バンコク/タイ ~暑季の最大イベント、ソンクラーンが終わり、いよいよ民政復帰に向けた政治の季節へ~

2016年05月06日

タイ住友商事会社
幸田 昌之

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• 今年のソンクラーン

 毎年タイでは、最も暑い暑季のピーク、4月13~15日に、旧正月(タイ旧暦の正月)を祝う水掛け祭り、「ソンクラーン」が行われます。本来は、純粋に新年を祝うために家族が集まり、仏像に水を掛けてお清めを行ったり、家族の年長者の手に水を掛けて清めたりといった宗教的な行事でしたが、現在では街中で人々がお互いに水を掛け合うという、お祭りの色彩が強くなっています。

 

車窓から撮影したバンコク都内スクンビット地区でのソンクラーンの様子(筆者撮影)
車窓から撮影したバンコク都内スクンビット地区でのソンクラーンの様子(筆者撮影)

 2011年に発生した大洪水がまだ記憶に新しいタイですが、15年からは過去最大級の干ばつが発生し、16年に入りさらに深刻化しつつあることから、大量の水を浪費するソンクラーンでの水掛けを政府が規制すべきとの意見も出ていました。最終的には、強面(こわもて)で知られるプラユット首相が「水掛けは禁止しない。いくら政府が水掛けを禁止したとしても、誰も守るわけが無い。不可能だ。」とあきらめのコメント。結局、深夜まで行われていたものが夜9時までとされるなど、例年に比べ、若干控えめなソンクラーンでしたが、そこは、お祭りが大好きで、何事も楽しむことにかけては比類無き才能を発揮するタイ人。クーデター後の軍事政権下という非常時にもかかわらず、この時期に合わせて世界中からやってきた数十万人の観光客とともに水鉄砲、バケツを駆使し、溢れんばかりのエネルギーでソンクラーンを楽しむ様子は、例年と変わらない盛り上がりをみせていました。

 

 

• 民政復帰に向けた政治の季節へ

 2014年5年のクーデター発生から2年弱が経過した3月29日、憲法起草委員会が、新憲法の最終草案を公表しました。最終草案は、非国会議員が首相に就任可、強力な権限を持つ上院の任命制導入といった民主主義・政党政治の後退につながる内容を含むことから、タクシン派のみならず、反タクシン派、知識層(学者・学生)からも既に反発が示されており、8月7日に実施予定の最終草案に対する国民投票の結果については不透明な状況にあります。新憲法の草案をめぐる議論を通じ、10年近くタイに横たわっているタクシン派・反タクシン派による根深い対立の構図、またそれを解決しようとするプラユット暫定政権の苦心が見え隠れするなか、今年も暑季の最大イベント、ソンクラーンは無事に終わりました。

 

 タイは、もうじき雨季に入り、天候的には暑さが和らぎますが、政治面では民政復帰に向けた"熱い"季節を迎えようとしています。タイで仕事をする日本人の一人として、今後のタイの行く末を大きく左右するこの重要なプロセスが、デモ・暴動などの混乱も無く、平和裏に取り進められることを心から願いつつ、引き続き注視していきます。

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