イスタンブール/トルコ ~歴史的観光都市のもう一つの顔、ボスポラス海峡から黒海へ~

2021年09月03日

トルコ住友商事会社
待鳥 良輔

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左から、アヤソフィア、グランバザール(スパイス・バザール)、ガラタ・タワー(撮影:天野寛教・トルコ住友商事社長)
左から、アヤソフィア、グランバザール(スパイス・バザール)、ガラタ・タワー(撮影:天野寛教・トルコ住友商事社長)

 イスタンブールは、ボスポラス海峡をはさみ、アジアとヨーロッパの人や文化が交錯する人口1,500万人超(2020年現在)の巨大都市です。トプカプ宮殿、アヤソフィア、スルタンアフメット・ジャーミー(ブルーモスク)など、ビザンチン帝国時代やオスマントルコ時代の建築群の見る者を圧倒するような荘厳さと美しさ、グランバザールやガラタ橋のにぎわい、名物サバサンドのにおいが広がる街の喧騒(けんそう)など、オリエンタルな雰囲気いっぱいの歴史観光地である旧市街の素晴らしさは、今さら説明するまでもないでしょう。

 

イスタンブールの銀座、イスティクラル通りとブルーモスク(撮影:天野寛教)
イスタンブールの銀座、イスティクラル通りとブルーモスク(撮影:天野寛教)

 

 しかし、実際に当地で生活してみると、週末も含めてこれら観光スポットに行くことはまれですし、周りのトルコ人に聞いてみても同様です。では、イスタンブールの人々は休日の気晴らしなどにどこへ向かうのでしょうか。筆者は、ボスポラス海峡が一番の行き先ではないかと思っています。

 

 

 ボスポラスはエーゲ海・地中海につながるマルマラ海と黒海とをつなぐ全長27キロメートルの海峡に、アジアとヨーロッパをつなぐ3つの大橋がかかる、地政学的にも非常に重要な交通の要衝です。

 

 

 

 

あまり知られていないボスポラス海峡の北部

ボスポラス第二橋(左・中)とエミルギャン公園(右)撮影:(左)天野寛教;(中・右)辻綾子(トルコ住友商事社員)
ボスポラス第二橋(左・中)とエミルギャン公園(右)撮影:(左)天野寛教;(中・右)辻綾子(トルコ住友商事社員)
白亜の大統領別邸(中央)と高級クルーザーがひしめくイスティニエ(左)やタラビヤ(右)のヨットマリーナ(撮影:辻綾子)
白亜の大統領別邸(中央)と高級クルーザーがひしめくイスティニエ(左)やタラビヤ(右)のヨットマリーナ(撮影:辻綾子)

 ビジネスや観光で当地を訪れ、壮大で豪華な宮殿やボスポラス大橋の夜景を見ながら、海峡沿いのレストランで魚料理とトルコ産白ワインの食事を楽しんだ方、はたまた、少し足を延ばしてマルマラ海のアジア側(小アジア半島側)まで行ってみた方は少なくないのではと思います。

 

 

 しかし、第二ボスポラス橋(第二橋)を越えて、黒海方面まで行ってみた方は、どれくらいいるでしょうか。長年トルコに関わる筆者ですが、自分が知っていたイスタンブールとは違い、海の近さを感じさせるボスポラス海峡北部の良さを知り、今では大変気に入っているエリアです。かつては海峡沿いに細い山道をくねくねと走らないとたどり着けなかった場所ですが、最近では町の拡大、道路の整備により、意外とスムーズにアクセスできるようになりました。

 

 

イエニキョイの町に立ち並ぶカラフルなレストランやカフェ(撮影:辻綾子)
イエニキョイの町に立ち並ぶカラフルなレストランやカフェ(撮影:辻綾子)
(左)サルエルに停泊するローカル漁船、(中)ボスポラス海峡東岸(アナドル・カヴァーウAnadolu Kavağı) の家々、(右)ボスポラス第三橋を望みつつ釣りにいそしむ人(筆者撮影)
(左)サルエルに停泊するローカル漁船、(中)ボスポラス海峡東岸の家々、(右)ボスポラス第三橋を望みつつ釣りにいそしむ人(筆者撮影)

 当社の事務所のあるオフィス街から5キロメートルほど進めば、ボスポラス海峡にかかる第二橋のたもとに出ます。そこから北上しながら見る景色は、いつものイスタンブールとは異なる雰囲気です。美しいエミルギャン公園、高級ヨットが停泊するマリーナのあるイスティニエの町、街道沿いに多くの海鮮レストランやカフェ、パブが立ち並ぶイエニキョイ、さらに進むと一等地にそびえる大統領別邸、漁港のあるサルエル、さらにもう少し北上すると2016年に完工した第三ボスポラス橋を過ぎて、いよいよ黒海に出ます。第一ボスポラス橋は大型補修で、第二橋は建設そのものに日本の援助や技術が導入されており、日本の高い技術力と貢献を誇りに感じる場所ですが、この新しい第三橋はトルコのゼネコンが完工させたプロジェクトで、同国の進化と成長の象徴とも言えそうです。

 

 

 

 

話題のイスタンブール運河プロジェクト

イスタンブール運河計画図:赤い二重線で図示、右下がボスポラス海峡、中央下部の小さい三角形の半島状の場所がイスタンブール旧市街(出典:トルコ共和国大統領府広報局の動画)(Türkiye cumhuriyeti, Cumhurbaşkanlığı, İletişim Başkanlığı)
イスタンブール運河計画図:赤い二重線で図示、右下がボスポラス海峡、中央下部の小さい三角形の半島状の場所がイスタンブール旧市街(出典:トルコ共和国大統領府広報局の動画)

 2021年6月に起工式がありエルドアン大統領の参加が日本でも報道されたイスタンブール運河プロジェクトが、当地でも話題となっています。総工費150億ドルを投じて、黒海とマルマラ海をつなぐ運河を新たに造成するという壮大な計画ですが、このプロジェクトの行方も注目されています。

 

 筆者はトルコ人と結婚して今年で20周年、トルコとの関係は20年超となりましたが、壮大な歴史と文化、今も残るノスタルジックな街、美しい海、おいしいトルコ料理とトルコ人の活力など、全く飽きがこない国だと思っています。そんなトルコを代表するイスタンブールを訪れる機会があれば、通常の観光コースに加え、ぜひとも第二橋から第三橋、そして黒海へと続くボスポラス海峡北部まで足を延ばして、一味違ったイスタンブールの魅力を体験してみてください。

 

 

(筆者注記:本稿を、かつて住友商事イスタンブール駐在員として勤務し、トルコとこの町をこよなく愛し、当地の人々からも愛された故・堂ノ脇伸さん(住友商事グローバルリサーチ国際部長在職中、2021年8月30日に死去)に捧げます。)

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