ちょっと一息

社長コラム

2024年03月04日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

  世界中で起きる事象を追いかけていると、目の前のことばかり気になるので、少し目線を変えて。先日、奈良県内の古墳をいくつか見てきました。古墳時代といわれているのは3世紀ころから7世紀ころで、古墳の周辺には多くの埴輪が飾られていたといいます。特に天皇家に関連する古墳は宮内庁がしっかり整備している様子でしたが、今から1,500年以上も前のものでもあり、完全な形で残っているものは必ずしも多くなく、中心部分にまで近づけるわけでもなく、一定の予備知識をもとに、目の前に見える景色から昔を想像していくしかありません。好奇心に応じて疑問に思ったことは、すぐにスマホで調べられるので助かりますが、建造されたものの大きさ、形、構造、誰がどうやってどれだけの時間をかけて作ったのか、周囲に飾られたもの、ご遺体が安置されていた場所やその方法など、大半の部分は想像するしかありません。大きなキャンバスの中に、少しだけ絵が描かれていて、残りの余白がたくさんあって、好きなところを好きなように埋めていいよ、といわれているような、とても楽しい感覚になります。

 

 8世紀にまとめられたといわれる古事記や日本書紀にも多くのことが書かれていますが、その内容がどこまで正確なものなのか明確にはわかりません。書いた人たちも歴史のロマンを感じながら想像力を駆使して、少し余白を埋めるという作業をしていたかもしれません。想像力や妄想力、構想力をフルに活用するのは楽しいことです。細部まで正解がわかっているわけでもなく、確認しようにも限界があります。100点がないからこそ、余白の一部を埋めていく作業は面白みが大きいのではないでしょうか?それに比べて、現代は対照的です。仕事でも家庭でも、正解があると信じて100点を求める傾向が強い。だから窮屈になるし、想像力、構想力も発揮できなくなってしまう。余白を認めない。さらに悪いのは、100点をとるために、出題範囲を限定するように、思考の範囲を狭めてしまう。でも本当は、現代においても、正解などないことの方が多い。刻々と状況が変わっているのだから、学校の数学のテストのように正解がバッチリ一つに決まるものではありません。思考の範囲が狭くなると、部分的な最適は求められても、結果的に全体的にはナンセンスなものになりかねません。視野も時間軸も大きく持って、そこに生じる余白の一部を、想像力と構想力で自分自身の発想で自由に埋めていくことの方がずっと楽しいし、そんなやり方が、仕事の成功にも、世の中をよくすることにもつながるように感じます。

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