ウランバートル/モンゴル ~ブフ(モンゴル相撲)~

アジア・オセアニア

2016年12月28日

住友商事株式会社 ウランバートル事務所
藤原 弘人

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ブフ屋外1(写真提供:BUKH.MN)
ブフ屋外1(写真提供:BUKH.MN)

 モンゴルといえば草原、そして最近では相撲・横綱というのが多くの日本人のモンゴルのイメージではないでしょうか。日本のメディアでも、「なぜモンゴル人力士は強いのか」という分析記事が多く見受けられますが、その強さの源とも思える「ブフ」という立技組技系格闘技を紹介します。「ブフ」は日本では「モンゴル相撲」と呼ばれています。

 

 

1.ブフの起源

 起源は紀元前3世紀頃とされ、競馬、格闘技、弓射の3種目を競い合うことから派生し、奉納儀式や軍事訓練的な要素も持っていたといわれています。

ブフ屋外2(写真提供:BUKH.MN)
ブフ屋外2(写真提供:BUKH.MN)

 ブフには大きく二つの流派があり、モンゴルで行われているフブは「ハルハ ブフ」と呼ばれ、中国(主に内モンゴル)で行われているブフは「ウジュムチン ブフ」と呼ばれています。ここでは「ハルハ ブフ」を取り扱います。

 

 

2.ルール

 頭の頂・手の平・足底以外が地面(含む床)につくと負けになります。ただし、土俵のような限られたエリアは無く、押し出しやつり出しといった技はありません。従い、投げ技が多くなり、相手が倒れるまで技を掛けます。

2回戦までは全員トーナメント方式で戦い、3回戦・5回戦・7回戦以上はシード選手(もしくは上位選手)が対戦相手を選ぶ権利を有します。

 

 

3.番付

 ブフにも大相撲と同じように番付があります。以下のように番付は7月に開催されるナーダム(国民祭り)の勝ち残り順位を基準に決定されます。

ブフ屋外(写真提供:BUKH.MN)
ブフ屋内(写真提供:BUKH.MN)

 

ナチン(隼)16位(5回戦の勝者)

ハルツァガ(大鷹)8位(6回戦の勝者)

ザーン(象)4位(7回戦の勝者)

ガルディ(迦楼羅 ガルダ=神鳥)2位(準優勝/8回戦の勝者)

アルスラン(獅子)1位(優勝/9回戦=決勝戦の勝者)

アヴァラガ(巨人)アルスラン称号の力士が再度優勝

ダヤン・アヴァラガ(世界の巨人)アヴァラガが再度優勝 

ダルハン・アヴァラガ(聖なる巨人)ダヤン・アヴァラガが再度優勝

 

 

 

4.グループ(部屋)

 ブフにも大相撲でいう「部屋」があり、主に出身地によってグループ(部屋)を構成し、稽古に励んでいます。現在約18の部屋があるようです。

 

 

5.衣装

 ジャンジン・マルガイ(民族帽子)、ゾドク(ベスト)、ショーダク(パンツ)、グダル(ブーツ)といった民族衣装が試合着です。

 特にゾドク(ベスト)は大きく前(胸部)が開いており、胸全体が見えます。これはその昔は胸全体も覆っていましたが、あるとき女性が隠れて参加(ブフは女性禁止)して優勝してしまったことがあり、男性か女性かを見分けるために胸の部分を大きく開けたという経緯があります。

 

 

6.聖なる巨人

バッテルデネ氏 聖なる巨人、写真先頭の手を広げている人(写真提供:BUKH.MN)
バッテルデネ氏 聖なる巨人、写真先頭の手を広げている人(写真提供:BUKH.MN)

 筆者も懇意にさせていただいている、現在国会議員で国防大臣でもあるバドマンヤンブー・バトエルデネ氏は、1988~90年に3年連続優勝を果たし、ダヤン・アヴァルガ(世界の巨人)の称号を、さらに1992~99年まで8連覇を達成し、ダルハン・アヴァラガ(聖なる巨人)の称号も手にし、通算12度のメジャー大会優勝を飾り、20世紀を代表するブフ力士です。

 国民から絶大なる尊敬を集め、モーゼが海を割ったごとく、行く先々の群集は大きく道を譲り、大山が動くがごとく歩く姿はまさに「聖なる巨人」であります。

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