EU/米国/インドネシア

2025年07月14日

経済部

トランプ大統領は8月1日からEUとメキシコに対して30%の関税を課すと発表した。7月13日、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、7月15日に発効する予定だった鶏肉、オートバイ、衣料品を含む米国のEUへの年間輸出額210億ユーロに対する報復関税の適用を「8月上旬」まで停止すると述べ、引き続き米国との交渉による解決を目指す姿勢を明確にした。

 

欧州内では、EUが英国と同様に迅速に枠組みを決め、貿易協定を締結するのか、それともより良い条件を目指して交渉を続けるべきかで意見が分かれている。ドイツのメルツ首相は、米国と「妥当な」取引ができるという希望を表明し、フォン・デア・ライエン委員長、マクロン仏大統領、トランプ米大統領と解決策を見つけるために今後2週間を使うことに同意したと述べた。

 

一方、貿易政策を運営する欧州委員会は、航空機、アルコール、食品など米国からの950億ユーロの輸入品に対する追加での関税パッケージについて協議しているが、発効には加盟国の同意が必要であり、協議は難航している。

 

米国との対立が深まる一方で、EUは、9年間の交渉の末、インドネシアとの自由貿易協定に関する「政治的合意」を発表した。この協定は9月に最終決定される予定で、加盟国の過半数と欧州議会による批准が必要となる。2024年のEUとインドネシア間の二国間貿易は273億ユーロで、EUの輸出額は97億ユーロ、EUの輸入額は175億ユーロとなっている。フォン・デア・ライエン委員長は、このような貿易協定の多様化がトランプ大統領の貿易戦争に対抗するためのEUの戦略の中心的な部分であるとしている。

 

ただし、一部のビジネスグループや政治家はこのアプローチを批判している。イタリアのマッテオ・サルヴィーニ副首相は、「トランプ大統領がわが国を攻撃する理由はないが、またしてもドイツ主導のヨーロッパのために我々はその代償を払っている」と述べているなど、EUも一枚岩ではなく、厳しい交渉が続くとみられる。

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