、現状が回復した影響が相対的に大きかった。特に、観光部門は厳しい状況にある一方で、輸送・物流部門の回復が続いた。また、商業は▲26.7ポイント(+3.3ポイント)へ2か月連続で上昇した。現状とともに、先行きの見通しも改善したものの、「回復への道のりはまだ遠い」と厳しい見方が示された。建設業も▲23.1(+1.0ポイント)へ2か月連続で上昇した。先行きに対する悲観的な見方が和らいだことが主因だった。ただし、現状の認識は変わらず、受注不足には不満が残ったようだ。
米国とイランが停戦に向けて協議を進めており、一時に比べて外部環境は持ち直している。しかし、その協議を巡って先行き不透明感が払しょくできないことが、ドイツ企業の重石として残っている。
- [日本/資金循環統計(2026年1~3月期速報)]6月25日、日本銀行は2026年1~3月期の資金循環統計(速報)を発表した。3月末時点の家計の金融資産残高は2,386兆円で、前年同期比は+7.1%となった。2025年10~12月期の+6.6%から上昇幅が拡大した。
内訳では、現金・預金が1,126兆円と、家計の金融資産全体の47.2%を占めるが、引き続き50%を割り込んでおり、上昇幅は+0.6%に留まる。
一方、株式等の残高は、株価上昇の影響(2025年3月末の3万円台から2026年3月末では5万円台)もあり、398兆円(全体の16.7%)で+28.6%、投資信託の残高は165兆円(全体の6.9%)で+25.7%。新NISA(少額投資非課税制度)の活用による資金流入や、円安による外貨建て資産の増加などにより、いずれも3四半期連続で20%台の伸びとなっている。
国債など債務証券の残高は+14.4%と36兆円、保険は+2.9%の424兆円となった。
- [米国/テックネック症候群]スマホ・PCの過剰使用に伴う頸部痛・上背部痛・頭痛などの症状を一般的にテックネックと表現する。Fortune(米経済誌)が報じたところでは、米国では現在10代前後を指すα世代やおおよそ30歳以下が該当するZ世代でこの疾病リスクが高まっているとしており、4,300万人がその対象とされている。研究によれば、大学生の73%が頸部や腰、背中などの痛みを訴え、痛みによる生産性の低下を自覚しているとされる。この世代の若者は米国では4,200万人おり、わずかな比率でも歳を重ねるにつれて脊椎問題を発症することになれば、リハビリテーションの大幅増、入院加療、長期ケアが必要となるとしている。これらは保険料の上昇や給付配分の増加につながっていくことが懸念されるし、実際に生産を引き下げてしまうことになるだろう。記事ではその費用が1万9,000ドル~44万ドルとされているが、それでも入院やリハビリでは平均的な金額として3~4万ドルはかかるようだ。もっとも、スマホは世界的にも普及が進み、いまでは66億人が使用しているとみられることもあって、サイレントパンデミック(静かな流行)と指摘もある。単なる肩こりではなく、長期的には成長期の骨格問題・体型問題であるし、もちろん経済問題にもつながる。世界的な習慣病になりつつある、とも言えるだろう。英国でも労働力が失われるという研究が注目を集めた。テックネックで2,800万労働日喪失と言われており、わかり易く表現すると1人当たりの年間労働日が220日と仮定すると12万7,000人分の労働力がこの疾患で休んでいることになるという。英国の就業者をおおよそ3,300万人とすると0.4%に相当する規模となる。生産性も下がる上に、医療費負担も増えることになる。日本ではまだ認知度が低く対策が遅れているとされ、新興国では若年層の間で急速に拡大しているもようだ。スマホやPCを使うことで得られる利益、疾病から生じる不利益の調整などを見直すタイミングということなのでしょう。姿勢を正して、画面から少し離してスマホ・PCを使いましょう。
- [中東地域情勢]ルビオ米国務長官は6月23日から25日にかけてUAE、クウェート、バーレーンを歴訪し、6月25日に開催される湾岸協力会議(GCC)外相会合に出席する。今回の訪問の最大の目的は、米国・イスラエルによる対イラン軍事作戦で報復攻撃を受けた湾岸諸国に対し、米国の安全保障上のコミットメントを改めて説明し、不安の払拭を図ることにある。
UAE、クウェート、バーレーンはいずれもイランのミサイル・ドローン攻撃を受けたが、米国が十分に防衛できなかったことから、安全保障への不信感が高まっている。また、米イラン間で締結された14項目の了解覚書(MoU)についても、弾道ミサイルやイランの代理勢力への支援問題が盛り込まれず、核問題も今後の協議事項とされたことから、湾岸諸国では「イランへの譲歩が大きい」との懸念が根強い。さらに、イランがオマーンとホルムズ海峡の航行管理やサービス料徴収を協議していることも、新たなリスクとして受け止められている。ルビオ長官は「ホルムズ海峡は国際水路であり、いかなる国も通行料を課すことは認められない」と明言し、米国の立場を示した。
一方、湾岸諸国は戦争が終結し、ホルムズ海峡の再開に向けた協議が進んでいることには安堵している。カタールのムハンマド首相は、海峡の安全な再開には米イラン間で設置されたホットラインが不可欠だと説明し、革命防衛隊など強硬派による偽情報や独断行動を防ぐ役割を果たすと述べた。MoUでは30日程度で航行の正常化、60日以内の最終合意を目指しているが、信頼回復には時間を要するとの認識を示している。また、カタールはイランによる海峡通行料徴収には国際法違反として反対する一方、航行管理の新たな枠組みについては協議に応じる姿勢を示している。
また、ムハンマド首相は、カタールのLNG生産が数週間以内にほぼ正常化するとの見通しを示した一方、一部設備の完全復旧には最大5年を要すると説明した。さらに、肥料、尿素、石油化学製品、ヘリウムなどの供給不足は9~10月頃に顕在化する可能性があると指摘した。ホルムズ海峡再開への期待を背景に原油価格は下落し、ブレント原油は72ドル台、WTIは69ドル台まで低下している。
湾岸諸国首脳の一連の行動や発言から、湾岸諸国が米国一辺倒の安全保障から距離を置き、イランを地域の一員として取り込む新たな地域安全保障体制の構築を模索し始めていることがうかがえる。サウジアラビア、トルコ、エジプト、パキスタンなども今後の中東秩序について協議を開始しており、今回の米・イスラエルによる対イラン軍事作戦が、中東の安全保障の枠組みを大きく転換させる契機となる可能性がある。
- [ケニア・中国/空港建設]6月24日、ケニア運輸省は首都ナイロビ近郊のジョモ・ケニヤッタ国際空港(JKIA)の拡張に向け、中国道路橋梁集団(CRBC)と約12億ドルの契約を締結したと発表した。旅客ターミナルビルの新設やインフラの近代化を図ることにより、年間処理能力を750万人から2,200万人に拡大させる計画だ。東アフリカでは国営エチオピア航空の急成長により、アディスアベバのボレ国際空港が年間2,200万人の旅客取扱量を誇っている。さらにエチオピアでは年間6,000万人の取扱量を持つ新空港の建設も進んでいる。ルワンダ航空はカタール航空と出資提携を行うなど東アフリカ内での航空市場の競争が激しくなる中、ケニアも負けじと食らいつきたい意図がある。
同空港の改修に関しては、2024年にインド財閥・アダニ・グループが18億ドルで政府から受注。しかし、選定プロセスの不透明性や雇用の安定性に対してケニア国内から強い反対があったことと、同グループが米国にて詐欺罪で起訴されたことを受け、契約が破棄された経緯がある。空港改修費用の財源として、3月に政府が新設したばかりの「インフラ投資ファンド(NIF)」の資金が使用される見込みだ。
ケニア政府はNIFを通じて10年間で5兆ケニア・シリング(約387億ドル)のインフラ整備向け資金を供給するとの野心的な計画を示しており、今回のJKIAの改修は第最優先プロジェクトとして位置づけた。NIFの初期の種銭のほとんどが国営ケニア・パイプライン会社(KPC)の政府持ち株分35%の売却益(約8.2億ドル)であり、空港改修に必要な不足分についてケニア政府は東部・南部アフリカ貿易開発銀行(TDB)と、アフリカ金融公社(AFC)を通じて調達する意向を示している(6月24日、ロイター通信)。また、ケニア議会は国内携帯通信最大手サファリコムの政府持分35%のうち15%を売却し、約16億ドルの売却益をNIFに供出する提案を承認したが、現在ケニア高等裁判所で差し止めを受けている。
これほどまでにケニア政府がインフラ整備を積極的に進めようとしている背景には、2027年8月に大統領選が予定されていることがある。2期目を目指すルト大統領は、空港や高速道路、鉄道などの整備を通じて有権者の支持を得たい狙いだ。同様の手法は2017年にウフル・ケニヤッタ前大統領が当選した際にも利用され、同氏は選挙直前に中国からの約50億ドルの融資によるモンバサ港~ナイロビ間の標準軌鉄道(SGR)の開業にこぎつけた。しかし、これにより対中債務が急増。現在、ルト大統領を悩ませている財政問題の引き金となった。
- [インド/タタ・エレクトロニクスのサイバー攻撃被害]6月22日、インドのタタ・エレクトロニクスが、ランサムウェア集団「World Leaks」によるサイバー攻撃を受けたと発表した。同社はiPhoneの組立工程を担うほか、Tesla向けにバッテリー管理システム用の回路基板や半導体チップを供給するなどApple・Teslaの両社にとって重要なサプライヤーである。今回のサイバー攻撃により、両社の機密情報を含む20万件以上(630GB以上)のデータがダークウェブ上に公開された。具体的には、iPhoneの回路基板部品に関する品質検査基準を詳述した文書や、TeslaのEV「モデル3」の技術図面などが公開された。
タタ・グループでは、過去にも同様のサイバー攻撃の被害を受けている。例えば2025年4月には、英マークス・アンド・スペンサー(M&S)がサイバー攻撃を受けたが(損失額は約3億ポンド(約4億ドル))、ハッカーらはヘルプデスクを提供しているタタ・コンサルタンシー・サービス(TCS)経由で同社のシステムにアクセスした可能性が浮上した。2025年10月に、TCSはM&Sとの契約を解除されている。また2025年8月には、タタ・グループ傘下のジャガー・ランドローバー(JLR)がランサムウェア攻撃を受け、生産が約6週間停止し、約2億6,000万ポンド(約3.4億ドル)規模の損害を出している。
なおこのようなサイバー攻撃はタタ・グループに限らず、インドの製造業が全般的にサイバー攻撃の標的となっていることが指摘されている。Seqriteの2026年のレポートによると、インドにおいて製造・エンジニアリングセクターは、教育・医療と並んでサイバー攻撃の標的にされている上位3セクターに入っており、検出されたサイバー脅威の14.22%(約379万件)が同セクターに集中している(Seqrite、2025年12月)。特に製造業はIoTの進展により、本社部門に存在する社内のITシステムと、工場など生産現場に存在し生産プロセスを監視・制御するための運用技術(OT)が統合されつつあるが、これによりOT経由で社内のITシステムに侵入する事例が相次いでいる。また、大企業本体の強固なセキュリティを直接破るよりも、それらの下請け業者や業務委託先を標的にする方が、サイバー犯罪者にとって一度の攻撃で大きな成果(身代金交渉の材料)を得やすいことが知られている。今回の攻撃も、Apple・Teslaの業務委託先であるタタ・エレクトロニクスが攻撃の対象となった。今後、インドが製造業発展を目指すにあたり、外資系企業の製造業の業務委託先となるであろうタタ・グループを含めた地場企業がサイバー攻撃に対して脆弱であるとの印象が大きくなった場合、外資による業務委託が滞り、結果として製造業発展にも影響を及ぼしかねない。
- [希土類/中国が米企業に対抗措置]ブラジル中部のゴイアス州に位置するセラ・ヴェルデは、希土類産業において極めて重要かつ稀有な存在であり、アジア以外では唯一、電気自動車や風力発電、軍事用途に不可欠な「磁性希土類4元素(ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム)」を商業規模で生産している。とりわけジスプロシウムやテルビウムといった重希土類は供給が限られており、次世代エネルギーや防衛分野において不可欠であるため、その戦略的価値は極めて高い。
このような背景から、米国政府は数億ドル規模の資金支援を通じて米国企業であるUSAレアアースによる買収を後押しし、2026年4月に約28億ドルで買収が成立していた。ブラジルの鉱山と米国内で建設中の加工・磁石製造拠点を結び付けることで、中国に依存しない希土類サプライチェーンの構築が目的となっている。
これに対し、中国は強い対抗措置を取った。具体的には、買収主体であるUSAレアアースをブラックリストに追加し、中国企業が同社に対してデュアルユース(軍民両用)の製品を輸出することを禁止した。また、中国製品を他国経由で同社に供給することも禁じ、すでに輸送中の貨物についても停止を命じるなど、極めて厳格な措置を講じた。この対応の背景には、アメリカがBYDやアリババ、バイドゥなどの中国企業を自国の規制リストに追加したことや、G7が2030年までに中国産レアアースへの依存度を60%以下に引き下げると合意したことへの対抗措置とみられる。
この措置はセラ・ヴェルデの操業自体を直ちに停止させるものではないと考えられる。同鉱山は買収前から中国企業との販売契約の解消を進めており、短期的な収益への影響は限定的である可能性が高い。しかし、中長期的には問題が残る。というのも、希土類の精製の約90%を中国が担っている現状では、中国製の設備や素材への依存が依然として大きく、それらの調達が困難になることで、米国主導の新たなサプライチェーン構築に支障が生じる恐れがある。
また、米中による資源支配競争の一環という文脈において、セラ・ヴェルデが中国サプライチェーンの外にあるということは、戦略的競争力の源泉である一方で、政治的な標的となるリスクを改めて示した形だ。
ブラジルにでは、中国に次ぐ規模の希土類埋蔵量を有しながら、これまで十分に開発されてこなかった。その資源は経済的には大きな武器となる一方で、国際政治の駆け引きの中で重要な位置を占める存在となっている。今後、ブラジルがどの国と連携し、どのように資源開発を進めていくのかは、世界の供給網にも大きな影響を与えることになる。
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