
- [アルゼンチン]5月18日、ブエノスアイレスで議会選挙が行われ、その結果ハビエル・ミレイ大統領が率いるリバティ・アドバンスズ(LLA)にとって大きな勝利となった。選挙前の予測では、ペロン派が最大議席を獲得するとされており、ミレイ大統領のLLAと元大統領のマクリ氏のいとこがブエノスアイレスの市長を務めているPROの票争いがどうなるかが注目されていたが、蓋をあけてみるとLLAは、30議席のうち最大の11議席を獲得、ペロン派は10議席にとどまった。また、PROはこれまでブエノスアイレスでは17年間勝利を続けてきたが、5議席となり後退が目立つこととなった。
LLAとPROは市場主義という点は同じであるものの、政策の違いもあり最近対立を強めていた。今回LLAがPROの有権者基盤から支持を集めることに成功したことは、PRO内部においてLLAとのより緊密な提携を求めるような動きや、LLAに鞍替えする可能性もある。また、これにより、10月26日の中間選挙に向けてLLAの勢いは強まるとみられ、インフレが減速し続け、経済が安定した状態が続けば、LLAがブエノスアイレス議会選挙での結果を全国レベルで再現できることも示されおり、LLAが下院の議席のほぼ3分の1を獲得するという観測も出てきている。また、野党は分裂が続いており、ミレイ大統領の立法アジェンダに異議を唱える力は限られてくる。政府は為替レートを安定させることにより、準備金の蓄積を犠牲にして消費者物価を下げることに引き続き注力するとみられ、中間選挙の結果が好調であれば、市場のセンチメントはさらに改善し、ミレイ政権の経済チームの計画を助けることになる。
- [赤道ギニア/ガボン]5月19日、国際司法裁判所(ICJ)は、赤道ギニアとガボンが互いに領有権を主張していたギニア湾に浮かぶ3島につき、赤道ギニアの領有を認める判決を下した。同3島沖合の海底には豊富な原油資源が眠っているとみられることから、1972年にガボン軍が赤道ギニア軍を追放して軍事基地を設置し、ガボンが実効支配を続けてきた。
ガボンは1974年に赤道ギニアとガボン間で領土と海洋境界の画定を定めた「バタ条約(バタは赤道ギニアの主要都市)」を法的根拠として領有権を主張してきたが、今回ICJは同条約は法的効力を有する条約ではないと判断した。報道によると、ガボン政府はバタ条約の原本を提出できなかったとのこと。ICJは代わりとなる有効な法的根拠として、1900年にガボンの旧宗主国だったフランスと、赤道ギニアの旧宗主国だったスペインが締結した西アフリカ領土の境界策定に関する条約を挙げ、この条約により同3島は当時スペインによる領有が定められていたと説明。したがって、赤道ギニアが1968年にスペインから独立した際に、領有権は赤道ギニアに自動的に継承されたとして、赤道ギニアによる領有の正統性を示した。
石油輸出国機構(OPEC)に加盟する両国は、ピーク時の2000年前後にはそれぞれ30万バレル/日前後の原油生産量を誇ってきたが、その後油田の成熟化により生産量が減少。2025年のOPECによる生産量割り当てはガボンが17.7万バレル/日、赤道ギニアは7万バレル/日まで落ち込んでいる。領有権の係争により遅れていた同3島付近の原油開発が、今回のICJの判決により加速する可能性がある。
なお、赤道ギニアのオビアン・ンゲマ大統領(82歳)は1979年のクーデターで政権を奪取して以降、45年にわたり大統領職を務めており、現職大統領としては世界最長。一方のガボンは1967年から56年間にわたりボンゴ家が政権を握っていたが、2023年のクーデターで失脚。4月に実施された総選挙で、クーデターを主導したオリギ・ンゲマ暫定大統領(50歳)が当選した。同じンゲマ(Nguema)姓だが両者の間に血縁関係はないとみられる。
- [ウクライナ]トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は5月19日、電話会談した。ウクライナ侵攻を巡る和平に向けて協議したが、米国とウクライナが要求する即時停戦について合意の発表はなかった。会談後、記者団に対し、プーチン大統領は将来の平和条約締結に関する覚書について「ウクライナ側と協力する用意がある」と表明し、合意が成立すれば、一定期間の停戦に応じる用意があるとも述べた。米ロ、両首脳はその他、米ロ間の関係改善に向けた協議し、一環として、9人ずつのロシア人と米国人の囚人交換についても話し合った。
- [中国]中国政府は、トランプ米政権による関税措置への対抗策として、2025年4月からレアアース7種類およびそれらを用いた永久磁石の輸出に新たな制限を課している。しかし、これらの輸出に必要な中国商務省の承認手続きが遅れており、グローバルなサプライチェーンに混乱をもたらす可能性があると、フィナンシャル・タイムズ紙が報じている。
ドイツ産業連盟(BDI)の幹部は、「欧州での生産に深刻な影響を与えることを回避できる時間は急速に失われつつある」と懸念を表明している。また、テスラ、フォード、ロッキード・マーティンなどの米国メーカーも、最近の投資家向け説明会で、中国によるレアアース輸出規制への懸念を示している。
さらに、輸出手続きにおいては、最終用途が軍事目的でないことの証明が求められており、その審査プロセスの不透明さも企業側の不安要因となっている。
現時点では、中国と長年の取引関係を持つ一部の大企業には優先的に許可が与えられているとの見方もある。しかし、今後も中国政府が輸出規制を戦略的手段として活用する可能性は高く、西側諸国による中国依存の低減に向けた取り組みを後押しすることになると予想される、としている。
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