ビエンチャン/ラオス ~Land “Locked” Country (内陸国) からLand “Linked” Country(インドシナを繋ぐ国)として成長を目指すラオス~

ラオスは、インドシナ半島の内陸国で、中国・ミャンマー・タイ・カンボジア・ベトナムの5か国に囲まれています。本州並みの国土面積に約700万人が住み、首都はビエンチャン。大変親日的な国ですが、日本人にはよく知られていない印象です。国境・国内を蛇行しながら約1,900キロメートルにわたってメコン川が流れています。手つかずの自然が多く残り、穏やかな国民性から「東南アジア最後の桃源郷」と呼ばれています。
国民の多くは敬虔(けいけん)な仏教徒であり、概して温和な性格で、何事にもマイペースです。また、とてもきれい好きでどこに行っても掃除が行き届いています。
「ボーペンニャン」という言葉をよく耳にしますが、これは「大丈夫」という意味で、気にするな、何とかなるよ、というラオス人の気質を表しています。

ASEAN加盟国中で最も貧しい国といわれ、国連の基準では後発開発途上国(LDC)に分類され、経済的には脆弱(ぜいじゃく)なレベルです。それでも地道な国民性で経済成長のための課題を着実に克服しつつあり、2024年までにはLDCから脱却できる見通しです。
政体としてはベトナムを手本とし、経済的にはタイに大きく依存していますが、 2010 年以降中国の影響力が強まり、公的支援および直接投資国の筆頭は中国です。ビエンチャンでは中国資本による建設風景が目立ち、中国支援による鉄道建設などには「一帯一路」政策の一環として中国側の意向が強く働いている印象です。
主要産業の一つはメコン川支流の豊富な水資源を利用した水力発電事業で、多くは外資中心に経営されていますが、タイなど周辺国に電力を輸出して重要な外貨獲得源になっています。労働力人口の約70%は農業に従事していますが、GDPへの貢献度は20%程度にすぎず、生産性向上と高付加価値化が課題であり、当事務所としてもここに商機があるものと捉えています。
メコン地域の中心に位置していることから、周辺国間を結ぶ物流拠点として今後ますます重要性が高まる可能性があり、経済回廊道路や関連設備、通関サービスなどのソフト面を含むインフラ整備が進められています。さらに海外企業の誘致促進を目的に経済特区の整備も進められています。周辺国の成長がある程度の水準に到達すれば、ラオスもプラス1の進出先として一層注目されることが期待されます。
かつてはLand "Locked" Countryという閉鎖的な内陸国のイメージで呼ばれていましたが、今では物流の要衝として、地の利を生かした経済成長に期待すべく、Land "Linked" Countryと、自国をPRするようになりました。

もう一つの主要産業は観光業で、その目玉は町全体がユネスコの世界遺産に登録されたルアンパバーンという町です。かつては王都として栄え、メコン川とその支流の合流地点に位置する、山々に囲まれた緑豊かな町です。いまや世界的な観光地ですが、早朝の托鉢(たくはつ)に代表される仏教の厳かな雰囲気が残っており、静謐(せいひつ)さも感じられる美しい町です。

先日、当事務所スタッフの結婚式に招待されて、バーシーと呼ばれる伝統儀式に参列しました(新婦は日本人)。家族主義が強いお国柄からか、新郎の実家に多くの親戚縁者が集い伝統的な仏式の結婚式が行われます。元僧侶の祈祷師(きとうし)が読経にも似たゆったりとしたリズムで祝詞と訓(おし)えを唱えて新郎新婦と家族の幸福と繁栄を祈念し、門出を祝福するために参列者が新郎新婦の手首に木綿の白い糸を結んで、儀式がクライマックスを迎えます。
メコン川のようにゆったりとした独特の時間の流れと雰囲気に包まれたラオスにぜひ来て、その空気感に触れてみてください。きっと気持ちが豊かになることでしょう。そして、着実に発展しつつある国と、自ら成長しようと心中で静かに熱意を燃やす潜在能力豊かな若者たちと触れ合ってほしいと思います。
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