未来想定(1)
今回のコラムでは、未来のメガトレンドを考えるときに、どのような取り組みをしているかをお話したいと思います。
まずは、質問です。10年前に、コロナで多くの人が罹患し亡くなり、インフレになって、生活に影響がでることを想定していましたか。10年前に、在宅勤務がここまで広がると想定していましたか。10年前に、ChatGPTが知りたいことを調べてくれ、(真偽のほどは、ともかくですが)それらしく資料を作ってくれることを想定していましたか。10年前に……。 このように問いかけてみえてくることは、10年後の未来には、これまでの経験、過去をもとにした想定だけではなく、これら質問内容のように、非連続で生まれる事象が含まれることがわかると思います。非連続で生まれる事象を、どのように想定するか。未来の不確実性を取り込むことで、非連続で生まれる事象を、少しでも見落とす可能性が小さくなるようにアイディアを発散しています。
未来の不確実性についての定義はさまざまあるようですが、測定可能で確率分布で示すことができるものをリスクとし、測定不可能で確率分布がわからないものを不確実性とする定義があります。この定義によると、さきほどの質問に挙げた例で考えると、10年前の時点で、コロナで多くの人が亡くなることや、在宅勤務の広がりやChatGPTの普及は、確率分布で示せないので、リスクではなく不確実性と言えそうです。
未来の非連続な事象を想定するためには、程度の低いものから高いものとありますが、不確実性を有する事象のアイディアをいくつも、いくつも出していくこと、すなわちアイディアの発散から始めることに他なりません。もちろん、それでも未来を特定することは不可能ですし、想定が外れることも多くみられると思います。
企業は、リスクを戦略立案に生かし、遂行していくだけでなく、未来に散在する不確実性も想定しながら、柔軟に企業活動につなげる必要もあります。未来の非連続な事象を想定する意義がそこにあり、柔軟な対応をすることで、ビジネス創出機会の獲得となり得ます。
これまで、不確実性の高い未来の非連続な事象について述べてきましたが、もちろん、これまでの経験、過去の既知の事実やデータから、連続性のある予測可能な未来の想定も忘れてはなりません。連続性のある未来の事象と非連続性のある未来の事象、どちらも想定し、未来のメガトレンドを考えていくことになります。
このタイトル「未来想定」の次回コラム(8月下旬掲載予定)では、未来を想定するフレームワークについて、触れてみようと思います。
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