デイリー・アップデート

2024年5月1日 (水)

[アジア太平洋] 4月30日、国際通貨基金(IMF)は、アジア太平洋経済見通しを発表し、2024年の域内成長率見通しを4.5%と上方修正し、2023年10月時点から0.3pt引き上げた。ただし、2023年の5%からは減速する見込み。域内の主要2か国である中国とインドの見通し上振れを反映した。中国とインドでの景気刺激策が成長を押し上げるとの期待が背景にある。この地域は、引き続き世界で最も活動的な地域としての地位を保持し、世界の経済成長の約60%を占めることが予測されている。2025年の域内成長率見通しは4.3%に据え置かれた。

[ユーロ圏] EU統計局(Eurostat)によると、2024年第1四半期(Q1)の実質GDP成長率は前期比+0.3%となった。2023年Q3とQ4はともに▲0.1%であり、3四半期ぶりにプラス成長に戻った。ドイツは+0.2%と2四半期ぶりのプラス、フランスは+0.2%と2023年下半期から成長ペースを加速させた。また、4月のユーロ圏の消費者物価指数は、前年同月比+2.4%となり、3月と同じだった。食品・エネルギーを除くコア指数は+2.7%となり、3月の+2.9%から鈍化した。

[ケニア] 4月29日、国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ケニア国内全域で発生している豪雨と鉄砲水により、死者・行方不明者100名以上、15万人以上の避難民が発生していると発表した。エルニーニョの影響により大規模な干ばつが続いた東アフリカでは、3月以来、一転して豪雨による被害が拡大している。タンザニアでも4月25日に発生した鉄砲水で155名が死亡した。他方で、タンザニアの隣国のザンビアでは、エルニーニョの影響による深刻な干ばつ被害が続いており、食糧不足や水力発電容量の低下により主要産業の鉱業(銅)に影響が及ぶなどの問題が生じている。

[米国] 4月29日、CBS Newsは、「激戦州」であるペンシルベニア州とウィスコンシン州の連邦上院議員選挙に関する最新世論調査結果(4月19日~4月25日実施)を公表した。民主党所属のケーシー氏(ペンシルベニア州選出)、同じく民主党ボールドウィン氏(ウィスコンシン州選出)ともに、共和党候補に7pt引き離して優位にあることが判明した。だが、知名度の低い共和党候補の政策的立場が、投票日までの半年間で認知されるには十分な時間があり、選挙キャンペーンが大きく変化する可能性がある。

[タイ] 4月28日、セター政権が内閣改造を行ったことが官報で発表された。2023年9月の政権発足後、初の改造となる。財務相はセター首相が兼任していたが、ピチャイ首相顧問・タイ証券取引所(SET)前会長が就任した(同氏は副首相にも就任)。パーンプリー外相兼副首相は副首相から外されており、同日28日、同氏は外相を辞任した。正式な後任はまだ明らかになっていない。そのほか、保健相、首相府相ら4人が閣外に去り、副外相、副商務省らに6人が新たに入閣した。スリヤ運輸相は副首相兼務となった。スティン国防相が退任するとの噂があったが、留任した。

[イスラエル/パレスチナ] イスラエルとハマスの間で、エジプトを仲介したガザでの停戦とガザに囚われた人質解放に関する間接交渉が、改めて行われている。イスラエル側が提出した停戦・人質解放提案を、4月29日にエジプトを訪問したハマス代表団が確認し、カタールへ戻り数日以内に、同提案に対するハマス側からの回答があるものと期待される。第一段階で解放される人質は20~33人とされている。ネタニヤフ首相は、交渉が成立しようがしまいがラファハへの侵攻は行うとも発言しており、今後の情勢は依然不透明。

[米国] 4月26日、全米自動車労組(UAW)と北米ダイムラートラック社は、新たな労使協定について暫定合意に至ったと発表した。6年前に交わした旧協定の失効寸前の合意で、ノースカロライナ州を中心に7,000名以上の組合員がストに突入する可能性があった。今後、組合員が批准すれば、正式合意となる。新協定案は4年間で25%以上の昇給、発効直後に10%昇給などが盛り込まれているもよう。UAWは2023年の米自動車製造大手を相手にストを行い、25%の賃上げを勝ち取っている。4月28日、バイデン大統領は労使間の暫定合意を歓迎する声明を発表している。

[ロシア/欧州(EU)] ユーロ圏統計局によると、EUは2023年6月までの1年間で、一般的な肥料である尿素をロシアから輸入した量が、前年比で2倍になった。EUは天然ガスと同様に、今後、ロシアの肥料に依存する恐れがあると一部の関係者が話す。ロシアは現在、窒素含有肥料の世界最大の生産国および輸出国の1つである。

[中国] 4月30日、中央政治局会議が開催され、現在の経済状況とマクロ政策について議論されるとともに、延期されていた中国共産党中央委員会第3回全体会議(三中全会)が7月に開催されることが決定された。三中全会のテーマは「改革の全面深化と中国式現代化の推進」となっている。政治局会議は、借入コストの引き下げ、不動産市場への追加支援、政府支出の増加などが今後打ち出されることを示唆したが、過去2年間の方針を基本的に踏襲する内容となっており、大規模な景気刺激策などが打ち出される可能性は小さいとみられている。

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