- [アルミ価格高騰と地域格差]2026年4月中旬以降、アルミニウムの国際指標価格は1トン当たり3,600ドル台の高値に達している。イラン紛争を受けた物流・ガス供給の混乱により、中東湾岸地域からのアルミ供給は不安定化している。3月28日にUAE(アラブ首長国連邦)とバーレーンで大型製錬所(各160万トン/年規模)がイランの軍事攻撃に被災し、UAEのEmirates Global Aluminiumは当該施設の修復に最大1年を要する可能性があると発表した。またホルムズ海峡の航行障害長期化でアルミナなど原料調達の制約も懸念され、世界的なアルミ供給不足が懸念されている。
影響度は地域によっても異なる。海外アルミメーカーと日本企業の2026年4~6月期契約プレミアムはトン当たり350~353ドルと前期比8割高の水準で合意した。一方、中国では在庫増加を背景に価格は相対的に抑制されており、ロシアがアルミ輸出の一部を、日本をはじめとするアジア地域に振り向ける計画だとする報道もある。
これに対し、米国では需給逼迫が顕著だ。スポット市場の関税込みプレミアムはポンド当たり110セント(約2,425ドル/トン)と過去最高水準に達している。米国は純輸入国であり、関税率50%の下では指標価格上昇がそのまま関税額を押し上げる。関税問題で主要供給国であるカナダからの供給が細るなか、中東依存を高めていたタイミングで供給障害が発生し、物流費上昇も重なって、調達環境は一段と悪化している。
こうした中、中国は短期的にアルミ輸出を増やすとみられる。また、中国政府が定めた国内製錬能力上限(年4,500万トン)に達したことで、供給能力の海外進出も活発化させている。インドネシアにおける増産が知られるが、最近では中国企業がエジプトのスエズ運河経済特区で約20億ドル規模の製錬所建設を検討中だと報じられている。これは欧州・アフリカ向けの輸出拠点として位置付けられている。
- [中国・ロシア(中ロ)関係]4月14~15日、ロシアのラブロフ外相は中国・北京を訪問し、王毅外相および習近平国家主席と会談した。双方は中露の包括的戦略協力関係を再確認し、国際問題での連携強化を確認した。
4月15日、記者会見でラブロフ外相は、プーチン大統領の訪中を控え、ロシアは中国向けエネルギー供給を拡大する用意があると表明した。プーチン大統領の訪中は6月までとされ、ロシア紙報道では5月中旬の可能性も指摘されている。
習主席は会談で「中ロは相互に信頼し支え合い、協力を深化させ、両国の核心的利益を守る必要がある」と述べ、政治的結束を強調した。ラブロフ外相はまた、中東危機の影響を受ける国々へのエネルギー支援に言及し、中国を含む協力国の資源不足を対等・互恵の原則で補完できると指摘した。
さらに、米国が中東紛争を通じて世界のエネルギー市場を混乱させようとする動きを牽制し、中ロにはそれを回避するための手段と協調体制があると強調した。
- [ポーランド首相の訪日]4月15日、高市首相は約6年ぶりに訪日したドナルド・トゥスク・ポーランド共和国首相と首脳会談等を実施した。また、4月14日には両国の農業担当大臣による会談と協力覚書の署名も行われた。今回のトゥスク首相の訪日は、価値観を共有する同志国として、二国間の協力を一段と高めるとともに、国際社会の平和と安定に向けた日欧間の連携を確固たるものにする意義を有している。
両国は、2015年に締結された「戦略的パートナーシップ」の進展を踏まえ、二国間関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」へと格上げした。安全保障面では、情報保護の枠組み策定に向けた議論を含め、当局間の協議を開催することで一致した。経済・社会面では、現在約400社の日系企業が進出するポーランドとの経済交流をさらに促進するため「社会保障協定」に署名したほか、インフラや人工知能(AI)などの先端技術分野における官民一体での協力推進で一致した。さらに、「農業分野における協力覚書」や宇宙協力に関する共同声明(POLSA-JAXA間)への署名も行われ、多層的かつダイナミックな関係構築が図られている。
今回の会談では、「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分である」という認識が強く共有された。ロシアによるウクライナ侵略に対しては、ウクライナの隣国であり支援のハブとして役割を担うポーランドと、公正かつ永続的な平和の実現、ウクライナの復旧・復興に向けて緊密に協力していくことが確認された。また、インド太平洋地域においても、力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対し、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けた連携を確認した。特に、北朝鮮の核・ミサイル開発や拉致問題への対応に加え、欧州とインド太平洋双方の安全保障に悪影響を及ぼす露朝軍事協力について深刻な懸念を共有した。さらに、緊迫する中東情勢についても、ホルムズ海峡の航行の安全を含む事態沈静化の重要性を強調した。
- [ナイジェリア/インフレ上昇]4月15日、ナイジェリア国家統計局(NBS)は2026年3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で15.38%だったと発表した。2月の15.06%から上昇した。前月比でのインフレの上昇は2025年3月以来で初となった。
ナイジェリアは2023年5月に就任したボラ・ティヌブ大統領が、年間約100億ドルの国庫負担となっていた燃料補助金の廃止と、変動相場制の移行を即座に断行した。市中でのガソリン価格は急騰し、またこれまで過大に評価されていた通貨ナイラが急落したことを受け、輸入価格も上昇。2024年12月にインフレ率は34.8%を記録し、市民生活に大きな打撃を与えてきた。
政府は政策金利を20%後半台で維持し、ディスインフレプロセスの加速に努めてきた。さらに政府が、2025年2月にCPIの基準年を2009年から2024年に変更したこともあり、2025年後半にはインフレ率が10%台に低下した。しかし、今回のインフレの上昇は中東情勢の影響がナイジェリアにも及んでいることを反映している。
特に食料インフレ率は、2月の12.12%から3月には14.31%に上昇した。さらに中東紛争勃発以降、国内のガソリン(プレミアム・モーター・スピリッツ:PMS)価格はリットル当たり約1,330ナイラ(約160円)と約50%上昇している。2023年の燃料補助金廃止前のPMSはリットル当たり約200ナイラ前後(約24円)で推移していたことから、ガソリン価格の上昇は食料の輸送に必要な運輸セクターのコスト増を通じてさらに食料価格の押し上げにつながる恐れがある。
政府は食料価格をはじめとするインフレ上昇を抑えるために、4月1日に生活必需品の輸入関税の引き下げを実施。具体的にはコメ(バルク)や粗糖の関税を70%から47.5~57.5%に引き下げたほか、パーム油の関税を35%から28.75%に引き下げた。また、乗用車(内燃機関)の輸入関税も70%から40%に引き下げたほか、電気自動車や大型バスについては無税とした。ナイジェリアは国内産業保護のために、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)共通対外関税(CET)を適用し、保護が必要な分野の品目には原則として35%の高い関税を課している。しかし、別途輸入品に対しては課徴金や物品税、付加価値税(VAT)が課されることが多く、実効税率は上限である70%まで高くなる傾向にあるとの指摘もある(米・商務省国際貿易局)。そのような中での今回の関税引き下げは、政治的な意図も反映されているとみられる。ナイジェリアでは、2027年にティヌブ大統領が二期目を目指す大統領選が実施される予定だ。そのため、生活必需品の輸入関税を急きょ引き下げ、インフレ上昇を抑制させることは、現政権への国民の不満を和らげることにつながる。
依然として、国内の1日あたりガソリン供給量約4万キロリットル(2026年3月)のうち約8割以上を国内精製で賄うことができており、その大部分は2024年に開業したダンゴテ製油所からもたらされている。しかし、2023年の燃料補助金廃止以降、国内販売のガソリン価格も国際原油価格などの市況価格を直接反映することとなったため、3月だけでもダンゴテは5回ガソリン価格を引き上げている(4月14日付、Punch紙)。そのため、中東情勢の緊迫化とホルムズ海峡封鎖の影響は、産油国であるナイジェリアの原油・石油輸出、外貨獲得、政府の歳入増には追い風となるが、国内の燃料価格の高騰を抑えることはできず、大きなインフレ上昇圧力となっていく可能性が高い。
世界銀行が4月1日に発表した「Nigeria Development Update」によると、ナイジェリアの2025年の総輸出の83%を占める原油の価格が、中東紛争前の61ドルから80ドルに上昇すれば年間約130億ドルの輸出増となりさらに貿易黒字が拡大するとのこと。一部輸入している石油製品価格の上昇によりこの効果は一部相殺されるものの、それでも原油価格の高騰はナイジェリア経済に短期的にプラスの影響をもたらすと評価している。世銀はナイジェリアの2026~28年の実質GDP成長率は4.2%に加速するとの見通しを示している。
- [ベトナム・中国の首脳会談]4月15日、ベトナムのトー・ラム書記長兼国家主席は、訪問先の北京にて習近平国家主席と会談を実施した。中国は、トー・ラム氏が国家主席に就任してから初の外遊先。2024年8月にチョン氏の死去を受けて書記長に就任した際も中国を初の外遊先としていた。今回の会談では、世界で進む保護主義に共に反対すると同時に、自由貿易体制を堅持していく必要性を強調した。相互関税を課税した米国への牽制を意図した発言だと考えられる。また経済面では、人工知能、半導体、モノのインターネット(IoT)など先端分野での協力を加速させることを確認したほか、2026年~27年を、観光、文化、メディア、教育、保健、スポーツなどの分野における交流・協力を強化する「中国・ベトナム観光協力年」とすることを公表した。なお両国は3月16日に外交・国防・公安の3分野での協力を確認する閣僚会合「3プラス3」を初めて開催している。今回の会談と合わせて、国防・治安などハード面に加え経済・観光などソフト面での連携強化を狙っていると考えられる。
同国は原油・石油・ガスいずれも純輸入国。特に原油の輸入は約9割をクウェートに依存しているなど、湾岸諸国への輸入依存度が高い。石油の備蓄日数は29日分と少なく、かつ石油の主要輸入先国であるシンガポール・マレーシア・韓国いずれも主に湾岸諸国から輸入した原油を基に石油を精製しベトナムに輸出している。そのため、湾岸諸国からの原油の輸入が途絶した場合に、原油・石油ともに国内供給が減少することが懸念される。既にナフサの主要輸出先である韓国は3月に輸出規制を実施している。これらを受け、チン元首相は3月に日本の高市首相に対し、原油備蓄の融通を要請する親書を送付したほか、プーチン大統領らと会談したうえで、石油供給の要請、ガス大手ノバテクとのLNG供給契約締結などを実施した。なお3月25日に、出光興産・ペトロベトナム・三井化学等が出資するニソン製油所は、5月末まで操業を継続させるために必要な原油を確保したと発表している。同製油所は日量の原油処理能力が20万バレルで国内の石油需要の約3割を担っているため、稼働に必要な原油を調達できるかどうかが注目されていた。
なお同国は2025年1月に、EUとの外交関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げしたうえで脱炭素・レアアース開発・デジタル産業育成などでの協力拡大を確認している。中国への貿易・投資面での過度な依存や米中対立を警戒した動きとみられる。
- [ブラジル/労働時間短縮の議論続く]議会では、週の最大労働時間を現行の44時間から40時間へ短縮し、週6日働いて週1日だけ休む「6×1スケール」を廃止し、週休2日となる「5×2スケール」を標準とする改革について引き続き議論されている。政府によると、現在およそ1,400万人のブラジル人が週に1日しか休めておらず、世論調査でも有権者の70%以上がこの措置を支持している。ルーラ大統領はこの政策を、生活の質を向上させる重要な社会政策と位置づけ、自身の再選に向けた政治的メッセージの中心的な柱の一つとしている。
この改革は、憲法改正と通常の法律の2段構えによって実現が目指されている。政府は、憲法改正案(PEC)と政府提出の通常法案を同時に審議する方針で合意した。憲法については、憲法・司法委員会で審査され、その後、特別委員会で内容が議論され、本会議にて2回ずつ審議される。一方、政府は4月14日に、憲法上の緊急性を付した通常法案を提出した。この法案は週40時間労働と週2日の有給休息を保障する内容であり、緊急規定により下院は45日以内に採決する必要がある。政府は、選挙運動が本格化する前に成立させるため、こちらのルートの方が迅速で管理しやすいと判断している。
政府は、企業の規模や業種に応じて実施方法を柔軟にすることには前向きであり、特に零細企業や小規模企業には猶予期間を長く設ける可能性を示している。ただし、経済チームは、賃金負担などに関するこの新たな大規模雇用主向け減免措置には強く反対している。野党や中道の一部は、労働時間短縮を口実に給与税などの大幅な減税を求めており、この点が大きな対立点となっている。通常法案であれば、大統領は財政に悪影響を与える修正に拒否権を行使できるが、憲法改正の場合は拒否権が使えない。この財政上の制約が、選挙前に改革が停滞する可能性を高めている。
下院で6月までに法案が可決されれば、上院でも可決への政治的圧力がかかる。すでに下院を通過した非常に人気の高い法案を棚上げすることは、2026年の選挙で再選や州知事選への出馬を目指す上院議員にとって大きな不利益となる。ただし、最高裁判事指名をめぐり、ルーラ大統領と上院議長との関係は緊張しており、これが政府全体の立法日程に遅れをもたらすリスクとして残っている。
ルーラ大統領が厳しい政治環境の中で支持率は約44%まで低下し、世論調査ではフラヴィオ・ボルソナロ上院議員と拮抗してきている。2025年に承認された中間層向けの所得税控除拡大や、低所得世帯への調理用ガス・エネルギー補助に加えて、本法案を実現させることで、優位性の確保を狙っている。
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