- [米国・イスラエルとイランの攻撃の応酬]米国とイスラエルによるイランへの攻撃が激化し、軍事・インフラ・経済の各面で影響が拡大している。4月2日にはテヘラン近郊の高速道路橋が空爆され、8人が死亡、約100人が負傷した。同橋は短時間に2度攻撃され、救助活動中の現場が再び標的となる「ダブルタップ攻撃」が確認されている。米側は同橋が軍事輸送に利用されていたと説明しているが、イランは報復を宣言し、今後は地域のあらゆる橋が正当な標的になり得ると警告している。
また、イラン国内では主要製鉄所が繰り返し攻撃され操業停止に追い込まれ、復旧には半年以上を要する見通しとなっている。鉄鋼は軍需生産に不可欠なため、軍事能力にも影響が及ぶ可能性がある。これに対し、イランは湾岸地域やイスラエルへのミサイルやドローンによる攻撃を継続している。
ホルムズ海峡を巡っては、英国主導で40か国以上がオンライン会合を開き、イランに対し同海峡の即時開放を要求した。封鎖が続く場合は制裁も検討されており、日本や欧州、湾岸諸国も参加したが、米国は加わっていない。一方でイランは海峡の監視強化や通航管理に関する協定を検討しているとされる。
湾岸諸国では、戦争長期化への懸念から外交的解決を求める動きが強まっている。サウジアラビアやカタール、クウェートなどは停戦志向を強め、代替輸出ルートや防衛協力の強化を進めている。一方で、米国の対応に対する不信感も高まり、トルコやパキスタンなど新たなパートナーとの連携模索が進んでいる。
戦闘はレバノン方面にも波及し、ヒズボラによる攻撃とイスラエルの応酬が続いている。イスラエル国内では戦争支持が低下し、停戦を求める声が増加している。戦争は2か月目に入り、目的や戦略の変化が続く中で、軍事・外交の両面で不確実性が高まっている。
- [中東情勢/アフリカ農業影響]4月2日、国連開発計画(UNDP)は「中東紛争によるアフリカへの影響」と題した報告書を発表した。UNDPは同紛争が6か月継続した場合、2026年のアフリカの実質GDP成長率は0.2pt低下すると指摘した。アフリカ開発銀行(AfDB)が3月30日に発表した経済見通しでは、同じく紛争が6か月継続した場合、成長率は1.5pt低下し、2.8%成長に留まるとの予測を示していたことから(3月30日デイリー・アップデート参照)、AfDBよりは楽観的な見通しを示している。 UNDPは、中東紛争の影響の程度はアフリカ各国の中東への輸入依存度や世界市場の状況によってバラつきが生じると説明。紛争が長期化するほど海運ルートやエネルギー・肥料供給への混乱が深刻化し、アフリカ全体で成長が大幅に鈍化するリスクが高まるとしている。特に肥料供給の途絶は石油ショック以上に深刻な影響を及ぼす可能性があると指摘。アフリカ各国で3~5月は作付けシーズンであるにもかかわらず、湾岸諸国での天然ガス生産の減少がアンモニアや尿素の生産に影響を与えていることが肥料コストの上昇と不足を招いており、アフリカでの食料生産の制約や食料価格の上昇を招くと懸念を示している。 人口約12.9億人(2025年、世銀)のサブサハラ・アフリカ(以下サブサハラ)はGDPの約18%を農業が占めている。農業の就労人口は6.2億人と全人口の約半数を占めている一方で、生産性が低いことから主食をはじめとした食料を自給できず、穀物の輸入だけでも年間162億ドル(2024年国連統計)で輸入全体の3.5%を占めている。肥料の輸入も年間59億ドル(総輸入の1.3%)に上る。 今後、世界全体で油価の高騰や肥料の不足が続けば食料価格も上昇し、生活必需品である食料・肥料のアフリカの輸入額は増加する恐れがある。さらにアフリカで肥料価格が高騰・不足すれば、生産コストは上昇し、食料生産量自体が落ち込むことでさらに食料輸入が必要となり、エネルギーとあわせてインフレ上昇圧力となり得る状況だ。 特に肥料価格の高騰の影響は、GDPに占める農業の割合が26.9%と、地域別で最も高い東アフリカで最も大きくなる可能性がある(なお、南部アフリカは18.8%、西アフリカは24.8%)。東アフリカは金を除き、アフリカの中でもエネルギー・鉱物資源に恵まれた地域ではないため(注)、すべての国がエネルギーおよび肥料の純輸入国である。また、地理的に中東に近く、インド洋を介した貿易が活発な地域であるため、エネルギー輸入の大半をアラブ首長国連邦(UAE)、オマーンなどの湾岸諸国に依存している。そして、肥料輸入についても中東依存度が高い。 東アフリカ最大の経済規模を持ち、農業国でもあるケニア(GDPの23.8%が農業)のサウジアラビア、カタールからの肥料輸入は全体の34%を占める。同じく農業国のタンザニア(同28.1%)もサウジアラビア、カタール、オマーンからの輸入が38%と、輸入依存度が他のアフリカ地域と比べても高い。そして東アフリカの国々は農業国であるがゆえに、主要輸出品もまた肥料を投入して生産される農産品である。例えば、ケニアの最大の輸出品である茶(14億ドル)は輸出全体の17%を占め、切り花、コーヒー、デーツを含めると全体の6割近くに達する。特に茶の主要輸出先はUAEやサウジアラビア(全体の約8%、最大の輸出先はパキスタン)だったことから、これらの湾岸諸国向けのケニア産の茶の輸出が滞り、国内に茶葉がため置かれる事態となっている(4月2日付、ロイター通信)。これまで主要な外貨獲得源となっていた輸出向け農産品の生産・輸出が減少すれば、対外収支を悪化させ、自国通貨の価値低下を通じてさらなるインフレ圧力となる恐れがある。 (注)ウガンダではアルバート湖で産出される原油がタンザニアのタンガ港までの1,443kmのパイプラインを通じて2026年中に輸出開始予定。タンザニアでも深海天然ガス開発プロジェクトが検討されており、域内での炭化水素生産量は拡大する見込み。
- [パナマ運河と米中対立]4月2日、米国のルビオ国務長官は、中国がパナマ船籍船舶に対する検査や遅延を強化しているとの懸念を示し、パナマ支持を明確にする声明を発表した。トランプ米政権はパナマ運河における中国の影響力排除を目指し、パナマ政府が香港系企業の港湾運営権を剥奪したことが関係しているのではとみられる。
米連邦海事委員会(FMC)は、中国におけるパナマ船籍船の拘束・検査が「歴史的水準を大きく上回る」と指摘している。また、ロイズ・リスト(英国の海運専門紙)のデータでは、3月8日以降に拘束された船舶が約70隻に達し、短期間で急増したとされる。 さらに、3月単月では中国港湾で拘束された船のうち92隻がパナマ船籍で、全体124隻中の大半を占めたと報道されている。
一方、中国側はこれを否定し、米国が運河支配を狙っていると反論している。
- [ペルー総選挙迫る]ペルーでは、4月12日に総選挙がおこなわれ、6月7日の大統領決選投票を経て、7月28日に5年任期の次期政権が発足する。現在のバルカサル大統領は、2021年のペドロ・カスティージョ氏以降で4人目、2016年のクチンスキー氏以降では8人目となっており、政治情勢そのものは依然として不安定要因を抱えている。
選挙戦では保守派候補が引き続き優位に立っている。最新の世論調査によると、候補者34人のうち、4度目の大統領選出馬となるケイコ・フジモリ氏が11%で首位を維持し、続いて元ペルー市長のラファエル・ロペス・アリアガ氏が9%、コメディアンのアルバレス氏が7%と続き、左派候補は4位以降となっている。
右派候補が優勢なのは、治安問題が有権者の最大の関心事となっているためであり、これは周辺国にも共通する傾向となっている。ただし、ペルーでは投票直前に支持が大きく動く例が多く、右派候補が有力視される一方、左派候補が決選投票に残る余地も残されている。投票は義務制で、棄権には罰金が科されるが、多くの有権者がまだ未決定、あるいは白票・無効票を投じる意向を示している。
議会は憲法改正により、130人の下院議員と60人の上院議員からなる二院制が再導入される。上下両院ともに過半数を占める勢力が存在せず、大統領はいずれの院でも安定した多数派を持たない可能性が高いが、次期政権で政治的な安定性を築けるかが注目される。これまで、議会は「道徳的無能力」を理由に大統領を解任する強い権限を保持しており、一院制だったことから、議会の力も強く十分な政治的なチェック機能が十分に働かなかったとの指摘が多いが、二院制となることで、どこまで政権が続くかに注目が集まる。
ただ、こうした政治状況の下で、経済見通しの主なリスク要因は、選挙結果そのものよりも、イラン戦争の動向やエルニーニョ現象といった外部要因に左右される。経済成長率は2026年がおよそ3%、2027年は3.4%程度と見込まれている。
- [米国/雇用環境]労働省によると、3月28日までの1週間の新規失業保険申請件数は20.2万件(▲0.9万件)へ減少した。減少は2週間ぶりであり、市場予想(21.2万件)を下回った。2025年同時期(21.9万件)を下回っており、年始から20~23万件のレンジを推移していることを踏まえると、労働市場は底堅く推移していると言える。
また、3月21日までの週の継続受給者数は184.1万人(+2.5万人)へ、2週ぶりに増加した。年始から180万人台で推移している。ただし、給付資格(多くの州で上限26週になっている)を使い切った人が多いとも報じられており、継続受給者数の見た目ほど雇用環境が底堅いわけではない可能性もある。
一方、民間再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、3月のテック企業の人員削減計画数は1.9万人だった。前年同月比約24%で増加しており、Q1の合計は5.2万人で2023年同時期以来の高水準になった。また、米企業全体の人員削減計画は6.1万人であり、特にAIを理由にあげた企業が全体の4分の1を占めたという。テック企業を中心に労働力がAIに代替される動きが目立っていると報じられている。
ならしてみると、雇用環境はまだ底堅く推移している。週末に発表される雇用統計で、労働市場の現状について確認する必要がある。
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