- [英国/防衛投資(ドローン分野)]英国政府は、「防衛投資計画」に基づき、今後4年間で50億ポンド以上を投じる大規模なドローン(無人機)の導入および軍の変革を発表。同投資は英国軍の強化と、国内で数千の雇用創出を目的としている。背景には、ウクライナやイランでの紛争において、安価なドローンが戦局を大きく変容させている状況があるとされる。
本計画では、スウィンドンに開設された欧州最大のドローン試験施設「無人システムセンター」や、新設される「無人システムタスクフォース」へ資金を投入し、自律型技術の開発と実戦配備を加速させるとしている。これにより、英国国内のAIや自律型技術を育成し、同盟国との協力や防衛能力の輸出拡大につなげるとしている。
・英国海軍:有人艦艇と無人システム、AIを組み合わせた「ハイブリッド海軍」への移行を追求し、無人プラットフォーム群を導入する。また、2030年代には少なくとも6隻の共通戦闘艦(Common Combat Vessels)を就役させるほか、F-35Bと連携するドローンの開発(PANTHEON計画)も推進する。
・英国陸軍:安価で使い捨て可能な自律型システムに重点投資する。迎撃ドローンなどを拡充し、無人地上車両の開発も行う。さらに、戦闘ヘリコプターと連携する武装ドローン最大24機や、監視ドローン最大24機を2030年までに配備する。
・英国空軍:有人戦闘機と連携して飛行する自律型戦闘機を開発し、少なくとも2030年までにデモ機を開発する。また、新たな電子戦用ドローンを2026年中に就役させる。
この過去最大規模の投資を通じ、英国は絶え間なく変化する脅威から国と同盟国を守り、前線の兵士に最新の装備を提供する。
- [イラク/新首相が汚職摘発作戦を実施し高官47人を逮捕]5月に就任したイラクのザイディ首相は、自身の最大の公約である汚職撲滅に向けた大規模な捜査を開始した。6月28日には、首都バグダッドで政府高官や国会議員、大使館などが集まる厳重警備区域『グリーンゾーン』で対テロ部隊が夜間の一斉捜索を実施し、国会議員や政府高官、政治家ら47人を逮捕した。今回の摘発は石油省幹部への捜査をきっかけに拡大したもので、約12人の議員については議員特権も解除された。ザイディ首相は「これは第一段階にすぎない」とし、公金の回収と汚職の徹底追及を進める姿勢を強調している。
イラクでは2003年以降、民族・宗派ごとの権力分担体制の下で、各省庁が政党や武装勢力の資金源となり、汚職が制度化してきたと指摘されている。特に石油収入をめぐる利権は大きく、一部の高官にはイランや親イラン民兵組織への資金流用疑惑も浮上している。米国はこうした資金の流れを問題視し、制裁や銀行制度改革を通じて対策を進めてきた。現在ではイラクへのドル送金の約95%がデジタル化され、不正資金の流れを抑える取り組みも進められている。
一方で、汚職の背景には、国家よりも強い影響力を持つ武装勢力や民兵組織の存在がある。これらの組織は政府機関や企業を支配し、経済活動や国家予算から利益を得てきた。ザイディ首相は、汚職撲滅と並行して「国家以外の武装を認めない」と宣言し、年内に国家だけが武力を行使できる体制を確立する方針を示している。しかし、首相自身も政権発足時には既存勢力の支持を得る必要があったため、改革には大きな政治的抵抗が予想される。
ザイディ首相は、自身は給与や贈答品を受け取らず、再選も目指さないと表明し、私利私欲のない政治を訴えている。また、市場経済への転換や海外投資の誘致、開発基金の創設など経済改革も掲げる。イラク経済は依然として石油収入への依存度が高く、国民の銀行利用率も低いなど課題は多い。今回の大規模摘発は、長年続いた腐敗体質を変える重要な一歩と評価される一方、制度的な汚職や武装勢力の影響力をどこまで断ち切れるかが、改革の成否を左右するとみられている。
- [エチオピア/債務再編暫定合意]6月29日、エチオピア財務省は10億ドルのユーロ債を保有する「債券保有者委員会」と債務再編に関する暫定合意に達したと発表した。同ユーロ債は政府が2014年に起債した2024年満期、利回り6.625%の債券で、米・モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントや米・ファロン・キャピタル・マネジメントらで構成される債券保有者委員会が全体の45%を保有しているものだ。2023年12月にエチオピア政府が同債券の利息(3,300万ドル)の支払いを行わなかったことにより、エチオピアは「債務不履行(デフォルト)」とみなされたが、同委員会との債務再編交渉を続けてきた。
財務省によると、既存の10億ドルの債券は、12%のヘアカット(割引率)を反映した8.8億ドル(年利6.15%)の新規債券と交換されるとのこと。同債券の満期は2029年7月で、2026年7月の1.8億ドルの元本支払いを皮切りに、4回に分けて償還される見込みだ。また、エチオピアはデフォルトの引き金となった2023年12月期限の利息を含め、未払いの利息3回分(総額9,940万ドル)の全額を支払うことも定められている。さらに、エチオピアは既存のユーロ債保有者に対して、将来的にエチオピア政府が発行する最大10億ドルの国債を購入する権利を与える「ニューマネー・ワラント」についても合意した。同債券の満期は7年で、年利は発行時の6年物米国際利回りに450bpsを上乗せした水準に設定される予定だ(おおむね8%台)。
エチオピアの債務再編は同委員会と並行して、二国間の対外債務の再編を行う「公的債権者委員会」との間でも交渉が続けられてきた(「G20共通枠組み」)。中国とフランスが共同議長を務める公的債権者委員会は、ユーロ債再編の条件と同等の条件が適用されるべきとの原則に立ち、ユーロ債の債券保有者委員会との交渉内容にもたびたび口を挟んできた。しかし、今回のエチオピア政府の暫定合意の発表に関して、中国とフランスも支持していると報じられている(6月29日、FT)。
エチオピア政府との債務再編交渉の停滞・長期化により、2023年以降、利息も元本も支払われていない状況を受け、ユーロ債の一部の保有者は政府に対する訴訟も辞さない構えを示していたが、ようやく返済が実行に移される見込みだ。エチオピアが新規に提案したニューマネー・ワラントが合意の決定打となったと見られている(6月29日、ロイター通信)。
なお、84億ドルの未払いの対外債務を対象とした公的債権者委員会との再編交渉(12.5%のヘアカット、3年間の返済猶予などを含む)についても二国間の個別協定の締結が大詰めを迎えていると報じられている(6月27日、The Reporter)。
- [インド/中国系メーカーの投資を承認]6月25日、現地経済紙エコノミック・タイムズ(インド経済紙)は、インド政府が吉利グループとルノーの合弁会社でパワートレインを製造する「ホース・パワートレイン」社による投資を承認する見通しであると報道した(出資比率は吉利グループ、ルノー共に45%(残り10%はサウジ・アラムコ))。投資額は約3億7,000万ドル(約598億円)。日産・ルノーのハイブリッド車向けにパワートレインを供給する予定である。また年内にルノーが発売予定の新型SUV「ダスター」向けにパワートレインを納入する予定である。
インドは2020年に、国境を接する国に本社を置く企業や、これら企業が出資する第三国籍の企業からの海外直接投資(FDI)を事前承認制とする投資規制を導入した。それまでは、原子力や不動産など一部セクターを除き、事前承認は不要であった。主に中国からの投資を念頭に置いた措置とみられている。本措置により、中国からのFDI受入額は2019年の122億ルピー(約190億円)から2024年には3億ルピー(約6億円)まで激減した。
インド政府の中では、投資規制により中国系企業の投資が停滞したことで、特に製造業分野における技術移転・雇用創出が阻害され、インド政府が目指す製造業発展の阻害要因になっているとの指摘が生じていた。このような問題意識も踏まえ、2026年3月には投資規制を緩和した。今回の投資承認は、投資規制緩和後に承認された初の主要案件である。
インドでは、2025年に小型車向けの物品・サービス税率が28%から18%に引き下げられたことも踏まえ、ハイブリッド車に対する需要が高まっている。これを受けて国内の自動車OEM各社はハイブリッド車の市場投入を進めているが、パワートレインについては輸入依存が継続している。インド政府としては、今回の投資承認を機にパワートレインの国内製造能力を高め、自動車の裾野産業育成に繋げることで製造業を育成することを狙っている。
もっとも、今回のような中国系資本が関与する投資案件についても、十分な雇用創出や技術移転が実現するかについては慎重な見方がある。例えばタイではBYDやCATLによるEV・電池事業への投資が活発化しているが、従業員・技術者を中国本土から呼び込むほか、現地従業員は主に工場の警備などに従事しているために中核技術に触れる機会が少なく、タイの産業高度化に貢献していないとの指摘も存在する。
- [中国/対日輸出管理を拡大]6月29日、中国商務部は、日本の40の機関・企業を対象とする新たな輸出管理措置を発表した。2026年2月に実施された第1弾に続く措置であり、20団体を「輸出管理規制対象リスト」、20社を「重点監視リスト」に指定した。2020年施行の「中華人民共和国輸出管理法」および、2024年施行の「中華人民共和国軍民両用品目輸出管理条例」に基づく措置としている。
輸出管理規制対象リストに指定された機関・企業は、防衛装備庁傘下の研究機関や三菱電機・三菱重工グループなど、防衛関連色の強い組織が中心になっている。これらに対しては、中国からの軍民両用品の輸出や、中国原産品を第三国経由で提供する行為が原則禁止され、既存取引も停止しなければならない。特別な事情がある場合に限り、商務部への個別申請が認められる。
一方、重点監視リストには、三井E&S、Terra Drone、ACSL、日本原燃、富士通ネットワークソリューションズ、日立アドバンストシステムズ、OKIグループなどが指定された。これら企業向けの輸出では一般許可制度が利用できず、個別許可申請時にはリスク評価報告書や、「日本の軍事力向上に資する用途には使用しない」とする誓約書の提出が求められる。また、通常は条例で定められた審査期間が適用されるが、監視リスト対象企業についてはその期限が適用されず、審査が長期化する可能性もある。
商務部は今回の措置について、日本が「新型軍国主義」を推進し、再軍事化や攻撃型兵器の配備、海外での攻撃型ミサイル発射を進めていることへの対抗措置であると説明した。その一方で、対象は一部の日本企業・機関に限定され、通常の日中貿易には影響せず、法令を順守する企業は懸念する必要はないとしている。しかし、実際には2026年1月以降、日本向けのレアアース輸出は目に見えて減少している。
2024年施行の「軍民両用品目輸出管理条例」で新設された重点監視リストは、従来の「輸出禁止」や「通常審査」とは異なる中間的なカテゴリーであり、最終需要者や最終用途について、企業側により厳格な説明責任を求める制度である。また、中国当局は「軍事用途」だけでなく、「日本の軍事力向上に資する一切の用途」という広い概念を審査基準として掲げており、運用次第で対象範囲が拡大する懸念もある。
- [メキシコ/輸出好調だが……]メキシコの国家統計局の発表によれば、2026年1月から5月までの輸出額は前年同期比22.6%増の3,172億ドルに達した。特に5月単月では25.4%の増加となり、輸出は力強い伸びを示している。同期間の輸入も20.8%増の3,114億ドルに拡大し、その結果、貿易収支は約58億ドルの黒字となり前年同期の6倍以上となっている。
もっとも、今回の輸出拡大は従来の主力だった自動車産業だけによるものではない。5月には非自動車の製造業輸出が35.2%と大幅に増加し、工業機械や金属関連が成長を牽引した。一方、自動車輸出はむしろ2.2%減少している。特に米国向けの自動車販売が3.5%減少したことが影響している。この動きは、長年メキシコの輸出モデルの中心であった自動車産業への依存から徐々に脱却しつつあることを示している。かつては米国市場向けの車両組立が雇用創出や地域経済の基盤だったが、現在は機械設備、金属、電子製品など多様な製造分野へと重心が移り始めている。
輸出構造の変化は、メキシコの国際的な位置づけにも影響を与えている。メキシコは米国への最大の輸出国であり、北米のサプライチェーンの中核を担う存在として、企業が生産拠点を消費市場に近い地域へ移すニアショアリングとして注目されている。そのため、輸出の増減はグローバルな供給網の変化を映す指標ともなっている。
しかし、表面上の好調な数字とは裏腹に、季節調整値では、5月の輸出は前月比で0.5%減少しており、実質的な成長の勢いが鈍化している可能性がある。月次の貿易黒字も3月の59億ドル、4月の45億ドルから、5月には23億ドルへと縮小しており、ピークを過ぎた可能性も示唆される。
現状では、非石油輸出の約84%が米国向けであり、メキシコ経済は依然として米国市場への依存度が高い。今後予定されているUSMCA見直しや米国の需要動向によっては、このバランスが大きく崩れる可能性がある。
政策面でも、輸出の増加はペソの安定や経済成長を支える一方、物価上昇圧力を高める可能性があり、中央銀行の利下げ判断を難しくしている。また、輸出額が伸びているにもかかわらず、国内の雇用は必ずしも増えていない点も問題で、工場の生産は拡大しているものの、効率化や自動化の影響で雇用が減少するケースも見られ、経済の実感としての恩恵が十分に広がっていないとの指摘がある。
今後の焦点は、米国の需要が減速した場合でも、機械や電子機器といった新たな成長分野が輸出全体を支えられるかどうかや、自動車輸出の減少が一時的な調整にとどまるのか、それとも構造的な衰退の始まりなのかという点となっている。
- [日本/商業動態統計調査(5月分速報値)]6月29日、経済産業省は商業動態統計調査の5月分速報値を発表した。卸売業・小売業の販売活動などの動向を明らかにするもの。小売業に関しては個人消費の動向を供給側から把握する指標として、卸売業に関しては生産と消費を結ぶ流通段階の変動を把握する指標として利用される。
5月の商業販売額は52兆5,490億円で前年同月比+5.0%と、2025年12月から6か月連続で前年同月比プラス。内訳は、卸売業が39兆1,020億円で+4.9%(6か月連続プラス)、小売業が13兆4,470億円で+5.3%(3か月連続プラス)。
なお、季節調整済前月比は+1.4%となり、卸売業で+1.6%、小売業で+1.9%。
小売販売額は、例年より気温が高かったことや、土日祝日が前年より2日多かったことなどにより増加した。 小売業の業種別で前年同月比上昇したのは、自動車小売業で+23.7%、家電などの機械器具小売業で+14.5%、その他小売業で+8.9%、各種商品小売業(百貨店など)で+6.9%など。一方、下落したのは無店舗小売業で▲4.2%、燃料小売業で▲2.6%、織物・衣服・身の回り品小売業で▲0.7%となった。
小売業の業態別では、百貨店で5,137億円、+7.6%、スーパーで1兆4,342億円、+4.5%。
百貨店は、主力商品である衣料品で+9.0%(身の回り品+16.3%、婦人・子供服・洋品+5.5%)。飲食料品は+1.6%。その他は、家庭用電気機械器具で+25.9%など。
なお、6月25日に日本百貨店協会が発表した5月の全国百貨店売上高概況によると、円安や高額品の価格上昇などによりインバウンド(免税売上)が前年同月比+16.7%、国内顧客売上が+7.4%といずれも高い伸びをみせている。
スーパーは、衣料品で▲0.9%、主力商品である飲食料品で+3.5%、その他は、家庭用電気機械器具で+29.5%など。
コンビニエンスストアは1兆1,367億円、+1.3%、家電大型専門店は4,716億円、+27.5%、ドラッグストアは8,363億円、+7.3%、ホームセンターは3,367億円、+9.0%。
家電大型専門店の伸び率が大きく、2027年の省エネ基準引き上げ前の買い替え需要もありエアコンの販売が増加したことなどによる。
経済産業省は参考として提示している小売業販売額の基調判断につき、季節調整済指数前月比の5月までのトレンドとして「上昇傾向にある小売業販売」とした。ただし、小売販売額は物価変動を含めた名目値であり、物価上昇による押し上げの影響も大きいとみられる。
- [米国/データセンター事情]2026年も半分が終わろうとしている。中東問題で景気後退が懸念されたが、AIやデータセンター向け投資が活発だったことで景気の底割れは回避された感もある。中東が鎮静化しつつあることで、該当する銘柄に集中していた投資資金が離散しつつあるとの指摘もある。AIやデータセンターへの投資資金が分散されはじめた理由は、おそらくこれだけではなく、その事業展開について、新たな課題と直面しているからだろう。前者は安全保障そのもの、後者についてはより複雑な状況となっている。米国ではミシガン州がデータセンター反対の縮図になっていると描かれるようになった。現地報道によれば、州内で少なくとも11のデータセンター建設計画があり、住民の反対で2件が停滞している。他方で、地元が反対したことで建設遅延に陥りつつあったが自治体に訴訟を起こし、高額訴訟を避けたことで、反対があるものの当初の通り開発が認められた案件も確認されている。Data Center Watch(データセンター関連専門メディア)とNBC(大手テレビ局)は、2026年第1四半期で阻止・遅延されたプロジェクトは75件、1,300億ドル相当になると報じており、反対派の勢力も拡大している。こうした傾向は、かつてミシガン州で農家が再生可能エネルギー設備の建設に反対したことで投資案件が停止・遅延した経緯を投影しているとの見方もある。データセンター建設ブームでその計画は都市部から農村部へ移り、住民が電力・水・土地・税負担を意識するようになった。ピュー・リサーチ・センターによれば、米国には3,000超の稼働中データセンターがあり、1,500超が計画・建設・土地確保段階にある。特に新規計画の67%が農村部に立地する一方、既存施設の87%は都市部にあるため、「これまでデータセンターを身近に感じなかった地域」が急に当事者になっている。世論調査からも明確に逆風となっている。ピューが2026年1月に実施した調査では、データセンターについて「環境に悪い」39%、「家庭の電気料金に悪い」38%、「近隣住民の生活の質に悪い」30%で、いずれも「良い」を大きく上回った。もちろん、「雇用」「税収」ではプラス評価となっているので、住民の意識としては一枚岩の「反テック」ではない。つまり、便益よりも地元負担が大きいとの感情が先立っている。また、Gallupの2026年3月調査では、AIデータセンターを自分の地域に建てることに7割が反対している。その理由は水・電力など資源消費、環境汚染、生活の質、電気料金上昇などに分散している。地域の問題となっているように、今後の選挙では重要な争点となり得る。赤か青か、右か左かは然したる問題にはならないかもしれない。選挙の争点になるとしたら、以下の5つに整理できる。まずは電力と料金。データセンター用の送電網・発電設備の増強費を一般家庭や中小企業が負担するのではないか、という懸念が非常に強い。第二に水資源。冷却用水の使用量が干ばつ地域や農村部で問題化している。第三に騒音・大気汚染。冷却設備の低周波音や非常用ディーゼル発電機が、住宅地や学校・病院・高齢者施設の近くで反発を生んでいる状況だ。第四に土地利用。農地、森林、住宅地、動物園、環境保護地区など、地域が大事にする土地との衝突と言える状況が起きている。そして最後は手続きと税優遇。秘密保持契約、税控除、雇用創出の実態、自治体の情報公開不足が「地元がだまされている」という感情につながっている。こうした新たな課題への対応がデータセンター建設の必要条件となり、これまでの期待通りというわけにはいかないようだ。
- [『世界エネルギー統計2026』の公表]6月29日、英Energy Instituteが「世界エネルギー統計2026」を公表した。今回は前身の英BPによるいわゆる「BP統計」時代から75周年の記念版となっており、この75年間で世界のエネルギー需要が6倍、世界経済は14倍、平均寿命は47歳から74歳へ拡大してきたなかでのエネルギーシステムの変化の振り返りが盛り込まれている。
世界のエネルギーシステムは地域ごとの戦略の違いが鮮明になってきた。米国は豊富な国産化石燃料を活用し、欧州は化石燃料依存の低減と重要鉱物・LNGへの依存管理、中国は再生可能エネルギーを急拡大させつつ化石燃料を保険として維持、中東は炭化水素とクリーンエネルギーを並行して拡大するなど、エネルギー安全保障を巡る戦略は大きく分岐している。
統計によると、2025年の世界の総エネルギー供給は前年比1.7%増の600EJ超となり、初めて600EJを突破した。景気後退期を除けば、再生可能エネルギーが供給拡大の最大の要因となったのは初めてで、増加分の71%を太陽光発電が占めた。一方、化石燃料も絶対量では増加を続け、なお総供給の86%を占めている。電力分野では太陽光発電が前年比30%増と大きく伸び、発電量シェアは8.7%となって初めて風力を上回り、原子力にほぼ並んだ。また、再生可能エネルギー(水力を含む)の発電シェアは33.4%となり、石炭火力を初めて上回った。
一方で、総エネルギー需要は増加を続け、化石燃料を含む全てのエネルギー源が過去最高水準に達した。報告書は、今後の課題は再生可能エネルギーの導入拡大そのものではなく、送電網や蓄電池など電力システム全体の対応力強化にあると指摘している。
また今回からデータセンターによる電力消費量のデータも新たに追加された。S&P Globalのデータを引用し、2025年のデータセンターによる電力消費量を788TWhと推定(47か国におけるデータセンターの設備容量ベースで算出。
サーバー室・マイクロデータセンター・通信ハブなどは除外)。前年比+19.7%と極めて高い伸びとなり、2020年(410.8TWh)から5年でほぼ倍増した。消費の40%が米国に集中しており、米国の電力需要の伸び(前年比+3.2%)加速の一因となっている。データセンターもEV等と並ぶ大きな電力需要源となっている。
- [ベラルーシ/ウクライナ参戦に慎重姿勢]6月29日、中国の習近平国家主席は、ベラルーシのルカシェンコ大統領と北京で会談し、ベラルーシの国家主権、独立、領土の一体性に対し支持を表明した。これはロシアへの過度な依存を避けたい『ミンスク』の思惑を反映しているとみられる。ルカシェンコ大統領は、ロシアとの同盟関係を維持しつつも、ウクライナ戦争への直接関与拡大には慎重な姿勢を改めて示した。週末にはプーチン大統領と会談した一方、ミンスクではロシア政府関係者に対し「我々が戦争に引き込まれる必要はない」「ウクライナ人と戦うつもりはない」と発言し、自国軍の参戦回避を強調した。ウクライナは6月、ロシアのドローン攻撃を誘導していたベラルーシ国内の通信中継局4拠点の停止をベラルーシに要求した。応じない場合は攻撃すると警告し、ベラルーシ側は6月22日までにこれらを停止した。ロシアはベラルーシに「北方の第二戦線」を開くよう圧力を強めており、近年、ロシアは戦術核兵器や中距離ミサイル「オレシュニク」をベラルーシに配備するなど軍事的一体化を進めている。専門家の間では、ロシアの戦況悪化を背景にルカシェンコ氏が政権維持を最優先課題とし、対ロ従属を深め過ぎることを回避しようとしているとの見方が出ている。
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