カサブランカ/モロッコ ~モロッコ概観~

中東・アフリカ

2015年09月30日

住友商事株式会社 カサブランカ事務所
人見 欧司

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 皆さん、モロッコと聞くと何を想像されますか?異国情緒豊かな北アフリカの国、砂漠、ラクダ、あるいは最近はやりのアルガン・オイルでしょうか。イスラム及びアラブと目される同国が位置する地域はマグレブ地域と言います。マグレブはアラビア語で日の沈むことを指すので、まさに日の出づるわが日本と比べ正反対、日本人にとっては最も遠い西、最果ての国ということになりましょう。

 

ジブラルタル海峡、右側がモロッコ、左側がスペイン (筆者撮影)
ジブラルタル海峡、右側がモロッコ、左側がスペイン (筆者撮影)

 世界地図をご覧ください。同国はアフリカ大陸の最北西端に位置し、ジブラルタル海峡を隔ててスペインとは約14キロメートルしか離れていません。実際に対岸の欧州側からモロッコの北端の町、タンジール(タンジェ)市が見えます。要するにモロッコは欧州にとって目と鼻の先、われわれの想像以上に近い国なのです。このことは、われわれ日本人が同国とビジネスをする際にしっかりと念頭においておくべき点です。

 

 それから、モロッコ側のアフリカ大陸の陸地にスペインの飛び地があるのをご存知でしょうか?セウタとメリリャという2都市で、海外領土というよりスペイン本国そのものであり、欧州そのものです。その両地域には約14万人が住んでいます。この地理的特異性によりアフリカ諸国からの難民の逃げ場となりつつあります。

 

 昨今、シリア難民問題が世界、特に欧州を揺るがしておりますが、以前から同国ではシリア難民が道端で物乞いをする姿を見かけます。こういった難民問題やイスラム過激派問題は同国のメディアを連日にぎわしています。

 

 

• 欧州・アフリカのみならず米州・中東の十字路

ハッサン2世 モスク (筆者撮影)
ハッサン2世 モスク (筆者撮影)

  欧州のみならず、大西洋を隔てた米国にとっても、モロッコは一番近いアフリカであり最も親米国家です。古い洋画ファンにはおなじみの『カサブランカ』という米国映画では、イングリッド・バーグマン、ハンフリー・ボガートが出演しています。ストーリーは、第二次世界大戦中、パリで別れた2人がカサブランカで再会しますが、ナチスから逃すために女とその夫を米国に亡命させるというストーリーです。映画の中でハンフリー・ボガートが言います。「明日?そんな先のことは分からない」と。でも今のモロッコは違います、明るい未来が見えているのです。

 

 モロッコは欧州、そして米州などの大市場への部品やコンポーネントの供給基地であり、安価で優秀な労働力をもとに、例えば最近ルノーの最新工場が進出して20万台を超える自動車を輸出するなど、発展をみせています。また同国の国王自らがサブサハラ・アフリカ諸国とのFTA構築に積極的です。日本はそうしたモロッコへの教育援助などを通じ、さらにサブサハラ地域へ技術移転が推進されるよう働きかけています。またタンジール(タンジェ)F.Z.以外にも英語・フランス語・アラビア語の優秀な人材を活用したオフショア・コールセンターが設置されており、今後のさらなる発展が期待されています。カサブランカを将来アフリカ初のファイナンシャルシティにしようとの動きもあり、自動車・航空機産業の供給基地としてだけでなく、経済的にも政治的にも有望な国家に成長しつつあると見ています。

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