マニラ/フィリピン~ポジティブイメージの国へ~

2019年12月05日

フィリピン住友商事会社
安積 孝二

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 マニラといえば、マニラ市とマニラ首都圏があることをご存じでしょうか?後者は16市と1町で構成されており、大きさは東京23区ぐらいです。マニラ市はそのうちの1つの市です。「マニラに駐在しているよ」と言ったとき、大半は治安の良いマカティ市やタギッグ市に住んでいるのが実情です。

 

 フィリピンでは英語が公用語ですが、みんなどれぐらい話せるのでしょうか?EF EPIという英語能力指数の世界ランキングがありますが、2019年のデータによると、アジアの中でフィリピンはシンガポールに次いで能力が「高い」のカテゴリーでした。ただ、フィリピン人はみんな英米のようなネイティブ英語を話すと思っていると少々誤解があり、時々英語での意思疎通が十分にできないフィリピン人に会うこともあります。ただ、ネイティブ並みに流ちょうに話せる人が多いのは事実であり、英語が話せるが故に海外で働いているフィリピン人はなんと現在1,000万人を超えています。なお、フィリピンで英会話学校がますます増えているのは、英語が流ちょうであること、他国と比較して授業料が安いこと、および日本から近いことなどが大きな理由でしょう。

 

タギッグ市のハイ・ストリートは夜になっても市民の憩いの場として人気が高い(筆者撮影)
タギッグ市のハイ・ストリートは夜になっても市民の憩いの場として人気が高い(筆者撮影)

 当国には「貧しい」「汚い」「治安が悪い」というネガティブイメージをもっている方が多いと思いますが、最近は、「フレンドリー」「海がきれい」「英語留学に適切な国」というポジティブなイメージを(特に若手世代の間で)多く聞きます。駐在するまで私もフィリピンを訪れたことはなかったのですが、オンライン英会話でフィリピン人と仲良くなり、駐在前から当国に対して良いイメージを持っていた一人です。治安については、若干の不安はありましたが、実は10万人あたりの発生件数では、強盗も強姦も米国や英国のほうが圧倒的に多く、フィリピンの発生件数は相対的に少ないのです。「Numbeo Crime Index 2019」という調査ランキングにおいて、マカティ市はバンコクやハノイと同程度に安全なレベルという結果が出ています。ぜひデータ・統計で比較してみてください。ドゥテルテ大統領が就任してからは特に治安が改善傾向にあり、今後も改善が進むと見込まれています。

 

 

現在のMRT3号線(筆者撮影)
現在のMRT3号線(筆者撮影)

 最後に「渋滞」について。知らない方も多いかもしれませんが、マニラ首都圏の交通渋滞は年々悪化する一方で、社会問題になっています。通勤で片道2~3時間かけて会社に通っている従業員も珍しくありません。この改善のために政府が一番に掲げているのが鉄道などのインフラ整備です。目下、マニラで住友商事といえば多くのフィリピン人が鉄道MRT3号線を思い浮かべるはずです。これまでのメンテナンスが不十分なために、なんと時速30キロメートルでしか走行できない状態にある鉄道車両をリハビリして走行速度と利便性を改善すべく、2018年末に政府と契約し、現在多くのフィリピン人の期待を背負って当社駐在員が同契約の履行に活躍中です。

 

 日本に近いけれど知っているようで知らない国、フィリピン。親日的で今後ますますコミュニケーションの機会が増えると思いますし、世界からも一層注目されてゆく国だと思います。ぜひ、フィリピンについて正確な知識を持ってくださるとうれしい限りです。

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