サンティアゴ/チリ ~世界の社窓から:チリの今と不動産事情~
のっけからどこかで聞いたようなタイトルで恐縮ですが、写真はチリ住商社長室から撮ったアンデスの暁光です。チリといえば南北が約4,300キロメートルと世界一細長い国ですが、国土面積は約75万6,000平方キロメートルと日本の約2倍に過ぎません。もっとも、人口も1,800万人程度と少ないので、全人口の約半分が集中する首都サンティアゴを除いては、人口密度の圧力というか人いきれがすることもまず無く、のんびり、ゆったりした国情です。
チリといって連想するものは?と問うと、モアイで有名なイースター島、あとは地震、津波、といったところが定番だと思います。ビジネス分野でいえば、何といっても産出量世界一(約30%シェア)を誇る銅で有名です。2000年ごろから2011年ごろまでは、いわゆる資源バブルといわれるサイクルに乗って、鉱山事業を牽引力に、その周辺産業を含めてチリ経済は空前の活況を謳歌(おうか)しました。サンティアゴ市内のインフラもだいぶ整備が進んだと聞いています。
そんなバブルの中で、民間企業は上がった収益をどこに振り向けたのでしょうか ?
その一つの解が、新規のオフィスビル、新興高級住宅地、付設のショッピングセンターといったサンティアゴ市内の不動産の林立でした。このブームを象徴する建物が下記写真の南米最高を誇る68階建てのコスタネラタワーです。地震国でこの高層ビル ?という声もあるでしょうが、さすがにチリの耐震設計基準はしっかりしており、日本でいえば震度3から4程度の地震が半年に一度の頻度であるここサンティアゴの生活ですが、幸いにしてこのタワーを含めて、建物が倒壊したとかひび割れしたとかいう話はついぞ耳にしたことがありません。
もっともこれらの新規物件が大量に市場に出回り始めた2014年ごろから、銅価格は下落の一途、2016年現在に至るまで、チリのマクロ経済もそこそこの不況にあえいでいます。現在のチリ住商オフィス周辺の新設オフィスビルの空室率はおよそ12.44%と、ちょっとした宴の後の状態ですが、ここにきてうれしい誤算もありました。11月の米大統領選でトランプ氏が当選後、ごく短期に銅価格は1ポンド=2.20ドル付近から2.68ドルへと約20%も上がりこれは直近の過去30年間で最大の上昇幅だとか。
これがどこまで持続するものか、やはり銅価格はチリ経済にとっての最重要ドライバー故チリ国民の関心は非常に高いです。2018年には建国200周年(ビセンテナリオ)を祝うチリ、果たして国民が笑顔で記念すべき年を迎えられるか否か、注視していきたいと思います。
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