メキシコシティ/メキシコ ~堅調な経済成長が続くメキシコ、OTAKU文化から見える可能性~

2016年07月11日

メキシコ住友商事会社
平原 唯灯

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 中南米諸国の中でも、堅調な経済成長が続くメキシコ。

特に好調と言えるのは製造業で、牽引役の自動車製造業ではマツダやホンダ、日産など日系企業の活躍も目立ちます。自動車製造台数も2015年に340万台に迫り、2017年には400万台を超えると予想されています。

GDPも2016年はおおむね2%後半で推移するとの見方が支配的で、今後も安定した成長が期待できる可能性に満ちた国です。

 

 

 一方ではアメリカ経済への依存度の高さや、油価の下落による石油産業への打撃など、リスク要因も多くあります。  

また、貧富の差や中間層の拡大の遅れが原因で、同国の内需はやや弱いとされています。例えば、新車販売台数はほぼ同規模の人口を抱える日本が年間500万台程度なのに対し、135万台程度にとどまっています。

 

 

 しかし、内需の弱さはチャンスになるとも考えられます。同国の「人口ボーナス」のピークは2030年代と予測されており、消費意欲が旺盛な20代、30代の購買力が上がれば内需も拡大していくものと予想されます。

 

 

多くの店が並ぶメキシコシティの「メキシコの秋葉原」 (筆者撮影)
多くの店が並ぶメキシコシティの「メキシコの秋葉原」 (筆者撮影)

 このような状況下、同国で今後日系企業の進出の余地がある分野としてはソフトビジネス、具体的にはアニメ・漫画などに関連するコンテンツビジネスが挙げられます。

 

 他の中南米諸国同様、日本のアニメや漫画が若者を中心に人気を博しており、首都メキシコシティのみならず、地方都市でも毎週のように関連イベントが開催されています。ドラゴンボールやスタジオジブリ作品に加え、マニアックな深夜アニメやその関連商品も高い人気を集め、OTAKU文化が根付いている様子を感じることができます。

 

 

 メキシコ人の好みは日本人と比較するとやや異なり、非常に興味深いと言えます。 

凝った作りの作品より、分かりやすく派手な展開の作品が好まれる一方、現在日本で全盛期を迎えている、アイドルを題材にした王道とも言えるアニメは全く市民権を得ていません。また、正統派ヒロインより一癖あるキャラが人気を得るなど、その違いに驚くことも多くあります。

 

 この分野が将来有望と考えられるのは、先述の若い世代の購買力に対する期待に加え、同国の大きな問題のひとつ、海賊版の横行に関連があります。

JETROの2010年の調査によると、同国では海賊版の影響が年間125億ドルに達しています。残念ながら、関連イベントでも海賊版のグッズを売る店を見掛けることが多く、抜本的な行政の改革とモラルの上昇が望まれます。

 

 

筆者が審査員を務めたコスプレイベント (筆者撮影)
筆者が審査員を務めたコスプレイベント (筆者撮影)

 逆に、「本物」に飢えているOTAKU達も非常に多く存在しており、日本から輸入された正規品などに2倍、3倍の値段を出して大量に購入していく光景も珍しくありません。出費をいとわず、クオリティを求める購買層は少なくないと考えます。

物価の問題もあるので、まずは相対的に高価だとしても公式のグッズを正規に販売するルートを確立し、そこからメキシコに合った方法で商品を展開することで十分にソフトビジネス拡大の可能性があるように思えます。

 

 他文化の受容に対して寛容なメキシコならではのチャンスを商機に変えられるよう、今後もアンテナをしっかりと張っていきたいと考えます。

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