ソウル/韓国 ~急増するお一人様(ぼっち族)、社会構造の変化~

アジア・オセアニア

2017年03月09日

韓国住友商事会社
李 政勲

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 ここ数年、韓国ではひとり飯、ひとり酒、ひとり旅、ひとり遊びなど一人を満喫する、「ぼっち族」文化が広がっています。経済の沈滞や就職難により、社会的価値観も変化し、青年層では結婚を後回しにし、離婚が増加するなど、一人暮らしが増え、個人の生活を重視するライフスタイルが強まっています。

 

 韓国統計庁の発表によれば、韓国における一人世帯の数は、2000年の約226万(全体の15.6%)から2015年は約520万(同26.5%)にまで増え、一人世帯が全体で占める割合は、2020年29.6%、2025年31.3%、2035年には34.3%(約763万)にまで上がる見通しです。また、韓国産業研究院では、一人世帯の消費支出規模が2015年86兆ウォン(約748億米ドル)から2020年は120兆ウォン(約1,043億米ドル)にまで増大すると予測しています。

 

 お一人様(ぼっち族)は、個人の趣味・嗜好に合うおしゃれ・美容・健康など、自分のためには支出を惜しまない傾向にあります。購買力を伴った一人世帯が消費経済を動かす主体となりつつある中、「1人」と「Economy」を合成した「1conomy」という新造語まで登場しています。そしていつの間にか「お一人様」という社会トレンドが形成され、流通や食産業をはじめ、家電製品や住宅にいたる幅広い範囲で、一人のニーズに合わせた商品とサービスの開発・提供がされています。

 

一人で食べても気恥ずかしくない、テーブル座席(筆者撮影)
一人で食べても気恥ずかしくない、テーブル座席(筆者撮影)
ボリューム満載、コストパフォーマンスも良い、コンビニ弁当(筆者撮影)
ボリューム満載、コストパフォーマンスも良い、コンビニ弁当(筆者撮影)


 カップ飯やインスタント・レトルト食品、一人用少量パックの惣菜など、一人におあつらえ向きの食品が人気を博しており、さらにヘルシーさとボリュームを考えた特製コンビニ弁当の売れ行きは好調で、著しい成長ぶりを示しています。ファーストフード店舗の数だけでなく、一人用のテーブルを置く食堂も増えており、一人でも楽しめる映画館の座席やワンコインのカラオケも出現しています。

 

 一人で暮らす芸能人の日常を描いたテレビ番組が大ヒットするなど、もはや一人暮らしはみすぼらしいものでもなく、むしろ、ゆとりあるライフスタイルの象徴として大衆の共感を得ていると言えます。また、玩具や食べ物など、個人の趣向に対する興味と情熱を表すポジティブな意味として最近の放送でよく使われている「ドック」という言葉は、日本語の"オタク"を韓国式の発音に換えた"オドック"を語源としていますが、陰気な感じはなく、何かにはまり、新しい消費コンテンツを作り上げる、尊重されるべき「お一人様」とみなされています。 

 

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