未来想定(3)

昨年夏のコラムでは、未来のメガトレンドを考える話をしました。今回は未来想定の締めくくりです。私自身が10年後の未来を考えるにあたり、今まで世間で想定したことが一体どれぐらい当たっているか、外れがあるかを感覚的に掴んでおきたいと思いました。10年前に現在をどう想定していたかを覗いてみようと思います。
まず、10年前の2016年を思い起こすと、米国大統領選でトランプ氏が初当選、イギリスのEU離脱国民投票、囲碁でAlphaGo(AI)が勝利、ポケモンGO流行などがあり、テクノロジー面ではDX、AI、ドローンが語られ始めていたと記憶しています。
その頃、10年後をどのように想定していたか主なものというと……
1. 気候変動が影響する社会(生活、資源制約、サプライチェーンを念頭に)
2. ディスラプティブ(破壊的)なテクノロジー進化(当時はモバイルインターネット、IoT、クラウドを念頭に)
3. 政治面、経済面での世界が分断に向かうリスク
4.将来のパンデミック(当時はSARSを念頭に)
さて、現在になって答え合わせをすると、こんな感じになります。
1. 気候変動については、2024年までの直近10年が観測記録で最も暑い10年となり、各国の現行政策では、2100年1.5°C目標達成は難しいとの見方があり、再生エネルギー設備のサプライチェーンでは、特定の部材や工程で中国への依存が高くなっています。
2.テクノロジー進化は、モバイルインターネット、IoT、クラウドは今や当たり前、当時ドローンを使った配達サービスの実証実験や運用開始の話題が出始めでしたが、今やドローンはあちこちの紛争地で兵器として使われています。中でも、生成AIは出現後、生活、産業に広く入り込み、将来、能力面でヒトを超えるかが話題になり、開発において米中が必死に競争を繰り広げるまでに至っています。
3. 国家間の分断については進行しているように映ります。グローバリゼーションの言葉は過去のものになり、戦後の秩序が、大国の独走、脅しによって変えられつつあると映ります。
4. パンデミックにおいては、想定外の規模となり、コロナという超ド級の伝染病で、世界中がパニックと化したのはご記憶の通りです。
現在からみると、おいおい10年前の想定の方向性はそんなには大きく外れてはいませんが、その規模や影響、スピードたるや、想定以上に加速し変化しているではとびっくりします。
この10年間の規模とスピードの変化を、現在から10年後の想定に役立てていきたいのはやまやまですが、これからの変化は、過去10年間より加速度を増したものとなる気がし、そんなものを想定できるであろうかと、何だかおののいてきました。どんな加速度になろうと、10年後の未来は、今より、明るく平和な世界になっていることを期待しつつ、このコラム「未来想定」3部作を終わりにします。これまで、お付き合いいただき、ありがとうございました。
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