- [アフリカ/ロシア派兵]2月24日、南アフリカ(南ア)のラマポーザ大統領は、ロシア・ウクライナ戦線に送り込まれた南ア人17人の帰還におけるプーチン大統領の支援に謝意を表明した。20~39歳の南ア人男性らは「高収入の雇用契約」に誘われロシアに渡航。その後、十分な訓練も受けないまま、ウクライナ・ドンバス地域の戦闘の最前線に送り込まれ、ウクライナ側に対する攻撃を強要されたと報じられている。この「傭兵」勧誘プロセスについて南ア政府は調査を進めている最中だが、南アのズマ前大統領の娘で、第二野党「民族の槍(MK)」の主要メンバーであるドゥドゥジレ・ズマ=サンブドラ氏が募集役を務めていたとの疑惑が浮上。同氏はロシア行きは「合法的な訓練」のためだったと戦場に送り込むことを目的とした勧誘ではないと否定しているが、これを受けて同氏は国会議員を辞職するなど南ア国内でも政治スキャンダルとなっている。現在MK党の党首を務めるズマ前大統領は、最大政党「アフリカ民族会議(ANC)」の党首でもあった2009~2018年の間にロシアと蜜月な関係を続けてきたが、ANC離党後もロシアとの関係を維持していることを示唆している。また、汚職にまみれたズマ氏を実質的にANCから追放し、大統領に就任したラマポーザ氏も、依然としてプーチン氏との友好関係を維持したい意図が今回の声明からもみてとれる。
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の動向などを調査・監視しているNGO「All Eyes on Wagner(AEOW)」が2月11日に発表した報告書によると、ロシアに勧誘され、ウクライナの戦場に送り込まれた36か国からのアフリカ人は1,417人に上るとのこと。その多くは十分な訓練も受けないまま、最前線での戦闘を強いられ、「消耗品」として使用されていると指摘している。募集は各国でFacebookやTelegramなどのSNSを通じて人身売買組織により行われる。報酬は月額24万円程度支給されることから、ほとんどのアフリカの国々の平均的な給与水準より圧倒的に高い。そのため、若者や軍人・警察OB、失業者などが高額報酬に騙されてロシアに渡航しているとみられている。
ケニア国家情報局(NIS)は2月17日、ロシア側の戦闘員として1,000人以上のケニア人が募集されたと議会で報告。死者の遺族などから政府に対する批判も強まっていることを受け、ケニアのムダバディ外相は3月にロシアを訪問し、ケニア人の徴兵を禁止するよう求める予定だと報じられている。しかし、ケニアは主食の一つである小麦を輸入に依存しているが(輸入額で石油、パーム油に次いで3位)、その最大の供給国がロシアであり、2024年は輸入小麦全体の8割まで拡大している(国連統計)。こうしたケニアにとっての食料安全保障上の重要性から、ロシアに対して強硬的な態度はとらないとの見方がある(Economist Intelligence Unit)。
ロシアはワグネルのプリゴジン氏死去や、ウクライナ戦争の長期化による消耗やシリア政変等により一時に比べればアフリカでの存在感は低下しつつある。しかし、依然として、軍事政権が続くサヘル諸国(マリ、ブルキナファソ、ニジェール)や中央アフリカではロシアとの軍事安全保障面の協力を継続。ケニアやエジプトなどの国々では食料安全保障の協力を通じ、また南アとはBRICSを基軸とする政治外交関係を通じてロシアは密接な関係を維持している。
- [メキシコ/治安リスク]2月に断行されたハリスコ新世代カルテル(CJNG)の最高指導者ネメシオ・オセゲラ(通称「エル・メンチョ」)の殺害作戦の成功は、シェインバウム政権にとって発足以来最大の象徴的勝利であると同時に、大きなリスクをもたらすものとなった。AMLO前政権の直接対決を避ける融和路線からの決別を意味している。特に、フェンタニル密輸問題への対応が不十分であればドローン攻撃すら辞さない構えを見せる米国のトランプ政権に対し、メキシコが主体的に治安を改善していることを証明する外交的防波堤としての意味合いもあった。しかし、この作戦の成功がもたらした代償は重く、殺害直後には道路封鎖や車両・商店への放火、州兵へ攻撃による犠牲など、CJNGによる報復行為が激化した。2月23日にはその規模は縮小され、政府はコントロール化にあることを主張しているが、今後もリスクは残る。
CJNGは、中央集権的な旧来のカルテルではなく、地方ギャングとの同盟を軸に急速拡大したことから、指導者を失った直後でも各地域が独立して混乱を引き起こす能力がある。一方で、過去の事例の通り、強力な指導者の不在は内部派閥の抗争や空白地帯を狙うライバル組織の侵入を誘発し、結果として暴力の質をより予測困難で残虐なものへと変質させる恐れがある。
経済・産業面に目を向けると、この治安の流動化は実体経済へ深刻な打撃を与える可能性がある。メキシコ経済の柱であり、ニアショアリング戦略の要である製造業が集中する地区では、物流網の寸断により日系企業の生産ラインが直撃を受けた。ホンダは慎重な判断からグアダラハラ工場の操業停止を余儀なくされ、フランスのミシュランは営業チームの陸空すべての移動を禁止し、2月27日までの渡航禁止措置を講じた。ドイツのフォルクスワーゲンも当局との緊密な連絡を保ちつつ警戒を強めている。物流の停滞がもたらすサプライチェーンのコスト増と治安維持コストの急増は、メキシコ・ペソの対ドルでの下落要因となっている。さらに、GDPの約10%を占める観光業においても、フライトキャンセルやクルーズ船の寄港中止がおきている。
今後の展望として、暴力が全国規模の全面戦争に発展する可能性は低いとはされているが、特定の経済要衝や密輸ルートを巡る局地的な不安定化が常態化する可能性がある。分散した組織によるゲリラ的な攻撃や、政治家・民間人を標的とする組織的テロリズムに近い手口へシフトすれば、国家の統治能力を確実に疲弊させる。
- [中国・SpaceX/宇宙競争]FOXニュースの報道から。中国とイーロン・マスクは、太陽光を利用した宇宙空間のAIデータセンター(宇宙ベースAIインフラ)をめぐって競争している。狙いは、AIが大量に消費する電力問題を解決し、次世代の計算基盤とエネルギー支配を握ることにある。
中国は「ギガワット級の宇宙デジタルインテリジェンス基盤」を掲げ、2030年までに太陽光駆動の「宇宙クラウド」を構築する国家戦略を推進している。中国航天科技集団公司(CASC)は「ギガワット級宇宙デジタル・インテリジェンス・インフラ」を 5か年計画に明記している。地上ではなく軌道上でデータ処理を行い、計算能力・ストレージ・通信を統合する構想。国家安全保障の中核とも言える。
一方、マスク氏は、宇宙こそが「最も低コストでAIを動かせる場所」だと主張し、数年以内に太陽光発電型AIデータセンター衛星を打ち上げる計画を示している。宇宙では雲や夜がなく、地上の約5倍の発電が可能だとされる。SpaceXとxAIとを統合し、最大250億米ドル規模のIPO構想を明らかにし、資金の一部を軌道上AIインフラに充当予定する意向を示した。最大の課題はやはり打ち上げコスト。鍵を握るのはロケット技術となる。SpaceXは中国との競争においては、すでに優位に立っており、中国は完全再利用ロケットの確立が遅れているのが現状だ。
この競争は単なるデータセンター建設ではなく、経済力・軍事力・技術覇権を左右する戦略的競争だ。AIとエネルギーが宇宙で結びつけば、次のクラウド基盤は地上ではなく「私たちの頭上」に形成される可能性がある。
- [ロシア発表/核供与疑惑]2月24日、ロシアの情報機関である対外情報局(SVR)は英国とフランスが、ウクライナに核兵器(または「汚い爆弾」)を秘密裏に供与する計画を進めていると証拠の提示なく発表した。欧州製の部品・技術を使い、ウクライナ独自開発に見せかける構想だと説明している。具体例として、フランスの小型核弾頭(TN75)への言及もあった。ロシア対外情報局の報告を受け、ロシアのプーチン大統領は同24日、連邦保安庁(FSB)の会合で、これは核不拡散体制への重大な脅威だと強調した。また、メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)は、ウクライナに核供与が事実であれば、核兵器を含むロシアから対抗措置もあり得ると警告した。
一方、フランス外務省・在ロシア仏大使館、英国大使館はいずれも「虚偽」「偽情報」として全面否定している。 英国は核不拡散条約(NPT)順守を改めて強調し、ウクライナ外務省も、SVRの情報は根拠のない「虚偽」だと否定している。
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