- [アフリカ/ロシア外相訪問]7月7日~8日、ロシアのラブロフ外相はエチオピアとニジェールを訪問した。 2022年以来の訪問となったエチオピアでは、アビィ首相とティモティウォス外相との会談を実施。エチオピア外務省は声明において、両国を結ぶ深い歴史的絆(旧ソ連は社会主義時代のエチオピアを軍事支援していた)を強調し、今後の二国間協力について楽観的な見解を示した。エチオピアとの議題の中心は原子力発電建設に向けた協議だったとみられている。 また、ラブロフ外相はアディスアベバにあるアフリカ連合(AU)を訪問し、アリ・ユスフAU委員長の会談も実施。ラブロフ氏は、世界的な意思決定システムにおけるアフリカの役割を大幅に強化するというAUの意向を支持し、それには国連安全保障理事会におけるアフリカの代表権も含まれると発言した(7月8日、AP通信)。 その後、ラブロフ氏はニジェールを初めて訪問。首都ニアメで2025年4月に続く、ロシアと「サヘル諸国同盟(ニジェール、マリ、ブルキナファソの3か国で構成、通称AES)との「第二回閣僚級会合」を開催した。2020~2023年にかけてクーデターにより軍事政権を発足させたAES3か国は安全保障面におけるロシアとの関係を強化している。今回の閣僚級会合にもAES各国の外相が参加。共同声明では「ロシアはAES加盟国の軍隊の作戦能力強化に向けた支援を継続する」旨が明記された(7月9日、Le Monde)。また、ラブロフ外相はロシアのプーチン大統領から10月にモスクワで開催される予定の「第3回ロシア・アフリカ首脳会議」にAES首脳を招待するよう依頼を受けたことを伝えた。 今回のラブロフ外相のアフリカ訪問は、ウクライナ紛争における西側諸国からの非難が続く中で、外交的孤立を防ぎ、アフリカ諸国との関係を維持したい意向が鮮明に表れている。特にAUとAESは軍事政権発足以降、関係が緊張状態にあることから、ロシアが単に軍事・安全保障上のパートナーではないことを示そうとしているとの見解もある(7月8日、RFI)。 他方で、現実としては、AES3か国でのイスラム系武装組織の活動は活発化しており、軍事政権・ロシアのアフリカ部隊は治安の回復に苦戦している。また、2023年に開催されたロシア・アフリカ首脳会議の首脳級参加者は2019年の初回の首脳会議の43人から17人に急減。ウクライナ紛争が依然として続く中で10月に開催されるサミットも、首脳級の参加は低調なものに留まる可能性が高い。
- [ブラジル、成長率の上方修正]国際通貨基金(IMF)は、ブラジルの経済成長率の見通しを引き上げ、2026年は1.9%から2.4%に、2027年は2.0%から2.2%とした。これは、世界の多くの国で成長見通しが下方修正されている中では異例の動きであり、ブラジル経済に対する一定の信頼の表れといえる。ただしIMFは、こうした上方修正にもかかわらず、ブラジルの成長は今後数年で徐々に鈍化すると見込んでいる。 もっとも、この評価は単純な景気拡大を意味するものではない。IMFは、ブラジルが他国よりも底堅さを示している点を評価しているが、それは持続的な成長力というよりも「外部ショックに対する強い耐性(レジリエンス)」によるものだと位置づけている。 今回の上方修正の主因は資源価格である。ブラジルは石油などのエネルギー資源の純輸出国であり、中東情勢の緊張によるコモディティ価格の上昇から短期的に恩恵を受けている。この点が成長見通しを押し上げた最大の要因である。 加えて、ブラジルの経済構造も下支えとなっている。具体的には、十分な外貨準備、外貨建て債務への依存度の低さなどが外部環境の変化に対する緩衝材として機能し、経済の安定性を高めているとしている。この結果、同地域のほかの国と比べてもブラジルは相対的に堅調に推移しており、中南米全体が低成長となる中で差別化されている。特にメキシコは今年、わずかな成長にとどまると見られている。 一方で、見通しの先行きには依然として下振れリスクがある。IMFは、2026年の成長が堅調であっても、資源価格の押し上げ効果が弱まるにつれて成長は減速すると明言している。さらに、国内では高金利と資金調達環境の厳しさが景気の重しとなっており、企業投資や消費を抑制する要因となっている。ブラジルの金利水準は世界的に見ても高く、金融引き締めが内需にブレーキをかけている状況である。 加えて、世界経済の不確実性も無視できない。IMFは世界全体の成長見通しを引き下げており、中東情勢の緊張や貿易摩擦などが下振れリスクとして指摘されている。とりわけ、米国による関税措置の可能性は、ブラジルの輸出環境にとって不透明要因となっている。 ブラジルの成長見通しの引き上げは明るい材料ではあるが、その背景は主に外部要因に依存しており、この好調さは恒常的な成長加速ではなく、一時的な追い風によるものと理解する必要がある。
- [日本/賃金動向(5月)、街角景気(6月)]7月7日、厚生労働省は5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。名目賃金(基本給や残業代、賞与などを合わせた1人当たりの現金給与総額)から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比+1.4%と、2026年1月から5か月連続のプラスとなった。5か月連続のプラスとなるのは、2021年2月から8月まで7カ月連続でプラスとなって以降、初めて。 実質賃金の計算に用いられる消費者物価指数(持ち家の家賃換算分除く総合)は前年同月比で4月の+1.5%から5月の+1.7%へ上昇したが、2025年の最低賃金の引上げや2026年の春闘による賃上げの反映もあり名目賃金の上昇が上回った。 名目賃金は31万1,165円と+3.2%となった。1992年3月以来、34年2か月ぶりに4か月連続で3%以上の上昇率となった。このうち、基本給に当たる所定内給与が27万5,942円で+3.0%となり、名目賃金を押し上げた。 就業形態別では、一般労働者の現金給与総額は40万312円と前年同月比+3.5%で62か月連続のプラス、所定内給与は35万1,163円で+3.4%。パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内給与)は1,452円で+4.9%と、59か月連続のプラス。 総実労働時間は129.4時間(▲3.8%)。就業形態別では一般労働者が152.8時間(▲3.7%)、パートタイム労働者が77.6時間(▲3.2%)。 実質賃金は長らくマイナスが続いた状態から、賃上げの波及により着実に上向いてきており、日銀の6月会合における利上げを受け、この先もプラスが続いていくのかが注目される。 7月8日、内閣府は6月の景気ウォッチャー調査を発表した。3か月前と比較した足元の景気に関する現状判断指数(DI、季節調整値)は44.0で、前月比+0.4ポイントなった。2月(48.9)以降、中東情勢を受けて3月(42.2)、4月(40.8)と低下したが、5月(43.6)、6月(44.0)と2か月連続で持ち直した。調査は毎月25日から月末に実施され、今回は米国とイランの戦闘終結に向けた覚書署名後のタイミングとなったため、中東情勢への不安感が和らいだことも一因とみられる。 指数を構成する3項目の内、家計動向関連DI(43.5)は▲0.3ポイント低下したが、企業動向関連DI(45.6)は+1.9ポイント、雇用関連DI(43.9)は+2.4ポイント上昇し、全体として上昇した。 地域別では、前月比で全国12地域中、6地域で上昇、6地域で低下した。 基調判断は「景気は、中東情勢によるマインド面の下押しを中心に影響が残るものの、持ち直しの兆しがみられる」と、前月の「持ち直しの動きに弱さが見られる」から上方修正された。 現状判断のプラスの理由としては、「食料品などの生活必需品は安定的に推移しており、一部の富裕層の消費意欲は高水準を保っている」(南関東の百貨店)という意見や、「半導体関連の動きが活発となっており、全体受注売上が伸びている」(東北の輸送用機械器具製造業)という意見がみられた。雇用では、中東情勢の影響で先延ばしになっていた採用を再開する企業が増えているとの声も聞かれた。マイナスの理由としては、引き続き物価高による消費者の買い控えや、中東情勢に伴う資材高騰や納期遅延などによる悪影響が挙げられた。 一方、2?3か月先の景気の先行きに対する判断指数(DI、季節調整値)は45.7で、前月比+5.0ポイント上昇した。 指数を構成する3項目すべてが上昇し、家計動向関連DI(45.7)は+4.8ポイント、企業動向関連DI(45.9)は+5.5ポイント、雇用関連DI(44.8)は+5.6ポイントとなった。 地域別では、前月比で全国12地域全て上昇した。 先行き判断のプラスの理由として、これからの旅行シーズンの予約が好調であるという意見や、「梅雨明けに伴って、省エネ基準の改定を背景としたエアコンの売上伸長が期待できる」(北関東の家電量販店)という意見、「中東情勢の不透明感の解消に向けた動きが見えており、燃料価格が下落傾向にあるため、景気が上向くとみており、取扱物量の増加が見込まれる」(東海の輸送業)という意見がみられた。マイナスの理由として、中東情勢の改善には時間が掛かるという点も挙げられた。 現状の景気はまだ足踏みといえるが、先行きについては、物価高は当面続くとみられるものの、中東情勢への懸念緩和や夏のイベントシーズン到来による需要増加などへの期待感が多くみられる結果となった。
- [FRB/FOMC議事要旨]連邦準備理事会(FRB)は8日、連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(6月16~17日開催分)を公表した。6月会合では、政策金利は据え置かれた。その決定は2025年6月以来の全会一致だった。 議事要旨によると、全ての参加者が政策金利の据え置きを支持した。経済活動は堅調に拡大しており、労働市場は安定している一方で、物価上昇率は高止まりしているという見方でおおむね一致していた。物価上昇の上振れリスクは高止まりしているのに対して、雇用の下振れリスクはやや和らいだと判断された。 ただし、2~3人の参加者は利上げの根拠があったが、今回の会合では据え置きを支持したと記載されており、一部に利上げに前向きな姿勢も垣間見られた。実際、複数人は、現在の金融政策姿勢を制約的と見なしていなかった。やや制約的という認識は2~3人であり、制約的ではないという意見の方が多かった。つまり、金融政策が緩和的であるため、それを引き締める余地があるということになる。 大半は、物価上昇圧力が消えて、物価上昇率がすぐに2%に戻るシナリオに言及した。その場合には、ほぼ全員が据え置きか利下げが適切と述べた。しかし、大半は、労働市場の安定、物価上昇の高止まりなどのシナリオを指摘した。その場合には、金融引き締めが物価上昇率の2%回帰を正当化させると指摘していた。それぞれの評価に基づくと、多くが年末にかけて据え置きかやや利下げを適切と判断。残りの多くは年末にかけてやや引き上げを適切と評価した。公表されたFOMC参加者の経済見通しによると、2026年末にかけて利下げは1人、据え置きは8人、利上げは9人だった。中央値では、3月時点の利下げ1回から利上げ1回に上方修正された。 また、多くの参加者は、声明文の変更する良い機会だと述べていた。大多数は、前回会合のような将来の政策金利の決定を示す緩和バイアスを繰り返すことを好ましくないと強調した。その結果、声明文から緩和バイアスは削除され、簡素な表現になった。
- [ブラジル:JBSがScope3目標見直し]7月8日、世界最大級の食肉企業JBSは2025年サステナビリティ報告書を公表し、2021年に示した脱炭素戦略を「野心(Ambition)」から「実行(Operational Progress)」へと再整理する方針を示した。農業が気候変動対策の一部であるとの理念は維持する一方、今後は自社が直接管理・測定可能な取り組みに重点を置く。顧客や投資家、規制当局は「測定可能で比較可能、かつ具体的な行動につながる目標」を求めており、その考え方に沿って目標体系を再整理したと説明している。 同社は、工場や施設で発生する直接排出(Scope1)および購入電力などに伴う間接排出(Scope2)の排出強度について、2019年比で2030年までに30%、2050年までに70%削減する目標を維持する。一方、サプライチェーン全体の排出(Scope3)については、数十万に及ぶ独立した畜産農家が数千万ヘクタールの農地で異なる飼育・管理手法を採用しており、自社だけで測定・管理・削減を約束することは現実的ではないと説明。今後もScope3排出量の開示や森林破壊防止、ブラジルでのサプライヤー追跡システムなどの取り組みは継続するものの、「直接管理・測定可能な事項」を重視する考えを示した。 Bloombergは、同社の環境負荷の約96%を占めるScope3目標を事実上修正したと報じた。近年は、Scope3を含めた野心的なネットゼロ目標を掲げる企業が相次いだ一方、実際にはサプライヤーや顧客の行動に大きく左右され、自社だけで達成を保証することは難しいとの指摘も根強い。JBSの今回の方針転換は、脱炭素への後退というよりも、企業が直接管理可能な範囲とサプライチェーン全体の責任を切り分け、「測定可能・説明可能な目標」を重視する流れを象徴する事例として注目される。
- [ロシア、燃料不足が農業・経済へ波及]7月8日、プーチン大統領は、ウクライナ軍による無人機攻撃で被害を受けた製油所やエネルギー施設への対応を協議する政府会合を開催した。ノバク副首相は複数の製油所損傷によるガソリン生産の減少を認め、政府はガソリン・航空燃料に続きディーゼル燃料の輸出も禁止した。国内供給確保を急ぐ一方、各地では給油所に長い車列が発生しており、政府は2026年7月から石油製品の輸入を開始した。 燃料不足は市民生活だけでなく産業活動にも影響を及ぼしている。ガソリン供給不安を背景にプラグインハイブリッド車の販売は6月に前年比2.7倍となったが、市場規模は依然として小さく、自動車市場全体の構造変化には至っていない。 より深刻な影響が懸念されるのは農業分野である。2026年の穀物収穫は全体として好調な見通しだが、クラスノダール地方やロストフ州など主要穀倉地帯ではディーゼル不足が深刻化している。給油制限や長時間の待機により収穫作業の遅延が発生し、一部農家は最大15%の収量減少を見込む。特に中小農家の負担が大きく、ディーゼル価格も一部地域で大幅に上昇している。 現時点で収穫全体への致命的な影響は確認されていないものの、燃料不足は農業生産、食品価格、穀物輸出、地方経済へ波及し始めている。製油所への攻撃が継続した場合、ロシア経済における新たな構造的制約となる可能性がある。
- [NATO/首脳会合]2026年7月7日から8日にかけて、トルコのアンカラにてNATO首脳会合が開催された。対イラン戦争の対応をめぐる欧州と米国の間の緊張や、米国のNATO離脱の可能性が報じられる中で開催されたため、その成果に大きな注目が集まっていた。会合の最後には「アンカラ・サミット宣言」が採択され、全同盟国が北大西洋条約第5条(集団防衛)への揺るぎないコミットメントを再確認した。合意された主な成果は以下のとおり。 ●防衛投資の拡大:2025年に、欧州同盟国とカナダは中核防衛要件への投資を1,390億ドル以上増加させたことを確認した。ルッテ事務総長によると、2035年までにGDPの5%を防衛に投資するという計画の開始からわずか1年で、すでに全体の防衛・安全保障支出が約4%に達したことを確認した。 ●産業基盤とレジリエンスの強化:産業基盤強化のための投資の重要性で合意し、500億ドル以上の新規調達が発表された。集団的な製造能力を拡大し、産業界と連携してイノベーションを加速させることが約束された。 ●新イニシアチブ「Drone Edge」:今後5年間で無人システムに対して400億ドルを投資する、NATOの大規模な新イニシアチブ「Drone Edge」が立ち上げられた。 ●エネルギーインフラ投資:同盟国部隊が戦闘準備に必要とするエネルギー供給を確保するため、270億ユーロの投資が発表された。これにより、既存の燃料貯蔵および配給インフラが近代化され、同盟東部へのパイプラインを含む新たな施設が支援される。 会合の初日や公の場において、トランプ米国大統領は同盟国がイランとの戦いを支援しなかったことへ不満を表明し、スペインとの貿易停止をほのめかしたほか、グリーンランドの支配権を米国に引き渡すよう要求するなど、非難を繰り返していた。しかし、報道によると非公開の首脳会議の場では態度を一変させ、建設的な関与を見せたとされる。会議室ではスペインやグリーンランドへの批判は抑え、米国がNATOに残留する意思を明確に伝えたとされている。トランプ大統領自身も、会議室内には「信じられないほどの団結」と「愛」があったと語った。 ロシアによる弾道ミサイル攻撃の激化により迎撃ミサイルの深刻な不足に直面しているウクライナに対し、トランプ大統領は米国の「パトリオット」防空ミサイルの製造ライセンスを付与すると発表した。 また、NATOはウクライナへの揺るぎない支援を再確認した。欧州同盟国とカナダは、2026年および2027年に、年間少なくとも700億ユーロの軍事装備、支援、および訓練をウクライナに提供することを約束した。 ●会議のフリンジでは、英国の主導により、新たな長距離ミサイル開発プロジェクト「Deep Precision Strike」が発表された。この計画には12か国が参加し、300km(約200マイル)から最大1,250マイル(約2,000km)離れた標的をピンポイントで攻撃できる長距離精密打撃能力の開発を目指すものである。今後10年間で370億ポンド(500億ドル)が投資される予定。
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