アンタナナリボ/マダガスカル ~意外に近いマダガスカル~

2023年07月06日

住友商事株式会社 アンタナナリボ事務所
川浦 秀之

> English Version

アンタナナリボ市内風景(筆者撮影)
アンタナナリボ市内風景(筆者撮影)

 

 アフリカ大陸の東、南緯18度、標高1,200メートル前後に位置するマダガスカルの首都アンタナナリボでは、現在冬至(北半球の夏至)が近づくにつれて日が短くなり、朝晩の気温は10℃前後、日中は20℃前後と、着任から2年が過ぎ、当地の気候に慣れてしまった体には「快適」を通り過ぎ「肌寒い」季節が訪れています。

 

 

 意外に近い?

固有種のサル「ベローシファカ」(筆者撮影)
固有種のサル「ベローシファカ」(筆者撮影)

 マダガスカルに限らず、「アフリカ=日本から遠い」「日本からの移動だと、片道2日ほどかかるのでは?」という印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。私が同地に赴任した頃は、コロナ禍で国際線の運行が限定的だった時期でもあり、日本との往復はパリ経由しか選択肢がなく、乗り継ぎがよくても約30時間、また、ロシア-ウクライナ戦争勃発後は約40時間近くかかり、運賃の高騰や日本入国時の手続きの煩雑さも相まって、日本とマダガスカルは互いに物理的にも心理的にも「遠い国」でした。

 しかし2022年中盤以降、同地からの国際線の運行が順次再開され、現在は頻度、就航地ともにコロナ前の水準に戻り、日本との距離感は格段に近くなっています。
日本とマダガスカルの時差は6時間=地球四分の一周分ですので、約三分の一周(時差7~9時間)のヨーロッパ諸国や、約半周(時差13~14時間)の北米東海岸や南米に比べると、東西の移動距離はだいぶ短いです。もちろん南北の移動があり、かつ直行便はありませんので、欧米の主要都市に比べると移動の所要時間は長くなりますが、2023年6月現在、羽田~アンタナナリボ間は、最短ルートで乗り換え時間を含めて往路21時間強、復路20時間弱で移動することができます(バンコクとレユニオン島で乗り換え/往路、復路は日本を基準とする)。
成田空港から韓国・仁川経由で直行便があるエチオピア・アジスアベバ、ドバイでの乗り換え1回でアクセス可能なケニア・ナイロビ、タンザニア・ダルエスサラームなどに比べると、多少所要時間は増えますが、「意外に近いマダガスカル」にぜひ訪れてみて下さい。

 

 

「伸びしろ」だらけの国

Ambatovy プロジェクト精錬プラント(筆者撮影)
Ambatovy プロジェクト精錬プラント(筆者撮影)

 ニッケル・コバルトの鉱石採掘からブリケット精錬までの一貫プロジェクト「Ambatovy」の存在により、当社にとって重要な国であるマダガスカルですが、検索サイトで「マダガスカル」と検索すると、よほど同地に縁がない限り、アニメーション映画の『マダガスカル』に関連したサイトが上位に表示されると思います。
マダガスカル島は、世界で4番目に大きな島(日本の国土面積の1.6倍)で、諸説ありますが、約8,800万年前に大陸から分離され、長年にわたり周囲を海に囲まれてきたため、さまざまな動植物の固有種の宝庫といわれています。

 

 この島に最初に居住したのは紀元前500~300年頃に現在のインドネシアやマレーシアからきた人々で(アフリカ大陸からの移民は紀元10世紀前後)、その際に稲作がもたらされ、1人当たりのコメの消費量は世界一といわれています。首都周辺にはアジア系(メリナ族)の人々が多く、アフリカ大陸のほかの国々とはだいぶ様子が違うため、私自身アフリカ駐在は4か国目・5回目になりますが、改めて「アフリカは一括りにはできない」と感じています。

 

20,000マダガスカルアリアリ紙幣(写真提供・加工:筆者、SCGR)
20,000マダガスカルアリアリ紙幣(写真提供・加工:筆者、SCGR)

 1960年のフランスからの独立以来、1人当たりGDPは1980年の約600米ドルをピークに停滞が続き(2022年は推定値で526米ドル)、世界銀行の統計データでは2009年以降下から10位以内が定位置になっています。2022年の同推計値では国民の8割以上が「極度の貧困状態(1日 2.15米ドル以下で生活)」にあり、電化率は人口ベースで33%(地方に至っては15%前後)……など、ネガティブな指標は枚挙に暇がありませんが、当国の最高紙幣(20,000マダガスカルアリアリ/約600円相当)には、当社が出資する「Ambatovy」の精錬プラントが印刷されており、その期待の大きさを重く受け止め、「伸び代が大きい」マダガスカルを成長軌道に乗せるためにも、「Ambatovy」以外でも、労働人口の4分の3を占める農業分野(肥料輸入・農産品輸出)、当国の発展の足かせとなっているインフラ分野(ODAによる機材の供与)などで貢献していきたいと思う次第です。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。