EU

2025年08月08日

経済部

欧州連合(EU)は、米国との貿易協定には合意したが、さまざまな点での両者の見解の相違や対立は続いている。エネルギーおよびインフラ投資として1兆ドル超を拠出するとの約束についても、欧州委員会は「いかなる意味でも拘束力はない」と明言し、EU・米国間の貿易合意をめぐる緊張の高まりを示している。

 

欧州委員会の報道官ギル氏は「米国政府に伝えた内容は、EU企業によるエネルギー支出および米国経済への投資に関する包括的な意向であり、法的拘束力はない」と説明し、「欧州委員会にはそのような投資を強制する権限はなく、今後もその権限を求めることはない」と述べている。一方、トランプ米大統領が、EUが3年半の任期中に6,000億ドルのインフラ投資を履行しない場合、EUに対して35%の関税を課すと警告している(この投資約束は、2週間前にトランプ大統領と欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が合意したEU・米国間の枠組みの柱であり、EUが2028年までに7,500億ドル相当の米国産エネルギーを購入するという別の約束も含まれる)。また、デジタルサービスについては、マルコ・ルビオ米国務長官は、EUのデジタルサービス法(DSA)を「廃止または修正する」よう指示したとの報道も出てきている。これに対し、ギル氏は「EUの規制と基準は交渉の対象ではなく、今後も変わらない」と述べ、懸念を否定している。DSAについては、バンス米副大統領が、DSAが政府による検閲にあたると主張し、同法に対する強い批判を展開していた。さらに、米国政府は、EUとの間で半導体を含む製品に対して15%の関税を適用することで合意したと発表した直後に、半導体の輸入に対して100%の関税を課す方針を明らかにしたことに対しても、ギル氏は「米国は他の関税措置にかかわらず、EUの半導体輸出には15%の関税上限を適用することを約束している」と述べ、合意の有効性を強調している。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。