- [中国/タングステン規制が半導体材料供給に影響]中国によるタングステン輸出規制が、半導体材料の供給網に新たな影響を及ぼしているとの懸念が広がっている。台湾メディアなどによれば、中国から高純度タングステン粉末の供給が滞ったことで、日本の関東電化工業やセントラル硝子が生産する半導体用特殊ガス「六フッ化タングステン(WF6)」の供給が逼迫している。WF6は、NANDフラッシュメモリーやHBM(高帯域幅メモリー)、先端ロジック半導体の製造工程で用いられる重要材料であり、TSMC、サムスン電子、SKハイニックスなど、主要半導体メーカーが使用している。
WF6の製造コストの6~7割は高純度タングステン粉末が占める。日本企業は長年にわたり中国産原料に依存してきたため、中国の輸出管理強化の影響を受けやすい構造にある。実際、中国税関統計などでは、日本向けタングステン輸出が大幅に減少し、一部品目では事実上ゼロとなったとの報道も見られる。
もっとも、中国のタングステン輸出減少は日本に限られた現象ではない。業界統計では、2025年以降、中国のタングステン製品全体の輸出量も大きく落ち込んでおり、世界市場全体に影響が及んでいる。一方、日本向けの落ち込みは特に大きく、政治・安全保障上の要因が運用面に影響している可能性も指摘されている。
WF6を製造する企業は中国国内にも存在しており、日本企業の生産縮小が長期化すれば、中国企業がその空白を将来的に埋める可能性がある。現時点では、韓国のSKスペシャルティや欧米メーカーもWF6の有力な供給元であり、半導体メーカーが直ちに中国製へ切り替える状況にはない。しかし、中国がタングステン原料を基盤としつつ、自国内でWF6など高付加価値材料の生産能力を拡大すれば、レアアースから磁石、リチウムから電池材料へと進んだ事例と同様に、半導体材料分野においても、バリューチェーン下流工程での中国の影響力が高まる可能性がある。
- [コロンビア/大統領選]コロンビアで行われた大統領選挙の決選投票において、右派ポピュリストのアベラルド・デ・ラ・エスプリエラ氏が勝利した可能性が高いと報じられている。これにより、同国で進んでいた左派政治の流れは一旦止まることになる。
デ・ラ・エスプリエラ氏は元刑事弁護士であり、治安悪化への対策として巨大刑務所を建設するなどの強硬策を掲げてきた。開票率99.70%の段階で約49.65%の票を獲得し、左派前大統領グスタボ・ペトロの路線を継承するイバン・セペダの48.71%を上回った。ただし、最終的な法的確定は、選挙当局による票の精査や異議申し立ての審査を経て発表される。
大統領就任は8月7日で、任期は4年となる。一方、敗れたセペダ氏は、約3万3,000の投票箱について不正の可能性があるとして異議を申し立てており、現職のペトロ大統領も選挙の公正性に疑問を呈し、国内の分断や外国の干渉を指摘して国民に冷静な対応を呼びかけている。
デ・ラ・エスプリエラ氏は米国市民権も持っており、トランプ大統領の支持も受けている。また、エルサルバドルのナイブ・ブケレ大統領やアルゼンチンのミレイ大統領のようなカリスマ性のある右派政治家をモデルとしていると言われる。政策面では、資源開発の規制緩和やフラッキングの解禁、米国との関係改善を掲げている。
副大統領候補のレストレポ氏は、財政規律を重視し、無駄な支出や官僚機構の肥大化を抑制することで経済成長を目指すと説明している。しかし、デ・ラ・エスプリエラは政治経験がなく、議会も分裂状態であるため、政策実現には他党との連携が不可欠とみられる。
さらに、ペトロ大統領の支持基盤である貧困層や都市部の一部からは強い反発が予想される。近年、コロンビアでは不平等に対する抗議運動が発生し、社会の分断が深まってきた経緯がある。
安全保障も最大の争点の一つである。2016年に政府と反政府勢力コロンビア革命軍(FARC)が和平合意を結んだ後も、農村部では暴力や麻薬生産が再び増加している。デ・ラ・エスプリエラ氏は軍の投入による強硬対応を主張する一方、セペダ氏は対話による解決を志向していた。
選挙の結果は、治安強化を重視する国民の意識を反映したものといえるが、国内の分断や政治的対立は依然として大きい。新政権が安定した統治を実現できるかどうかは、今後の政治運営と社会統合の手腕にかかっている。
- [日本/消費者物価指数(5月)]6月19日、総務省は5月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)を発表した。総合指数は113.5で前年同月比+1.5%となった。変動の大きい生鮮食品を除く総合(コアCPI)は113.0で+1.4%と、上昇幅は4月から横ばいで、2026年2月から4か月連続の1%台。プラスは2021年9月から57か月連続。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は112.0で+1.8%となった。
生鮮食品を除く食料は+3.5%と、4月の+4.1%から上昇幅が縮小した。コメ類が▲4.9%と、2022年11月以来3年6か月ぶりに下落したことなどによる。そのほか、カカオ豆高騰によりチョコレートが+25.8%。コーヒー豆の+37.9%などにより飲料は+8.7%上昇した。豚肉(国産品)は+4.8%。
2025年12月のガソリンの旧暫定税率廃止などもあり、エネルギー価格は▲2.5%。ガソリンは▲7.0%、電気代は▲2.4%、都市ガス代は▲4.1%、それぞれ低下した。
東京都による水道基本料金無償化(東京都区部の5月中旬速報の水道料▲34.6%)の影響もあり、水道料は▲4.7%となった。
そのほか、携帯電話の通信料は+11.0%。インバウンドの影響もあり、宿泊料は+4.8%。私立高校の授業料は、無償化の影響にて▲68.8%となった。
- [ウズベキスタン・タシケント/国際投資フォーラム]6月16~18日に開催された第5回タシケント国際投資フォーラム(TIIF)では、総額431億ドル規模の166件の投資協定が締結され、ウズベキスタンの投資誘致が実行段階へ移行したことが明確となった。フォーラムには102か国から約1万400人(外国人3,802人)が参加し、政府代表団も大幅に増加するなどにより国際的関与が加速している。実体経済関連企業の参加拡大(参加企業資産約42兆ドル)に加え、インフラ・エネルギー・輸送連結性など実務分野での案件形成が進展した点が特徴である。
加えて、ミルジヨエフ大統領は同フォーラムにおいて、外国投資誘致強化の新ロードマップを提示し、英米法ベースの特別制度を採用する国際金融センター創設を柱に据えた。法人税・VAT・関税の長期免除などの優遇措置により参入障壁を低減し、法的保護、資本市場整備、産業育成等6分野で改革を推進する方針である。近年、対内直接投資は累計1,500億ドル超、直近5年で1,230億ドルに達し、2025年の成長率は7.7%と高水準を維持、外貨準備も700億ドル超へ拡大した。これらは同国が制度改革を通じ、国際資本を取り込む「実行型投資拠点」へと転換しつつあることを示唆する。
- [スイス/脱原発政策]2026年6月18日、スイス連邦議会は、新規の原子力発電所建設を禁止する措置を撤廃し、建設を容認する政府案を承認した。この新規建設の禁止措置は、2011年の福島第一原発事故を契機に議論が始まり、反原発派が勝利した2017年の国民投票を経て設けられたものである。
政府が2024年から禁止措置の撤回を推進してきた背景には、2050年までの温室効果ガス「ネットゼロ」達成に向けた、国内の低炭素電力の需要増加がある。さらに、米国とイスラエルによるイラン攻撃や、ロシアによるウクライナ侵攻といった国際情勢に伴うエネルギー不足の懸念、冬季における電力輸入への依存なども理由として挙げられる。同国エネルギー相は、長期的なエネルギー供給を確保するために原発の選択肢を残す必要性を強調しており、政府案では新規原発を再生可能エネルギーが不十分な場合の「保険」と位置づけている。なお、新規建設の認可は資金調達が確保された場合にのみ付与される。
議会では中道および右派がこの方針を支持した一方、左派は反対。緑の党は、この決定が再生可能エネルギーの発展や気候保護を妨害するものだと反発し、新法公布から100日以内に5万人の署名を集め、国民投票の実施を求めていくと表明した。
2026年6月時点で、スイスでは20世紀に建設された4基の原子炉が稼働中である。
- [米イラン高官協議の開始]6月21日、スイス中部ビュルゲンシュトックで、米国とイランの交渉団が戦闘終結に向けた協議を行った。6月17日に戦闘終結に向けた覚書が米・イラン両大統領によって締結されて以降、両国高官による本格協議は初めてであり、4月にパキスタン・イスラマバードで行われた交渉以来、約2か月ぶりの公式協議となった。
協議には、米国からバンス副大統領、ウィトコフ中東担当特使、トランプ大統領の娘婿であるクシュナー氏が、イランからはガリバフ国会議長とアラグチ外相が参加した。また、仲介役としてカタールのムハンマド首相兼外相、パキスタンのシャリフ首相やムニール陸軍元帥らも加わった。冒頭の写真撮影や開会挨拶にはイラン側が出席を拒否するなど、協議は当初から緊張感を伴うものとなった。
主な議題は、覚書の履行、レバノンでの停戦維持、ホルムズ海峡の安全航行の確保、イランの凍結資産解除、石油輸出再開などであった。イラン側は、覚書第13項に基づき、核問題に関する本格協議に入る前に、米国がレバノン停戦の履行や経済制裁の緩和などを先行して実施する必要があると主張した。
協議中、トランプ大統領が自身のSNSで、イランが代理勢力であるヒズボラを抑制しなければ再び軍事攻撃を行うと警告したため、イラン側は強く反発した。一時は協議が中断し、イラン代表団が交渉への復帰を拒否したとの報道もあったが、米国側はイラン代表団が会場にとどまり、協議は継続していると説明した。
6月22日未明まで続いた協議の結果、米国とイランは60日以内の最終合意を目指すロードマップで合意し、今後も技術協議を継続する方針を確認した。また、22日に仲介国のパキスタンとカタールが発表した共同声明では、レバノンにおける軍事衝突の再発防止に向け、関係当事者間で「衝突回避調整室」を設置することで合意したことが明らかにされた。今回の初回協議では、核開発問題そのものよりも、レバノン情勢、ホルムズ海峡、制裁緩和など、覚書履行に関わる実務的課題が中心的な議題となった。
- [エチオピア/選挙で与党大勝]6月21日、エチオピア国家選挙管理委員会(NEBE)は6月1日に実施された総選挙の結果を発表した。人民代表院(下院)の486議席のうち、与党「繁栄党(PP)」が438議席を獲得し、圧勝した。野党「社会主義を求めるエチオピア市民(エゼマ)」は13議席を確保。「アムハラ国民運動(NAMA)」が6議席、無所属候補が8議席を獲得した。投票率は94%だったと報じられている。
エチオピアの下院の議席定数は547(選挙区数と一致)だが、連邦政府との対立を深める北部ティグライ州の38選挙区に加え、民族主義武装組織「ファノ」が連邦軍との戦闘を継続しているアムハラ州の8つの選挙区で選挙が実施されなかった。また、選挙が実施された選挙区でも、治安上の懸念から143の投票所で投票が行われなかった。NEBEは15の選挙区において深刻な不正があったとし、再投票に向けた手続きを進めている。
今回の選挙では、アビィ首相が2018年に結党したPPの地滑り的勝利が広く予想されていた。PPは前回2021年の選挙でも410議席を得て圧勝していた。アビィ首相は政権発足直後に隣国エリトリアとの歴史的和解を導き、ノーベル平和賞を受賞。経済自由化改革を通じて経済成長を推し進めているが、近年は「権威主義的」傾向が強まっているとの批判も高まっている(6月21日、Le Monde)。今回の選挙をめぐっても、ほとんどの主要対立候補が立候補を阻まれており、選挙は自由でも公正でもない「茶番」との不満の声も上がっている(6月21日、AP通信)。
圧勝を納めたPPは、議会が開会する10月に新政権を発足させる見込みだ。議会においてアビィ首相は再任され、さらに5年の任期を得ることが確実視されている。同氏は近年、内陸国であるエチオピアが紅海へのアクセスを確保することは「国家存亡にかかわる課題」との発言を強めており、これにより隣国エリトリアやソマリア等との緊張関係が高まっている。内戦が続くスーダンでは、エチオピアがアラブ首長国連邦(UAE)と共に反政府(国軍)勢力を支援しているとして、スーダンからの非難の声も高まっている。また、国内でも前述の通り、ティグライ州やアムハラ州、オロミア州では依然として連邦政府との戦闘・対立が生じているなど、選挙での圧勝の結果とは対照的に情勢は不安定な状況が続く。
米・国際戦略問題研究所(CSIS)は、PPによる「超多数派」の形成は、経済改革等の推進に向けた立法上の障害を取り除くことが可能となる一方で、反対勢力が存在しないことは政府の説明責任を欠如させる「トレードオフ」を伴うと指摘。国内の説明責任から隔絶されていることは、地域における強硬的な行動(=紅海へのアクセス確保に向けた外交・軍事行動)に対して受ける制約が減っていることを意味するため、エチオピア国内政治の「安定化」が、逆説的に「アフリカの角」地域全体の安定化を損なう、との見解を示している。
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