天津/中国 ~経済環境が変化する中国直轄市のひとつ~
アジア・オセアニア
2016年08月05日
天津住友商事有限公司
山田 英典

日本で「天津と聞いて思いつくものは?」と質問すると、「天津甘栗」「天津丼」が大方の回答ではないかと思います。最近では「(2015年8月の)天津港爆発事故」もあるかと思います。それほど、今日の天津はあまり馴染(なじ)みがないと思いますが、それを払拭するためにも、改めて天津の現状をご紹介したいと思います。なお、天津甘栗は実際に存在しますが、天津丼は日本の食べ物です。
◆概況 ~ 中央政府の直轄市
- ステータス: 中央政府の直轄市(北京、上海、重慶、天津の4都市)、規模格付けでは「新一線」(従来は「準一線」。一線は、北京及び上海)
- 位置: 北緯39度(山形、秋田とほぼ同じ)、
- 面積: 約12万平方キロメートル(日本の秋田県とほぼ同じ)
- 地形: 華北平原に位置し、約93%が平地(最高海抜でも約1,000メートル)
- 人口: 約1,550万人(2015年末)(※日本人は約3,000人、進出企業は約400社)
◆経済指標 ~ 第2次産業から第3次産業へ構造変化

2015年のGDP成長率は天津市9.3%で、全国平均6.9%を2.4%上回っており引き続き高い経済成長を維持しています。ただし、特徴としては、第3次産業が52%を占め初めて第2次産業を上回った結果となり、経済構造が製造業から金融サービス、商業および観光業などに移行していることを示しています。工業生産額自体は前年比9.3%増で、航空宇宙、自動車製造、電気機械などの製造設備業が堅調ですが、生産過剰が指摘されている素材産業ではガラス(▲4.4%)、粗鋼(▲9.5%)、銑鉄(▲10.5%)、セメント(▲23.7%)と落ち込みが目立っています。固定資産投資ではインフラおよび不動産が2桁%の増、優遇政策による不動産および住宅の取得増、文化・娯楽・観光も消費を呼び込んでいる状況(10%増)です。

今後の重点施策としては、成長率目標を9%前後とし、2015年4月には自由貿易試験区を設立し、金融、貿易、投資方面で新しい制度制定および対外開放が期待されています。また、北京市、天津市、河北省の3地域を一つの経済圏とする「京津冀一体化構想」を国家政策として推進し、交通インフラの整備や通関業務の一体化、産業やヒトの移転、大気汚染などの環境問題への取り組みによる新たな首都経済圏の構築とそれによる地域経済の一層の発展を目指しています。
◆日本風情街 ~ 観光都市を目指す

天津住商がある和平区は天津市の中心に位置し、金融、文化、教育および「五大道」という観光名所(もともとは英国の租界。異なる欧風の建物が建ち並んでいる)を中心に今後発展させていく計画です。その目玉のひとつが旧日本租界の再開発プロジェクトです。

天津の日本租界は1896年に設置され、1930年代には1万人を超える日本人が滞在していたと言われています。現在も鞍山道(あんさんどう)の左右には租界時代の建物が現存しており、特に、ラストエンペラー愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)が住んでいた「張園」「静園」は博物館として開放されており、この建物を中心に新たな観光スポットを作ろうというものです。
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