- [サブサハラ/米・301条関税]7月23日、米・通商代表部(USTR)は1974年通商法第301条の規定に従い、強制労働によって生産された商品に適切な輸入禁止措置を課していないと判断した60か国に対し、10~12.5%の関税措置を発動すると発表した。サブサハラ・アフリカ(以下、サブサハラ)では南アフリカ(南ア)、ナイジェリア、アンゴラの3か国が含まれる。
2月20日に米・連邦裁が「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づく相互関税を違憲と判断。トランプ政権は同日に代替措置として1974年通商法122条に基づく10%の課徴金を発表したが、7月24日早朝に150日間の期限が満了・失効となるため、301条に基づく措置に切り替えた形だ。USTRは3月に301条に基づき各国での強制労働による製品の輸入の慣行などの調査を開始。6月に関税措置の対象国・内容を発表したうえで、7月上旬に公聴会を実施し、1,600件超のパブリックコメントを受け付けたが、結果的に6月の発表内容から大きな変更はみられないまま発動に至った。
南アにとって米国は中国、ドイツに次ぐ輸出相手国(2025年は83億ドル、国連貿易統計)だ。南ア貿易産業競争相は公聴会にも参加し、南アから米国向けの輸出品には強制労働が用いられた証拠がないとの意見書も提出していたが、聞き入れられなかった形だ。南アの米国向け輸出の約45%(2025年)を占めるプラチナ・パラジウム等の白金族は重要鉱物に指定されるため、301条関税の対象外となる。米国向け輸出の約11%を占める乗用車と、アルミ塊(同6%)は別途1962年通商法第232条に従い25~50%の輸入関税が課されている。そのため、今回の301条関税発動による影響はかんきつ類(同1.3%)をはじめとする農産品等に限定される見込みだが、南ア国内の農業関係者にとっては高品質市場である米国向けの関税継続は痛手となる。
ナイジェリアにとって米国は第5位の輸出相手国と南ア同様に米国の存在感は大きいものの、米国向け輸出の9割以上が原油・石油・肥料などの関税適用除外品目のため今回の関税措置の影響はほぼないとみられる。アンゴラ(米国は3位の輸出相手国)も米国向け輸出の6割がナイジェリア同様に原油・石油のため影響は軽微だろう。
南ア・ナイジェリア・アンゴラは、6,000品目以上の米国向け輸出品の関税をゼロとする「アフリカ成長機会法(AGOA)」の適用を受けており、同法は2026年12月31日まで延長されたが、301条関税が優先的に適用される見込みだ。南ア政府は先の公聴会でもAGOAの再延長を米国に求めているが、トランプ政権では各国向けの関税を強化の動きが継続していることから、米議会で目立った動きは見られない。ただし、301条関税の適用に関しても、従来の同法が意図した範囲をはるかに超えているため、法廷闘争が起こる可能性が高いとの指摘も多い(7月23日、NYT紙)。 - [米中外相会談]7月22日、ASEAN関連外相会議に合わせて、中国の王毅外相と米国のルビオ国務長官が会談した。両国首脳が5月に合意した「建設的で戦略的に安定した関係」の実現に向け、外交・政治ルートを活用して次段階のハイレベル交流を準備することで一致した。中国側は米国に対し「一つの中国」原則の順守や核心的利益の尊重を求める一方、双方は会談を「実務的、前向きかつ建設的」と評価し、緊張管理を優先する姿勢を確認した。
会談の主な目的は、9月に予定されている習近平国家主席のワシントン訪問に向けた環境整備であり、会談後、ルビオ長官は記者団に対し、「議論の中心は9月の訪問であり、前向きな首脳会談の土台づくりだった」と説明した。「米中は世界で最も重要な二国であり、相違は今後も続くが、それが制御不能にならないよう管理することが仕事だ」と述べた。また、協力可能な分野を9月までに具体化し、首脳会談の成果につなげたいとの考えも示した。さらに、トランプ大統領が最近主張している米大統領選への中国の介入は話題にならなかったことや、イランをめぐる紛争に関して、中国によるイランへの情報提供疑惑への言及を避けるなど、米中が当面の安定維持を優先している姿勢が鮮明となった。
もっとも、関係の一時安定化は中国側の譲歩を意味するわけではない。米メディアのポリティコによれば、5月の米中首脳会談で打ち出されたボーイング機200機購入は、中国側がエンジンや部品の長期供給保証を新たな条件として求めたことで交渉が難航している。大豆購入も当初の期待ほど進んでおらず、米政府内には不満が広がる。一方で、中国側は大型契約をあえて最終決着させず交渉カードとすることで、トランプ政権に対し安定した米中関係を維持するインセンティブを与える狙いがあるとの見方も示されている。中国は大幅な譲歩を避けつつ、関係悪化も回避する「管理された安定」を追求しているとみられる。
ただし、安全保障分野では依然として火種が残る。ルビオ長官は翌日(7月23日)の記者会見で、台湾周辺や南シナ海での中国の行動に懸念を伝えたことを明らかにし、フィリピンとの相互防衛条約を履行する方針を改めて強調した。南シナ海で中国とフィリピンの衝突が発生した際には、現場にいた米沿岸警備隊の船舶が両者の間に入り、負傷者の救助を支援したことも明らかにしており、米国は中国との対話を継続する一方で、同盟国支援や「航行の自由」作戦の維持を継続する姿勢を示している。米中関係は首脳外交を軸に安定化を模索しつつも、安全保障上の対立は解消しない状況が続く。 - [メキシコ/インフレ鈍化継続]7月前半の消費者物価指数(CPI)は前期比0.07%上昇となり、おおむね予想どおりの結果となった。今回もインフレの低下を主導したのは非コア項目であり、特に農産物価格の下落が大きく寄与した。なかでもトマト価格の下落による押し下げ効果が拡大し、非コアインフレ率は前年比マイナス3.5%まで低下した。また、家庭用LPガス価格の下落もインフレ抑制要因となった。
一方、コアインフレ率は前期比0.16%となり、こちらも市場予想にほぼ一致した。これまで宿泊料金などを押し上げていたワールドカップ関連の特需はほぼ消失し、ホテル料金はすでに低下に転じている。航空運賃は上昇し、コアインフレへの最大の押し上げ要因となったが、これはワールドカップ要因というよりも夏季休暇シーズンの到来による季節的な動きとみられる。加えて、メキシコ・ペソの安定や経済活動の減速が、コア物価の落ち着きを支えている。
その結果、インフレ率は前年同期比3.10%と6月の3.18%からさらに低下した一方、コアインフレ率は3.95%で横ばいとなった。ただし、インフレ率はすでに底打ちに近づいている可能性が高い。これまでインフレ低下を支えてきた農産物価格については、トマトを含めて下落ペースが鈍化しつつあるためである。今後は、エルニーニョ現象による農産物や食品価格への影響に加え、最低賃金引き上げを見越した価格転嫁の動きが年後半のインフレ上昇要因になると考えられる。また、長期にわたるUSMCA交渉、貿易の不確実性の継続、イラン紛争再燃後の世界のエネルギー市場の再燃は、インフレ抑制のペースを鈍らせ、インフレ率は2026年末に4.1%、2027年には3.8%へ推移すると予想されている。一方、コアインフレ率は緩やかな低下基調を維持し、2026年末は4.0%、2027年は3.6%になる見通しとなっている。
こうした状況を踏まえると、メキシコ中央銀行(Banxico)は当面、政策金利を6.50%で据え置く可能性が高い。中央銀行は長期間の現状維持方針を示しており、インフレ率も目標水準から大きく乖離していない。さらに、ペソ相場は米ドル高の局面でも比較的安定している。このため、市場が織り込んでいる短期的な追加利上げの可能性は限定的と考えられる。米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢や地政学リスクの再燃には引き続き注意が必要であるものの、Banxicoは慎重な姿勢を維持しながら、当面は政策金利を据え置く公算が大きい。 - [ECB/金利据え置き]欧州中央銀行(ECB)は23日の理事会で政策金利(中銀預金金利)を2.25%で据え置くことを決定した。据え置きは市場予想通りだった。
声明文では、「変動が大きいものの、エネルギー価格の見通しは現在、6月のECBスタッフの見通し(ベースライン)に近い水準にあり、中東紛争前の水準を大幅に上回っている」と記され、エネルギー価格がベースラインシナリオから外れた動きになっていない点が確認された。ただし、「不確実性は依然として高く、エネルギーショックによる物価上昇への影響はまだ完全に表れていない。それゆえ、理事会は、ショックの強度や持続期間、それらに加えて間接的・二次的効果を注視している」とも記載しており、エネルギー価格が域内経済に波及していく様子に警戒感をにじませている。特に、企業の価格設定行動や賃金設定などの二次的効果が物価上昇率を押し上げていく兆しが見えるか否かが注目されている。
今後の金融政策については、「理事会は、中東紛争による不確実性に対処する上で良い位置に引き続きある」として、これまでと同様に「適切な金融政策姿勢を決める際には、データ依存で、会合ごとのアプローチに従う」姿勢を維持した。特に政策金利の決定については、3つの方針である「新たに公表される経済・金融指標、基調的な物価動向、金融政策の伝達力」を踏まえる姿勢にも変更がなかった。
ラガルド総裁は記者会見で、「利上げが妥当か自問した参加者も何人かいた」と明らかにしたものの、「最終的に全会一致で据え置きを決定した」ことを説明した。また、企業の原材料など投入コストなどが上昇しているため、今後も販売価格は引き上げられるとの見通しであり、エネルギー価格が高止まりし続ければ、二次的な影響が経済全体に広がる可能性も高まるという認識を示した。
また、ラガルド総裁は7月初旬に、物価の上振れと成長の下振れリスクがより均衡しているという認識を示していたものの、ここ数週間の一時的な好転とその後の紛争の激化、商品価格への影響によって「より均衡している」という部分は削除されたと見解を改めた。市場では、9月理事会での利上げの可能性が残されたという認識が広がった。
- [日本/消費者物価指数(6月)]7月24日、総務省は6月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)を発表した。総合指数は113.6で前年同月比+1.7%となった。変動の大きい生鮮食品を除く総合(コアCPI)は113.1で+1.6%。4月、5月の1.4%から上昇幅が拡大したものの、2026年2月から5か月連続で1%台となった。プラスは2021年9月から58か月連続。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は112.2で+1.7%となった。生鮮食品を除く食料は+3.1%と、2025年7月の+8.3%から11か月連続で上昇幅が縮小した。コメ類が▲8.7%と、5月の▲4.9%(2022年11月以来3年半ぶりのマイナス)から更に下落幅を拡大させたことなどによる。そのほか、コーヒー豆の+23.3%などにより飲料は+6.8%上昇した。豚肉(国産品)は+5.3%。中東情勢に伴うナフサショックにより塗料メーカーが値上げを行った影響で、外壁塗装費が+6.2%となった。
エネルギー価格は▲0.1%。ガソリンは5月の▲7.0%から6月は▲0.7%と下落幅が縮小した。2025年5月後半から適用された1リットルあたり最大10円のガソリン代定額補助の影響が、前年同月比で表れなくなったことによる。電気代は▲1.7%、都市ガス代は▲3.4%低下した。
そのほか、携帯電話の通信料は+4.6%。インバウンドの影響もあり宿泊料は+3.1%。私立高校の授業料は、無償化の影響にて▲68.8%となった。また、6月より政府が診療報酬を改定したことにより、診療代は+1.7%。
家庭用耐久財は+3.0%(5月は+1.9%)。内訳では、電子レンジの+6.0%(▲0.3%)、全自動洗濯機の11.2%(+4.8%)、冷暖房用器具+8.0%(+7.9%)、ルームエアコン+8.8%(+8.6%)などの上昇が目立った。
生鮮食品を除く食料は下落傾向にあるが、これは2025年に異常に高騰したコメ価格の落ち着きによる影響が大きく、その他の食料品価格の上昇や、生活に必要な財・サービスの価格の上昇がみられた。
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