2025年5月14日 (水)
[ギニア]
5月13日、ギニアのアマドゥ・ウリ・バー暫定政府首相は、大統領選を12月に実施すると発表した。同発表は5月12~13日にコートジボールのアビジャンで開催された「アフリカCEOフォーラム」で行われたもの。
2021年のクーデターにより暫定軍事政権下にあるギニアでは、当初2024年中に大統領選の実施と民政移管が公約されていたが実施されず、選挙の具体的な時期もこれまで明らかにはなっていなかった。バー首相は2025年9月に大統領選に必要な憲法改正にかかわる国民投票を実施するとも述べた。大統領選にはクーデターを主導し、現在暫定大統領を務める軍人のママディ・ドゥンブヤ氏が出馬し、圧勝を収めるとの見方が強い。
世界のボーキサイト埋蔵量の約1/3を占め、さらに世界最大級の鉄鉱石開発となる「シマンドゥ・プロジェクト」が進行するなど鉱物資源が豊富なギニアだが、暫定軍事政権は政府による鉱物資源の管理や、外国企業による国内での鉱物の付加価値化の動きを強めている。こうした政府からの圧力は外国企業にとって大きなコスト増となるが、ドゥンブヤ大統領が12月の選挙で勝利すれば現行路線は継続となる見込みが強い。 他方で独ドイチェ・ヴェレは「選挙人登録が間に合わないため、12月の選挙実施は現実的ではない」とも報じている。
[米国]
労働省によると、4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.3%だった。上昇率は3月(+2.4%)から鈍化し、市場予想(+2.4%)を小幅に下回り、2021年2月以来の低い伸びになった。物価の基調を表す、食品とエネルギーを除くコア指数は+2.8%と3月から横ばい、市場予想と一致した。内訳を見ると、食品(+2.6%)が上昇した一方で、ガソリン価格の低下などもあって、エネルギー(▲3.7%)全体も低下した。食品とエネルギーを除く財(+0.1%)はおおむね横ばいで、サービス(+3.6%)が物価上昇のけん引役だった。
中国やカナダ、メキシコ、鉄鋼やアルミニウム製品などの関税措置がこれまで実施されてきたものの、企業は在庫の積み増しや調達先の変更などによって対応してきたため、これまで消費者物価指数は目立って上昇していない。また、コロナ禍後の物価高騰を経験した消費者がこれ以上の物価上昇に耐えがたく、企業も販売価格への転嫁を躊躇(ちゅうちょ)する姿勢を示している。
しかし、いずれ関税が引き上がれば、そのコスト増を企業や家計など米国内で吸収しなければならないので、実際どの程度その影響が表れるかは必ずしも明らかではないものの、物価には上昇圧力がかかりやすいだろう。現時点では物価が比較的落ち着いていることもあり、トランプ大統領は連邦準備理事会(FRB)に利下げを求めている。過去の物価を踏まえた考えを持つトランプ氏に対して、関税引き上げに伴う物価上昇という将来の物価を考慮するFRBのすれ違いが、今後も金融市場の波乱をもたらす一因になる恐れもある。
[中国/英国/米国]
フィナンシャル・タイムズ紙(5月14日付)は、トランプ米大統領とスターマー英首相が5月8日に発表した米英間の二国間貿易協定について、中国外交部が「中国のサプライチェーンを標的としたものだ」と批判していると報じた。
この貿易協定は、トランプ政権が各国と進めている関税交渉の中で初めて合意された。協定には、米国が英国の鉄鋼や製薬などの分野に対して厳格な「安全保障」条項を設け、関連業界が「サプライチェーンの安全保障および生産施設の所有権に関する米国の要求を早期に満たす」ことを条件に、関税の免除や軽減措置を受けられるという内容が含まれている。
中国国家発展改革委員会マクロ経済研究院の張燕生教授は、この措置について、米国が中国を孤立させることを目的としており、他国との交渉においても同様の条項を受け入れるよう圧力をかけるだろう、と指摘。その上で、このような悪意ある条項は、関税そのものよりも悪質であると批判している。
中国政府は、トランプ政権が関税交渉を通じて中国のサプライチェーンに圧力を加えるのではないかという懸念を強めている。記事によれば、中国外交筋は、今回の米英協定に盛り込まれた「安全保障条項」が、今後他国との関税交渉において「モデルケース」となる可能性を警戒している。仮にそのような懸念が現実のものとなれば、中国は対抗措置を講じるとこれまでも警告してきており、スターマー英政権が対中関係の改善を模索する中で、今回の協定はその努力にとって障害となる可能性がある。
[米国]
EV普及の初期段階を経てその批評が活発になる中、GMは新しいバッテリーで400マイル(約644キロメートル)の航続距離のEVを実現すると発表した。トラックやSUV向けにマンガンリッチの電池を使用し、これまでのEVと比較して性能と安全性の向上、価格低下を目指す。GMは韓国LGグループと協力しリチウムマンガンリッチ(LMR)バッテリーの開発を進めており、2027年までに試作品の生産を経て、2028年には米国で商業生産を開始する計画だ。
LMRバッテリーは電極に資源量が豊富で価格も安いマンガンを60~70%ほど使用することで、ニッケルや特に高価なコバルトの使用を極力抑える。また、平板角型にし、電池の構造をより簡素化することで製造コストの削減を目指している。現行のニッケル・コバルト・マンガン電池では長距離走行(現行車種で492マイル)は可能だが、高価格になる。またリン酸鉄(LFP)は低価格だが航続距離の改善には限界もある。LMRバッテリーは、そのバランスを取ることを目指している。もちろん、マンガン電池は長期の使用でエネルギー容量や熱安定性の低下といった劣化に対する問題解決が必要とされているが、その目処はついているともいう。
GMのバッテリー担当副社長は、「バッテリーは車両のコストの約30%から40%を占めており、我々がそれを大幅に削減できれば、最終的には消費者に対し安価に提供できる」と述べている。
[米国/サウジアラビア]
5月13日、トランプ米国大統領はルビオ国務長官、ヘグセス国防長官、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官などの閣僚を伴ってサウジアラビアの首都リヤドに到着し、中東3か国の歴訪を開始した。同日、米・サウジ投資フォーラムが開催され、テスラのマスクCEOやメタのザッカーバーグCEO、オープンAIのアルトマンCEO、ブラックロックのフィンクCEOなど、多くの米国のビジネスリーダーなどが出席。米国とサウジは史上最高額の1,420億ドルに上る防衛販売協定に署名し、そのほか多くのビジネス合意も締結された。また同フォーラムにおけるスピーチで、トランプ大統領はシリアに対する制裁を解除することも発表した。
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