- [南アフリカ(南ア)]1月29日、南ア準備銀行(SARB)は金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を6.75%で据え置くと決定した。2024年から金融緩和サイクルを維持している南アでは前回2025年11月に開催されたMPCで7.00%から6.75%の利下げが行われたが、今回は金利が維持された。
SARBのレセチャ・クガニャゴ総裁は、2025年のインフレ上昇率は3.2%で、SARBが目標値としている3%±1%に近づいていると説明。これは通貨ランド高と、原油価格の下落によってもたらされている一方で、足元では口蹄疫の大流行により肉類の価格が上昇していること、また今後も電力料金が平均インフレ率を大きく上回る水準で値上げされる可能性がある点を指摘した。こうした状況からインフレ見通しに対するリスクは「均衡」していると評価し、2人のMPC委員が25bptの利下げを支持した一方で、4人が現状維持を望んだことから政策金利の維持を決定したと述べた。
また、クガニャゴ総裁は、南アの実質GDP成長率については4四半期連続で拡大しており、中期的には年率2%の拡大を予測。個人消費が3%超の成長となり経済を押し上げたが、投資は2025年前半は前年同期比で減少となり、低迷している点を付け加えた。
SARBの金利据え置きの発表後、通貨ランドは1ドル=15.68ランドで取り引きされ、前日の終値から▲0.5%の下落となったが、依然として2022年ぶりの高値圏で維持されている。ランド高の背景には、米国の利下げやトランプ政権の不確実性によるドルの下落のほか、金やプラチナ、パラジウムの価格高騰により輸出が好調であることや、安定した連立政権、電力供給や物流の安定化といった国内要素などがある。金融市場関係者は現在の対ドルのランドの為替レートを、過大評価や過小評価が行われていない「適正価格(fair value)」と評価している(1月29日、Business Tech紙)。
対外的には経済は好ましい状況にあるが、現在大きな国内問題となっているのは、今回のクガニャゴ総裁の発言にもあった電力料金の高騰だ。電力公社エスコムは安定的な電力供給にかかる発電所の建設・メンテナンスと、経営再建のためにインフレ率の2倍程度(約6%)の電力料金の値上げを続けている。こうした中、エスコムから2026~27年の電力料金の値上げについて申請を受けた国家エネルギー規制庁(NERSA)が、値上げの基準となるエスコムの資産価値を誤って過少に評価。エスコムは過小評価を指摘し、NERSAに対して過少に評価された540億ランド(約5,000億円)を電力料金に組み込むよう要請し、NERSAもこれを秘密裏に受け入れたと報じられたが、国民が支払う電力料金に転嫁されるとして国内から大きな反発を呼んでいる。報道ではエスコムの要求通りにこの過小評価分を組み込むと、電力料金は9%程度上昇すると試算されていることから、国民生活のみならず、産業への影響も甚大だ(1月29日付、Moneyweb紙)。
2008年比で900%(約10倍)も上昇した電力料金は、アフリカで最も工業化が進んでいる南アの製造業・鉱業を蝕んでいる。世界最大のクロム鉱石産出国で、世界の埋蔵量の約8割を占めている南アは、かつては世界最大のフェロクロム(クロムと鉄の合金)の産出国だったが、電力料金の高騰と電力供給の不安定化によりコスト競争力を失った。国内での加工が難しいことから、クロム鉱石の中国への輸出を拡大し続けた結果、現在中国が世界最大のフェロクロム生産国となり、価格の決定権を握っている。現存する国内の2大フェロクロム製造者の一つであるサマンコール・クロム社(JOGMECおよび阪和興業が計20%出資)は事実上の操業停止状態にあり、辛うじて生産を続けるグレンコア・メラフェリソーシズも従業員の解雇や工場の閉鎖を発表している。この2社と鉱業協会は、南ア政府がクロム鉱石資源を保護するためにクロム鉱石の輸出に20%の課税をかけることは国内製造者を保護することにはならず、むしろ電力料金の引き下げが生産を維持するうえで必須であると訴え続けてきた。これを受けて1月29日にNERSAは2社への電力料金を35%引き下げるエスコムの申請を承認したが、一部の企業に割安の電力が供給されることは、他の国民にそのコストが転嫁されるとして批判の声も相次いでいる。南ア当局は電力供給の安定化のためにエスコムを、産業政策の観点で個別企業を保護したい一方で、電力料金の高騰に不満を訴える国民との間で板挟みの状態にある。
- [米国]日本では総選挙で消費税の負担軽減や積極財政が大きな争点となっている。米国では 共和党・民主党との間の深い党派対立が特徴とされることの多い政治情勢の中で、財政の健全性に関して有権者の間に驚くべき合意が生まれている。
米国が膨張する財政負担に直面する中、ピーター・G・ピーターソン財団の委託調査によると、国家債務の動向は有権者の圧倒的多数によって重大な脅威と見なされている。1月29日に公表されたアンケート調査の結果によれば、民主党支持者の72%、共和党支持者の87%が「議員は債務問題に注力すべきだ」と同意している。
この調査は国家の財政負担が増大する中での有権者の不安の高まりを浮き彫りにし、イデオロギーの多元性を超えた有権者がワシントンにその措置を求めていることを明らかにしている。調査を委託した同財団のピーターソンCEOは、「わが国の債務が40兆ドルに急接近する中、登録有権者を対象としたこの調査は、議員が債務を安定化させ、わが国と経済をより強固で持続可能な軌道に乗せるための解決策を追求すべきだという点で、党派を超えた広範な合意が存在することを示している」とし、「国家債務はかつてない速さで増加しており、有権者はこれが米国経済の将来にとって重大な問題だと理解している」と述べた。
こうした有権者からの明確な指示にもかかわらず、危機解決能力に対するワシントンDCへの信頼は低下している。「米国財政信頼度指数」は2026年1月に50という低水準を記録した(100が中立)。この低調な数値の背景として、短期的な進展に対する急激な悲観論の転換がある。前年9月以降初めて、過半数の有権者(52%)が「近い将来に指導者が債務問題で進展を見せる」ことに悲観的見解を示した。
さらに回答者の57%が、国家財政の管理に関して「立法府は現在誤った方向に進んでいる」と認識している。問題の将来的な推移について尋ねたところ、見通しは依然として暗く、有権者の60%が今後数年間で債務状況が悪化すると予想しており、指導者が対処すべき優先課題としての債務スコアは26であることは、国民が選出した指導者に長期債務問題への対応を最優先課題とすることを望んでいることを示していると分析している。
- [メキシコ]1月28日、シェインバウム大統領はメキシコの自動車産業計画を発表した。メキシコの自動車産業の運営簡素化、管理負担の軽減、企業コストの削減を目的とした包括的な計画であり、メキシコ自動車産業協会(AMIA)の代表者や、ゼネラルモーターズ、フォード、BMW、ホンダ、日産などの主要自動車メーカーとの会合後に出されている。これは、単なる国内の産業政策にとどまらず、メキシコの基幹産業である自動車セクターを強化すると同時に、2026年に予定されている極めて重要なUSMCA再交渉を前に、国家としての立場を固める意味があったと考えられる。
2026年7月のUSMCA「6年目見直し」を前に米国は「メキシコを経由して中国製部品が北米市場に流入している」との懸念を強め、メキシコ産車両への関税賦課を示唆している。シェインバウム政権の計画は、この圧力に対する先制的な措置であり、メキシコが北米のサプライチェーンを信頼できるパートナーであることを証明しようとする意図がある。同時に、米中対立を背景に企業が生産拠点を米国市場の近くへ移す「ニアショアリング」の動きは、メキシコにとって千載一遇の好機でもある。しかし、国内の複雑な官僚手続きが投資の障壁となってきた。今回の計画が行政の簡素化とコスト削減を掲げているのは、これを克服するためでもある。
自動車産業計画は、14億ドル(約300億ペソ)規模の経済政策「プラン・メヒコ」の一部をなす。シェインバウム政権は財政投資、制度改革、そして象徴的な国家プロジェクトを組み合わせた多角的な戦略を構築している。この計画は二つの柱で構成されており、約285億ペソが新規設備の導入やインフラ更新といった固定資産投資に、残りの15億ペソが労働者の技能訓練やイノベーション促進といった人材開発に充てられる。具体的な目標として、自動車分野において2030年までに国内部品の使用率を15%引き上げることが掲げられている。この計画の実行部隊として新設が発表されたのが「省庁間委員会」となる。経済、財務、労働、安全保障、インフラといった関係省庁を垂直統合するねらいがある。そして、この計画の技術的・象徴的な中心に据えられているのが、国産EVブランド「オリニア(Olinia)」の開発である。これは、メキシコが長年続けた外資メーカーの「組み立て基地」という立場から脱却し、自国のエンジニアによる設計と国内部品の多用を通じて、独自の技術力を持つ国家へと転換を図る試み。約9万~15万ペソという低価格帯を目指すことで、国内市場の自立を促す。
シェインバウム大統領が打ち出した自動車産業計画は、これまでの北米経済における自国の役割を変革しようとする戦略的な試みであり、安価な労働力を提供する「下請け」というイメージを払拭し、技術的に高度で効率的な「対等なパートナー」となることも目指している。米国の保護主義的な圧力から自国の基幹産業を守り抜き、同時にグローバルなバリューチェーンを構築することが目指されている。
- [米国/ロシア/ウクライナ]1月29日、トランプ米大統領はプーチン大統領に、厳しい寒さが続くウクライナの首都キーウなどへの攻撃を「1週間」停止するよう要請し、プーチン氏が応じたと主張した。ウクライナはロシア軍の攻撃でインフラ施設が破壊され、電力や暖房の供給停止が続いている。ロシアが実際に攻撃を停止するかどうかは不明である。ウクライナのゼレンスキー大統領もX(旧ツイッター)で「エネルギーは生活の基盤だ。(攻撃停止が)実現することを期待する」と訴え、トランプ氏に謝意を表明した。1月23~24日にアラブ首長国連邦(UAE)で実施された米国、ロシアとの3か国高官協議でもインフラ施設への攻撃停止が議題になっていたという。
- [中国/台湾]中国共産党と台湾の最大野党・国民党は、約10年ぶりに中断していた党間対話フォーラムを、2026年2月に北京で開催すると発表した。このフォーラムは2006年に始まり、これまでに11回開催されてきた非公式の対話枠組みである。2016年に民進党政権が発足して以降、両岸関係の悪化を背景に停止していた。
国民党側からは蕭旭岑副主席が、国民党系シンクタンク「国家政策研究基金会」の李鴻源副董事長や専門家・学者ら40人余りを率いて、2月2日から4日まで北京を訪問する。フォーラムでは、観光・旅行交流、産業協力、環境の持続可能性を主要テーマとし、航空路線、医療・介護、精密機械、人工知能(AI)、防災・減災、新エネルギー、温室効果ガス削減など、民生・実務分野を中心に意見交換が行われる予定で、政治的議題は扱わないと国民党側は強調している。
一方、中国側はこの対話を「両岸関係の発展と同胞の利益・福祉を共同で議論する場」と位置づけている。国民党の新党首・鄭麗文は、習近平国家主席との会談を望んでおり、この対話をその足掛かりとしたい思惑もあるとみられる。
蕭副主席は、国民党政権時代には「92年コンセンサス」を基礎に多くの交流と協力が進み、馬英九政権期に結ばれた23の合意の多くが現在も適用されていると指摘した。また、世論調査では8割以上の台湾住民が意思疎通の維持を望んでいるとして、国民党は民意に沿って交流回復を推進すると述べている。
これに対し民進党は、国民党の参加が台湾の安全保障を損なう恐れがあるとして懸念を示している。今回のフォーラム再開は、中国と台湾の政界間交流が再び活発化する兆しといえるが、その政治的影響や台湾社会の受け止め方が注目される。
- [EU/イラン]1月29日、EU理事会はイランにおける深刻な人権侵害およびロシアによるウクライナ侵略戦争への継続的な軍事支援を理由として、イランに対する新たな制裁措置を決定した。
人権侵害に関連し、平和的な抗議活動の弾圧や検閲に関与したとして、内務大臣エスカンダル・モメニ氏や司法関係者、サイバー空間関連組織など新たに15の個人とイラン革命防衛隊を含む6つの団体への制裁措置が決定され、資産凍結やEUへの渡航禁止などが行われることとなる。カッラス上級代表は、「イラン革命防衛隊をテロ組織に指定することに合意した。これにより、彼らはイスラム国、ハマス、ヒズボラ、アルカイダと同等の立場に立つことになる」と発言した。
一方、ロシアへの軍事支援に関しては、無人航空機(UAV)やミサイル開発に関与する4人の個人と6つの団体(弾道ミサイル開発企業や防衛省のフロント企業など)が追加指定された。さらに、UAVやミサイルの開発・製造に使用される電子機器、航法装置、特殊材料などの部品や技術について、EUからの輸出・販売などの禁止措置が拡大された。
今回の決定の背景には、同国治安部隊によるデモ参加者への暴力、恣意的な拘束、威嚇といった深刻な人権侵害に対する懸念の高まりがあり、EUは2011年に導入した制裁体制を2022年以降大幅に強化している。また、イランによるロシアへの軍事支援はEUの安全保障に対する直接的な脅威とみなされており、2023年7月に確立された制裁枠組みは、中東や紅海地域の武装集団への支援やイスラエルへの攻撃を受けて適用範囲が拡大されてきた。
- [フィリピン]1月16日、フィリピン統計局は2025年第4四半期および通年の実質GDP成長率の速報値を発表した。第4四半期の成長率は3.0%、通年の成長率は4.4%と、各々マイナス成長を記録したコロナ禍における2021年3月・2020年ぶりの最低値を記録したほか、通年の成長率は政府目標である6~7%を大きく下回った。
通年での成長率の支出別内訳に関し、GDP全体の約7割を占める民間消費の伸び率は4.6%と堅調に推移したものの、政府によるインフラ投資・民間企業による設備投資を含む総固定資本形成の伸び率が0.5%(四半期別では▲7.2%)と2024年の6.3%から大きく低下し、成長率全体の足を引っ張った形となった。特に建設投資の伸び率は▲1.0%と、2025年の10.4%から大きく減速したことが影響した。2025年9月以降に進められている洪水対策の公共事業に関する汚職摘発強化により、政府が公共事業の事業遅延・計画見直しをしたことで、公共投資の執行ペースが年後半から大きく減速したことが背景にあるもよう。
付加価値別の伸び率に関し、農林水産業(第1次産業)が3.1%、工業(第2次産業)が1.5%、サービス業(第3次産業)が5.9%を記録。工業のうち建設業につき、成長率が▲0.2%とマイナス成長を記録している。
フィリピンでは、国会議員が官僚・建設会社と結託し、自らの選挙区における公共事業を特定の業者に発注後に、キックバックを受け取るなどの汚職問題が問題視されていた。マルコス大統領が2025年7月末に実施した施政方針演説にて本問題に対応することを表明していた。政府にて捜査が実施される過程で、9月には国会のエスクデロ上院議長が汚職への関与が疑われたことで上院の動議を踏まえて解任されたほか、ロムアルデス下院議長が同様の理由で辞任した。また11月にはベルサミン官房長官とパンガンダーマン予算管理相が所管省庁の関与疑惑のために辞任するなど、政権与党の中枢人物の関与が明らかになっている。これを踏まえ、9月以降はマニラなどの都市で汚職問題を批判する反政府デモが複数回発生している。
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