インド・BJP、ビハール州議会選挙で敗退
2015年11月16日
住友商事グローバルリサーチ 経済部石塚 寛二
1.政治概況
11月8日に開票が行われた、ビハール州議会選挙において、総議席数243に対し、現職州首相ニティシュ・クマール氏が率いる地域政党ジャナタ・ダル統一派(JD-U)、前首相率いる民族人民党(RJD)、及び国民会議派が連立を組んだ「大連合」が3分の2を超える178議席を獲得、モディ首相のインド人民党(BJP)の組んだ連立「国民民主連盟(NDA)」は58議席にとどまり、BJPは大きく敗退した(BJP単独では53議席獲得)。ビハール州はインド東北部に位置し、インド第3の人口約1億1,000万人を擁する州だが、最貧困州のひとつであり、州外への出稼ぎ労働者が多い。
BJPは2014年5月の下院総選挙で単独で過半数を制し(543議席中282議席)、モディ政権が誕生したが、上院では245議席中NDAは63議席のみで、国民会議派率いる統一進歩連盟(UPA)が70議席、その他地域政党などが100議席以上を占めるため、企業活動の自由度を向上させ、モディ政権の経済改革の目玉とされている、土地収用法の改正、統一物品サービス税法の成立、労働法の改正などが、上院で野党の抵抗にあい、成立のめどが立っていない。
上院の議席は州議会議員の選挙で選出されることから、BJPにとって、上院の議席を増やすために、州議会での勢力伸長が必須の課題である。2014年5月のモディ政権成立以降、今回のビハール州議会選挙まで、合計5回の州議会議員選挙が実施されたが、その結果はBJP(NDA)の3勝2敗である。今回の敗戦から「モディ首相の人気も衰えつつある」との見方もあるが、得票率を見ると、BJPは24.4%と政党別ではトップであり、必ずしもモディ首相人気の衰えとは言い切れない。今後2016年に5州、2017年に5州と毎年5州前後の州議会議員選挙が予定されており、BJPの勢力伸長が実現するか、注目される。
2.経済概況
経済指標は、おおむね順調。鉱工業生産指数(IPI)は2014年11月以降、前年比プラスを継続しており、自動車販売台数は2015年に入って単月ベースで3回0~1%の前年割れとなったものの、10月には同+11.1%と大きな増加を示した(乗用車に限れば同+21.5%)。インドへの対内直接投資額は、1~9月累計で、前年同期比+59.8%と、投資家によるモディ首相の経済改革への期待を反映しているものと思われる。
一方、貿易統計を見ると、輸出入ともに2014年12月以降、前年割れとなっている。インドの輸出依存度はGDP比16%(2013年度)だが、輸出の低迷は雇用の悪化を通じて景気の下押し要因となることが懸念される。
モディ首相は2014年以来「make in India(インドに製造業を)」と唱え、外資・製造業の誘致に奔走している。若年人口が増加を続けるインドにとって、雇用の拡大は喫緊の課題である。


以上
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2025年8月22日(金)
『週刊金融財政事情』2025年8月26日号に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行が寄稿しました。 - 2025年8月13日(水)
日経QUICKニュース社の取材を受け、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2025年8月4日(月)
日経QUICKニュース社の取材を受け、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2025年8月1日(金)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2025年8月1日(金)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。