- [中国/ 脱炭素とエネルギー安全保障を強化]中国国家発展改革委員会(NDRC)は6月、産業分野の省エネ・脱炭素化を推進する3か年行動計画と、「新型エネルギーシステム建設『十五五』計画」を相次いで公表した。前者は2026~28年の短期実行計画、後者は第15次5か年計画期間(2026~30年)における中長期戦略に位置付けられ、中国の「双炭(2030年炭素排出ピークアウト・2060年炭素中立)」目標実現に向け、需要側・供給側の双方からエネルギー転換を進める。
3か年行動計画では、鉄鋼、電解アルミ、セメント、板ガラス、製油、エチレン、アンモニア、メタノール、石炭火力の9業種を対象に、省エネ設備への更新や廃熱回収、燃料転換、電化、デジタルエネルギー管理などを重点的に実施する。特徴的なのは、従来のエネルギー効率(能效)の改善だけでなく、CO?排出効率(?效)の向上を同時に重視している点。財政・金融支援や価格政策も組み合わせながら産業部門のグリーン・低炭素化を加速する方針を示している。
一方、「十五五」計画では、2030年までに新型エネルギーシステムをおおむね構築することを目標とする。非化石エネルギーを供給主体とする一方、石炭・石油・天然ガスも安定供給を支える調整・バックアップ機能として維持する方針を明確にしている。また、再生可能エネルギーの大量導入を支えるため、新型電力システム、送配電網、蓄電、水素などのインフラ整備や、市場制度改革を重点施策として掲げている。
今回の政策は、脱炭素政策であると同時に、エネルギー安全保障と産業競争力強化を重視した産業政策としての性格も色濃い。Eurasia Groupは、中東情勢などを背景に中国が輸入エネルギーへの依存低減を一層進めると分析しており、国内資源を活用する石炭化学と、グリーン水素・グリーンメタノールなどの「グリーン分子」を並行して育成するとの見方を示している。石炭と再生可能エネルギーを対立概念として捉えるのではなく、脱炭素、エネルギー安全保障、産業競争力強化を同時に追求する点が、今回の政策の大きな特徴といえる。
- [米国/直接投資問題]ミシガン州の人口約3,000人の農村地域グリーン・チャーター・タウンシップが、中国系バッテリーメーカー国軒高科の米国子会社による23億6,000万ドル規模のEV用リン酸鉄リチウム電池工場の建設を阻止したことで、数億ドル規模の損害賠償訴訟に直面している。
ホイットマー・ミシガン州知事の支持と約1億7,500万ドルの州奨励金を背景に、109ヘクタールの敷地で約2,500人の雇用創出が見込まれていたが、住民は中国の影響力浸透や水系汚染を懸念し、2023年11月に計画を承認した町議会議員5名をリコール。新議会が取水許可など関連合意を取り消し、プロジェクトは停滞した。
国軒高科は2024年3月に提訴し仮差し止め命令を得たものの建設は周辺事情から断念。2025年10月、ミシガン戦略基金は債務不履行を宣言し、5,000万ドルの補助金と2,360万ドルの土地購入費の返還を要求した。国軒高科は2026年6月の修正訴状で、逸失利益等を含む少なくとも2,300万ドルを請求している。町は既に訴訟費用で約40万ドルの赤字を抱え、3年連続で州の要注意対象に指定されている。
トランプ氏やヴァンス氏も反対を表明するなど国政でも問題視されるようになった。中国はリン酸鉄リチウム電池生産の94%のシェアがある。米国は対抗策として中国以外からの技術移転を必要とする一方、取り進めによっては地域社会の拒絶が強まってしまうという構造的矛盾を抱えることになった。他にもバッテリー工場も中止・停止されており、外国投資家は米国向け投資に今後はより高いリスクプレミアムを求める可能性が高くなる可能性も指摘されるようになっている。
- [キルギス/中央アジアの安定化進展]6月23日、キルギス政府は隣国ウズベキスタン東部フェルガナ州にあるキルギス系住民が多数を占める2村(計約2,500人)を自国に編入したと発表し、住民にはキルギス国籍を付与した。これに対しキルギス側は、国境沿いの同規模の領土をウズベクへ割譲することで合意した。
さらに、両国は、南部バトケン州での道路整備を目的に約230ヘクタールの土地交換も実施した。キルギスとウズベキスタンは、ソ連崩壊以降、水資源を巡り衝突を繰り返してきたが、2022年には国境付近の貯水池の共同管理協定を締結するなど関係改善を進めている。今回の領土交換は、未画定だった国境問題の最終的な整理に向けた一環と位置付けられ、地域の安定化と経済連携深化への寄与が期待される。中央アジアでは、ソ連期に人為的に設定された複雑な国境線を巡る紛争が長年の懸案であったが、近年その画定が最終段階に到達した。キルギスは2024年末までにウズベキスタンとの国境画定を事実上完了し、さらに2025年春までにタジキスタンとの約970kmの未画定国境についても合意に至った。また同年3月には3か国の国境接点を正式に確定し、フェルガナ盆地における最後の係争を解消した。こうした流れの中、キルギスとウズベキスタンは住民構成やインフラ利便性を踏まえた領土交換を実施し、国境管理の合理化を進めている。これにより衝突リスクの低減や物流改善が期待され、地域は対立から協調へと転換しつつある。
- [米国・ルワンダ/経済制裁]6月25日、米・財務省外国資産管理室(OFAC)は、ルワンダ最大の金精錬所であるGasabo Glod Refinery社とその会長、そして3つのルワンダ系鉱業会社に対して制裁を発動したと発表した。OFACは、同社らが、ルワンダが支援する反政府武装組織「3月23日運動(M23)」と連携し、M23が実効支配を続ける隣国コンゴ民主共和国(DRC)東部から違法にルワンダに金を密輸するネットワークに関与していることを制裁の理由に挙げている。OFACは「DRCの鉱物資源は当然ながらDRC国民に帰属するものである」としたうえで、この措置は2025年12月に米国が仲介したルワンダ・DRC間の「平和と繁栄のためのワシントン合意」、ならびに重要鉱物のサプライチェーンの透明化等を図る「地域経済統合枠組み」に基づくものだと説明している。
OFACは、DRC東部のM23の実効支配地域で違法に採掘された金は、M23およびルワンダ国防軍(RDF)の監視・警備のもと、ルワンダの首都キガリにあるGasabo Gold社まで安全に輸送されており、2026年初頭に少なくとも60kgの金が同社で精錬されたと指摘。同社がDRCでの紛争を招き、国民の安全を脅かすM23やRDFに直接的・間接的に利益をもたらしていると非難している。同社は2025年1月にM23が急激にDRC東部での実効支配地域を拡大させた後に、欧州連合(EU)からも経済制裁を課されている。米国はM23をはじめ、2026年3月にRDFの幹部らにも経済制裁を発動するなどルワンダへの圧力を強めている。
国連貿易統計(2025年)によると、金はルワンダの輸出(金額ベース)全体の2割を占める最大の輸出品で、そのほぼ全量が金の加工・物流ハブであるアラブ首長国連邦(UAE)に輸出されている。また、鉄鋼や電子部品製造に必要な重要鉱物であるニオブ・タンタル・バナジウムも輸出全体の5%を占める主要輸出品だ。一方で、ルワンダ国内には主要な金鉱山はない。そのため大部分の金や、一部のタンタル等は小規模採掘者による手掘りの鉱山が多いDRC東部の紛争地域から密輸されていると広く指摘されており、実際に国連の公式統計にも計上されていない。特にタンタル等は主に中国向けに輸出されている。そのため。トランプ政権下で重要視する重要鉱物へのアクセス確保と、中国への対抗という両方の動機から、OFACが経済制裁を強めたものとみられる。
- [中国/戦略鉱物の輸出管理で通報制度強化]6月24日、中国商務部は戦略鉱物に関連するデュアルユース(軍民両用)品目の輸出管理違反に関する通報・処理制度を強化すると発表した。輸出管理法第31条に基づき、あらゆる組織・個人が違法・違反行為を当局に通報できることを改めて明確化するとともに、通報窓口やホットラインを整備し、実名通報へのフィードバックや報奨制度を導入する。商務部は、通報制度の充実は輸出管理体制の整備および法執行能力の向上に不可欠であり、国家の安全と利益を守るための措置であると説明した。また、戦略鉱物が不正な用途に利用されることを防ぎ、法令を順守する企業の正当な権益を保護することも目的としているという。
さらに商務部は、輸出管理違反の監視に通報制度を活用することは「国際的に一般的な手法」であり、多くの国でも採用されていると強調した。各国の制度を参考に中国の仕組みを整備することで、世界の平和と安全に貢献し、「責任ある大国」としての姿勢を示す狙いもあるとしている。
もっとも、中国では従来から汚職摘発や国家安全、食品安全など幅広い分野で通報・内部告発制度が運用されており、国民による監視を行政に取り入れる仕組み自体は新しいものではない。今回注目されるのは、この仕組みを経済安全保障および輸出管理の分野に本格的に適用した点にある。物流会社、通関業者、金融機関、電子商取引(EC)事業者なども監視網の一部として位置付けられ、サプライチェーン全体で違反を監視する体制が構築されつつある。
この動きは、近年、半導体などの輸出規制を巡り内部告発制度や報奨制度を強化してきた米国とも共通する面がある。ただし、中国は欧米の制度を単純に模倣したというよりも、従来から存在した通報制度を戦略鉱物やデュアルユース品目の管理へ拡張したと理解するのが適切である。戦略鉱物の管理強化や産業・サプライチェーン安全保障制度の整備とあわせ、中国は輸出管理の執行を行政だけに依存せず、企業や社会全体を巻き込む監視・執行体制へと発展させようとしていることがうかがえる。
- [ベネズエラ地震]2026年6月24日、南米ベネズエラ中北部でマグニチュード7クラスの地震が短時間に連続して発生した。まず深さ約20kmでMw7.2の前震が起き、その約39秒後に深さ約10kmでMw7.5の本震が続いた。この地域はカリブプレートと南米プレートの境界に位置し、サン・セバスティアン断層帯に沿った右横ずれ断層型地震が発生しやすい地質である。震源が比較的浅く、さらに短時間に大規模な揺れが重なったことで、ベネズエラおよび沿岸地域に長周期・短周期の強い揺れが同時に広がり、被害が拡大したと考えられる。
人的被害については、政府が非常事態を宣言しているものの、通信障害や現地混乱のため正確な全体像は把握できていない。6月25日から26日時点の暫定発表では死者は約200人、負傷者は1,500人以上、行方不明者は数万人規模と報じられている。ただし、倒壊建物の瓦礫下に取り残された人々を含めると、実際の被害はこの数値を大きく上回る可能性が高い。米国地質調査所の災害評価「PAGER」は最も深刻な赤レベルを示しており、最終的な死者は数千人から数万人規模に達する確率が高いと推計されている。
被害拡大の背景には、ベネズエラが抱えてきた長年の構造的問題がある。経済制裁や財政悪化によりインフラ維持が十分に行われず、建物や電力網、医療施設の老朽化が進行していた。今回の地震では高層住宅の倒壊や沿岸部の建物崩壊が相次ぎ、主要空港の閉鎖、道路の寸断、電力供給の停止など、国家機能に直結するインフラが広範囲で損傷した。直接的な資産被害は150億~250億ドル規模と見込まれるが、復旧と同時にインフラの再建・近代化が必要になるため、総復興費用は400億ドル以上に膨らむ可能性がある。
経済面では、特に原油産業への影響が深刻である。ベネズエラは石油輸出に大きく依存しており、生産拡大を進めていた最中での被災となった。主要油田自体の損傷は限定的とみられるが、輸送港湾や精製設備、電力供給の障害により、原油の生産・輸出は大きく停滞する見通しである。さらに物流の混乱により食料や医薬品の不足が発生し、価格上昇と買い占めが進行している。これにより、いったん落ち着きつつあったインフレが再び加速するリスクが高まっている。
政治面では、震災対応が政権の存続を左右する重要な局面となっている。現政権は実務重視の路線と強硬派の影響が併存する不安定な体制にあり、救援物資の配分や治安維持の在り方が政治対立を激化させる可能性がある。迅速かつ公正な支援が実現すれば政権の正統性は強化されるが、対応の遅れや不透明な運用が露見すれば、抗議活動の拡大や権力争いの激化につながる恐れがある。
国際関係においては、震災を契機に支援をめぐる動きが活発化している。米国は人道支援や災害対応チームの派遣を通じて関与を強め、復興支援を外交的影響力の拡大に結びつけようとする可能性がある。一方、中国はこれまでベネズエラに対する大規模融資を行ってきた主要債権国であるが、近年の経済状況を踏まえると、過去のような巨額支援ではなく、限定的な人道支援にとどめる現実的対応を取るとみられる。その結果、復興主導権をめぐる国際的な駆け引きが生じる可能性が高い。
以上を総合すると、今回の地震は単なる自然災害にとどまらず、経済的脆弱性、政治的不安定性、そして国際関係の緊張が重なった複合的危機であると位置づけられる。今後の焦点は、被災地への物資供給とインフラ復旧がどこまで迅速に進むか、そして国外からの支援を国内の統治機構が円滑に受け入れられるかにある。この初動対応の成否が、ベネズエラの国家機能の維持と長期的な復興の方向性を大きく左右することになる。
- [日本/東京都区部消費者物価指数6月分(中旬速報値)]6月26日、総務省は全国結果の先行指標とされる、東京都23区の消費者物価指数の6月分(中旬速報値)を公表した。
2020年を100とした総合指数は112.7で前年同月比+1.7%となった。変動の大きい生鮮食品を除く総合指数(コア指数)は112.2で前年同月比+1.6%と5か月連続で2%を下回った。5月の前年同月比+1.3%に対して上昇率は0.3ポイント拡大した。前年同月比の上昇率の拡大は2025年10月以来8か月ぶり。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)は111.5で前年同月比+1.9%と、3か月連続で2%を下回った。
生鮮食品を除く食料は+3.9%。上昇率は2025年9月(+6.9%)から10か月連続で縮小した。なお、価格高騰していたコメ類は2022年9月から前年同月比プラスが続いていたが、5月に▲1.1%と下落に転じ、6月は▲6.0%と下落幅が拡大した。
エネルギー価格は▲2.3%と、下落率は5月の▲3.7%から縮小した。ガソリンは▲1.3%、都市ガス代▲4.1%、電気代は▲2.0%といずれも下落した。
保育所保育料は無償化により▲100%。水道料は、東京都が一般家庭を対象に水道基本料金を4か月無償化したことにより5月は▲34.6%となったが、6月は、昨年の無償化政策により前年同月比で横ばいとなった。
また、6月より政府が診療報酬を改定したことにより、診療代は+1.7%。
- [米国/物価上昇]商務省によると、5月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+4.1%だった。市場予想通りだったものの、2023年4月(+4.5%)以来の高い伸び率。上昇率は2月(+2.9%)から拡大、3月(+3.5%)に3%台に乗せ、4月(+3.8%)からも拡大した。また、食品とエネルギーを除くコア指数は+3.4%。3~4月(+3.3%)から小幅に拡大した。2月(+3.0%)に比べても上昇率を拡大させている。
内訳を見ると、エネルギー(+24.3%)が4月(+18.3%)から拡大、3か月連続で2桁上昇だった。これは、2022年7月(+33.6%)以来の大きさだった。食品は+2.4%で、4月(+2.5%)から小幅に縮小した。財は+4.8%で、4月(+4.4%)から拡大、2か月連続で4%台と2月(+1.8%)の2倍以上の伸び率だった。特に、耐久財(+3.3%)に比べて、非耐久財(+5.6%)の伸び率が目立った。耐久財では自動車・同部品(▲0.2%)が2か月連続で低下した。家具・家庭用品(+2.7%)も縮小した。非耐久財では、ガソリン等(+40.5%)と3か月連続のプラス、4月(+29.1%)から一段と拡大した。サービス(+3.8%)は4月(+3.5%)から拡大、25年2月(+3.8%)以来の大きさになった。金融サービス(+7.8%)が4月(+6.4%)から拡大し、輸送サービスも+6.6%と4月(+5.8%)から拡大した。
物価安定の2%目標から、物価上昇率がさらに乖離している。今後の動向次第であるものの、金融政策はより引き締め方向に重心を移すことを示唆する内容になった。
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