アルマティ/カザフスタン ~中央アジアのオアシス:アルマティ~

2016年06月03日

住友商事株式会社 アルマティ支店
鈴木 圭毅

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1.緑豊かな町

アルマティの風景(筆者撮影)
アルマティの風景(筆者撮影)

 カザフスタンはステップ気候で、春と秋の季節の変わり目を除いて雨はあまり降りません。年間降水量は250ミリメートルで、日本の7分の1です。

 

 ただ、筆者のいるアルマティだけは4,000メートル級の天山山脈を背に、降水量が他の地域よりも多く緑が豊富です。中央アジアのオアシスともいえるような町です。

 

 アルマティの人口は170万人、1997年まで首都だった町で(現在の首都はアスタナ)、今も同国全人口の約10%が住む最大都市です。同国全体の民族構成は3分の2(約70%)がカザフ人、5分の1(約20%)がロシア人で、カザフ人を中心としたアジア系が大勢を占めています。

 

 ユーラシア大陸で海から最も離れた地点は中国ウルムチの北320キロメートルにあり、そこから海岸線までの最短距離は2,645キロメートルで、その地点はアルマティからさほど離れていません。アルマティから現実的な陸上輸送手段を使って最も近い海に出ようとしますと、鉄道が整備されているロシア・サンクトペテルブルグということになり、その距離は3,600キロメートルと、ここは世界で海から最も離れた町の1つといえます。海産物は手に入りにくく、カザフ人は狼に次いで肉を食べるといわれるほど、肉中心の食生活を送っています。

 

 

2.原油価格の戻りで町の活気は衰えず

 カザフスタンは資源国で、原油埋蔵量は約300億バレルで世界12位、2015年の原油生産量は日量170万バレル(米EIA)です。ウラン精鉱の生産量は世界1位、クロムの生産量は世界2位で、ウランに至っては世界市場の約40%を供給しています。その他に石炭、鉄鉱石、銅、亜鉛も採掘されています。

 

 カザフスタン経済は原油への依存度が高く、GDPの20%、国家財政収入の50%、輸出額の60%が原油関連となっています(Standard & Poors, 2016年2月) 。2015年の1人当たりGDPは1万500米ドル(世界銀行)で、ロシアと同等、キルギスの約10倍、ウズベキスタンの約5倍で、中央アジアでは圧倒的な経済力を誇っています。国内の製造業は弱く、ほとんどの工業製品を輸入に頼っています。資源輸出で稼いだ資金で工業製品を輸入するというのがこの国のおよその経済構造です。

 

 現地通貨テンゲは2015年8月に変動相場制に移行し、その後の原油価格下落の影響を受けて大幅に切り下がりました。変動相場制に移行した時点の為替レートが1米ドル=約185テンゲであったのに対し、2016年5月末の執筆時点で1米ドル=333テンゲと、輸入品の購買力が著しく低下した状態が続いています。 

 

 IMFが4月に発表したカザフスタンの2016年GDP成長率見込みは0.1%で、今年はほとんど成長しないという予想になっている訳ですが、原油価格が上昇基調にあるため、人気レストランが満員になるなど、ちまたの活気の衰えはほとんど感じられません。 

 

 消費者物価指数の上昇は2016年1~4月で3.5%(年率換算14%)で、欧米からの輸入品はこれよりも高い値上げ幅となっていますが、低品質ながら中国品やロシア品は比較的安価で手に入るため、市民生活を圧迫するほどの影響は出ていないように見受けられます。

 

 

3.駐在員の生活

パラグライダーに挑戦した筆者(筆者撮影)
パラグライダーに挑戦した筆者(筆者撮影)

 アルマティ近郊にゴルフ場が2つあり、それほど混み合うこともなく、日本の半分から3分の1ぐらいの値段でゴルフを楽しむことができます。

 

 町を出たら見渡す限りの草原(ステップ)で何もなく、どこかに遊びに行くということはあまりできません。故に駐在員は常に余暇の過ごし方のバラエティに飢えており、日本ではやらないようなことにまで挑戦しています。

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