- [非公式EU首脳会議]2月12日、ベルギーにて非公式EU首脳会議が開催され、アントニオ・コスタ欧州理事会議長のもと、単一市場の深化、経済的依存の削減、競争力向上について議論が行われた。3月に予定されている欧州理事会で欧州委員会は市場統合を更に進める「one Europe, one market」に関するロードマップも提示することが期待されるなど、今回の議論を踏まえた具体的な経済措置等が3月に引き続き議論されることとなる。
市場統合やEU規制に関しては、企業が27の加盟国間でシームレスに活動できるよう単一の企業ルールを適用する「28th regime」を推進することで一致したほか、企業の競争力強化に向けたEUルールの野心的な規制簡素化アジェンダを継続することについても全会一致の支持が得られた。
投資と産業戦略に関しては、通信などの戦略的セクターにおいて、必要な投資とイノベーションを確保するために一定の企業統合を容認することで合意。防衛・宇宙・AI・量子・決済システムなどの重要産業の保護・強化を図るとともに、依存関係をマッピングしていくこととしている。また、競争力強化の観点から、高いエネルギー価格に対する実効的な解決策の必要性も共有され、3月の欧州理事会で具体的な対応策が検討される見込み。さらに、競争力強化のための民間投資促進の重要性や、より良く貯蓄を投資に転換するための金融システムの重要性で一致し、次の多年次財政枠組み(MFF)においても留意することとされている。
- [米軍、シリアの戦略基地から撤退]シリア国防省は、シリア・イラク・ヨルダンの国境地帯に位置する戦略拠点アル・タンフ軍事基地を、米国との調整を経てシリア軍が掌握したと発表した。米中央軍(CENTCOM)も、基地からの秩序ある撤退とシリア暫定政府軍への引き渡しを認めている。アル・タンフ基地は2014年以降、米軍がクルド人主体の民兵組織シリア民主軍(SDF)と協力し、過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦の拠点として使用してきた。またIS壊滅後も、イランの影響力拡大を抑制する重要拠点とみなされていた。しかし旧アサド政権の崩壊や、暫定政府による国内支配の拡大、さらにSDFが政府機関へ統合される動きが進んだことで、米軍駐留の意義は低下したとみられる。撤退時点の米軍規模は約900~1,000人程度と推定され、部隊の一部はヨルダンへ移転したと報じられている。
一方でISは領土支配を失った後も地下組織として活動を継続しており、国連はシリアとイラク全域で約3,000人の戦闘員を維持していると推計している。シリアのシャラア大統領や閣僚が暗殺未遂の標的となるなど、治安情勢は依然として不安定である。米軍は撤退前後もIS関連拠点への攻撃や拘束作戦を実施し、数十回の攻撃で多くの戦闘員を殺害または拘束したとされる。さらにシリア北東部では、IS関係者や家族を収容するアル・ホルなどの大規模キャンプの管理権が政府に移行し、収容者の移送や外国人家族の移動が進むなど、新たな治安課題も浮上している。ISの残存勢力や国内統治の不安定さが残る中、シリア政府の治安維持能力と国際社会との連携が今後の焦点になるとみられている。
- [南ア・施政方針演説]2月12日、南アフリカ(南ア)のシリル・ラマポーザ大統領はケープタウン市庁舎にて2026年の「施政方針演説(State of Nation Address: SONA)」を実施した。SONAは例年年初のこの時期に行われ、向こう1年の政府にとっての優先事項を説明する場だ。
ラマポーザ大統領は最優先事項として「組織犯罪対策」と「水供給問題への対応」の2点を挙げた。
犯罪対策に関しては、ギャング組織がはびこる西ケープ州のケープ・フラットと、金の違法採掘が拡大しているハウテン州に「南アフリカ国防軍(SANDF)」を派遣すると発表した。世界銀行の試算によると南アは犯罪によって年間の国内総生産(GDP)の10%が失われており、また閉鎖した金鉱山での違法採掘により年間約44億ドルの損失を被っているとされている(2月12日付、英FT紙)。また、組織犯罪のシンジケートによる違法タバコの流通拡大を受けて、1月にブリティッシュ・アメリカン・タバコは南ア工場の閉鎖を発表している(1月15日付、米WSJ紙)。犯罪による経済的損失が大きく、また南アフリカ警察(SAPS)の汚職や機能不全を受けてラマポーザ大統領は軍の派遣を決定した形だ(過去にも数回派遣されている)。
また、水供給問題は、電力供給がようやく改善されてきた中で、もっとも国民の不満を高める喫緊の課題となっている。ラマポーザ大統領は「南アには十分な水がある」とした上で、地方自治体が老朽化した水インフラの維持管理を適正に行っていないことが問題だと指摘。ラマポーザ大統領自身が指揮する「国家水危機委員会」を設置すると共に、水道サービス法を改正し、水道供給義務を怠った自治体および責任者を刑事告発すると述べた。「ロードシェディング」と呼ばれる計画停電が頻発した2022年にも「国家エネルギー危機委員会」が設置され、その後電力供給は改善を遂げていることから、水問題も同様に解決可能だとのメッセージを国民に示した。
長年にわたり放置されてきた犯罪問題と水問題への対策に関し、ラマポーザ大統領がこれまで以上に確固たるコミットメントを示したことに、国民統一政府(GNU)内の他党や経済界からおおむね歓迎する声があがっている。南アでは2026年11月から2027年2月にかけて「統一地方選」が行われる予定だが、アパルトヘイト政策廃止以降、政権を維持している「アフリカ民族会議(ANC)」の支持低迷が顕著となっている。特にANCが首長を務める自治体(最大都市ヨハネスブルグや、第3都市ダーバンなど)は水供給などの行政サービスへの不満が高まっていることから、今回のSONAは統一地方選でのANCの大敗を防ぐための方策ともみてとれる。
ユーラシア・グループは統一地方選でANCの支持率が急速に低下(2024年の国政選挙の得票率は40.18%)した場合、GNUの安定性に影響を及ぼす恐れがあると指摘。しかし、GNUにとって最大の試練は2027年12月に開かれる予定のANC総裁選後に待ち受けているとの見方を示している。ANCの党首も務めているラマポーザ氏は同総裁選には立候補しないものの、大統領としての任期は2029年までとなる。しかし、ネルソン・マンデラ元大統領就任後の南アでは2期・5年(計10年)を満了した大統領はひとりもおらず、途中で辞任や解任に追い込まれていることから2029年まで満了できるか懐疑的な見方もある。
ANC次期総裁の最有力候補はポール・マシャティレ副大統領だが、「謎」が多く、たびたび縁故主義と指摘されており、ラマポーザ大統領は同氏を支持していないとの見方が強い。GNU第二党でクリーンな政治をモットーとする「民主同盟(DA)」も過去にマシャティレ副大統領を刑事告訴していることから、仮に同氏が総裁となった場合、南ア経済に安定性をもたらしてきたGNU内に亀裂が生じる恐れがある。
今回ラマポーザ大統領が設置を発表した「国家水危機委員会」の前に、2024年に「国家水タスクチーム」が設置され、マシャティレ副大統領が議長を務めていた(2月12日付、Daily Maverick紙)。しかし、成果が上がらなかったために今回ラマポーザ大統領自身をトップとした組織に改編したことも、表には出ない両者の関係を表しているともみてとれる。
- [バングラ総選挙]2月12日、バングラデシュの現地メディア Jamuna TV(バングラデシュ民放ニュース局) によると、2月13日午前6時(現地時間)時点で、今回投票対象の国民議会における議席数全体(299議席)の約7割である211議席分につき、 バングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party:BNP)率いる与党連合 が獲得したと報道した。今回選挙でBNPとの票争いが見込まれていた イスラム主義政党ジャマート・イスラミ(Jamaat-e-Islami:JI) の議席獲得数は70(議席全体の1割強)と、BNPを大きく下回ったもよう。総選挙前に現地NPOにより実施された世論調査での政党別支持率は、BNPが70%、JIが19%となっており、事前予想と大きく相違のない結果となった。
選挙と同日に実施された、一院制議会の二院制への移行など首相への権力集中を防ぐための各種政治改革の方針を示した「7月憲章」の是非を問う国民投票につき、2月13日午前6時(現地時間)時点で賛成の割合が73%となっているため、可決される可能性が高い。
BNPは、ジア元首相・党首が昨年末に死去したことを受けて国民のシンパシーが高まっているとの指摘がなされていた。加えてBNPは過去に与党として政権を運営した実績があることも、今回選挙の勝因となったもよう。対するJIは、既存政党であるBNPに不満を持つ学生・若年層の支持を狙ったほか、これまで強く出してきた宗教色を和らげることで浮動票の確保を狙ったものの、政策の実行性・実現可能性を疑問に持たれたことで獲得議席数を増やせなかったもよう。
なお今回の選挙では、ハシナ前首相が率いていた アワミ連盟(Awami League:AL) には政治活動禁止と政党登録停止措置が取られていたため、議員への 立候補資格 が付与されていない。ハシナ前首相は亡命先のインドで、国内のAL支持者に対して選挙へのボイコットを要求したが、AL支持者らは国外逃亡を続けるハシナ前首相に失望しており、国内の政治・経済状況を安定化させることを期待し、支持者の約半数がBNPに投票する予定であったと指摘されている(The Hindu(インド主要英字紙)、2026年2月11日付記事)。
経済政策に関し、BNPのラーマン党首(ジア元首相・党首の息子)は汚職撲滅や海外直接投資呼び込みのための許認可・手続き簡素化を掲げている。外交政策に関し、ユヌス暫定政権以来、中国・パキスタンとの間で経済・安全保障面での関係深化が進んでおり、BNP政権の下でもこのような流れが続く見込み。インドとの関係においては、BNPはヒンドゥー・ナショナリズムに対し強く反発するJIに比べ、「現実路線」的な関係を構築することが期待される。
- [中国OEM、メキシコ工場を居抜き買収へ]中国の大手自動車メーカーであるBYDとGeelyが、日産とメルセデス・ベンツが共同運営してきたメキシコの工場買収をめぐる最終候補に残っていることが報じられた。米国の強硬な関税政策を受け、メキシコでは工場閉鎖や雇用喪失が相次いでおり、中国企業にとって同国は重要な製造拠点として浮上している。
今回の買収については、計9社が関心を示したとされ、その中には中国の大手メーカーであるCheryやGreat Wall Motorも含まれるという。最終候補には、ベトナムのEVメーカー・VinFastも残っている。 中国メーカーの動きは、これまで欧米や日本勢が中心だったメキシコの自動車産業に大きな転換点をもたらす可能性がある。長年、メキシコは米国向け輸出車の重要な生産拠点だったが、現在は状況が一変している。トランプ政権による関税強化がメキシコの自動車市場を直撃し、中国企業の投資は雇用面で救いとなり得る一方、米国との貿易交渉に悪影響を及ぼす恐れもあるため、メキシコ政府は慎重な姿勢を見せている。
米国は中国ブランド車の販売を事実上禁止しており、メキシコ政府も2026年1月より中国製の自動車などの輸入に50%の関税を課すことを決定したが、これが逆に中国企業に現地生産を促す形にもなった。
実際、メキシコ北部の工業都市では、中国系企業の自動車部品工場が新設されている一方、米国向けEV需要の低迷によりGM工場が大規模なレイオフを行うなど、産業構造の変化が顕著になりつつある。
メキシコの自動車産業は米国市場に大きく依存しており、約8割が米国に輸出されていた。しかし2025年に課された関税の影響で輸出台数は減少傾向にあり、業界団体は2026年もさらに悪化すると警告している。2025年には約6万人の自動車関連雇用が失われたとされる。
アグアスカリエンテス州にある日産・メルセデスの共同出資の工場が閉鎖に追い込まれた背景にも、この米国の関税政策がある。メルセデスはコンパクトSBUのGLBの生産拠点をハンガリーへ移し、日産は生産していたインフィニティのモデルを廃止、さらにメキシコ首都近郊の別工場も閉鎖するなど、グローバル戦略の見直しを進めている。
中国の自動車メーカーにとってメキシコは、ラテンアメリカ販売の重要な拠点であり、現地での製造体制を整える動きは今後も続くとみられる。今回売却対象となっている工場は2017年に開設され、年間23万台の生産能力と熟練労働力を備えていることから、政府の許認可が必要な新規工場より手続きが容易で魅力的な案件といえる。
政治的な課題は残るものの、メキシコにとって中国からの投資は産業と雇用を支える重要な資金源であり、多くの州が誘致に前向きだと専門家は指摘している。
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