ホーチミン/ベトナム ~ビールをこよなく愛する国の最も活気にあふれる街~

2018年06月27日

ベトナム住友商事会社 ホーチミン支店
中村 雅昭

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 2018年は、日本とベトナムが外交関係を樹立してから45年目にあたります。節目の年として、両国の友好や相互理解を深める文化交流やイベントが多数開催されており、6月には天皇皇后両陛下もご臨席された記念レセプションが明治記念館(港区)で開かれました。

 

 そのベトナムは南北に1,700キロメートル以上もある縦に長い国で、北に首都ハノイが、南に経済・商業の街ホーチミンがあります。ベトナム戦争前はサイゴン、戦後ホーチミンと名前を変えたこの街は、ベトナムの首都と勘違いされるくらいに栄え、活気があります。街の1人当たりGDPも国全体の約2,300ドルを大きく上回る6,000ドルに迫り、これはタイと同じ水準です。進出日系企業数もベトナムで最も多く、特に飲食店は1号店を構えるところも少なくありません。

 

とあるビアホイのビール。なんと1杯60円!(筆者撮影)
とあるビアホイのビール。なんと1杯60円!(筆者撮影)

 また南北で国民性も異なり、北はおとなしくて真面目、南は楽天的でフレンドリーだと言われ、特にホーチミンは人見知りをしない陽気な人が多いように感じます。加えて人と人とのつながりをとても大切にし、宴会などのイベントが大好きです。その宴会で欠かせないのがビールです。

 

 実はベトナムは東南アジアで1番、世界でも9番目のビール消費大国です。「ビアホイ」と呼ばれる昔ながらの大衆酒場では1杯40円からビールを飲むことができ、スーパーをのぞくと缶ビールが60円と、ビールがいかに庶民の味方か分かります。また飲みに行くと最初から最後までビールで通す人も多く、お腹がいっぱいにならないのかこちらが心配になります。また居酒屋では店員が生ビールを「サッポロ」と呼ぶことがあります。これは日系で唯一サッポロビールがホーチミン郊外でビールを製造しており、生ビールのメジャーブランドだからだと思います。

 

大通りから一本路地に入ると昔ながらのベトナムの様子が広がっている(筆者撮影)
大通りから一本路地に入ると昔ながらのベトナムの様子が広がっている(筆者撮影)

 ベトナム人は「ビアホイ」にみんなで集まり、大声で談笑しています。そして時折さらに大きな声で「モッ!ハイ!バー!ヨー!(1!2!3!乾杯!)」と叫んでみんなでビールをあおります。そんな姿を見ると、まさにこれがベトナム人のストレス発散法なのだと確信します。

 

 先日、ベトナムのビールメーカー最大手の国営企業、サイゴンビールの株式売却のニュースが流れました。タイの飲料大手、タイ・ビバレッジが株式の過半数を約5,500億円で購入するというものです。ベトナム政府は民間の力を求め、海外の投資家はベトナム消費市場の成長力を高く評価しているのだと解説しています。伸びゆく市場に国内外の多くの企業や投資家が熱い視線を向けています。 

 

ホーチミンは洗練されたデザインの近代的なビルが急速に増えてきている(筆者撮影)
ホーチミンは洗練されたデザインの近代的なビルが急速に増えてきている(筆者撮影)

 急速な経済発展でホーチミンの街並みも様変わりしています。近代的なビルが建ち、ビアホイがおしゃれなカフェやレストランにどんどん変わっています。ベトナム人が手にするビールがワインになる日も遠くないのかもしれません。

 

 ホーチミンの近未来に思いをはせながら、今日もサイゴン川のほとりでみんなと楽しくビールを飲んでいます。「モッ!ハイ!バー!ヨー!」、乾杯!

 

以上

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