アンタナナリボ/マダガスカル ~意外に近いマダガスカル~
アフリカ大陸の東、南緯18度、標高1,200メートル前後に位置するマダガスカルの首都アンタナナリボでは、現在冬至(北半球の夏至)が近づくにつれて日が短くなり、朝晩の気温は10℃前後、日中は20℃前後と、着任から2年が過ぎ、当地の気候に慣れてしまった体には「快適」を通り過ぎ「肌寒い」季節が訪れています。
意外に近い?
マダガスカルに限らず、「アフリカ=日本から遠い」「日本からの移動だと、片道2日ほどかかるのでは?」という印象を持たれる方が多いのではないでしょうか。私が同地に赴任した頃は、コロナ禍で国際線の運行が限定的だった時期でもあり、日本との往復はパリ経由しか選択肢がなく、乗り継ぎがよくても約30時間、また、ロシア-ウクライナ戦争勃発後は約40時間近くかかり、運賃の高騰や日本入国時の手続きの煩雑さも相まって、日本とマダガスカルは互いに物理的にも心理的にも「遠い国」でした。
しかし2022年中盤以降、同地からの国際線の運行が順次再開され、現在は頻度、就航地ともにコロナ前の水準に戻り、日本との距離感は格段に近くなっています。
日本とマダガスカルの時差は6時間=地球四分の一周分ですので、約三分の一周(時差7~9時間)のヨーロッパ諸国や、約半周(時差13~14時間)の北米東海岸や南米に比べると、東西の移動距離はだいぶ短いです。もちろん南北の移動があり、かつ直行便はありませんので、欧米の主要都市に比べると移動の所要時間は長くなりますが、2023年6月現在、羽田~アンタナナリボ間は、最短ルートで乗り換え時間を含めて往路21時間強、復路20時間弱で移動することができます(バンコクとレユニオン島で乗り換え/往路、復路は日本を基準とする)。
成田空港から韓国・仁川経由で直行便があるエチオピア・アジスアベバ、ドバイでの乗り換え1回でアクセス可能なケニア・ナイロビ、タンザニア・ダルエスサラームなどに比べると、多少所要時間は増えますが、「意外に近いマダガスカル」にぜひ訪れてみて下さい。
「伸びしろ」だらけの国
ニッケル・コバルトの鉱石採掘からブリケット精錬までの一貫プロジェクト「Ambatovy」の存在により、当社にとって重要な国であるマダガスカルですが、検索サイトで「マダガスカル」と検索すると、よほど同地に縁がない限り、アニメーション映画の『マダガスカル』に関連したサイトが上位に表示されると思います。
マダガスカル島は、世界で4番目に大きな島(日本の国土面積の1.6倍)で、諸説ありますが、約8,800万年前に大陸から分離され、長年にわたり周囲を海に囲まれてきたため、さまざまな動植物の固有種の宝庫といわれています。
この島に最初に居住したのは紀元前500~300年頃に現在のインドネシアやマレーシアからきた人々で(アフリカ大陸からの移民は紀元10世紀前後)、その際に稲作がもたらされ、1人当たりのコメの消費量は世界一といわれています。首都周辺にはアジア系(メリナ族)の人々が多く、アフリカ大陸のほかの国々とはだいぶ様子が違うため、私自身アフリカ駐在は4か国目・5回目になりますが、改めて「アフリカは一括りにはできない」と感じています。
1960年のフランスからの独立以来、1人当たりGDPは1980年の約600米ドルをピークに停滞が続き(2022年は推定値で526米ドル)、世界銀行の統計データでは2009年以降下から10位以内が定位置になっています。2022年の同推計値では国民の8割以上が「極度の貧困状態(1日 2.15米ドル以下で生活)」にあり、電化率は人口ベースで33%(地方に至っては15%前後)……など、ネガティブな指標は枚挙に暇がありませんが、当国の最高紙幣(20,000マダガスカルアリアリ/約600円相当)には、当社が出資する「Ambatovy」の精錬プラントが印刷されており、その期待の大きさを重く受け止め、「伸び代が大きい」マダガスカルを成長軌道に乗せるためにも、「Ambatovy」以外でも、労働人口の4分の3を占める農業分野(肥料輸入・農産品輸出)、当国の発展の足かせとなっているインフラ分野(ODAによる機材の供与)などで貢献していきたいと思う次第です。
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