- [アルゼンチン/鉱業手続き簡素化]政府は2026年6月24日に、新たな政令(482/2026)を施行し、1993年から続いていた鉱業投資の行政枠組みを全面的に見直し、資本投入から鉱山稼働までの過程で発生する手続きや州レベルの障害を減らす現代的で迅速かつ透明性の高い制度へと変更した。これまでも土地へのアクセス拡大や税制優遇を通じて鉱業投資の呼び込みを進めてきた。大規模投資向けに30年間の税制および為替の安定を提供する「RIGI制度」のような、インセンティブを提示しても、官僚的な手続きがボトルネックとなり、プロジェクトの進行が遅れる点が課題視されていた。
具体的には、輸入手続きの簡素化により、複数の審査プロセスを一本化し、手続きの迅速化を図る。 また、資金繰りの改善にも取り組んだ。鉱山開発は初期の探査段階で多額の投資が必要である一方、収益が発生するまで時間がかかることに対応するため、付加価値税(VAT)の還付を前倒しし、企業のキャッシュフロー負担を軽減する措置が導入された。
さらに、30年間税制を変更しないという税の安定性を担保する仕組みを設けていたが、証明書の取得には1年を要しており、審査を一つの機関に集約することで、大幅な時間短縮を目指す。
今回の改革は、ミレイ大統領は、既存の法律で認められた権限を活用し、議会での審議や採決を経ずに政令として改革を実施した。これにより、議会で過半数を持たない状況でも迅速に政策の実行が可能になる。
アルゼンチンでは、2025年にはリチウムの国家生産能力が年間18万6,000トンに達したが、2035年までに65万8,000トン、輸出額で110億ドルを超えるという野心的な成長軌道を描いている。総合資源企業リオティントがサルタ州で進める25億ドル規模のプロジェクトや、仏エラメット、アルカディウムなどの進出が相次いでおり、2031年までにはチリを抜き南米最大のリチウム輸出国になるとの市場予測もある。銅に関しても大規模銅プロジェクトがサンフアン州などで進行しており、世界有数の銅供給国へと飛躍することを目指している。この実現に向けて、投資の迅速な実行を可能にする狙いがあった。
- [日本/企業向けサービス価格(5月速報値)]6月24日、日本銀行は企業向けサービス価格指数(2020年平均=100)の5月速報値を発表した。企業向けサービス価格指数は、企業間(民間企業のほか公的企業や官公庁も含む)で取引されるサービスの価格動向を示す。
企業向けサービス価格指数は114.7で前年同月比+3.3%と、上昇率は3月から3か月連続で横ばいとなった。
内訳をみると、運輸・郵便は+5.5%と、4月の+5.0%から上昇幅が拡大した。中東情勢の影響を受け、燃料油価格の上昇などから外航貨物輸送(+61.8%、4月:+59.1%)や国際航空貨物輸送(+57.7%、4月:+40.6%)の上昇が引き続き顕著となった。
労働者派遣サービス、宿泊サービス、土木建築サービスなどを含む諸サービスは+2.9%と4月から横ばい。
企業向けサービスを、生産額に占める人件費投入比率の高低で分類した指数をみると、高人件費率サービスは+2.5%と4月から横ばい、低人件費率サービスは+4.4%と4月の+4.1%から上昇率が拡大した。人件費上昇に伴うサービス価格上昇は足踏みとみられる。
調査対象の146品目のうち、前年同月比で価格が上昇したのは117品目、下落したのは11品目、変わらなかったのは18品目となった。
企業向けサービス価格は、企業物価指数(企業間のモノの取引の価格動向)とともに、川下に波及することで今後の消費者物価指数に影響を与えるが、6月10日に日本銀行より発表された国内企業物価指数の5月速報値は+6.3%と、高水準の上昇幅となっている。
- [MSCIによる年次の市場分類見直し結果]6月23日、MSCI(Morgan Stanley Capital International)が年次の市場分類見直し結果を発表した。MSCIは世界の株式指数を算出する主要企業で、同社指数は世界の機関投資家やETFの代表的なベンチマークとして利用されており、分類変更や指数構成見直しはパッシブ投資資金の流出入を通じて市場に影響を与える。同社は各国市場を「先進国」「新興国」「フロンティア」「単独市場」に分類し、市場規模や流動性に加え、外資規制、為替取引、決済制度、情報開示などの市場アクセスを評価する。
2026年市場分類レビューでは、インドネシア、韓国、トルコの課題とギリシャの改善が目立った。インドネシアは新興国市場に分類されているが、株主構造の不透明さや実質的な浮動株把握の難しさなどの課題が指摘されており、11月のレビューで進展がない場合、格下げ検討の可能性が高まる。韓国は先進国入りに向けた観察対象国への追加が今回も見送られた。市場アクセスの課題に関して当局が発表した措置に一定の評価をしつつも、根本的な解決に至っていないと指摘されている。トルコも新興国市場を維持したが、株主構造の透明性不足や一部銘柄における協調的取引の兆候、実質的な浮動株比率の把握の難しさなどが問題視された。一方、ギリシャは市場インフラや制度面の改善が評価され、2027年5月に先進国市場へ復帰予定となっている。
このほか、ブルガリアは単独市場からフロンティア市場へ再分類。バングラデシュは最低価格規制の撤廃が評価されたが、同規制が再導入された場合には格下げが検討される。
インドネシアの株式市場は1月以降、大幅に下落している。MSCIは1月に同国の新興国市場からフロンティア市場への格下げの可能性を警告。格下げの場合、パッシブ投資資金だけで約23億ドルの流出につながると市場では試算されている。今回の審査延期は直ちに資金流出が発生する事態を回避したが、MSCIが問題視する市場の透明性や投資可能性を巡る課題は残されたままだ。韓国についても先進国への格上げ検討が見送られたことで、政府・市場当局が進める市場改革の実効性が改めて問われる形となった。海外投資家にとってMSCIの市場分類は一種の格付のような、各国市場の「投資可能性」を測る指標の一つ。今後もインドネシアや韓国、トルコの制度改革の進展が市場評価を左右しそうだ。
- [ロシア/燃料不足深刻化、輸入検討も浮上]6月23日、ロシアではウクライナによるドローン攻撃の激化を背景に、製油所や燃料流通インフラが打撃を受け、国内燃料不足が深刻化している。精製能力の相当部分が停止に追い込まれたとみられ、政府はガソリンや航空燃料の輸出禁止に加え、ディーゼル輸出制限も検討するなど内需優先の政策を強化している。
プーチン大統領はこの日の政府会合で、首都モスクワ周辺の製油所への攻撃を含むウクライナによる最近の民間インフラへの攻撃について初めて言及し、ウクライナによる同国社会の不安定化を狙ったものとの認識を示し、影響を緩和するため追加対策を講じるよう指示した。
ノバク副首相は燃料市場を「容易ではないがコントロール下にある」と評価し、製油所の修繕、物流制約、夏季需要の増加を不足の主因として挙げた。また、同副首相は燃料輸入も選択肢の一つとして検討している。ロシア石油大手ロスネフチ社のイーゴリ・セーチンCEOは、同社給油所では供給制限はないとし、「過度な混乱を煽(あお)るべきでない」と市場の過熱抑制を訴えている。
しかし、同国では購入制限や給油所での行列など供給不安が広がり、特にクリミアなど前線周辺で影響が顕著となっている。今回の事態はインフラ攻撃の有効性を示すとともに、物流コスト上昇や供給制約を通じて同国経済の下押し要因となる可能性が高い。
- [アフリカ・中国/人民元建て返済]6月23日、米・William & Mary大学のAid Dataは、ケニアが2025年10月に対中債務の返済をドル建てから人民元建てへの切り替えに合意したことにより、債務負担が約3.9億ドル減少したとの分析結果を発表した。
同債務は、中国輸出入銀行がケニアのモンバサ~ナイロビを結ぶ標準軌鉄道(SGR)建設向けに、2014~15年に3件の融資(総額49億ドル)を行ったものを指す。当時の返済条件はすべてドル建てのバイヤーズ・クレジットで、LIBOR(現在は担保付翌日物調達金利:SOFRに切り替え)を基準とした変動金利に、3%程度のマージンを上乗せしたものだった。しかし、Aid Dataによると、融資契約が締結された当時はベンチマーク金利が低水準にあったものの、その後、世界的な金利上昇を受けてSOFRが上昇したことにより、借入に占める利払いのコストが3%から7%に増加。これがケニアの対中債務の負担増につながったと評価している。
さらにAid Dataは最近ケニア政府が公表した中国との返済条件の内容を分析したところ、債務負担の軽減は、人民元建てへの切り替え以上に、マージンの撤廃と、返済猶予期間の設定(2026~29年)、返済期間の2040年までの延長といった債務再編による効果の方がはるかに大きいことを明らかにした。人民元建てへの切り替えによって、変動金利はSOFRから、中国人民銀行が設定した最優遇貸出金利の指標であるローンプライムレート(以下、LPR、期間1年の金利は3.00%)が適用されるが、連銀発表のSOFRの平均金利(6月21日時点で3.61%)と大きく乖離していないため、節減額は2,360万ドル(節減額全体の6%)に留まったと指摘。むしろその他の債務再編内容が節減額の94%を占めることから、人民元建てへの切り替えよりも中国との債務返済の交渉内容自体が重要であることを示唆する結果を示した。
中国は人民元の国際的な流通を後押しするために、新興国に対して人民元建て融資の推奨や義務化などを進める動きがみられる。しかし、Aid Dataは米ドル建てに比べて顕著な節減効果はないこと、また、人民元建て返済に必要な人民元の確保が依然としてドルの調達より難しいこと、そして自国通貨が人民元に対して下落した場合の為替リスクなどを指摘している。
- [インドネシア/ジャワ島における計画停電]6月22日、国営電力公社PLNのダルマワン社長は、前週からジャワ島各地にて発生していた計画停電に関して謝罪すると共に、今後は計画停電の頻度を最小限にとどめる予定であると発表した。
エネルギー・鉱物資源省(ESDM)のバフリル大臣やPLNのダルマワン社長は、独立系発電事業者(IPP)などが所有・運営する複数の大型発電所で技術的な問題が発生したために発電出力が低下したことを停電の理由に挙げている。他方で実際には、インドネシア政府が採用している石炭の国内供給義務(DMO)や石炭の年間生産量上限の引き下げが、石炭採掘事業者からPLNへの中カロリー炭の供給減少につながっていることが影響していると指摘されている。
インドネシアでは、石炭採掘事業者に対して、石炭生産量のうち最低でも25%を国内に供給することが義務付けられている。特にPLNに対しては、1トン当たり70ドルを上限価格として販売することが決められている。足元では?土比が高くなっていることも受け、採掘コストが上昇しているため、採掘事業者にとってPLN向け販売のマージンが薄くなっている。加えて、イラン情勢による世界的な石炭回帰も受けて石炭の市況価格は足元で上昇しているため(指標価格(HBA)は1トン当たり84.5ドル(中カロリー炭))、採掘事業者としては国内供給よりも輸出を優先する傾向にある。仮に国内に供給する場合も、金属精錬会社向けに販売する場合はPLN向けと異なり上限価格が定まっていないため、市況価格にて販売できる。そのため、PLN向け販売が劣後されやすい。このように、石炭採掘事業者にとりPLN向け販売の経済性が大きく低下したことが一因となっている。
これに加えて、政府が年初に実施した年間生産枠削減も影響していると考えられる。政府は2026年1月、今年の石炭生産量を前年から24%減らし6億トンに制限すると発表した。国際市況価格が低迷するなかで、減産により価格を引き上げることが狙いとみられる。一部報道によると、大手採掘事業者の中には50~75%の減産を求められたもよう(NNA Asia、6月22日付記事)。これを受けて採掘事業者が生産量を減らしたことも、今回の停電に繋がったと考えられる。なおPLNは年間約1億5,400万トンの石炭を必要としているが、現時点では約1億3,400万トン分しか供給契約を確保できておらず、2,000万トン分の供給ギャップが生じている。
- [中国財政、増収と歳出抑制]2026年1~5月の中国財政は、増収と歳出抑制という対照的な動きを示した。一般公共予算収入は前年同期比4.0%増の10兆元と初めて大台を超え、税収も4.4%増の8.3兆元と堅調であった。背景には、AIや新エネルギー関連産業の拡大、原油価格の持ち直し、株式市場の活況がある。増値税は6.2%増、証券取引印紙税も大幅に増加し、個人所得税も高い伸びを維持した。
ただし、税収増は経済全体の回復を必ずしも示すわけではない。消費税は減少したほか、企業所得税の伸びも限定的であり、家計消費や企業収益の弱さが示されている。不動産関連税収も低迷が続くなど、増収は一部産業や金融市場に依拠している。
一方、歳出は抑制され、一般公共予算支出は前年比0.8%増にとどまった。広義の財政赤字も縮小しており、政府は景気下支えよりも財政規律を重視しているとみられる。背景には、地方政府の「隠れ債務」処理があり、インフラ支出も減少傾向にある。
さらに、不動産不況により土地売却収入は大幅減が続いており、地方財政の制約となっている。特別国債などで一定の補完はなされているが、構造的な依存は解消されていない。
中国経済は先端産業や輸出が支える一方、内需と地方財政の弱さが続いている。政府は大規模な刺激策を回避し、債務整理を優先しているが、歳出抑制が長期化すれば内需回復の遅れにつながる可能性がある。今後はインフラ投資の効果が注目される。
Pick up
2026年06月24日
調査レポート
- 調査レポート 2026年06月18日
- 川上の物価上昇のすそ野の広がり
- コラム 2026年06月17日
- 右に揺れ戻る中南米とその限界
- 調査レポート 2026年06月12日
- 「トランプ大統領、アラブ・イ...
- コラム 2026年06月11日
- AIは意識や感情を持っている...
What's New
- 2026年06月24日 調査レポート
- 年内利上げ観測が高まる米国経済
- 2026年06月23日 統計・グラフ集
- 「マクロ経済指標グラフ」を更新しました
- 2026年06月18日 調査レポート
- 川上の物価上昇のすそ野の広がり
- 2026年06月17日 コラム
- 右に揺れ戻る中南米とその限界
- 2026年06月12日 調査レポート
- 「トランプ大統領、アラブ・イスラム諸国にアブラハム合意への参加を要請」 中東フラッシュレポート(2026年5月後半号)
- 2026年06月24日 調査レポート
- 年内利上げ観測が高まる米国経済
- 2026年06月23日 統計・グラフ集
- 「マクロ経済指標グラフ」を更新しました
- 2026年06月18日 調査レポート
- 川上の物価上昇のすそ野の広がり
- 2026年06月17日 コラム
- 右に揺れ戻る中南米とその限界
- 2026年06月12日 調査レポート
- 「トランプ大統領、アラブ・イスラム諸国にアブラハム合意への参加を要請」 中東フラッシュレポート(2026年5月後半号)
- 2025年06月06日 中東・アフリカ
- マプト/モザンビーク ~独立50周年を迎え飛躍を期す~
- 2025年05月08日 アジア・オセアニア
- ソウル/韓国 ~日韓国交正常化60周年を迎えたソウルの今~
- 2025年04月11日 欧州・CIS
- オスロ/ノルウェー ~ノルウェーから「幸福」「平和」を考える~
- 2025年02月25日 アジア・オセアニア
- オークランド/ニュージーランド ~ニュージーランドとマオリ:最新の政治動向~
- 2025年02月05日 中東・アフリカ
- ダルエスサラーム/タンザニア ~「ポレポレ」(のんびり・ゆったり)の豊かな国~
SCGRランキング
- 2026年6月23日(火)
ラジオNIKKEI第1『マーケット・トレンドDX』に、当社経済部長 本間 隆行が出演しました。 - 2026年6月16日(火)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2026年6月15日(月)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社経済部長 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2026年6月15日(月)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社経済部長 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2026年6月1日(月)
『Bloomberg News』に、当社チーフエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。
6月17日にかけて開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で公表された経済見通しによると、FOMC参加者は2026年内に1回の利上げが実施されると予想している。3月時点では1回利下げであり、金融政策の方向が変わった。利下げを求めるトランプ大統領... 