- [日本/実質賃金(7月)]9月8日、厚生労働省は7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表した。名目賃金(基本給や残業代、賞与などを合わせた1人当たりの現金給与総額)から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比+2.4%と、2026年1月から7か月連続のプラスとなった。
実質賃金の計算に用いられる消費者物価指数(持ち家の家賃換算を除く総合)は、6月の+1.9%から7月は+2.2%へ上昇率が拡大し2%台となったが、名目賃金が2025年の最低賃金の引上げや2026年の春闘による賃上げの反映、また、6月に引き続き夏のボーナス支給月だったことにより上昇し、物価の上昇率を上回った。
名目賃金は43万6,401円で+4.7%となった。このうち、基本給に当たる所定内給与が28万797円で+4.1%となり、名目賃金を押し上げた。また、賞与などの「特別に支払われた給与」も13万4,819円で+6.3%となった。
就業形態別では、一般労働者の現金給与総額は57万8,123円で前年同月比+4.7%と、6か月連続で3%以上となるのは1994年1月の調査開始以来初、所定内給与は35万6,413円で+3.9%と、7か月連続で3%以上となるのは調査開始以来初。パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内給与)は1,460円で+5.7%と、61か月連続のプラス。
総実労働時間は141.6時間(▲0.2%)。就業形態別では一般労働者が169.5時間(+0.1%)、パートタイム労働者が80.2時間(▲0.9%)。
長らく低迷していた実質賃金は、賃上げの波及により上昇基調にある。ただし、秋以降には川上・川中物価の上昇が川下物価に波及していき、飲食料品の値上げ(帝国データバンクによると、9月の飲食料品の値上げ品目数は4,923品目の見通しで、前年同月の3倍程度)や中東情勢の影響による電気・ガス代の上昇に対する政府補助の終了が見込まれている。最低賃金については、2025年度に引き続き、2026年度の引き上げが各都道府県で10月1日以降順次発効予定だが、賃上げを上回る値上げにより、実質賃金がマイナスとなる可能性も否定できない。(経済部 菊井彩乃)
- [米・イラン/報復の連鎖]
米軍は、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)が2日間に2度、米艦艇へ弾道ミサイル攻撃を試みたことへの報復として、オマーン湾とカーグ島近海でイランの石油タンカー5隻を攻撃・破壊したと発表した。米中央軍によれば、米艦艇は攻撃を回避し、米兵に被害はなかった。また、タンカーの乗組員には事前に退船を警告したという。イラン側も5隻への攻撃と乗組員の避難を認め、これを国連憲章に反する「戦争犯罪」と非難した。
これに対しIRGCは、米軍が駐留するヨルダンのアル・アズラク空軍基地に弾道ミサイルを発射したほか、ホルムズ海峡周辺の米艦艇2隻やタンカー8隻などを攻撃し、甚大な損害を与えたと主張した。ヨルダン軍は飛来したミサイル20発のうち18発を迎撃し、残る2発も無人地域に落下したため死傷者はいないとしている。IRGCはさらに、米国の潜水艇を拿捕し、ドローンを撃墜したとも発表したが、米国側は一連の主張についてコメントしていない。IRGCはクウェートやバーレーンのタンカーにも乗組員の退船を警告しており、攻撃対象が拡大する懸念が強まっている。
双方による報復の連鎖は常態化しつつある。イランはホルムズ海峡の封鎖を続け、米国もイランの港湾を海上封鎖している。米国務長官は、イランが米艦を攻撃するたびにタンカーを失うことになると表明した。緊張の高まりを受け、ブレント原油は1バレル99.65ドル、WTI原油は94.73ドルまで上昇した。
米国は軍事行動と並行して経済的圧力も強化し、イランの航空会社27社を含む、航空関連の企業・個人など計36対象に新たな制裁を科した。米国内資産の凍結や金融取引の禁止により、武器・人員・貨物輸送網を遮断するのが狙い。2月28日から続く半年に及ぶ紛争で、米兵の死者は18人、負傷者は820人に達しており、軍事衝突と経済戦争がさらに深刻化している。(国際部 広瀬真司)
- [EU/グリーンランドの関係強化]9/6~7の日程でフォン・デア・ライエン欧州委員長はグリーンランドの首都ヌークを訪問し、新たな共同宣言に署名するとともに、2026~27年にかけて2億ユーロ規模の投資を実行する「グローバル・ゲートウェイ・パートナーシップ・パッケージ」を発表した。本協定は、北極圏における戦略的同盟国としてのグリーンランドとの関係を包括的に強化することを目的としている。また、欧州委員会は今後数か月以内に新たなEU北極圏戦略を打ち出すと明らかにした。
今回の投資パッケージは主に以下の5つの領域を軸に構成されている。① 通信・デジタル:EUはTusass社と連携し、遠隔地の集落、学校、企業におけるデジタル接続の信頼性、速度、復元力を向上させることを目的として、今後5年間で欧州事業者を介した衛星容量の拡張を支援する。また、グリーンランドでのデータセンター開設が実現可能かを評価する調査も推進される。② 重要鉱物:EUとグリーンランドは、技術分析や投資家マッチングを通じて欧州産業と連携した持続可能な鉱業プロジェクトを推進する。マルムビャーグ鉱山での成功実績に加え、重要原材料法下の「EU戦略プロジェクト」であるアミツォック黒鉛プロジェクトなどを通じ、双方がパートナーシップを深め、資源の安定供給と投資拡大を目指す。③ クリーンエネルギー開発:Nukissiorfiit社が推進する遠隔集落向けハイブリッド再生可能エネルギー導入プログラムへの支援や、首都ヌークの電力需要増に対応するため、水力発電所拡張を目的とする追加資金提供も予定されている。④ キャパシティ・ビルディング:EUは、プログラム管理ユニットの設立を通じてグリーンランド政府の制度的能力の強化を支援し、EU・グリーンランド・パートナーシップに基づくEU支援プログラムや関連する政策優先事項の着実な実施を支援する予定である。⑤ 雇用と生活の質:上記に加え、老朽化した住宅の更新、雇用創出につながる持続可能な観光開発、政府の実行力を高めるプログラム管理ユニットの設置、教育や持続可能な漁業への資金提供が含まれている。
欧州委員会はまた、2028~34年の期間について、グリーンランド向けのEU資金を現行の7年予算の2億2,500万ユーロから5億3,000万ユーロへと倍増することを提案している。
今回の訪問およびEUの関与強化の背景には、米国との地政学的緊張が存在している。トランプ大統領がグリーンランドの領有権や管理権を繰り返し主張し圧力をかける中、EUは引き続きグリーンランドとの「完全な連帯」を表明しており、欧州委員長も「主権、領土の一体性、国境の不可侵は国際法の基本原則であり、グリーンランドの未来を決めるのはグリーンランドとデンマークの人々のみである」と改めて強調している。
気候変動による氷床融解で新たな航路や資源開発の可能性が開ける中、米国、ロシア、中国の関心が高まる北極圏において、EUは地域の安定と持続可能な発展を支える信頼できるパートナーとしての位置付けを固めることを目指している。(国際部 濱嵜隆吏) - [フィリピン/AIデータセンターマスタープラン]9月9日、フィリピン政府はフィリピン AI+インフラ・マスタープラン2026~2033を発表した。その中で、官民合わせて約344億ドルを調達し、AI向けデータセンターの容量を現在の50MWから2033年までに1.5GW(30倍)まで拡張することを目指す。これにより、フィリピンにAI産業を誘致することを狙っていると考えられる。
フィリピンは、ASEAN5か国の中でもデータセンターの集積が相対的に遅れている。米国の不動産サービス大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのレポートによると、例えばマレーシアのジョホール州における稼働済データセンターの容量は1,100MWとフィリピンの20倍以上に上っている。自然災害の少なさ、一大需要地であるシンガポールへの地理的な近さとそれによる通信遅延の少なさ、電力コストや土地代が低いなどコスト面での優位性が背景となっている。また直近では、マレーシアでの電力コストや土地代の高騰を受けた代替集積地としてのタイの存在感も高まっている(バンコクでの稼働済容量は134MW)。これらの国に比べ、フィリピンは地震や洪水などの自然災害の多さ、需要地から地理的に遠いこと、電力コストの高さなどを踏まえて十分に投資を誘致できていない。
フィリピンとしては、データセンターの容量(規模)でマレーシアやタイに追いつくというよりも、可能な限り国内で付加価値を創出する形でデータセンターを誘致することを目指していると考えられる。同国では約130万人(全労働人口の約2%)がIT-BPM産業に従事している。具体的には、コールセンターなどの単純作業のみならず、ソフトウェアや生成AIの開発に従事する者も多数存在する。データセンター誘致に関しては一般的に、建設段階では雇用創出につながるが、稼働段階での雇用創出効果は限定的である。特に東南アジアの場合は、稼働段階で必要となるサイバーセキュリティやネットワーク管理などのスキルを持った人材が不足しているため、その傾向は顕著である(日本総合研究所、2026年8月)。フィリピン政府は、IT-BPM人材のリスキリングを通じて稼働段階でも十分な雇用を創出することを目指している。
加えて、マスタープランでは自然災害リスク抑制のために事業サイトを4つの回廊・拠点に分散するとしている。このうち、マニラ首都圏から100km北部に位置するクラーク経済特区とバターンを結ぶ「クラーク・バターン回廊」に注力する予定だ。なお、2026年4月には米国国務省とフィリピン政府がルソン経済回廊の一環として、クラーク経済特区付近のニュー・クラーク・シティで4,000エーカー規模の半導体製造などの産業ハブを構築すると発表している。本拠点で製造された半導体やデータセンター関連機材を、同回廊に設置するデータセンター向けに納入することも期待できる。
他方で、データセンターで消費する電力と水の供給制約がボトルネックになり得る。特に電力に関し、計画では初期の電力需要は天然ガス発電所で賄い、2033年までに太陽光や地熱などの再生可能エネルギー比率を40%に高める目標(長期的には原子力の検討も含む)を掲げている。他方で、フィリピンでは送配電設備が老朽化しており、仮に発電インフラを新設した場合でも、送電設備側がそれらを吸収できるだけの容量を増設できるかは不透明である。(国際部、土田慧)
- [南ア/第2四半期GDP]9月8日、南アフリカ統計局(StatsSA)は2026年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率が▲0.2%となったと発表した(前期比、季節調整済み)。2月28日に勃発した米国・イスラエルによるイラン攻撃を受けた油価高騰やサプライチェーンの混乱を反映し、6期連続で続いていたプラス成長がマイナスに転じた形だ。
生産(産業)別では、10分野のうち7分野でプラス成長を記録したものの、鉱業が▲3.0%と最も落ち込み幅が大きかった。歴史的な高値が続いているものの、電力料金の上昇や鉱山の成熟化による生産面での制約を抱える白金族(PGM)や金、マンガンなどの生産量の減少が大きく影響した。また、貿易(卸・小売・飲食業・宿泊業)も卸売りや新車販売などが低迷した影響で▲1.9%縮小し、最大のマイナスの寄与度(▲0.2pt)となった。一方で、農業は好天の影響を受けて7期連続のプラス成長となる0.3%増を記録したほか、GDPの3割弱を占める金融・保険・不動産業も5期連続のプラス成長(0.3%増)となり、経済を下支えした。
支出(需要)別では、GDPの7割弱を占める民間最終消費支出(個人消費)が11期連続のプラス成長となる0.3%増となったが、総資本固定形成が建設工事や輸送用機器への支出が低調だったことにより▲0.2%減少した。輸入はイラン情勢による交易条件への影響を反映してか、4.9%増となったことにより、GDPの最大のマイナスの寄与度(▲1.3pt)となった。
市場関係者の多くは、南アのGDPがわずかに減少に転じることを事前に織り込んでいたとみられ、通貨ランドの対ドルレートは発表前後でほぼ変化がみられなかった。主要エコノミストらの間では、第2四半期のGDPの数値は「(イラン情勢を受けた)一時的」な減少であり、通年のGDP成長率は前年から0.1pt上昇し、1.2%になるとの予測が示されている(9月8日、BusinessTechなど)。ただし、南アの大手投資銀行・インベステックのアナベル・ビショップ・チーフエコノミストは、今後の南アの経済成長の潜在的な制約要因として、南部アフリカでは高温・少雨が予測されているエルニーニョが、2027年の農業生産に何らかの(負の)影響を与えるとの見方を示している(9月8日、IOL)。(国際部 髙橋史) - [EU/中国との交渉難航、依存縮小へ構え強化]欧州連合(EU)と中国の経済・貿易交渉が難航している。双方は6月29日に「貿易投資協議メカニズム」の初会合を開いて以来、10月までに具体的な成果を出すことを目標に、貿易不均衡や輸出管理に関する協議を続けている。8月31日~9月2日にも北京で実務協議を行ったが、双方の隔たりは依然として埋まっていない。
最大の対立点は貿易不均衡への処方箋である。中国は「下向きの均衡」ではなく「上向きの均衡」を主張し、中国からEUへの輸出を抑えるのではなく、欧州製品の購入やサービス貿易、市場開放を拡大することで不均衡を縮小する方針を示している。これに対しEUは、中国の産業政策や過剰生産を背景に、繊維、化学、機械、電池、EV・ハイブリッド車などの輸入が急増し、欧州産業が圧迫されていることを問題視している。EUの対中貿易赤字は2026年上半期にも前年同期比で約9%拡大しており、欧州製品の購入拡大だけでは構造的な問題は解決しないとの立場だ。中国は「過剰生産」論そのものを保護主義の口実だとして反発している。
EUはすでに交渉決裂後を見据え、貿易防御措置の強化を準備している。従来は中国の報復を警戒して慎重だったドイツの姿勢にも変化がみられる。中国企業との競争激化を受ける中、ドイツ商工会議所が7~8月に約1,300社を対象に実施した調査では、55%が、自社に価格上昇や中国の報復などの不利益が及ぶ場合でも、競争のゆがみに対するEUの通商措置強化を支持した。
EU内では、中国製プラグインハイブリッド車(PHEV)へのセーフガード(緊急輸入制限)をはじめ、PETやエポキシ樹脂など化学品、工作機械への追加措置が検討されているとの見方がある。さらに中国依存の高い製品への「レジリエンス関税」や調達先の多角化策も議論されている。中国が報復すれば、EUがこれまで発動したことのない「反威圧措置(ACI)」に踏み込む可能性も指摘される。こうした個別策はまだ正式決定ではないが、EUの姿勢は、対話を優先しながら中国の譲歩を待つ段階から、交渉と並行して中国依存の縮小と市場防衛を進める段階へ移りつつある。(国際部 前田宏子) - [中南米/米との関係強化]2026年9月、マルコ・ルビオ米国務長官はコロンビア、エクアドル、ペルーを訪問し、中南米における米国の安全保障・経済協力の強化を進めている。今回の訪問は、移民対策や麻薬密売対策を通じて米国の地域的影響力を高めようとするトランプ政権の方針が背景にある。
コロンビアでは、2026年8月に就任した右派のアベラルド・デ・ラ・エスプリエラ大統領と会談した。両者は麻薬密売対策における安全保障協力の拡大や経済関係の強化について協議したほか、ベネズエラ情勢への対応や、共産主義政権下のキューバに対する経済的圧力の強化についても意見交換を行った。デ・ラ・エスプリエラ大統領は、コロンビアが米国にとって主要な地域パートナーとしての役割を再び担いたいとの考えを示した。ルビオ長官は、米国とコロンビアには長年にわたる安全保障協力の実績があるものの、前政権下では関係が停滞していたと指摘した。そのうえで、新政権の発足を機に協力関係を回復し、さらに発展させたいとの考えを表明した。
また、ルビオ長官は今回の歴訪でエクアドルのノボア大統領、ペルーのフジモリ大統領とも会談する。米国はこれら3か国との政治・経済・安全保障面での連携を強化し、西半球における協力体制の拡大を目指している。
経済面では、ルビオ長官は米国がコロンビア、エクアドル、ペルーとの貿易協定の早期締結を希望していると述べた。コロンビアは2026年7月に発効した米国の12.5%の関税措置について、この関税が自国の輸出に悪影響を及ぼす可能性があるとして、見直しを求めている。
デ・ラ・エスプリエラ大統領は、1990年代後半から進められた米国とコロンビアの麻薬対策協力『コロンビア計画』を参考に、新たな協力枠組みを推進したい考えを示した。同氏は、コカインの原料となるコカの栽培地の取り締まりや、麻薬製造施設の破壊、麻薬組織幹部の摘発を強化すると表明した。
さらに、コロンビアは麻薬密売対策に関する年間目標の達成に取り組む方針を示している。これは、過去にコカイン生産量をめぐって米国と前政権との間で対立が生じていたことを踏まえ、新政権が対米協力を重視する姿勢を明確にしたものとみられる。(国際部 小橋啓) - [米国/インフレ期待は安定]ニューヨーク連邦銀行の8月の「消費者期待調査」によると、1年先の期待インフレ率は+3.6%と、市場予想通り7月から横ばいだった。また、3年先の期待インフレ率は+3.2%で7月(+3.3%)から小幅に低下した。5年先の期待インフレ率は+3.0%で2025年9月から同じ水準にとどまっている。
個別の価格を見ると、1年先のガソリン価格は+4.6%と7月(+2.9%)から拡大した。食品は7月の+5.0%から8月の+5.3%へ、医療は+8.9%から+9.1%へ、大学教育は+5.8%から+6.1%へ、家賃は+5.9%から+6.6%へそれぞれ上昇率を拡大させた。8月に入ってから先行きの物価上昇の見方がやや強まったようだ。
一方、1年後の失業率が44.4%と、20年4月(47.6%)以来の高水準となった。雇用環境に対する警戒感がやや高まっている様子がうかがえる。このように、足元の物価上昇を受けて短期の期待インフレ率は高まっているものの、中期の期待インフレ率は安定しており、期待インフレは固定(アンカー)されているとみられる。ただし、短期的な物価上昇率の拡大や雇用環境への不安なども見られており、中間選挙を控えて消費者の認識が今後どこまで回復するのかが注目される。(経済部 鈴木将之)
- [ロ朝接近が加速 初の自動車橋が開通]ロシアと北朝鮮は9月7日、図們江(豆満江)をまたぐ両国初の自動車橋を開通させた。全長約1kmの「ヤコフ・ノビチェンコ橋」は、従来の鉄道橋に加わる初の常設道路ルートとなり、年間を通じた物流・人的往来の拡大が見込まれる。両国は同橋を「包括的戦略パートナーシップ」の象徴と位置付けており、ウクライナ戦争以降に急速に接近したロシア・北朝鮮関係の制度化を示すインフラ整備といえる。
一方、この橋は中国、ロシア、北朝鮮の力学を映す地政学的意味も持つ。橋は中国国境の約1km下流、河口から約15km上流に建設され、既存のロシア・北朝鮮友好鉄道橋と並んで、図們江河口部を実質的に管理する構造となっている。既存の鉄道橋の桁下高は約8mと低く、大型船舶の通航を困難にしているが、新たな道路橋も同程度の高さで建設されたため、中国が長年構想してきた図們江経由での日本海への本格的な海上アクセスは、引き続き制約を受ける見通しだ。専門家の間では、ロシアと北朝鮮が中国東北部に対する戦略的レバレッジを維持する効果を持つとの見方も出ている。今回の橋の開通は、ロシア・北朝鮮間の協力深化を象徴するだけでなく、中国を含む北東アジアの勢力均衡にも影響を与えるインフラ案件として注目される。(国際部 ゴロシニコフ アントン)
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