ソウル/韓国 ~日韓国交正常化60周年を迎えたソウルの今~

アジア・オセアニア

2025年05月08日

韓国住友商事会社

伊藤 和人、桝野 太郎、趙 雄煕
申 允哲、鄭 恵永、李 政勲(編集)

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 昨今、日本ではK-Popグループが人気を集め、韓国では日本の漫画や映画に対する興味も高まり、また観光や料理などお互いのカルチャーへのインバウンド需要も相まって、民間での交流はブーム再燃を迎えています。K-Popや韓国ドラマの世界進出と日本のコンテンツがデジタル化によって身近になったことを受け、政治や歴史問題の影響が及びにくいカルチャーを中心に、韓国と日本、両国間の距離が縮まっているのです。

 

キムチや韓国のり、ナムルなどは、基本的に無料でお代わり自由(当社日本人駐在員撮影)
キムチや韓国のり、ナムルなどは、基本的に無料でお代わり自由(当社日本人駐在員撮影)

 東京からの日本人駐在員が当地での日常生活で感じる韓国にも、同じように文化的な面での親近感があるようです。キムチや韓国のりに代表されるK-Foodは、日本でも一般的で、どこでも食べることが可能になりましたが、やはり本場の味は、「チンチャマシソヨ」(日本語で「本当においしい」の意味)で、またレストランに行くと、必ずと言ってよいほど出されるパンチャン(小皿料理)は、食事をする際の楽しみの一つとなっているようです。

 

 韓国では友人、同僚、家族など複数人で食事に行くことが多く、理由は諸説あるものの、儒教由来の「人と分かち合う文化」が根底にあるように思います。そのため、タッカンマリ(鶏の水炊き)やサムギョプサル(豚バラ焼肉)などの注文は最低2人前からというお店も多くあります。そんな中、コロナ禍に日本で大流行した『孤独のグルメ』が韓国でも大人気で、この影響から、最近は1人でも気楽に入れるお店が増えてきているのも事実です。

 

 お酒の飲み方も韓国ではメクチュ(ビール)やソジュ(焼酎)がよく飲まれ、時にはこの二つを混ぜたソメク(爆弾酒)を飲むこともあります。お酒を飲む際には、手酌はせず、人についでもらうことがマナーとされており、ひとり酒でなく大勢で乾杯するスタイルが主流で、お酒の飲み方にも「人と分かち合う文化」が影響しているのかもしれません。

 

 

韓国伝統服で満1歳の記念写真(当社日本人駐在員提供)
韓国伝統服で満1歳の記念写真(当社日本人駐在員提供)

 韓国ソウルでの駐在員生活が2年半になり、 子どもが韓国で生まれてからも2年2か月となる日本人駐在員は子供を連れて外に出れば、行きかうご老人たちから子供への愛情と親へのねぎらいの声をかけてもらい、交通機関の座席やエレベーターなども優先させてもらえるため、社会全体での「助け合い」の雰囲気を日本より強く感じているそうです。

 

 

 一方、当社のスタッフによると、ソウルの渋谷ともいわれる弘大(ホンデ)にある日本アニメグッズ専門店や、ソウルの政治・経済の中心地として知られる汝矣島(ヨイド)にある大型百貨店(THE HYUNDAI:ドラマ『涙の女王』のロケ地)で開催された日本マンガのポップアップイベントは、多くの買い物客で賑わいを見せ、平日にもかかわらず2時間待ちの行列ができるほどの熱気に驚いたそうです。

各所で開催されている日本のアニメ関連イベントの様子(当社スタッフ撮影)
各所で開催されている日本のアニメ関連イベントの様子(当社スタッフ撮影)

 日本のアニメ人気が韓国においても進化を遂げ、デジタルで作品に触れ、リアルな空間でグッズを購入し、SNSで"推し"を共有する「体験型消費」がさかんになっています。その背景には、両国の文化にはもともと強い親和性が存在し、デジタル環境の発展により、より簡単に言葉や歴史の壁を越えて、「キャラクター」という共通言語で結ばれている若者たちの姿があり、その関係性が日韓関係の新時代を象徴しているように思えます。

 

 

当社では、化粧品タスクフォース「COTI」: (Cosmetics Task-force Intelligence)は、韓国と日本の化粧品の原料を互いに紹介し、輸出入業務につなげ、韓国ブランドの日本進出を手助けする役割を担っています。(写真:社内会議の様子)
当社では、化粧品タスクフォース「COTI」 (Cosmetics Task-force Intelligence)は、韓国と日本の化粧品の原料を互いに紹介し、輸出入業務につなげ、韓国ブランドの日本進出を手助けする役割を担っています。(写真:社内会議の様子)

 さらにK-Beautyは世界中で人気を博し注目されており、韓国コスメは日本で2022年からフランス製品を抜いて輸入化粧品1位の座を継続保持中で、米国でも2024年にフランス製品を抜いて輸入化粧品1位になりました*

 

 韓国は消費者トレンドの変化に素早く反応し、コストパフォーマンスの良い新製品を迅速に発売することで、グローバル市場での地位を固めています。一方、日本は品質と安全性を重視し、高品質の原料と技術力を基盤に、たゆまぬ信頼を築いてきました。このように両国の化粧品産業の特徴は異なりますが、共同研究開発や、現地での生産、流通協力の体制などにより、共生の道を模索することも可能だと思います。

 

 日韓は今年2025年で国交正常化60周年という大きな節目を迎えますが、混迷する韓国内の政治と厳しい世界経済や通商環境においても、当社では「ソフトパワー」での日韓交流活性化と関係改善を追い風に、これからも新たなビジネスチャンスの発掘に向けて取り組んでまいります。

以上

 


*出典:日本化粧品工業会公式サイト(https://www.jcia.org/user/statistics/trade)、韓国経済紙「毎日経済」(https://pulse.mk.co.kr/m/news/english/11279378

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