米国2016/17年度大豆・トウモロコシ輸出状況
2017年05月02日
住友商事グローバルリサーチ 経済部
舘 美公子
米国の2016/17穀物年度(9~8月)も折り返し地点を過ぎ、残すところ4か月余りとなった。以下、今年度の米国大豆・トウモロコシ輸出状況を振り返り、今後の見通しにつきまとめた。
◇大豆
4月末までの大豆輸出成約累計は56百万トン(20億ブッシェル)と、2016年同時期を24%上回り、米農務省の2016/17年度通年輸出見通しを既に達成している。輸出増は中国向けの伸びによるもので、2016年同時期に比べ32%増となる36百万トンを成約した。これは中国の2016年9月~2017年3月の大豆輸入増加率8%を大きく上回る数値で、競合であるブラジルの大豆生産が2016年干ばつにより減少した分を取り込んだもの。この結果、2016/17年度の輸出成約に占める中国の割合は69%と2位のEU7%、3位のメキシコ5%を大きく引き離している。なお、2017/18年度についてはブラジル・アルゼンチンともに過去最高の大豆生産量が確実視されていることから、米農務省は米国の輸出需要増は期待できないとの見通しを示している。
懸念点は、船積み前契約残高が例年に比べ高いことだ。過去数年、4月末時点の輸出成約に占める船積み前契約の割合は7%台だったが、2016/17年度は13.2%と比較的高い。船積み前残高が最も大きいのは中国の2百万トンで全体の3割を占める。5月以降は、競合の南米産大豆が大量に輸出市場に出回ることから、過去キャンセル実績のある中国については、契約履行状況を週間船積み実績から注視する必要がある。
◇トウモロコシ
4月末までのトウモロコシ輸出成約累計は51百万トン(20億ブッシェル)と、2016年同時期を38%も上回る好調な推移。米農務省の2016/17年度通年輸出見通しに対する進捗率は90%と過去5年平均の87%を上回っている。輸出増は、韓国およびメキシコ向け輸出が伸びたためで、4月末時点の輸出成約高は韓国が5.3百万トンと前年同期比3.5倍の増、メキシコは12百万トンと同7%増を記録した。韓国向け輸出増は、競合であるブラジルの2期作トウモロコシが2016年干ばつの影響で大幅生産減をしたため。2017年のブラジルトウモロコシ生産量は91百万トンと過去最高が見込まれていることから、米国の韓国向け輸出増は一過性となる可能性が高い。
メキシコ向け輸出増は、国内トウモロコシ生産減によるもの。メキシコではペソ安に加え、2017年1月に実施されたガソリン・ディーゼル価格の値上げによりトウモロコシの生産コストは最大で40%上昇するとロイターが報じている。メキシコは輸入の90%超を米国産に依存しており、生産コストの上昇による生産減の穴埋めは米国が担うとみられる。
以上
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