- [ロシア中銀、主要政策金利を14.00%へ引き下げ]7月24日、ロシア中央銀行(CBR)は金融政策決定会合で、主要政策金利を14.25%から14.00%へ0.25ポイント引き下げた。市場では据え置き予想も多かったため、今回の決定はややハト派的なサプライズとして受け止められた。CBRは、2026年第2四半期のロシア経済が「緩やかな成長」にとどまっていることに加え、基調インフレ率がおおむね年率4~5%の目標レンジに収まっている点を重視した。一方で、足元の物価上昇や期待インフレ率の高まりについては、燃料価格上昇など一時的要因の影響が大きいとの見方を示した。7月20日時点の年間インフレ率は5.9%となっている。
また、企業向け融資の伸び鈍化や企業景況感の悪化が確認されており、CBRは2026年の国内総生産(GDP)成長率見通しを0.0~1.0%へ下方修正した。投資活動は回復傾向にあるものの全体として勢いを欠き、企業の需要・生産見通しも弱含んでいる。ただし、中銀は財政拡張や一部産業の供給制約が今後のインフレ圧力につながる可能性を警戒しており、今後の利下げペースについては慎重姿勢を維持した。今回の決定は「景気下支え」と「インフレ抑制」のバランスを意識した小幅利下げと評価できる。今後もインフレ動向や期待インフレ率を注視しながら段階的な金融緩和が続く可能性があるが、利下げ余地は限定的とみられる。 - [米イラン緊張緩和も紅海情勢悪化]米国は約2週間続けてきたイランへの空爆を停止し、軍事行動の拡大を当面見送る方針を固めた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ大統領は側近らとの協議で、防空ミサイルの在庫減少や中東全域への戦火拡大、世界的なエネルギー危機、湾岸諸国との関係悪化などのリスクを重視し、大規模攻撃を見送る判断を下したという。統合参謀本部は迎撃能力の低下を警告し、中東を管轄する中央軍司令官も「攻撃目標はおおむね達成された」として作戦終了を進言したと報じられた。トランプ氏は24日、「必要であれば大規模攻撃を実施する準備は整っている」と強調する一方、軍事的圧力を維持しつつ、イランとの交渉再開も視野に入れている。
イランとオマーンの外務次官はホルムズ海峡の航行管理について協議し、「建設的な進展」があったと発表した。イラン側も報復措置を停止する姿勢を示ており、米イラン間の緊張はひとまず和らいでいる。ただ、現場では依然として緊迫した状況が続き、偶発的な衝突に発展する危険性は残る。
懸念されるのは、イエメンの反政府武装組織フーシ派の動向である。フーシ派は紅海南部のバーブルマンデブ海峡周辺でサウジアラビア関連の船舶や石油施設への攻撃を強めており、サウジ主導の連合軍も報復空爆を実施した。ホルムズ海峡に続き、紅海の主要航路まで脅かされれば、中東産原油の輸送網全体に大きな影響が及ぶ恐れがある。
サウジアラビアは東西パイプラインを利用してホルムズ海峡を迂回できるが、紅海ルートまで遮断されれば代替手段は限られる。スエズ運河やエジプト・イスラエルのパイプラインを組み合わせる方法はあるものの、輸送能力や大型タンカーの通航制限、輸送日数の増加など課題は多く、物流コストの大幅な上昇は避けられない。こうした供給不安への懸念から、ブレント原油価格は過去2週間で約27%上昇した。
今回の情勢は、米イラン対立だけでなく、ホルムズ海峡とバーブルマンデブ海峡という二つの重要な海上輸送路の安全が同時に揺らいでいる点が特徴である。軍事衝突はいったん落ち着きを見せているが、中東のエネルギー供給を巡る不透明感はなお強い。特に日本、中国、韓国、インドなどサウジ産原油への依存度が高いアジア諸国は、今後の情勢次第でエネルギー価格や物流面で大きな影響を受ける可能性がある。
- [アフリカ/2025年FDI]国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した「世界投資報告2026」によると、2025年のアフリカ向けの対内直接投資額(FDI、フロー)は695億ドルで、全世界のFDIの約4%、開発途上国全体では8%だった。24年はアブダビ開発持株会社(ADQ)によるエジプトの「ラス・エル・ヘクマ」不動産開発プロジェクト(約240億ドル)がけん引し、アフリカで過去最高のFDI額を記録したが、25年は超大型プロジェクトの不在により前年比▲26%となったものの、過去3番目のFDI額となった。
地域別では、エジプトを含む北アフリカが224億ドルと、アフリカ全体のFDI受け入れ額の約1/3を占めたが、前年比▲56%となった。ナイジェリアを含む西アフリカは前年比約20%増となる196億ドルを記録。エチオピア・ケニアなどを含む東アフリカ(約145億ドル)、南アフリカを含む南部アフリカ(81億ドル)、コンゴ民主共和国(DRC)を含む中部アフリカ(約48億ドル)と続いた。
国別ではエジプトが155億ドルで、4年連続で受け入れ額一位となった。カタールの政府系不動産開発会社「カタール・ディアール」による「アラム・エル・ルーム」不動産プロジェクト(35億ドル)などがあった。2位は西アフリカのギニアの78億ドルで、シンガポール・中国企業等で構成されるSMB-Winning社による12億ドルのアルミナ精製所や、「シマンドゥ」鉄鉱石・輸送プロジェクトなど鉱物資源の開発があった。3位はイタリア資源大手・ENIらによる洋上液化天然ガスプロジェクト(FLNG)の最終投資決定(FID)が行われたモザンビーク(57億ドル)で、深海鉱区での原油開発が進むナイジェリア(40億ドル)、アフリカ屈指の経済成長を実現しているエチオピア(約38億ドル)、原油パイプラインプロジェクトの開発が進むウガンダ(34億ドル)が続いた。対照的に、アフリカ最大の経済規模を有する南アフリカは約23億ドルの資金流出となった。
UNCTADによると、過去5年のアフリカ向けFDIをセクター別にみると、「エネルギー・ガス・再生可能エネルギー」が総額2,890億ドルと最大で、鉱物(710億ドル)、建設(600億ドル)と続くとのこと。FDIのストックでは、歴史的に欧米諸国の割合は依然として高いものの、2021年以降はアフリカ向けの最大の投資国はUAE(2024年までの累計で約2,600億ドル、2010年時点で640億ドル)で、中国は1,690億ドル(2010年時点で240億ドル)と続くなど中東・アジア企業の存在感が増している。2026年のアフリカ向けFDIは、中東情勢を受けたエネルギー・鉱物プロジェクトの動向の変化や、湾岸諸国の投資家が引き続き北アフリカを中心に大規模プロジェクトを進めていくかも影響するだろう。 - [アジア/301条関税の影響]7月24日、米国で通商法301条に基づく関税が発動された。米国政府は2025年4月以降に国際緊急経済権限法に基づく相互関税を適用してきたが、今年2月に連邦最高裁によって違憲判決が下された。相互関税の代替措置として同月に通商法122条に基づく関税(一律10%)が導入されたが、適用期限である7月24日に失効した。米国政府は通商法301条に基づき関税を課した形である。
今回の決定により、アジアではインド、マレーシア、カンボジア、バングラデシュ、台湾、インドネシアなどに10%の関税が適用される一方、中国、ベトナム、日本、韓国、タイ、フィリピンなどは12.5%の関税が課される。昨年に発動された相互関税と比べ、本関税がアジア諸国の経済に与える影響は小さくなると考えられる。10%の関税が適用される国に関しては、関税率は以前と変わらない。ベトナム、タイ、フィリピンに関しては12.5%の関税率が課されることになるが、税率の上昇幅は2.5ポイントにとどまる。また本関税は、医薬品とその関連製品や鉄鋼・アルミなどの特定品目や、これまで米国との間で締結された相互貿易協定(ART)の中で指定された品目(バングラデシュのアパレル製品など)に対しては適用が除外される。例えばインドに関しては、医薬品は米国向け輸出額の約6%を占める主要輸出品であるため、本関税は適用されないことになる。12.5%の関税が課される国に関しても、米国のAI関連需要の増加を背景にASEANを中心に米国向けの電子機器・機械製品の輸出は急増しているため、本関税を適用したとしても、米国向け輸出がどれだけ減少するかは不透明である。
他方で、一部のアジアの国には追加関税が課される可能性があることには留意が必要である。今年3月より、米国通商代表部によりインド、バングラデシュに加えてASEAN6カ国(カンボジア、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナム)を含む16カ国を対象とした過剰生産に関する調査も進んでいる。本調査により、当該国が過剰生産能力を有していると判断された場合には、追加関税や輸入制限措置が実施されかねない。その場合は米国向け輸出が低迷し、経済成長率の押し下げ要因となる可能性がある。 - [ブラジル/米関税]2026年7月現在、米国はブラジルからの一部輸入品に対し、最大37.5%の追加関税を課している。今回の関税は、主に通商法301条に基づく25%の追加関税と、強制労働に関する調査結果を根拠とする12.5%の関税を組み合わせたものとなっている。対象となるのは機械類、電気機器、金、タイヤ、砂糖、衣料品などで、ブラジルの対米輸出全体の約16.5%が最高税率の適用を受ける。一方、コーヒー、オレンジジュース、牛肉、原油、民間航空機などは除外措置の対象となっている。これらは米国内の物価上昇や供給網への悪影響を抑えるための措置とされている。
米国市場への依存度が高い砂糖、機械、繊維、タイヤ産業は価格競争力の低下に直面している。2026年上半期のブラジルと米国の貿易額は前年同期比で12.8%減少し、対米輸出は1990年代後半以来の低水準まで落ち込んでいる。しかし、この状況はブラジルにとって必ずしも一方的な打撃ではない。米国市場への依存度を下げる動きが加速し、中国やEU、インドなどへの輸出拡大が進んでいる。2026年上半期には対中国貿易が15.9%増加し、対EU貿易も6.1%増加した。ブラジル産の農産物や鉱物資源がこれらの市場に振り向けられているためである。
ブラジル側では、今回の措置に対する反発も強まっている。過去15年間、米国はブラジルとの貿易で累計4,280億ドルの黒字を計上しており、ブラジル政府や産業界からは、貿易黒字国である米国が保護主義的措置を取っていることへの批判が出ている。ルーラ大統領も不当であり戦略的な誤りだとして米国の関税政策を強く非難した。
ブラジル政府は対抗策として、中国やBRICS諸国との経済連携強化、メルコスールとEUとの自由貿易協定の早期発効、多角的な貿易外交の推進を進めている。また、世界貿易機関(WTO)の枠組みを活用し、米国の措置が国際貿易ルールに違反している可能性があるとして法的対応も検討している。さらに、関税の影響を受ける国内産業に対しては、市場開拓支援や金融支援などを通じて輸出先の多様化を後押しする方針である。
こうした通商摩擦は、2026年のブラジル大統領選挙にも影響を与えている。ルーラ大統領は、外国の圧力に屈しない自主外交を強調し、ナショナリズムと経済主権を訴えることで支持固めを図っている。一方、正式に出馬表明をしたフラヴィオ・ボルソナロ氏は米国やトランプ陣営との近い関係をアピールしてきたが、高関税が発動したことで親米路線はブラジル経済に利益をもたらさないという批判にさらされている。現在両者の支持率は5%ほど離れており、ルーラ大統領の優勢は変わっていない。 - [日本/企業向けサービス価格(6月速報)]7月27日、日本銀行は企業向けサービス価格指数(2020年平均=100)の6月速報値を発表した。企業向けサービス価格指数は、企業間(民間企業のほか公的企業や官公庁も含む)で取引されるサービスの価格動向を示す。
6月の総平均は114.3で前年同月比+3.2%と、3月から4か月連続で3%台となったが、上昇幅は5月の+3.4%から縮小した。縮小は6か月ぶり。
内訳をみると、労働者派遣サービス、土木建築サービス、建物サービスなどを含む諸サービスが、総平均の前年同月比(+3.2%)に対する寄与度が最も高かった(寄与度:1.03%ポイント)。5月の+3.0%から6月は+2.7%と上昇幅が縮小した。宿泊サービスが+2.4%(5月:8.3%)となったことなどによる。
次いで寄与度が高かったのは運輸・郵便(寄与度:0.86%ポイント)で+5.3%と、5月の+5.5%から上昇幅が縮小した。中東情勢の影響を受け、燃料油価格の上昇などから外航貨物輸送(+52.8%、5月:+61.8%)や国際航空貨物輸送(+48.0%、5月:+57.7%)の上昇が引き続き顕著だが、いずれも前月から上昇幅は縮小した。
企業向けサービスを、生産額に占める人件費投入比率の高低で分類した指数をみると、低人件費率サービスは+3.7%(5月:+4.5%)と上昇幅が縮小の一方、高人件費率サービスは+2.7%(5月:2.6%)と上昇幅が拡大したことから、人件費をサービス価格に転嫁する動きがみられる。
調査対象の146品目のうち、前年同月比で価格が上昇したのは115品目、下落したのは16品目、変わらなかったのは15品目となった。
企業向けサービス価格は、企業物価指数(企業間のモノの取引の価格動向)とともに、川下に波及することで今後の消費者物価指数に影響を与える。7月10日に日本銀行より発表された国内企業物価指数の6月速報値は+7.1%と、2月の+2.1%から4か月連続で上昇幅が拡大している。6月の企業向けサービス価格は5月に比べると一服感がみられるものの、中東情勢の先行きが一進一退のなか、モノ・サービスともに今後さらなる価格上昇に繋がる可能性がある。
- [銅:気候変動・水リスクが供給課題に]7月中旬、チリ中部からアタカマ地域にかけての豪雨・高地での豪雪・強風により、Codelco・Antofagasta・Lundinなど複数の銅鉱山会社が冬季の緊急対応措置を発動した。具体的には、鉱山サイトへのアクセス制限、露天掘り採掘作業や鉱石輸送の一時停止などの措置が取られたと報じられている。また、電力・道路・港湾などのインフラにも局地的な影響が生じた。一方、世界最大級のEscondidaをはじめとするチリ北部主要鉱山では大きな混乱は報告されていない。
現時点では数日規模の操業停止が中心で、世界の銅供給への影響は限定的とみられる。しかし7月26日付英紙『Financial Times』は、今回の事例は一時的な供給障害にとどまらず、気候変動に伴う異常気象や水リスクがAI向けデータセンターや送配電網、再生可能エネルギーの拡大に不可欠な銅の供給における構造的課題になりつつあることを示していると報じている。鉱石品位の低下に伴い、同量の銅を生産するために必要な水使用量は増加しており、干ばつや洪水など極端気象の頻発は、今後の操業停止や価格変動リスクを高める可能性がある。
業界団体ICMMによると、世界約1万2,000か所の金属・鉱山施設の約3分の1は水ストレスの高い地域に立地しており、チリは特にリスクの高い国の一つに挙げられる。国際エネルギー機関(IEA)も7月16日に公表した『Global Critical Minerals Outlook 2026』で、チリやペルーなどでは現在の銅生産水準を維持することにも苦戦していると述べた。国連大学(UNU-INWEH)も4月に「重要鉱物と水」をテーマにした報告書を公表し、重要鉱物開発は水不足や水質汚染など地域社会への大きな影響を伴うと指摘した。「水と鉱業」は供給面・環境面の双方から重要課題として注目を集めている。 - [トルコ/金融政策]トルコ中央銀行(TCMB)は7月23日の金融政策決定会合で、政策金利(1週間レポ金利)を37.0%に据え置いた。オーバーナイト貸出金利は40.0%、借入金利は35.5%で、それぞれ据え置かれており、高インフレ抑制を最優先とする金融引き締め姿勢を維持している。TCMBは声明文の中で、6月のインフレ基調には鈍化の兆しが見られる一方、7月には一時的な再加速の可能性があるとも指摘した。中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格上昇を重要なリスク要因として挙げ、必要に応じて追加の金融引き締めも辞さない姿勢を示している。中長期的なインフレ目標である5%も維持された。
トルコの消費者物価上昇率は2026年6月時点でも前年比32.1%と依然高水準にある。2024年の70%超というピークからは大幅に低下したものの、主要国の中では依然として突出しており、TCMBは景気支援よりもインフレ再燃防止を優先している。特にトルコはエネルギー輸入依存度が高く、原油価格の上昇が国内物価へ波及しやすい経済構造を抱えている。かつて1ドル=2リラだったトルコリラの対ドルレートは1ドル=47リラと暴落状態が続いていることも輸入から国内物価を押し上げやすくしている。
トルコは人口増加、豊富な若年労働力、欧州市場への近接性、製造業の集積などを背景に、「欧州の生産拠点」として期待を集めてきた。海外からの国債投資、株式投資、銀行融資、直接投資が流入し、慢性的な経常赤字を支えていた。しかし、2018年以降は金融政策への政治介入が強まり、中央銀行の独立性に対する懸念が高まったことで、投資家の信認は大きく低下した。特に、インフレ高進局面にもかかわらず利下げ圧力が継続された結果、実質金利のマイナス化、外貨準備の減少、中銀総裁の頻繁な交代などが発生した。この時期のリラ安は、単純な成長期待の低下というよりも、「中央銀行や政策への信認喪失」が主要因と考えられる。
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