カイロ/エジプト ~ナイル川の悠久な流れ~

2015年08月05日

住友商事株式会社 カイロ事務所
岳 章裕

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カイロ市内を流れるナイル川 (筆者撮影)
カイロ市内を流れるナイル川 (筆者撮影)

 エジプトといえば、世界四大文明、ピラミッド、ナイル川といったことが思い浮かぶことでしょう。同国はアブシンベル神殿、王家の谷、ギザの三大ピラ ミッド、エジプト考古学博物館など、古代ロマンに恋する人以外でも大いに心を揺さぶられる歴史遺産に恵まれた国です。この魅力に世界各国から毎年多くの観光客が当地を訪れています。

 こうした歴史、観光客、市民や町の喧騒など人類の営みを変わらず眺めてきたのがナイル川です。長さは約6,700キロメートルで世界最長、高低差が数十メートルとあまり無いため、ゆったりと悠久に流れています。

 

 

• エジプトの未来と期待

 同国は中東・アフリカ地域で最大の人口約9,000万人(大半は若年層)を有し、相応の軍事力を有しています。石油や天然ガスなどの天然資源もあり、歴史遺産に加え紅海リゾートなど観光資源も豊富にある魅力あふれる国です。また地政学的な優位性から、歴史的に世界各国から重視され、資金面ではサウジアラビアやUAEなど中東湾岸諸国、世界銀行、IMFに加え、欧州・アフリカなどの国際金融機関からも融資や投資を継続的に享受しています。

 

 

• 強力なリーダーシップとエジプト経済復興会議の成功

エジプト経済開発会議(EEDC)での様子 (筆者撮影)
エジプト経済開発会議(EEDC)での様子 (筆者撮影)

 2011年初頭から現在に至るまで同国は2度の政変を経て、今、生まれ変わろうとしています。2014年6月に就任したシシ大統領は高い支持率を背景に、新スエズ運河拡張工事、財政再建を目指した大幅な政府補助金の削減政策、治安維持体制の強化を発表し、次々に実行しました。新スエズ運河拡張工事は発表通り1年以内の短工期で完成予定、新開通式典が2015年8月に予定されています。運河の拡張により、通過に要する日数が短縮され、世界的な物流にも好影響が期待されます。エジプト経済開発会議(EEDC)を経済回復の主軸に据え周到に準備し、大統領就任1年以内の2015年3月にリゾート地シャルムエルシェイクで 開催、成功裏に終えました。大型プロジェクト計画を次々に発表・実行に移し、エジプト復興の息吹を世界に示しています。

 

 

 

• カイロの街角

 ここ数か月で目に見える変化が幾つかありました。2011年「アラブの春」と呼ばれる1度目の政変以降、4年余り放置されていた国民民主党(NDP)ビルの 解体作業が2015年6月に開始されました。同ビルはムバラク政権の象徴として2011年2月暴徒と化したデモ隊により放火され、廃墟となっていました。 2013年2度目の政変時に治安当局により閉鎖されたタハリール広場駅(地下鉄サダート駅)が、2年弱の時を経て、同じく2015年6月から再開されました。さらに交通の要所タハリール広場隣接地の大規模地下駐車場も長い工事の後、2015年4月にオープンし、市民に利用されています。カイロで過ごす市民や駐在員は、これらの小さなことに大きな胎動と可能性を感じています。

 

 

• 再びナイル川……

 ナイル川は、この2度の政変後のエジプトを、今の経済発展を目指す国をどう見ているでしょうか。人類の営みを、子供をあやすように、悠々と優しく見守っているように私には思えるのです。頑張れ、エジプト。Go! Egypt!!

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