- [ボリビア/危機緩和も予断許さず]燃料補助金削減に端を発した抗議活動が続く中、政府が非常事態宣言を発令し、議会もこれを承認したことで、数週間にわたり封鎖されていた国内の主要幹線道路が徐々に再開し始めた。非常事態は最大90日間有効であり、治安維持のために軍が警察とともに道路の確保や住民保護に当たることが認められている。加えて、紛争地域では夜間外出禁止令や移動制限が導入される場合がある。
ただし、長期間の抗議活動により道路などのインフラは損傷を受けており、完全な復旧には時間を要する見通しで、燃料や生活必需品の供給にも影響が残っており、都市部でも完全な正常化には至っていない。
一部地域では対話の進展も見られる。東部サンタクルスでは、地方当局と抗議指導者が重要な封鎖の解除で合意し、農民団体も抗議の一時停止を表明した。しかし、要求自体は撤回されておらず、再び抗議が強まる可能性は残されている。このように、表面的には沈静化の兆しが見えるものの、根本的な対立は解消されていない。
特に緊張が続いているのは、元大統領エボ・モラレスの支持基盤であるチャパレ地域である。この地域では依然として封鎖が継続しており、政府治安部隊も全面的には介入していない。政府はモラレスが政治的・司法的交渉を有利に進めるために抗議を扇動していると非難しており、対立は政治問題の側面も強めている。
今回の混乱はすでに約50日間続いており、少なくとも17人が死亡している。多くは道路封鎖による医療アクセスの途絶が原因とされる。また、経済的損失は約30億ドルに達すると見積もられており、物流の停滞や生産活動の減少が大きな影響を及ぼしている。
さらに、この期間中には、援助物資を輸送していた空軍機が墜落し、搭乗していた6人全員が死亡するという悲劇的な事故も発生している。
今回の事態の根本原因は、政府が財政赤字削減のために長年続けてきた燃料補助金の縮小に踏み切ったことにある。これに対し、労働組合や農民団体、モラレス支持者らが強く反発し、全土で抗議活動と道路封鎖が広がった。経済政策と社会的負担の配分をめぐる対立が深まっており、短期的な沈静化が見られても、長期的には政治・経済双方の調整が不可欠である。
総じて、ボリビアの情勢は一時的に安定へ向かいつつあるものの、地域差や政治対立が残存しており、完全な収束には至っていない。今後は政府と社会勢力の対話の進展、ならびに経済政策の調整が安定化の鍵を握るといえる。
- [ロシア/モスクワ株式市場が急落]6月22日、ロシア株式市場は急落し、モスクワ取引所指数(IMOEX)は前日比約▲4.2%の2,318ポイントと、2022年9月以来の最大下落を記録した。下落の背景には、地政学的リスクの高まりとロシア中央銀行による利下げ幅が市場予想(0.5%)を下回る0.25%にとどまったことがある。これにより金融緩和期待が後退し、さらにインフレ動向次第で利下げを一時停止する可能性が示唆されたことで、景気減速懸念が強まった。加えて、燃料価格上昇への警戒も投資家心理を悪化させた。さらに、ウクライナからの攻撃リスクを受け、エネルギー大手ガスプロムは2008年以来の安値を更新し、ロスネフチも1日で7.3%下落するなどエネルギー株が大幅安となり、市場全体に売りが波及した。株価指数の長期的下落は15週連続に及び、2008年の世界金融危機期を上回る記録的低迷が続いている。今後は2,300ポイント近辺での反発余地はあるものの、ポジティブ材料に欠ける場合、さらなる下落(2,000ポイント近辺)も想定される。
- [英国/首相辞任]6月22日、英国スターマー首相は辞任すると表明した。スターマー首相は、英政治の混乱に終止符を打つと公約して圧勝した2024年7月の総選挙からわずか2年足らずで退陣となった。
背景には、5月の地方選挙での不振や、政策の度重なる転換、さらには側近の人事などを巡り、党内外からの不満が高まっていたことがある。
次期党首の立候補の受け付けは7月9日に開始し、7月中旬までに締め切られる。選挙になった場合、9月までに新党首が就任する。無投票の場合は、7月中旬までに就任する可能性がある。
次期首相の最有力候補として急浮上しているのが、前マンチェスター市長のアンディ・バーナム氏。同氏は先日の下院補欠選挙で右派政党リフォームUKの候補を大差で破り、下院議員に復帰した。バーナム氏の最大の対抗馬と目されていたウェス・ストリーティング前保健相が早々に立候補を見送り、バーナム氏への支持を表明したことで、実質的な党首選が回避される可能性が高まっている。最短で7月中旬には、バーナム氏が無投票で新しい首相に就任する可能性も高まりつつある。
- [米・イラン協議進展と制裁緩和の始動]6月21日にスイス・ビュルゲンシュトックで行われた米・イラン高官協議は約18時間に及び、両国は6月17日に締結した14項目の了解覚書(MoU)を具体化するための協議を実施した。協議の結果、双方は「60日以内に最終合意に到達するためのロードマップ」で合意し、今後の交渉を監督するハイレベル委員会の設置や、レバノンにおける軍事衝突の再発防止を目的とした「衝突回避調整室」の創設を発表した。また、今後の技術協議を進めるため、制裁緩和、核問題、復興・経済開発、覚書履行監視の4つの作業部会が設置されることとなった。
経済面では、イランのガリバフ国会議長が、米国との間で総額120億ドルの凍結資産解除が最終合意に至ったと説明した。資金は60億ドルずつの2つの枠組みに分けて解除される見通しである。一方、米国側は、解除された資金の用途を監視する技術委員会を設置し、資金が中東各地の親イラン勢力へ流用されることを防ぐ考えを示している。トランプ大統領やバンス副大統領は、これらの資金が米国産の大豆やトウモロコシ、小麦などの購入に充てられるとの見方を示している。
また、米財務省も8月21日まで有効な60日間の制裁免除措置を発表し、イラン産原油の生産、輸送、販売を認めた。これにより、イランは数十年ぶりに米ドル建てで石油を販売できる環境を得ることとなったほか、従来のように制裁リスクを織り込んだ割引価格ではなく、市場価格に近い水準で原油を販売できる可能性が高まる。米国側は、イランがホルムズ海峡における航行の自由を保証し、国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れに向けて前進したと評価しているが、イラン側は今回の協議で核問題に関する新たな約束は行っていないと説明しており、双方の認識にはなお隔たりがみられる。
地域情勢では、ホルムズ海峡の航行が徐々に正常化しつつあり、LNGタンカーや原油タンカーの往来も回復傾向にある。今後の焦点は、スイスで合意した枠組みをどこまで具体化できるかに移っている。特に、ガリバフ国会議長とアラグチ外相はその後オマーンを訪問し、ホルムズ海峡の将来的な管理体制や運航ルールについて協議を開始した。ホルムズ海峡の管理の在り方は、エネルギー輸送や地域安全保障の基盤となる問題であり、今後の米・イラン交渉全体の成否を左右する重要なテーマとして位置付けられている。
- [アンゴラ/原油開発FID]6月22日、イタリア資源大手ENIは、同社のアンゴラ子会社・Azule Energyを通じて、アンゴラ沖で原油を生産する「グレーターPAJプロジェクト」の最終投資決定(FID)を行ったと発表した。2029年までに日量95,000バレルの原油と天然ガスの生産開始を見込む。Azule EnergyはENIと英・資源大手BPが折半出資している会社で、同プロジェクトにはノルウェー・資源大手エクイノールと、アンゴラ国営石油会社・ソナンゴルも参画している。今回のFIDにあわせ、イタリアのエンジニアリング大手サイペムとの設計・製造・工事の契約締結も発表されている。
1960年代から原油生産を行っているアンゴラは、ナイジェリアに次いでサブサハラ・アフリカ第二の産油国である。しかし、油田の老朽化、貯留層の枯渇、新規油田開発への投資の停滞により、原油生産量は2008年前後の日量200万バレルをピークに、現在は100万バレル程度まで半減している。それでも原油はいまだにアンゴラの輸出の約8割を占め(2024年、国連貿易統計)、原油関連収入は歳入の約6割(2025年、IMF)に上る稼ぎ頭だ。
アンゴラは原油開発をより自由に進めていくために2023年に石油輸出機構(OPEC)を脱退。特にAzule Energyは積極的な開発を続けており、2025年にアゴゴ浮体式生産設備(FPSO)を稼働させた。同プロジェクトは最大で日量17万5,000バレルの原油生産を行うもので、ソナンゴルと中国石油化工(シノペック)が参画している。
なお、アンゴラで生産される原油は約半分が中国に輸出されている。2002年まで約30年にわたり内戦が続いたアンゴラは、復興のために当時アフリカへの資源外交を強めていた中国に接近。中国商工銀行らからこれまで総額500億ドル弱の融資を受けており、サブサハラで最も対中債務額が大きい国だ。対中債務は対外債務の約4割を占めている。債務返済には中国への原油売却代金が直接利用されている。輸出で生じた収入はエスクロー口座に預託され、自動的に中国への返済にあてがわれる仕組みだ(通称:アンゴラ・モデル)。これまでの返済により、アンゴラの公的債務(対GDP比)は2020年のピーク時の120%から、2025年には51%まで低下した(IMF)。しかし、政府が公的債務の法定上限としている60%に再び近づいていることから、アンゴラとしては原油生産を拡大させ、対中債務を前倒しで返済していく意向を示している。
- [EU/中国への具体的政策を先送り]6月18日のEU首脳会議では、中国との経済関係が主要議題の一つとなった。背景には、中国の過剰生産能力や補助金政策、人民元相場、レアアース輸出規制などに対する欧州側の不満の高まりがある。フォンデアライエン欧州委員長は、中国からの輸入増加とEUからの輸出停滞により対中貿易赤字が拡大している現状を説明し、加盟国首脳は中国が欧州産業に与える影響について議論した。会議では、中国との対話を継続しつつ、欧州委員会に対し、新たな貿易防衛手段の検討を進める権限を付与することで一致した。具体的には、企業に調達先の多様化を促す「多様化ツール」や、経済的威圧を受けた加盟国・企業を支援する枠組みなどが検討される見通しである。
しかし、会議では新たな関税や輸入規制といった即効性のある措置は打ち出されなかった。EU内では中国への警戒感が着実に高まっており、「中国ショック2.0」と呼ばれる輸出攻勢への危機感も共有されている。一方で、加盟国間には依然として温度差がある。例えば、スペインのサンチェス首相は中国を「潜在的なパートナー」と位置付け、ドイツも中国市場への依存の大きさから慎重姿勢を崩していない。また、EUが中国製EVへの追加関税を導入した後、中国が欧州産食品や酒類に対する調査を行った事例があるように、中国による報復措置への懸念も根強い。このため、多くの加盟国はまず対中依存を低下させた上で対応を強化すべきだと考えており、具体策は欧州委員会による制度設計に委ねられた。
こうした中、ドイツのメルツ首相が「プラザ合意」に言及したことが注目された。メルツ首相は、中国が人民元を実勢より低く維持することで輸出競争力を高めていると主張し、1985年のプラザ合意のような国際協調による為替調整の必要性を示唆した。これに対し、中国側は強く反発した。『環球時報』の英語版である『Global Times』は社説で、欧州産業の苦境は中国ではなく欧州自身の構造問題に起因すると主張し、「新たなプラザ合意は不要だ」と反論した。中国では、プラザ合意は日本の「失われた30年」の出発点とみなされることが多く、「中国版プラザ合意」は避けるべき歴史的教訓として語られている。そのため、中国は人民元問題を利用した圧力には応じないとの立場を、これまでも繰り返し強調してきた。
EUは中国の経済政策をこれまで以上に問題視しているが、具体策は対話と準備の段階にとどまった。一方、中国も欧州との関係維持を望みつつ、過剰生産能力や為替をめぐる批判には強く反発しており、双方の認識の隔たりはむしろ拡大している。7月のEU・中国首脳会談では、こうした緊張関係の下でどのような議論が行われるのかが注目される。
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