- [ケニア/GDP・経済見通し]7月10日、ケニア国家統計庁(KNBS)は、2026年第1四半期(1月~3月)の実質GDP成長率は5.3%だったと発表した。前期の4.9%成長を上回った。GDPの約28%を占める農業は、茶、サトウキビ、乳牛の生産が好調だったことにより前期の▲1.3%から4.9%のプラス成長に転じた。干ばつからの回復が主な要因だった。GDPの約7%を占める製造業は4.4%成長で、食品加工や自動車(期中に約4,000台の完成車を生産)・セメント生産などがけん引した。最大の伸び率を記録したセクターは宿泊・飲食サービスの14.7%で、外国人観光客数が前期比で13%増加したことが主な要因となった。 他方で、中東紛争による燃料価格の高騰やサプライチェーンの混乱による経済への影響が本格的に反映されるのは第2四半期(4~6月)以降とみられる。7月9日、世界銀行は「ケニア経済アップデート」を発表し、2026年の実質GDP成長率を中東紛争前の予測の4.9%から、4.3%に下方修正した。ケニア政府はインフレ抑制のために燃料税の引き下げ(16%→8%)を10月まで延長することを決定したが、世銀はインフレ率が中銀の目標値である5%を上回るとの見方を示している。ケニア中銀は6月に政策金利を8.75%に維持したが、今後利上げに踏み切れば、GDPの約3/4を占める民間消費を鈍らせ、経済を押し下げる可能性がある。世銀はケニアの銀行セクターは強固な流動性に支えられ、概ね安定しており、総不良債権の比率が3月に15.6%まで低下したことを評価。しかし、民間銀行の政府証券(主に国債)へのエクスポージャーは銀行の総資産の約3割に達するほど高いと指摘。政府の対外借入の制約により、国内債務は総債務の55%を占めるほど依存度が高まっており、公的債務は対GDP比で7割に達している点に懸念を示した。世銀は投資意欲を弱める恐れがある民間セクターへの税率引き上げに依存せず、税務行政の改善、課税ベースの拡大を図るとともに、歳出面では公共支出管理の改善や公務員賃金の抑制を通じて財政規律を正すべきだとの見解を示した。 ケニア政府が大胆な歳入拡大に踏み切れない背景には、国民からの反発・暴動を防ぎたい意図がある。一方で、2027年8月の大統領選で再選を目指すウィリアム・ルト大統領は、国債の発行や国家資産の売却、インフラ基金(NIF)をはじめとするソブリンウェルスファンドの設立などを通じてインフラ支出を拡大させ、有権者の支持拡大につなげたい考えだ。
- [インド/半導体支援策]7月15日、インド政府は半導体産業向け支援策「Semicon 2.0」を発表した。 2021年に開始された半導体支援策「インド半導体ミッション(ISM 1.0)」は、主に半導体製造工場(ファブ)や組み立て・テスト(ATMP/OSAT)工場の誘致と補助金に焦点を当てていた。具体的には、中央政府・州政府が半導体事業のプロジェクト費用の一部を補助することで外資による半導体関連投資の誘致を促進してきた。例えば2023年6月に、米マイクロンテクノロジーはグジャラート州サナンド工業団地に、DRAMとNAND両製品の組み立てとテストの工場を建設することを発表したが、同プロジェクトについては中央政府が総事業費の50%、グジャラート州政府が20%の補助金を支給することを決定している(補助金の総額は19.3億ドル)。他方で、半導体製造装置や特殊化学物質を含めた原材料、知的財産(IP)など半導体の上流工程については、輸入依存が継続していた。特に中国に対する輸入依存度が高く、例えば半導体製造装置(HSコード:8486)については、輸入の約7割を中国に依存している。これまで、中国政府がインドに対してボウリング用機械などの工作機械やレアアースなど、製造業に不可欠な製品や原材料などの輸出制限を実施したことで、インド政府の中では中国への輸入依存度の高さを問題視する声も増えていた。また、製造業の高付加価値化を進めるうえでも、設計や材料など付加価値の高い上流工程を国内に取り込むことが重要視されてきた。 今回の支援策の総予算は1兆3,000億ルピー(約2.1兆円)。ファブの増設などISM 1.0と同様の政策に加え、国産チップの設計を行うスタートアップ・中小企業に対して研究開発費用向け補助として1社あたり最大約1億5,000万ルピーを付与するなど、国内での設計を支援するほか、製造装置、特殊化学物質などの原材料の国内生産を支援する。更には国内発2ナノ半導体の開発に向けて国内外の研究機関と連携することも打ち出されている。これにより、政府は上流工程分野での輸入依存度を低下させることを狙っていると考える。
- [中国/2026世界人工知能大会]7月17~20日に上海で開催される「2026世界人工知能大会・人工知能グローバルガバナンスハイレベル会議」には、習近平国家主席が初めて出席し、基調講演を行う予定である。2018年の創設時には、開幕演説は上海市党委員会書記(李強氏、陳吉寧氏ら)が行っていたが、2024年と2025年には李強氏が首相として登壇し、今年は最高指導者である習近平氏の出席へと格上げされた。AIが中国にとって経済成長を支える新たな生産力であるだけでなく、国家安全保障や国際競争、国際ルール形成に関わる重要な戦略分野として位置付けられていることを示している。 中国は、「AIは人類共通の公共財であり、開放、共有、包摂を原則とすべきだ」と主張している。中国は「グローバルAIガバナンス・イニシアチブ」を提唱し、AIを覇権追求の手段とすること、技術を独占すること、排他的な「小さなサークル」を形成することに反対し、国連を中心とした多国間ルール形成や発展途上国への能力構築支援を重視すべきとしている。また、AI分野では「石油思考」(技術や計算資源を囲い込む考え方)ではなく、「水流思考」(技術を共有し相互利益を実現する考え方)を採用すべきだと主張し、AIを誰もが利用できる国際公共財として発展させることを目指すとしている。 一方で、こうした公式の主張の裏側には、複数の戦略的意図があるとの見方もある。まず、米国による先端半導体やAIチップ、製造装置などに対する輸出規制を「技術封鎖」と位置付け、その正当性に対する国際的な支持を弱めようとする意図があると指摘されている。また、ルール形成の主たる舞台をG7や民主主義国中心の枠組みではなく、より多くの発展途上国が参加する国連へと移すことで、自国の発言力拡大を図る狙いもあるとみられる。さらに、「スマート格差」の是正や能力構築支援を掲げることで、グローバルサウスとの連携を強化し、中国製AIモデルやクラウドサービス、デジタルインフラの普及を後押しする意図もあると考えられる。こうした点を踏まえると、中国は「AIは公共財」との理念を掲げる一方で、国際的なAIルール形成や技術普及の分野における自国の影響力拡大を志向しているとみられる。
- [ブラジル/米国による301条関税措置]米国通商代表部(USTR)による、通商法301条に基づくブラジルへの調査の、法定期限が、2026年7月15日に到来した。 USTRはブラジルの6分野における政策や慣行が不合理であり、米国商取引に負担を与えていると判断した。対象となったのは、デジタル貿易・電子決済サービス、メキシコおよびインドへの優遇関税措置、反汚職政策の執行、知的財産権保護、エタノール市場へのアクセス、違法森林伐採となっている。 なかでも電子決済分野は、ブラジル中央銀行が運営する即時決済システム「Pix」について、USTRは国内市場で優位な立場を与えられ、米国企業との競争を歪めている可能性があると指摘した。 米国が現在検討している主な対抗措置は、ブラジル製品に対する追加25%関税である。ただし、対象外となる品目も多い。公表された除外リストには、コーヒー、牛肉、オレンジジュース、鉄鉱石、石油関連製品、民間航空機部品などが含まれており、対象外となる関税分類は1,600品目以上に及ぶ。このため、ブラジルから米国への輸出全体の約半分は追加関税の直接的な影響を受けないとみられる。 それでも、ブラジル全国工業連盟(CNI)は、今回の25%追加関税が約4,200品目、約150億ドル相当の対米輸出に影響すると試算している。この場合、企業が負担する追加コストは年間約37億5,000万ドルに達する。 しかし、実際にはブラジル企業の対米事業への影響はすでに表れ始めている。2026年上半期のブラジルによる米国向け輸出額は174億ドルとなり、前年同期比で13%減少した。ブラジル輸出全体に占める米国の割合も12.1%から9.4%へ低下し、1997年以降で最低水準となった。その一方で、中国向け輸出比率は28.9%から31.5%へ上昇している。 特に製造業への影響は大きい。米国向け工業製品輸出は半年間で10億ドル以上減少したが、ブラジル全体の輸出額は同期間に約12%増加しており、輸出先の多様化が進んでいることがうかがえる。 市場では、既に一定程度の織り込みが進んでおり、短期的な影響は限定的とみられるが、中長期的には、対米輸出の縮小がブラジル企業のアジア市場への依存をさらに強め、国内の雇用、投資、生産拠点の配置にも影響を与える可能性がある。
- [日本/機械受注統計(5月)]7月15日、内閣府は5月の機械受注統計調査を発表した。機械等製造業者の受注した設備用機械類について、毎月の受注実績を調査しているもの。民間設備投資の先行指標とされる船舶と電力除く民需(季節調整済み)は9,620億円で前月比▲12.4%と、2か月ぶりのマイナスとなった。 3か月移動平均も前月比▲4.8%のマイナス。基調判断について、5月の減少は4月に+8.7%と増加した後の単月の動きであるとし、「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。 5月の受注総額は4兆4,222億円で前月比+9.5%と3か月連続で増加した。 船舶・電力を除く民需の内訳を需要者別にみると、製造業は4,372億円で▲14.9%、非製造業(船舶・電力除く)は5,169億円で▲9.3%と、どちらも2か月ぶりのマイナスとなった。業種別にみると、製造業では、造船業で▲80.5%(4月+160.7%の反動減)、情報通信機械で▲23.6%と減少し、非鉄金属で+19.5%、化学工業で+19.2%と増加した。非製造業では、鉱業・採石業・砂利採取業で+20.7%と増加、不動産業で▲69.3%、農林漁業で▲24.2%、運輸業・郵便業で▲23.3%と減少した。 なお、そのほかの需要者として、官公需は4月▲0.9%、5月▲5.0%(防衛省▲55.7%、運輸業▲84.6%)。外需は4月▲8.6%、5月▲4.4%。最終需要者が不明な代理店経由の受注は4月+1.4%、5月▲5.8%となった。 船舶・電力を除く民需の5月のマイナス(▲12.4%)は4月のプラス(+8.7%)の反動減と考えられる。5月21日に公表された2026年4~6月の四半期の受注見通しでは、前期比+0.3%と小幅増が予想されており、プラスとなれば2025年10~12月から前期比プラスが続く見通し。ただし、この見通しどおりになるには6月は+10%程度増加する必要がある。6月の日銀短観でも今年度の企業の設備投資意欲は底堅いことが示されているが、中東情勢の先行きの不透明感も払拭できておらず、設備投資の実施が遅れる可能性がある。
- [米国/ベージュブック]連邦準備理事会(FRB)は15日、「地区連銀経済報告(ベージュブック)」を公表した。これは、7月6日までの情報に基づくもので、7月28~29日の連邦公開市場委員会(FOMC)の検討資料になる。 5月から6月にかけての経済活動は、12地区中11地区で小幅から緩やかなペースで拡大した。サンフランシスコ地区はほとんど変わらなかった。前回5月時点に比べると、成長ペースは前回にかなり近いとされ、小幅な上方修正にとどまった。 個人消費は、燃料など価格の上昇とともに、増加した。ただし、燃料以外の他の商品項目、特に裁量的な支出が減少し、より手頃な価格の商品への切り替えが見られた。消費者が値上げに敏感になっているためだ。自動車販売はほとんど変わらず、修理依頼が増加しており、自動車を長く乗り続けるようになっている。観光ではW杯の観客が増加したものの、個人消費全体ではあまり強さは見られなかった。 製造業の生産は大半の地区で、緩慢から緩やかに拡大した。データセンターや一般機械、防衛部門などからの受注が増加していた。ただし、複数の地区では、供給網の問題がより頻繁に見られた。建設・不動産活動は小幅に拡大した。複数の地区でデータセンター建設の増加が指摘された。 今後も経済活動の拡大が続くと予想されている。しかし、複数の地区から、燃料費見通しの不確実性の高まりが指摘されており、依然として経済の重石になっている様子がうかがえた。 労働市場において、雇用は増加している。5地区で緩慢、緩やか、堅調に増加、7地区でほとんど変わらなかった。賃金上昇は大半の地区で緩慢から緩やかだった。2~3地区の企業は、採用や候補者の選考、従業員の生産性向上のためにAI活用を広げていた。 物価は緩やかに上昇している。9地区で緩やか、2地区で堅調、1地区で小幅な上昇だった。多くの産業で、労働以外の費用が上昇している。エネルギーや輸送、原材料価格の上昇について、中東戦争や関税の影響が大きかった。販売価格が投入費用よりも上昇しておらず、利益が圧縮されたと報告された。今後も現状のペース、もしくは燃料費の低下により減速するものの、物価上昇は継続すると予想された。
- [ウクライナ/新首相指名]7月15日、ウクライナのゼレンスキー大統領は大規模な内閣改造に着手し、辞任したスビリデンコ首相の後任として、国営?エネルギー会社ナフトガスのセルヒー・コレツキー最高経営責任者(CEO)を支持すると表明した。コレツキー氏は政治色の薄い実務家として評価が高く、ロシアによるインフラ攻撃が続く中でもエネルギー供給の維持に貢献したとされる。議会は所定の手続きに従い、近く同氏の首相任命案を審議する見通しである。 一方、今回の人事で最も注目されたのは、人気の高かったミハイロ・フェドロフ国防相の解任である。35歳のフェドロフ氏は「ドローン軍」構想やAI活用、防衛調達のデジタル化を主導し、ウクライナの防衛産業近代化の象徴的存在だった。また、防衛調達の透明化や汚職対策を進めたことで国内外から高い評価を受けていた。 解任の背景としては、既存の軍・官僚組織との摩擦に加え、シルスキー軍総司令官との戦略・調達を巡る対立が指摘されている。また、フェドロフ氏の高い人気や将来的な政治的影響力を警戒する見方もあり、政権内の力学が作用した可能性がある。 2026年7月の内閣改造は、戦争が4年目に入る中で政策転換を図るものというより、政権中枢の再配置と統治体制の引き締めを目的とした人事とみられる。コレツキー氏の起用は「改革派スター政治家」よりも安定した実務型人材を重視する姿勢を示しており、ゼレンスキー政権が長期戦を見据え、統制力と政策遂行能力の強化を優先していることを示唆している。実際、閣僚候補には大統領に近い人物が相次いで起用される見込みであり、戦時体制下での政権運営の一元化を進める狙いがうかがえる。
- [EU/対露制裁]EU内では、第21次対露制裁パッケージに関する調整が行われているが、交渉は難航しており、7月15日(現地時間)時点で、加盟国は3日連続で合意形成に失敗。最大の焦点だったロシア産原油の価格上限(プライスキャップ)の自動調整メカニズムによる上限引き上げの可能性については、7月23日まで一時的に1バレルあたり44.10ドルに据え置くことでEUは合意。現在、イラン情勢の影響で原油価格が上昇しているため、上限額が自動的に引き上げられるリスクがある。 EUの制裁決定には27加盟国の全会一致が必要不可欠。現在、オーストリアとギリシャが交渉の障壁となっている。オーストリアは、同国のライファイゼン銀行のロシア事業が違法に収用されたこと(約24.4億ユーロ相当)への補償として、オーストリア国内で凍結されているロシアのオリガルヒ所有の資産21億ユーロを没収・売却することを要求。一方ギリシャは、2025年10月に合意されたロシア産LNG(液化天然ガス)の取引制限について懸念を示しているとのことで、いまだ妥協案が見出されていない。 第21次パッケージ自体は強力な内容を含んでいる。ロシアの戦争支援に関与した250人の新たな個人の指定や、石油密輸に関わる銀行および船舶への追加制裁が盛り込まれている。ただし各国の同意を取り付けるための妥協案として、当初予定されていたロシア産魚類の輸入禁止措置や、元ロシア軍関係者へのビザ発給制限の緩和などについては交渉を経る中で制裁対象から除外されている。今後は、7月22日、議長国であるアイルランドは再度大使級会議を招集し、合意を目指す予定。
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