- [中国・欧州/制裁応酬、輸出管理で対抗]4月24日、中国商務部は、欧州連合(EU)域内の7社を輸出管理リストに追加したと発表した。対象には、防衛・航空宇宙・衛星情報分野の企業が含まれ、ベルギーの銃器メーカーFNハースタルのほか、ベルギー(1社)、ドイツ(1社)、チェコ(4社)の企業が指定された。これらの企業は、中国から「デュアルユース用途品」の輸入が禁止される。
今回の措置は、EUがロシアのウクライナ侵攻に関連して第20次制裁パッケージを採択した直後に打ち出された。EU側は、中国やアラブ首長国連邦(UAE)などを経由した制裁回避を問題視し、中国企業を含む第三国の企業がロシアの軍需産業にデュアルユース用途品や兵器システムを供給していると認定。これに基づき追加された制裁対象リストの中に、中国と香港企業27社が含まれていた。
中国側はこれに対抗する形で、自国の輸出管理法に基づく措置を発動した。商務部報道官は、対象となった欧州企業が台湾への武器売却や台湾当局との「共謀」に関与したと説明し、「関連措置はデュアルユース物品のみを対象としており、中国とEU間の通常の経済・貿易交流には影響を与えない」としている。
対象企業の一つであるチェコの防衛企業エクスカリバー・アーミーは、中国からデュアルユース技術を直接調達していないとして、事業への影響は限定的との見方を示した。
一方、EUは中国の地方銀行2行について、ロシアへの金融サービス提供を停止したと判断し、ブラックリストから除外した。それに対して中国はリトアニアの2金融機関に対する報復制裁措置を解除した。
- [米国/FRB議長人事]4月24日、司法省はパウエル連邦準備理事会(FRB)議長に対する刑事捜査を終結すると発表した。刑事捜査は、FRB本部の改修工事に関わるパウエル議長の議会証言が虚偽であったとの容疑に対するもの。今後、当該案件に対する調査は、FRB内の監察総監に委ねられる。今後の監察総監の報告内容によっては、刑事捜査を再開する準備があるとの姿勢を司法省は明らかにしている。トランプ政権は、2026年5月にパウエル議長の任期が終了するため、その後任にケビン・ウォルシュ氏を指名しているが、当該刑事捜査を理由に承認を渋る共和党上院議員がいたため、パウエル議長の暫定留任すら見込まれていた。今次の司法省の方針変更によって、5月にウォルシュ氏がFRB新議長として就任する可能性が高まった。
- [米国・ドイツ/景況感悪化]米ミシガン大学によると、4月の消費者信頼感指数は49.8(▲4.5pt)へ低下し、比較可能な1978年以降で最低になった。内訳を見ると、足元の状況を表す現況指数は52.5(▲3.3pt)へ低下した。また、先行きの状況を表す期待指数は48.1(▲3.6pt)へ低下した。現状、先行きの見方ともに悪化した。中東紛争に伴う物価高とその懸念から、低所得者層の消費者マインドの悪化が目立っている。
実際、1年先の期待インフレ率は4.7%、3月(3.8%)から上昇し、5年先の期待インフレ率は3.5%、3月(3.2%)から上昇した。中東情勢は、ガソリン価格など物価上昇を通じて消費者に悪影響を及ぼしている。
一方、ドイツのifo経済研究所によると、4月の企業景況感指数(2015年=100)は84.4(▲1.9pt)へ低下した。2月から2か月連続で低下し、2020年5月以来の低水準になった。企業は先行きにより悲観的な見方になり、足元もより悪い状態と評価している。内訳を見ると、足元の状況を表す現況指数は85.4(▲1.3pt)へ低下した。先行きを表す期待指数も83.3(▲2.6pt)へ低下した。このため、ifoは「ドイツ経済がイラン危機によって打撃を受けている」と総括した。
産業別の指数を見ると、製造業は▲11.4(+0.7)へ上昇した。化学工業を中心に先行きに悲観的な見方が強まった。反対に、現状はやや改善したものの、供給網のボトルネックが報告されている。サービス業は+0.1(+2.7pt)へ上昇、3か月ぶりにプラスになった。先行きの見通しは悪化、現状も悪くなった。特に物流部門が下押し圧力を受けている。商業は▲21.9(▲0.8pt)へ低下した。先行き、現状ともに悪化。特に小売業は、消費者が価格上昇によってより慎重になることを警戒している。
建設業は▲15.5(▲1.2pt)へ低下した。景気回復への期待はひとまず打ち砕かれた。
- [ロシア/中央銀行利下げ決定]4月24日、ロシア中央銀行は主要政策金利を50ベーシスポイント(bp)引き下げて14.5%にすると決定した。市場の予想に沿った内容だった。利下げは8会合連続となった。中銀は声明で「支出が増え、財政赤字が拡大する場合、基本シナリオよりも引き締まった金融政策が必要となる」とも指摘し、金融緩和には引き続き慎重姿勢を維持している。また同日に発表した中期予測で、中銀は2026年の平均政策金利の見通しを14~14.5%との従来予測(13.5~14.5%)から、やや上方修正した。一方、2026年のGDP成長率の予測については0.5~1.5%と据え置いた。次の金融政策決定会合は、6月19日に予定されている。
- [EU/非公式首脳会合]2026年4月23日から24日にかけて、キプロスでEUの非公式首脳会談が開催され、主にウクライナや中東情勢を受けた「地政学的環境と欧州の対応」および「2028~2034年の次期多年度財政枠組み(MFF:長期予算)」について議論が行われた。
ゼレンスキー大統領との協議も行われ、2026~2027年のウクライナ支援に向けた900億ユーロの融資と、ロシアの戦争遂行能力を削ぐための第20次制裁パッケージの採択が歓迎された。また、ウクライナのEU加盟に向けた交渉クラスターを遅滞なく開始することを求める共同声明が発出された。
中東情勢とエネルギー問題については、エジプトやヨルダンなどの地域パートナーを交えて協議が行われ、米国とイラン、イスラエルとレバノンの間の停戦合意が歓迎された。今後の取り組みとして、①ホルムズ海峡における航行の自由の回復、②地域における安定的かつ恒久的な停戦、③イランの核兵器保有の完全な阻止、という3つの重要な優先事項に合意した。
これに関連し、安全条件が整い次第、ホルムズ海峡の航行の自由を回復するための防衛任務に向けて、50か国以上からなる連合が準備を進めていることが強調された。さらに、紛争がエネルギー価格に与える影響を緩和するため、欧州独自のクリーンエネルギー導入とエネルギー移行を加速させることが確認された。
また、米国のトランプ政権との対立や地政学的緊張を背景に、EUの相互援助(防衛)条項である欧州連合条約第42条7項を実際にどのように運用できるかについても議論が行われた。
EUの野心的な目標に見合った資金調達についても意見交換が行われ、予算の財源として新たな独自の財源(自己財源)が重要な役割を果たすことが確認された。首脳陣は、2028年初めから新予算を稼働させるため、2026年末までに最終的な合意に達する重要性を共有した。
会談のフリンジでは、キプロス大統領、欧州議会議長、欧州委員会委員長により、最優先課題として『One Europe, One Market(一つの欧州、一つの市場)』ロードマップが署名された。同ロードマップには、ルールの簡素化、単一市場の統合強化、エネルギー価格の引き下げと脱炭素化、デジタルおよびAI移行の推進など、5つの分野における具体策が盛り込まれている。
- [パキスタン/米・イラン仲介外交]4月24日、イランのアラグチ外相は、米国との交渉を仲介するパキスタンの首都イスラマバードを訪問し、シャリフ首相、ダル外相、ムニール軍総司令官と会談した。前回、物別れに終わった米国との協議再開に向け、イラン側の要望などを伝えたものとみられている。
その後、アラグチ外相は2025年の米・イラン交渉を仲介したオマーンを訪問し、サイード国王と会談を行ったのち、再びイスラマバードに戻った後にロシアへ向かった。駐ロシア・イラン大使によると、アラグチ外相はロシアで27日にプーチン大統領と会談し、戦争終結に向けたイラン側の条件や、ホルムズ海峡を巡る新たな法的枠組み、封鎖の解除、被害補償などについて協議するとみられている。
一方、トランプ米大統領は、イランとの協議のために4月25日にイスラマバード訪問を予定していたウィトコフ特使やクシュナー氏ら代表団の派遣を中止したと、自身のSNSに投稿した。さらにFox Newsに対し、「18時間のフライトを経て『何の成果もない話し合い』をする価値はない」と述べ、「移動に時間が掛かりすぎる。我々はすべての切り札を握っている。もし話し合いたいなら電話一本で済むことだ」と自身のSNSに投稿した。
ただし、間接的な取り組みが続いている兆候もみられる。イランのメディアは、イランが仲介役のパキスタンを通じて米国側に「書面によるメッセージ」を送ったと報じている。4月前半以降、停戦はおおむね維持されているものの、両国はホルムズ海峡で封鎖措置を続けており、主要なエネルギー輸送の要衝は事実上、通航不能の状態が続いている。さらに、イランが同海峡に敷設された海底通信ケーブルの切断を示唆するなど、緊張の高い状態が続いている。
- [マリ反政府勢力/国防相殺害]4月25日、首都バマコの国際空港をはじめ国内各地で反政府勢力らによる同時多発的な攻撃が発生。バマコ近郊のマリ軍最大の軍事基地カティでは、サディオ・カマラ国防相の自宅でトラックを用いた自爆テロにより、同氏が死亡したと報じられている(4月26日付、英BBC等)。2021年のクーデターにより暫定大統領に就任したアッシミ・ゴイタ元将軍の自宅も襲撃されたが、同氏は安全な場所に移動したと報じられている。アルカイダ系武装組織「イスラムとムスリム支援団(アラビア語でJNIM、フランス語でGSIMとも呼ぶ)」と、トゥアレグ族(ベルベル人系)反政府組織「北部アザワド解放戦線(FLA)」は、互いに連携して攻撃を実施したと犯行声明を発出した。
マリでは、治安回復を約束した暫定軍事政権下においても、治安は悪化の一途を辿っている。FLAは、今回の攻撃により、トゥアレグ族の中心都市であるマリ北部のキダルを制圧したと発表。キダルは2023年にマリ軍とロシアの民間軍事会社・旧ワグネル(現在は「アフリカ部隊」に再編成)が奪還した北部の戦略的要衝だけに、軍トップであるカマラ国防相の死亡とあわせ、マリ暫定政権は大きな痛手を被った形となる。マリ軍は4月25日の声明において「状況は掌握下にある」と発表しているが(4月26日、英FT紙)、中部の主要都市セヴァレなど複数の都市で攻撃の状況が明らかになっていないもよう。報道では、1,000人以上の戦闘員が組織的に攻撃を行ったとみられ、暫定政権発足以降、反政府勢力による最大規模の攻撃となっている(4月26日、仏Le Monde紙)。
マリ北部のトンブクトゥ、キダル、ガオの3州を中心に生活する遊牧民系のトゥアレグ族は、マリがフランスから独立した1960年代からたびたび、南部のバマコを中心とする黒人政権に対する抵抗運動を続けてきた。2012年にはリビアのカダフィ前大佐の傭兵として実戦経験を積んだトゥアレグ人グループが重装備を携えてマリに帰国。「アザワド解放民族運動(MNLA)」を組織し、北部の独立を宣言した(第4次トゥアレグ反乱)。アルジェリアとマリ国境周辺に潜伏していたアルカイダ系過激派組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」は当初MNLAを支援し、マリ軍を追い出す形で北部を実効支配した。これに対し、マリはフランス政府に支援を求めた。フランスは2012年から2022年までマリに軍事派遣を行ったが(バルカンヌ作戦等)、AQIMらの活動を根絶できず、むしろマリ国内で反仏反感が高まった。マリの文民政府が治安改善の成果を出せない中、2020年、2021年の2度にわたるクーデターで、ゴイタ元将軍が暫定大統領に就任。フランス軍と「国連マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMA))の撤退を求めると同時に、ロシア・ワグネルとの安全保障連携に転換した。ワグネルとの軍事協力の交渉を進めてきたマリ側の中心人物が、ロシアで軍事教育を受けたカマラ国防相だったが、その本人が過激派グループに殺害された形だ。
FLAは、ロシアのアフリカ部隊がキダルからの撤退に合意したと発表している(4月26日付、AP通信)。ロシアのマリへの軍事派遣以降、ロシア側が撤退を公式に合意したのは初めてとみられており、いかにロシアのマリにおける軍事的影響力が低下しているかを象徴しているとの見方もある。FLAの攻撃の目的はトゥアレグ族の独立という点で明白だが、JNIMによる攻撃の目的について統一的な見解はない。マリ軍事政権を転覆させるための攻撃との見方もあれば(4月26日付、米NYT紙)、軍事政権にJNIMとの交渉を迫り、新たな政治勢力への門戸を開くことを狙っているとの見方もある(英FT紙、仏Le Monde紙)。
マリはアフリカにおいてガーナに次ぐ最大の金産出国であり、JNIMの活動資金は実効支配地域での手掘りの小規模金採掘者(ASM)や住民、通行する車両などからの徴税やザカート(喜捨)が主となっている。JNIMはシリアの政変時に同じくアルカイダ系のメンバーだったシャラア氏が暫定大統領に就任した際に祝賀のメッセージを送っていることから(2025年7月、米WP紙)、JNIMはマリの一部地域をマリ軍に認めさせる形で統治を行うことに関心を有している可能性もある。マリでは、カナダのBarick Gold社や、カナダ・英国企業・Endeavour Mining社などの外資系鉱山会社も大規模な金生産を行っている。JNIMら反政府組織の活動地域が拡大すれば、こうした金鉱山の操業にも影響を及ぼすほか、マリの周辺国にもさらに治安の悪化が拡大していく恐れもある。
フランスをはじめとする西側諸国への反発を強め、ロシアやトルコとの関係を強化してきたマリ軍事政権だが、米国とテロ組織をドローン等を用いて監視するためのインテリジェンス協力に向けた協議を再開するなど新たな動きもある(3月9日付、英ロイター通信)。
- [インドネシア/マラッカ海峡通行料徴収案を撤回]4月24日、インドネシアのプルバヤ財務相はマラッカ海峡を通過する船舶より通行料を徴収することは想定していないと述べた。4月22日にジャカルタで開催されたシンポジウムで、プルバヤ氏は通行料を徴収する可能性について言及し、マレーシア、シンガポール含めた3か国で通航料を分担すれば相応の金額の歳入が得られるだろうと言及していた。同氏は本案が、インドネシアが世界経済の舞台で「主要なプレーヤー」として振る舞うべきだというプラボウォ・スビアント大統領の指示に沿ったものであると述べた。それに対してマレーシア・シンガポールの外相が反対や懸念を表明した。同日にシンガポールのバラクリシュナン外相が、いかなる船舶の航行も通行料を徴収されるべきでなく、シンガポールは通行料を徴収するような、いかなる取り組みも実施しないと発言した。4月23日にはマレーシアのハサン外相が、マラッカ海峡に関するいかなる決定も1か国のみで下すことは許されないと発言した。これらを踏まえ、インドネシアのスギオノ外相はマラッカ海峡を通過する船舶に関税を課すことは国際法に合致しないとして、インドネシアは関税を課さない方針であると述べた。特に国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法を尊重していると語った。
なおマラッカ海峡は世界の海上原油輸送量の約4分の1が通過する、貿易・エネルギーの交通の要衝である。最も幅が狭い部分はわずか2.7kmと、ホルムズ海峡の10分の1以下の幅。2025年には10万隻の船舶が通行した。
プルバヤ氏が本発言を行った背景には、同国の財政状況悪化懸念が挙げられると考えられる。2026年3月までの累計財政赤字は240兆1,000億ルピア(約2兆2,500億円)と、GDP比0.93%を記録した。歳出が昨年比31.4%と大きく増加したことが要因。通年での財政赤字GDP比目標は2.68%であるが、現在のペースで財政赤字が拡大し続けた場合は通年での財政赤字GDP比は3.72%と目標及び法定上限(同3%)を大きく超過することになる。加えて直近では原油価格高騰によりガソリン向けのエネルギー補助金増加が懸念されており、財政赤字拡大に拍車をかけかねない。他方で歳入の増加率は昨年比10.5%と歳出の増加率を大きく下回っている。2022年の資源価格高騰時には、主要輸出品である石炭・パーム油関連の歳入増加がエネルギー補助金増加を相殺したが、直近の両者の市況価格は2022年時点よりも低く抑えられているため、歳入増加も期待できにくい。このように財政状況が厳しい中で、新たな歳入確保の手段としてマラッカ海峡を通過する船舶からの通行料を徴収するアイデアが浮上したものと考えられる。
加えてプラボウォ政権以降に進んでいるとみられるASEANを軽視する外交姿勢が本発言に繋がったとも考えられる。インドネシアは過去よりシンガポールと並びASEAN外交を主導してきたが、近年は中国、ロシア、米国などとの二国間の外交関係を重視し、タイ・カンボジア国境紛争やミャンマーでの内戦などASEAN地域の外交問題解決に向けた取り組みを減らしていると指摘されている(South China Morning Post、2026年4月21日)。
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