- [ロシア反体制派ナワルヌイ氏は毒殺か]2月14日、英仏独など欧州5か国は、2024年2月に死亡したロシアの反体制派指導者ナワリヌイ氏の検体から、南米のヤドクガエル由来の毒素「エピバチジン」が検出されたと発表した。この結果により、ナワリヌイ氏は「毒殺されたと確信している」と、ロシアを強く非難した。5か国は今回の調査結果を受けて、ロシアが化学兵器禁止条約に違反しているとして化学兵器禁止機関(OPCW)に通知した。フランスのバロ外相はロシアのプーチン大統領は、権力維持のために自国民に対して生物兵器を使用する用意があると述べた。
一方、ロシア当局は「自然死」であると主張しており、この発表についてロシア外務省は「情報操作だ」と反発している。
- [米・イラン協議など]2月17日、米国とイランは、スイスのジュネーブで核問題を巡る協議を行う予定。仲介は引き続きオマーンが担う。米国はイランに対し、ウラン濃縮活動の停止など核開発の完全放棄を求めており、提案には濃縮活動を3~5年間停止し、約450キログラムの高濃縮ウランを国外へ搬出する案などが含まれているとされる。一方、イランは核兵器開発の意図を否定し、平和利用を目的とした核開発の継続を主張している。さらにイスラエルのネタニヤフ首相は、弾道ミサイル計画の制限や地域の代理勢力との関係断絶など、より厳しい条件を合意に盛り込むよう求めており、専門家は、こうした要求はイランが受け入れないことを前提としたもので、軍事的選択肢を正当化する狙いがあると指摘している。2025年に行われた交渉も、約2か月間進展しないまま平行線をたどり、米・イスラエルは軍事攻撃にかじを切った。
また、今回の交渉では欧州の役割低下も顕著となっている。かつて英仏独(E3)は2015年の核合意(JCPOA)締結で重要な役割を果たしたが、近年はオマーンやカタールなど湾岸諸国が仲介の中心となっている。イランのアラグチ外相も欧州の影響力低下を批判し、地域諸国の仲介の方が有効だとの認識を示した。これは核交渉の外交主導権が欧州から地域諸国へ移行していることを示している。
一方、トランプ米大統領は交渉期限を「今後1か月程度」とし、合意しなければ軍事行動の可能性も示唆した。米国はイラン産原油の輸出制限や第三国への追加関税など経済圧力を強めるとともに、さらなる空母打撃群を中東へ追加派遣するなど軍事的威圧も強化している。ただし、トランプ氏の支持基盤が海外軍事介入に慎重であることから、実際の軍事攻撃の可能性は低いとみる専門家も多い。その一方で、国内抗議などで弱体化したイラン政権にとっては圧力が強まっており、米国にとっては合意を引き出す好機とも指摘される。さらに米国が反体制派を支援するため「スターリンク」の衛星通信端末を密かに供与したとの報道もあり、外交、経済、軍事を組み合わせた対イラン圧力が一層強まっている。
- [アフリカ連合(AU)総会]2月14~15日、エチオピアのアディスアベバにあるAU本部にて第39回AU総会が開催された。「持続可能な水管理と衛生」が主要テーマとなった今回の総会には、1年間AU議長を務めてきたアンゴラのロウレンソ大統領やAU委員会(AUC)のユスフ委員長ほか、国連のグテーレス事務総長、イタリアのメローニ首相、エチオピアのアビィ首相などが本会合で演説を行った。
「水」に関してアフリカでは、エチオピアとエジプトのナイル川水資源をめぐる対立、マダガスカルでの水道供給への不満から拡大した抗議デモと政変、ナイジェリアにおける牧畜民と農耕民との衝突など現在進行形の問題が顕在化している。こうした状況から、アビィ首相とユスフ委員長は気候変動の影響下における水資源管理の重要性を強調。メローニ首相はイタリアとしてアフリカにおける水管理、衛生プロジェクトを強化すると述べた。なお、メローニ首相は2022年の就任以降「マッティ・プラン」と呼ばれるイタリアのアフリカ向け外交政策を打ち出しており、今回のAU総会にあわせて「第2回イタリア・アフリカサミット」を開催するなどアフリカ諸国との関係強化に乗り出している。
国連のグテーレス事務総長は、「分裂と不信が顕著な世界においてAUは多国間主義の旗艦である」と評価。国連としてアフリカの平和、経済対策、気候正義の分野において協力すると表明し、特に平和においてはスーダンでの敵対行為(スーダン国軍:SAFと、準軍事組織:RSFの対立)の即時停止、南スーダンにおける対話の再開(キール大統領派とマシャール副大統領派の対立)、コンゴ民主共和国(DRC)の主権の尊重(ルワンダ系反政府組織M23による東部実効支配)を求めた。
「アフリカの問題はアフリカで解決する」という原則のもと、2002年に発足したAUだが、国際危機グループは「AUが最も必要な時に、AUは設立以来最も弱い状態にある」と指摘(2月9日)。AUの理念とは裏腹に、スーダンやDRC、ソマリア、サヘル地域、アフリカの角地域といったアフリカ域内の安全保障問題にAUが対処できていない状況が浮き彫りになっている。AUの内部プロセスは「派閥化され、官僚的で、総じて無能だ」との外部からの厳しい批判もあるほか(2月14日付、仏RFI)、英・チャタムハウスは、世界最大の人道危機へと陥っているスーダン内戦は「AUの政治的指導力における最も重大な失敗だ」と指摘している。2021年当時、スーダンでの文民政権への移行を進めようとしていた主権評議会をSAFが軍事掌握したことを受け、クーデターを認めないAUはスーダンを参加資格停止処分とした。それにもかかわらず、昨年就任したユスフ委員長がSAF主導の和平プロセスへの支持を表明し、AU総会前に開催されたAU安全保障会議(PSC)においてもSAFを「暫定政権」とAUが扱ったことはAUの原則に矛盾しているとの見解を示している(2月13日)。
スーダンの内戦を例においても、SAF側にエジプト、サウジアラビア、トルコなどが、RSF側にはアラブ首長国連邦(RSF)、エチオピアなどが支援を行っているとみられている。アフリカ各国・AUは、欧州の植民地時代による分断を乗り越えるため「アフリカの問題はアフリカで解決する」との原則を維持したい一方で、依然として外部勢力からの干渉や影響を受けざるをえない構造が続いている。
なお、次期AU議長にはブルンジのンダイシミエ大統領が就任する予定。
- [西アフリカで拡大する中国の軍事的影響力]西アフリカのサヘル地域では、2020年以降に相次いだクーデター、フランス軍の撤退、さらにウクライナ戦争によるロシアの兵器供給力低下が重なり、「軍事的空白」が生じている。この空白を埋める形で、中国が急速に存在感を高めている。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2020~24年の西アフリカ向け兵器輸入のうち、中国製が26%を占め、フランス(14%)やロシア(11%)を上回った。中国はドローンや装甲車など、比較的安価で整備しやすい装備を供給しており、柔軟な融資条件や政治的条件を課さない姿勢によって、財政制約の大きい国々の需要を取り込んでいる。
一方、世界の軍需市場が拡大するなかで、中国の武器輸出は全体としては減少傾向にある。SIPRIのデータによれば、2024年の中国防衛企業8社の年間武器収入は前年比10%減となり、特に中国最大の兵器メーカーであるノリンコ(中国兵器工業集団)は31.2%の大幅減を記録した。2020~24年の輸出総額も、2015~19年と比べて5.4%減少している。
減少の要因の一つとして、最大顧客であるパキスタン向けの売却が縮小したことが挙げられる。2020~24年の中国の武器輸出の63%はパキスタン向けであったが、2024年にはその割合が大きく低下した。
二つ目の要因として、習近平政権下で進められている軍需産業に対する反腐敗運動の影響がある。中国航天科技集団をはじめとする国有防衛企業でトップの更迭が相次ぎ、関係者が武器売却に慎重になっている可能性がある。
- [コロンビア最低賃金引上げ停止は左派の追い風に]コロンビアの最高行政裁判所である国務評議会は、グスタボ・ペトロ大統領が2025年12月に発表した最低賃金23%引き上げの布告を一時的に停止した。ただし、新たな布告が発出されるまで23%の引き上げは効力を維持すると評議会が明言している。主な理由は、引き上げ額の決定プロセスに正当な根拠が不足していると判断されたため。2025年のインフレ率が5.3%程度だったのに対し、23%という数字はあまりに高く、経済的合理性が説明されていないと指摘されている。最低賃金はインフレ率、生産性、経済成長などのデータに基づいて決定されるべきとされた。国務評議会は、政府に対し8日以内に暫定的な賃金調整を示す新布告を作成するよう求めており、最終的な判断には数週間かかる可能性がある。
ペトロ大統領は「憲法に基づいた生存賃金の確保だ」と主張し、この決定を批判し、労働大臣も、この裁判所の決定を「非人道的だ」と非難し、労働者に対して抗議の声を上げるよう呼びかけている。一方、経済界では、あまりに急激な引き上げは失業率の悪化やさらなるインフレを招くと懸念しており、今回の停止を「経済実態を無視した決定を修正するもの」として歓迎した。
ただし、ペトロ大統領は、新たな布告でも同じ23%を維持し、より強固な説明を加える可能性が高いと考えられる。 また、今回の引き上げはすでに2026年1月から賃金や年金の増額として実施されており、インフレ予測の上方修正(4.1%→6.3%)や、政策金利が1月に100bpt引き上げられ10.25%となるなど、経済面にも影響を及ぼしている。今回の利上げは約3年ぶりであり、賃上げの影響範囲が広いことを示している。
また、今回の決定は政治的には、むしろペトロ大統領の立場を強める可能性が指摘されている。大統領はSNS上で労働者に抗議行動を呼びかけており、今回の判断が支持基盤を鼓舞する契機になり得る。最低賃金23%引き上げそのものは国民に広く支持されている。1月のアンケートでは、48.4%がこの引き上げが自分に利益をもたらすと回答し、反対意見はそれを大きく下回った。
この問題は、5月31日に実施される大統領選挙の第1回投票に向け、ペトロ大統領の後継者とされる左派の上院議員イバン・セペダ氏の存在感も高めている。しかし、6月21日の決選投票で野党候補を破るには、ペトロ政権の支持率がさらに上向くことに加え、安全保障への国民の懸念が低下する必要があるとみられる。
今回の最低賃金問題は、選挙戦における争点のひとつとして、決選投票の構図をより接戦化させているが、最終結果を左右するにはほかの要素も大きく影響すると考えられる。
- [2四半期ぶりプラス成長の日本GDP]内閣府によると、2025年第4四半期(Q4)の実質GDP成長率は前期比+0.1%(年率換算+0.2%)だった。Q3(▲0.7%)から2四半期ぶりのプラス成長になった。ただし、市場予想(年率+1.7%)を下回り、前期比プラス成長と言っても、ほぼ横ばいにとどまった。
内訳をみると、個人消費(前期比+0.1%)は、Q3(+0.4%)から減速したものの、2024年Q2以降7四半期連続で増加した。耐久財(+2.1%)が2四半期ぶりに増加した一方で、半耐久財(▲1.3%)と非耐久財(▲0.5%)が減少し、サービス(+0.3%)は4四半期連続で増加した。民間住宅(+4.8%)は、法改正に伴う駆け込み需要の影響を受けたQ3(▲8.4%)から反発した。民間企業設備投資(+0.2%)は、半導体関連投資が堅調だったこともあり、Q3(▲0.3%)から2四半期ぶりに増加した。政府消費(+0.1%)が3四半期連続で増加した一方で、公共事業(▲1.3%)は、2四半期連続で減少した。輸出(▲0.3%)は、Q2(+1.9%)の増加から、2四半期連続で減少した。財貨(▲0.2%)、サービス(▲0.4%)ともに2四半期連続で減少した。サービスでは、研究開発や旅行(インバウンド消費)が減少した影響が大きかった。輸入(▲0.3%)は、2四半期連続で減少した。財貨(▲0.8%)が2四半期連続で減少した一方で、サービス(+1.1%)は4四半期連続で増加した。
また、実質雇用者報酬(前期比+0.5%)は、Q3(+0.1%)から加速、3か月連続のプラスだった。GDPデフレータ(前年同期比+3.4%)は、Q3(+3.5%)からやや縮小したものの、3%台の伸びを維持した。
なお、2025年通年の実質GDPは前年比+1.1%であり、2024年(▲0.2%)からプラスに転じた。名目GDPは+4.5%と、2024年(+3.0%)から加速し、2023年(+5.3%)以来の伸び率になった。GDPデフレータは+3.4%であり、2024年(+3.2%)から加速し、4年連続でプラスを維持した。
- [米国の鉄鋼アルミ関税]2月13日、英Financial Times紙が、米国のトランプ政権が実施している50%の鉄鋼・アルミニウム関税について、一部見直しの可能性を報じた。缶詰・飲料缶・パイ皿など身近な金属製品の価格が上昇し、有権者の不満が高まっていることから、中間選挙に向けた生活費対策の一環として検討されているという。また、現在の関税制度が複雑化し過ぎ、運用面が困難であることから、簡素化を求める声もあることも背景にある。この報道を受けてLMEアルミ相場や、関税の恩恵を受ける企業の株価が下落した。
その後の各種報道では、検討中の見直し案として、金属含有量に応じた税率区分が導入される可能性が伝えられている。例えば少量の鉄鋼・アルミを含む消費者向け製品(台所用品など)は15%、中間財などは25%、ほぼ鉄鋼・アルミで作られた工業製品や建材は50%など。また、製品中に使われている鉄鋼・アルミの価値でなく、製品の全価値について関税を課す方式も検討されているという。
この計画は最終決定には至っておらず、米国政府関係者は「大統領が正式に発表しない限り、憶測にすぎない」として否定している。
現時点では確実な情報はなく、公式発表が待たれる。トランプ政権が国内製造業保護を重視しており、中間選挙でいわゆる「ラストベルト」の票も重要であることから、市場では鉄鋼・アルミそのものの関税を大きく引き下げる可能性は低く、減税は派生製品のみに留まるとの見方が聞かれる。
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