シンガポール ~Living with Covid-19, シンガポールのコロナ禍~
新型コロナ禍におけるシンガポールの変化を、生活者目線でお届けしたいと思います。
厳しい状況が続く飲食店・小売店
世界中の飲食店・小売店が新型コロナウイルスの影響を受けていると思います。ここシンガポールでも政府がさまざまな行動制限、たとえば「外食禁止」「2人までOK」「5人までOK」といった人数制限などをその時の状況によって発令しています。また、在宅勤務が広く普及したため、オフィス街の多くのレストランが閉店してしまいました。1858年創業の老舗百貨店「ロビンソンズ」が店舗を閉鎖したことも、地元住民にとってはショックな出来事でした。
過熱する不動産市場
これは世界各地で見られるトレンドかも知れませんが、シンガポールの不動産市場は過熱気味の印象を受けます。さまざまな要因が考えられますが、その一つは新型コロナによるライフスタイルの変化だと思います。在宅勤務の長期化・常態化を受け、筆者の周りでも「実家を出て一人暮らしを始めた」「前より広い物件に引っ越した」という話をよく聞きます。一方、シンガポール政府は過熱する不動産市場、インフレを懸念しており、不動産購入に関わる印紙税の税率引き上げを発表しました(2021年12月)。一例を挙げると、外国人がシンガポールで不動産を購入する際の印紙税は、物件価格に対して従来20%でしたが、30%まで引き上げられました。
便利だけど怖いデジタル生活
シンガポールでは、生活のあらゆる面でデジタル化が進んでおり、スマートフォン一つを持っていれば、ワクチン注射の予約、フードデリバリー、タクシーの配車、割り勘の精算、各種支払いまでデジタルで行うことができてとても便利です。その半面、新型コロナにつけ込んだ詐欺行為が社会問題になっています。先日もOCBC(オーバーシー・チャイニーズ)銀行の利用者数百人がSCAM(フィッシング詐欺)の被害にあったことが公表されたばかりです。
シンガポール から学べること
2021年の年末に日本に一時帰国した際、羽田空港での検査、手続き、税関を終えるまで約2時間かかり、かつ一部書面による手続きが残るなど、デジタル化が遅れていると感じました(シンガポールに戻った際は、PCR検査を含めて約30分で入国できました)。また日本政府が発表している各種行動制限やコロナ対策アプリの導入などは、すべて強制ではなく、要請ベースになっていて、危機対応としては中途半端な印象を受けました。一方シンガポールでは、政府指定のコロナ対策アプリをダウンロートしていないと、商店・飲食店、オフィス、駅などを利用できないなど、生活するための必須アイテムになっています(2022年2月現在)。 また行動制限に違反した場合、法人・個人を問わず罰せられます。一例を挙げると、営業免許の剥奪、国外追放、罰金などです。行動制限は、政府方針とともに都度発表されます。このシンガポール政府の「スピーディ」「説明する」「徹底する」という基本姿勢は、「やり過ぎだ」という意見もあるかもしれませんが、1人の住民としては安心感を覚えます。そして、日本もシンガポールから学べることが多いのではないかと思うのです。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
SCGRランキング
- 2024年10月5日(土)
共同通信の取材を受け、当社シニアアナリスト 足立 正彦のコメントが『中国新聞』に、掲載されました。 - 2024年10月3日(木)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。 - 2024年10月1日(火)
金融ファクシミリ新聞・GM版に、当社シニアエコノミスト 片白 恵理子が寄稿しました。 - 2024年10月1日(火)
『日本経済新聞(夕刊)』に、米州住友商事会社ワシントン事務所長 吉村 亮太が寄稿しました。 - 2024年10月1日(火)
『日本経済新聞』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行のコメントが掲載されました。