香港/中国 ~融通自在香港~

2016年04月21日

住友商事香港有限公司
大野 雅明

> English Version

ガムダムin 香港(写真提供:住友商事香港有限公司 針山 弘康)
ガムダムin 香港(写真提供:住友商事香港有限公司 針山 弘康)

 皆さんは香港にどのようなイメージをお持ちでしょうか? 有名な観光地(広東料理や夜景)、世界の貿易・物流センター、国際金融都市、あるいは中国ビジネスにおけるゲートウェイなどいろいろだと思います。香港は面積約1,104平方キロメートル(東京都の半分)、人口約750万人、人口密度は東京都とほぼ同じです。1人当たりのGDPは40,032米ドル(2014年)で、日本よりも高いGDPを維持している先進地域です。

 

 中国と香港特別行政区は一国二制度の下、現状は香港の完全な自治が認められていますが、これが完全かどうかということが大きな政治的議論の的で、まだ記憶に新しい2014年の「オキュパイ・セントラル(雨傘革命)」は、中国政府とさらなる民主化を求める香港人との対立として象徴的な出来事でした。香港の将来に関しては、香港人すべての人が関心を持っており、最近では香港の10年後を描いた「10Years(香港のチベット化を描いた映画。中国本土では上映禁止)」が香港の映画祭で金賞を受賞し、これからもさらに香港民主化への要求は続くと思われます。

 

 ビジネスに関しては非常に機敏に動くのが香港人です。1997年の中国への返還後、安い人件費を理由に中国に出ていった香港資本ですが、中国の人件費が上昇すると見るや、現在では7割近くの香港資本がアジアにシフトしています。もちろん中国のゲートウェイとしての香港の役割もまだ大きいものがあり、今の香港進出企業は、中国とアジアの両方をにらんでこの香港を活用しているというのが実態です。

 

 

 さて日本と香港の関係ですが、豆知識として以下を頭に入れておくと理解しやすいと思います。

  1. 2015年の香港から日本への旅行者数は152万人超。
  2. 香港人旅行者の5人に1人は日本を10回以上訪問。
  3. 定期直行便が日本の11都市へ就航、うち3都市は2015年に新規就航。
  4. 香港は過去11年間、日本の農林水産物の最大の輸出先(2015年日本全体の22%)。
  5. 香港への進出日系企業数は在香港外国企業数において首位(2015 年現在1,368社)。
  6. 香港で日本留学試験を受験した受験者数は、2015年度過去最高を記録(515人)。

 

というぐらい親日で日本大好きなのです。香港の中には日本の居酒屋やレストランがあふれており、われわれ駐在員も日本食という面では困ることがありません。もちろん香港政庁はじめ香港財界からの日本へのラブコールは日々大きくなっており、われわれも必死になってこの要求に応えていこうと努力しているところです。

 

 

100万ドルの夜景(写真提供:住友商事香港有限公司 Loletta Pun)
100万ドルの夜景(写真提供:住友商事香港有限公司 Loletta Pun)

 香港進出のメリットとしては、香港の地理的優位性、低税率、国際金融センター機能(オフショア人民元)、高度な物流機能などいろいろあるのですが、英国の法体系など行政の透明性も含めた社会インフラが充実していることが、中国と最も大きな違いです。また国際感覚豊かな人材が多いこと、企業の進出や撤退が容易であることなどもあげられます。

 

 今後、テストマーケティングの場として、アジアビジネスのハブやキャッシュ・マネジメントの拠点として、そして日本産品(特に加工品含む農林水産物)の輸出先として、ますます香港は発展するものと期待しています。

 

以上

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。