インド ~ニューデリーで今、聞こえる歌~
"WHEN the heart is hard and parched up, come upon me with a shower of mercy.
When grace is lost from life, come with a burst of song."
Poem No39 Gitanjali: Rabindranath Tagore
ラビンドラナート・タゴール 詩集『ギタンジャリ』第39詩(大意:筆者訳)
わたしの心が 堅く干からびてしまったら めぐみの雨でうるおしてください。
わたしの命が 慈しみを失ってしまったら ほとばしる歌でくるんでください。
नमस्ते! ナマステ(こんにちは)!
新型コロナウイルス流行の影響を受けている全ての皆様に、心よりお見舞い申し上げます。インドは現在世界で2番目に感染者の多い国ですが、今後インド政府の対策が奏功し、感染拡大が終息することを心から祈ります。
冒頭、インドの誇る大詩人タゴールの詩集から一節を引用しました。新型コロナ禍が世界中を大きく変えつつある中、この一節が心に染みる思いです。
音楽が大好きで、大学ではグリークラブで合唱に打ち込む日々を送った筆者にとって、音楽のない生活は考えられません。ニューデリーに住み始めてからは、それまでなじみのなかったインド音楽を楽しんでいます。
今は便利な時代で、音楽配信サービスのおかげで知らない土地でも流行曲が一目瞭然……のはずだったのですが、曲を探す前に楽曲名の言語を選択する画面(しかも選択肢は10言語以上)が出てきて、赴任直後は改めてインドの多様性を感じたものです。当地ではやりの曲を探していると、ロックやジャズ、ヒップホップなどおなじみのジャンルもありますが、何と言っても映画の主題歌が圧倒的な人気なのです。流行の映画の曲はラジオでも、ショッピングモールでもよく耳にします。映画館の営業が禁止されている今、劇場での新作公開はありませんが、デリーっ子たち"Delhiites"はインターネット配信サービスなどで映画と音楽を楽しんでいるようです。(ちなみに今は、『Baaghi 3』という人気アクション映画の主題歌『Dus Bahane 2.0』が流行中です。)
一方、シタールなどの楽器で有名なクラシカル・ヒンドゥスターニー音楽も欠かせません。
ニューデリーでは伝統文化を守る活動をしている大学生のボランティア団体SPIC MACAYによって伝統音楽のコンサートが毎月開催されてきました。インドが世界に誇る超一流の音楽家が出演し、筆者は欠かさず通っていました。
最初は西洋音楽にはないリズムと旋律に戸惑いましたが、祈るように静かに始まった歌が徐々に熱を帯びていき、歌や楽器演奏の超絶技巧から目と耳が離せなくなり、周りの観客と共に独特のリズムに体を揺らし、思わず声を出してしまう感覚が病みつきになりました。ラーガと呼ばれるメロディ(歌詞がなくともメロディに意味があるとのこと)やサンスクリット語の歌詞の意味は一つもわからずとも、平和を祈る気持ちが伝わってくる独特の音楽は唯一無二だと思います。
上述の伝統音楽コンサートは新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在は演奏がオンライン配信されています。
世界中どこにいても楽しめるオンラインコンサートを可能にしたテクノロジーは素晴らしいと思う一方、個人的にはオンラインはなんだか物足りなく、やはりライブの映画やコンサートが恋しいです。ですが、ここはIT大国インド。何年後かには最新のVR(仮想現実)と立体音響の技術を駆使し、まるで本当の劇場にいて生演奏を聴いているようなオンライン鑑賞ができるようになるかもしれません。そんな時代も楽しみです。
それまでは、それぞれの場所で歌を口ずさみ、世界中で協力して乗り越えましょう!
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