デンバー/米国 ~The Mile-High City -西部開拓拠点から先端産業都市への変遷~

2015年07月14日

米州住友商事会社 デンバー店
中島 丈博

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• 変貌を遂げるデンバー都市圏

デンバー住宅価格、デンバー人口推移 近年、コロラド州デンバーでは、住宅供給が需要に追い付かない状況が続いており、住宅価格は2011年末に底を打ってから、右肩上がりの上昇がずっと続いています。この旺盛な住宅需要は、住宅ローンの低金利(3.78%、日本と比べるとだいぶ高いですが)に加え、堅調な雇用状況に対する州外からの人口流入によって支えられています。

 

 コロラド州は、開拓時代からの鉱業・農業・牧畜業に加え、天然ガス・石炭、再生可能エネルギー関連の産業も盛んであり、さらに軍関連施設や研究開発拠点が多く集まることから、航空宇宙、IT、エレクトロニクスなどハイテク企業も数多く集まっています。

 

 現在デンバー近郊も含むメトロエリアの都市開発が活発に行われており、街の中心部においても120年の歴史を誇るユニオン駅の複合開発をはじめとした大規模な再開発が進められています。かつて80年代にかけて寂れかけていた街は洗練された都市として完全に生まれ変わりつつあります。また、ダウンタウンと郊外を結ぶライトレール(電車)網の敷設なども着々と進んでおり、再開発されたユニオン駅とデンバー国際空港をつなぐ路線も2016年の開通に向けて建設中です。

 

 2013年6月よりユナイテッド航空によるデンバーと成田国際空港の直行便が就航しましたが、デンバー国際空港周辺では、広大な空き地を活用した大規模な空港都市(aerotropolis)の整備が始まっており、2016年にはパナソニックがテクノロジーセンターを開設する予定となっています。

 

 

• 日本とのつながり

 第二次世界大戦中に行われた日系人の強制収容に対し、当時の米国の州知事の中で数少ない反対者であったのがコロラド州のラルフ・カー知事です。カー知事による懸命の反対にもかかわらず,日系人たちは強制収容されますが、カー知事は収容された日系人たちに敬意をもって接し、彼らが市民権を失わないよう支援を送ったほか、終戦後には、収容所から出てきた日系人を温かく受け入れました。このようなカー知事の人道的な行いをたたえて、地元紙ではカー知事を「20世紀で最も偉大なコロラド人」に選んだほか、コロラド州では同知事の生誕日である12月11日を祝日として制定しています。また、1947年には仏教寺院(Tri-State Buddhist Temple)がダウンタウンにあるサクラ・スクエアの一角に建設され、日系人の心のよりどころとなっていました。現在、コロラド歴史センターにはカー知事に関する詳細な展示があります。現在に続く行事として、日系人が主催するデンバー紅白歌合戦があります。今年で40回目を迎える同歌合戦ですが、全米でもこれだけ長く続けている都市は少ないそうです。

 

 

• ワイルド・ウェスト

西部劇でおなじみの駅馬車(Stage Coach)、御者台の上で曲芸が行われている様子 (筆者撮影)
西部劇でおなじみの駅馬車(Stage Coach)、御者台の上で曲芸が行われている様子 (筆者撮影)

 米国中西部に位置するコロラド州は、かつては西部劇に出てくるような場所であり、現在でもその名残をウエスタン文化としてとどめています。毎年1月にはダウンタウン近郊でナショナル・ウエスタン・ストック・ショーが開催されます。これは家畜の品評会とロデオが行われる世界最大のイベントで、100年以上の歴史があり、会期中の2週間で80万人以上が集まります。家畜の品評会では、牛、馬、羊、豚、鳥などあらゆる家畜が対象となり、州外からも牧畜関係者が集まります。ロデオ・アリーナは常に満員で、プロ・ロデオコンテストでは、プロのカウボーイによる荒馬乗りや羊相手の見事なロープさばきのほか、ちびっ子カウボーイが子牛や子羊を相手に格闘するほほえましい姿も見ることができます。コロラド州はハイテク産業が盛んですが、このような光景を目の当たりにすると、ここはウエスタンの土地なのだと実感します。州内にはウエスタン・グッズの店やバッファローやエルクなどのゲームミート(野生動物の肉)を提供する専門レストランも多くあります。

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