- [パナマ/石油ターミナル国営化]パナマ政府は2026年7月、戦略的エネルギーインフラであるパナマ石油ターミナルの完全な国有化に向け、米国企業NIC Holding Corpが保有する残り41%の株式を取得する手続きを開始した。取得価格はまだ公表されていないが、これは一方的な接収や国有化ではなく、1977年に締結された協定に基づく契約上の買い取りである点が強調されている。
パナマ石油ターミナルは、大西洋側と太平洋側を結ぶパイプラインと石油貯蔵施設を運営する重要な物流拠点であり、1977年にパナマ政府と米国企業の共同事業として設立された。当時のパナマ運河には通航能力の制約があり、大型タンカーによる原油輸送を補完する目的で整備された経緯がある。
この施設は、パナマ運河を利用せずにカリブ海側から太平洋側、あるいは米国東海岸方面へ石油や石油製品を輸送できる点にある。運河の混雑や水位低下による通航制限が発生した場合でも代替ルートとして機能することもできるため、地域のエネルギー供給網において重要な役割を担っている。
今回の買収について、パナマ政府は三つの目的を挙げている。第一に、パイプライン事業から得られる利益や配当をすべて国家が受け取れるようにする。現在は民間株主と利益を分配しているが、完全所有になれば収益をすべて国内投資に活用できる。
第二に、重要なエネルギー・物流資産に対する国家の管理権を強化する。近年、多くの国でエネルギー安全保障の重要性が高まっており、パナマも重要インフラへの統制を強めたい考えがある。第三に、得られた収益を将来的なエネルギー、港湾、物流インフラへの投資に振り向ける。パナマ運河に加え、港湾やパイプラインなどの関連インフラ強化を国家戦略の柱としている。
政府によれば、買収資金はパナマ石油ターミナル自身が生み出すキャッシュフローや収益を活用して賄うため、新たな国債発行や追加の財政支出は必要ないとされている。
また、中南米では過去に資源やインフラの強制的な国有化が行われた例もあるが、今回のケースは契約に基づく買収であり、政府も収用ではないことを繰り返し説明している。そのため、市場では法的安定性や投資家保護の観点から比較的穏やかに受け止められている。政府は運営面での混乱を避けるため、既存従業員の雇用や、取引先との契約も継続される予定となっている。
今回の取引が完了すれば、パナマ政府の保有比率は現在の59%から100%へ上昇する。約50年にわたって続いた官民共同運営体制は終了し、施設は完全な国有インフラとなる。パナマがエネルギー安全保障と物流主権を強化し、運営効率や設備投資の拡大、さらには地域エネルギー市場における競争力維持が重要な課題となると考えられる。 - [米国/生産・マインド・輸入物価]連邦準備理事会(FRB)によると、6月の鉱工業生産指数は前月比+0.1%となり、5月と同じだった。生産は3か月連続で増加した。
内訳を見ると、製造業(0.0%)は横ばいであり、6か月連続のプラスを維持した。鉱業(+0.4%)は3か月連続プラス、公益事業(+0.4%)は2か月ぶりのプラスだった。製造業のうち、耐久財(▲0.1%)が3か月ぶりに小幅に減少した一方で、非耐久財(+0.2%)は2か月ぶりに増加した。耐久財のうち自動車・同部品(+0.7%)は3か月連続、電算機類(+0.1%)は6か月連続で増加したのに対して、一般機械(▲0.7%)は4か月ぶり、電気機械(▲0.6%)は5か月ぶりに減少した。また、非耐久財では化学(▲0.2%)が3か月連続で減少したものの、石油・石炭製品(+2.1%)は3か月ぶりに増加し、衣服・革製品(+1.9%)やプラスチック製品(+0.1%)も2か月連続で増加した。
ミシガン大学の7月の「消費者調査」によると、消費者信頼感指数は54.4となり、6月(49.5)から上昇した。市場予想(51.0)を上回り、2月(56.6)以来、5か月ぶりの高水準になった。また、1年先の期待インフレ率は4.2%で、6月(4.6%)から低下した。5年先は3.3%で横ばいだった。ただし、調査期間は6月23日~7月13日であり、米国とイランの合意の崩壊以降に全体の70%超の回答が完了していたという。そのため、現時点で調査すれば、今回の結果ほど消費者マインドは持ち直しておらず、期待インフレ率も低下していないと考えられる。
労働省によると、6月の輸入物価指数は前月比+0.3%となった。市場予想(▲0.7%)に反して上昇した。なお、5月(+1.7%)は速報(+1.9%)から下方修正されており、4月(+2.1%)から2か月連続で減速した。
内訳を見ると、輸入燃料が▲0.4%と、1月以来のマイナスに転じた。3~5月は2桁上昇だった。燃料以外の輸入品は+0.4%、5月(+0.7%)から小幅な減速にとどまった。また、6月の前年同月比の上昇率は+7.1%と5月(+6.6%)から拡大し、2022年8月以来の大幅な伸びになった。2月時点では+1.0%であり、7倍に拡大。輸入燃料は+44.1%と大幅に水準を切り上げている。
足元の中東情勢の悪化を踏まえると、再びエネルギー価格の上昇などから輸入物価が上昇率を拡大させるだろう。それに伴う物価高から消費者マインドが悪化し、個人消費に下押し圧力がかかりやすくなると予想される。
- [日本/訪日外国人数(6月推計)]日本政府観光局(JNTO)が発表した6月の訪日外国人数(推計値)は314万8,600人で、前年同月比▲6.8%と3か月連続のマイナスとなった。最も多かったのは韓国で78万7,100人(+7.8%)、次いで台湾で67万400人(+14.6%)、米国で35万4,500人(+2.7%)となり、これらを含む15市場において6月として過去最高を記録した。
夏休みシーズンを控えた6月は多くの市場で訪日需要が落ち着く時期であり、さらに台風による欠航の影響もみられたが、祝日やスクールホリデーに合わせた訪日需要の高まりもあり、多くの市場で増加が見られた。
一方、中国は34万700人(▲57.3%)と、中国政府による渡航自粛要請を受けた航空便減便などの影響もあり、2025年12月以降7か月連続で前年同月比マイナスとなった(この間のマイナス幅は▲45.2%~▲60.7%)。
全体での2026年1~6月累計は2,108万4,800人と、前年同期の2,151万8,575人から▲2.0%減少した。新型コロナウイルス感染症の影響が収束した2023年以降、年間の訪日外国人数は増加を続けており、2025年は4,268万3,837人に達した。2026年下半期も上半期と同数で推移すると、通年では2025年を小幅に下回る水準となる。
また、同日に観光庁が発表した2026年4~6月期のインバウンド消費額は2兆5,096億円と、前年同期比+0.2%となった。内訳では、米国が3,848億円(構成比15.3%)と最も多く、次いで台湾が3,639億円(14.5%)、中国が2,592億円(10.3%)。中国は前年同期の5,064億円(20.2%)から半減した。
訪日客1人あたりの旅行支出は24万4,457円(前年同期比+3.3%)。国籍・地域別で高い順から、メキシコ(51万4,925円)、中東(48万2,836円)、英国(45万6,493円)。多くの国籍・地域で前年同期比プラスとなったが、観光客数の最も多い韓国では滞在日数が短く9万9,542円で▲2.3%。
なお、日本人の国内旅行消費額は2026年1~3月期で5兆9,136億円(5月20日発表の旅行・観光消費動向調査)と、同期間におけるインバウンド消費額2兆3,373億円(6月30日発表の2次速報値)の約2倍の規模。
長引く円安基調により訪日需要は多くの地域に広がっており、1人あたりの旅行支出の引き上げや、オーバーツーリズム対策などが求められる。
- [ロシア、北朝鮮]7月19日、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相はモスクワでプーチン大統領と会談し、両国関係のさらなる発展を確認した。会談では、プーチン大統領がウクライナ戦争における北朝鮮の支援に謝意を示したほか、金正恩総書記がロ朝関係の包括的発展へのコミットメントを改めて表明したことが伝えられた。
北朝鮮軍は2024年、ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への大規模な侵攻を撃退するロシアを支援した。両国間の相互防衛協定に基づき、北朝鮮はクルスク州でロシア軍と共に戦うため、約1万4,000人の兵士を派遣した。
6月の中国の習近平国家主席による平壌訪問に続く動きとして、崔外相の今回の訪露が注目されている。これにより、中国、北朝鮮、ロシアの3か国による政治・安全保障面での協調が一段と進展していることがうかがえる。
崔外相の訪露を契機として、今後、金正恩総書記のロシア訪問が実現する可能性も指摘されている。 - [西アフリカ/サミット]7月19日、シエラレオネの首都フリータウンで第69回「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)」総会が開催された。加盟国12カ国中、8カ国は国家元首(大統領)が出席した。2025年12月末の大統領選が平和裏に行われたことでECOWASへの参加資格復帰を果たしたギニアのドゥンブヤ大統領も出席した。共同声明の概要は以下の通り。
(経済)2026年の域内の経済成長見通しは良好。財政赤字拡大の懸念はあるがインフレ率は減速傾向にある。ECOWAS共通通貨「ECO」の2027年内の導入を改めて表明。ただし、参加準備が整った国から段階的に導入する。
(域内エネルギー協力)ナイジェリアからモロッコまで全長6,600kmに及ぶ「アフリカ・大西洋ガスパイプライン(AAGP)」に関する政府間協定の署名を歓迎。
(加盟国情勢)2025年11月の大統領選後にクーデターが発生し、ECOWASの参加資格が停止されているギニアビサウの憲法秩序の回復と、拘束中の政治家らの釈放を求める。
(安全保障)サヘル地域でのテロリストらによる治安悪化を懸念。軍事政権発足によりECOWASを脱退した「サヘル諸国同盟(AES)」との協議継続の必要性を確認。
(外交)南アフリカにおける西アフリカ系市民を対象とした外国人排斥運動の動きを強く非難。新ECOWAS本部ビルを建設・寄贈した中国に感謝。
(人事)セネガルのバシル・ファイ大統領を任期1年のECOWAS新議長とする。もっとも注目を集めたAAGPは総事業費約250億ドルで、2028年に建設開始、2031年にガス供給開始が計画されている。事業主体はモロッコ炭化水素鉱山公社(ONHYM)とナイジェリア国営石油公社(NNPC)。2016年頃に計画が浮上したAAGPは、2022年にアルジェリアがモロッコを経由して欧州へと天然ガスを輸送する「マグレブ・ヨーロッパ・ガスパイプライン」を停止して以降、急速に具体的な検討が進み、すでに初期基本設計(FEED)も完了している。しかし、13か国にまたがる長大な洋上区間がコスト高をもたらすことに加え、ナイジェリアからニジェール・サハラ砂漠を横断してアルジェリアに接続する全長約4,000kmの「トランス・サハラ・ガスパイプライン(TSGP)」の建設もすでに始まっており、競合状態にある。また今後の欧州のガス需要の見通しも不透明だ。ガスの一大供給源はナイジェリアである一方、技術的な理由からモロッコ~セネガル間を皮切りに段階的に整備を進めていくとの見方もある(7月20日、BBC)。
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