アルマティ/カザフスタン ~冬のアルマティ~

2017年01月06日

住友商事株式会社 アルマティ支店
鈴木 圭毅

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1.景気動向

 OPEC(石油輸出機構)が2016年12月1日に減産合意したことで、原油価格は1バレル50ドルを上回る水準で推移しており、産油国カザフスタンの原油依存経済は2016年1~11月のGDP成長率が+0.8%(政府発表)と、底堅いもののまだ調整局面にあるといえます。

 

 為替レートは1ドル=330テンゲ前後で推移しており、1年を通じた変動は若干のテンゲ高で、あまり大きな変化はありません。2016年前半の1ドル=340テンゲよりもテンゲが安くなる局面では、カザフスタン国立銀行が頻繁にドル売り介入をしていたことから、介入を減らした現在の水準がほぼ妥当なものであるように思われます。

 

 2016年9月にカザフスタンで3番目の大型油田カシャガンが生産を再開し、日量18万バレルに向けて、現在順調に生産量を増やしています。一方、カザフスタン全体の2016年の原油生産量は日量平均172万バレルになる見込みで、2015年実績との比較で日量3万バレル減少する見込みとなっています(米エネルギー省エネルギー情報局)。なお、非OPEC諸国もOPECに呼応して減産に合意しており、カザフスタンは2016年11月の水準と比較して日量2万バレル減産すると発表しています。

 

 カザフスタンは工業製品の大部分を輸入に頼っており、2015年8月の政府によるテンゲ切り下げ措置以降、輸入品の購買力が低下した状態が続いています。しかし、2016年の自動車販売台数首位はトヨタ自動車カムリで (11月までの実績)、ロシアのLada(ラダ)がマーケット・シェアを8.5ポイント落としている一方で、トヨタ自動車は逆に11.2ポイント増やすなど、品質を重視する動きもみられます。

 

 ナザルバエフ大統領が2016年7月に設定した物価上昇率の目標は年間8%で、カザフスタン国立銀行が発表する統計もこれに同調しており(1~11月の実績公表値は7.5%)、かえって統計の信頼性が疑われる状況になっています。スーパーで売られている商品の値上がりを見ると、公表値よりもはるかに高く物価が上昇しているように見受けられ、この統計に表れない物価上昇が景気足踏みの原因になっているように思われます。

 

 

2.アルマティの冬

スモッグでかすむアルマティの町(筆者撮影)
スモッグでかすむアルマティの町(筆者撮影)

 大気汚染度ランキングでアルマティは世界主要都市の中でワースト9位 (Mercer Human Resources 2015)。特に冬は暖房用にたかれる石炭の煙が町中を覆っています。町の南と東に山脈があり、ほとんど風が吹かないため、煙が市内にたまって風景はかすみ、町中を歩くと石炭灰の匂いがします。また窓の隙間から室内に入ってくる黒い石炭灰が、窓際にたまります。

 

スキー場から見た澄みわたる青空(筆者撮影)
スキー場から見た澄みわたる青空(筆者撮影)

 きれいな空気に飢えた駐在員は、シンブラクという山間のスキーリゾートに行きます。ここは町の中心部から車で片道1時間未満で行くことができ、欧州の大手スキーリゾート会社(Grandvalira Ski Resort)と顧問契約を締結しているので、ゲレンデのクオリティーは欧州並みです。ゴンドラの麓から山頂駅までの高低差は約920メートルもあり、かなり長い距離を一気に滑り降りることができます。

 

 アルマティの冬は約4か月。時に最低気温マイナス15度の中、スキーを楽しみながら過ごし、快適な夏を待ち望んでいます。

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