シカゴ/米国 ~最もアメリカらしい都市~

2019年07月10日

米州住友商事会社 シカゴ店
山本 智

 米国の中西部イリノイ州に属するシカゴは都市圏人口約950万人、GDP約6,797億ドル(2017年時点)の米国第3の都市で、国内外から観光客が年間約5,800万人(全米2位)も訪れる人気の街ですが、実はよく知らないという日本人も多いのではないでしょうか。

 

シカゴの摩天楼(筆者撮影)
シカゴの摩天楼(筆者撮影)

 古くからインディアンの交易要所であったシカゴは、1836年に始まったミシガン湖とミシシッピ川を結ぶ運河建設を皮切りに、ガリーナ・アンド・シカゴ・ユニオン鉄道とイリノイ・セントラル鉄道が開通、周辺各地で収穫される農産物の集積地として開発が進みました。1865年には大規模畜産飼養加工施設であるユニオン・ストックヤードが開設され、畜産加工業においても大きな役割を担います。1971年に閉鎖されましたが、今でも「シカゴの夕食はステーキで決まり」と声をそろえる米国人が多いゆえんと言えるでしょう。物流や先物取引の拠点として発展を続けたシカゴは、中西部で勃興する自動車・鉄鋼・機械産業の中心地として米国2位の都市になりましたが、1980年代からの製造業の衰退と西海岸諸都市の経済発展を受け3位に転じました。しかし、地理的優位性と成熟した経済基盤に基づいて半導体・電子機器・輸送機械など産業の多角化が進んでおり、今日でも都市圏人口の14%以上が従事する単一産業が無いことがシカゴの特徴です。

 

 

延焼防止の小道(alley)とアメリカンサイズのゴミ箱(dumpsters)(筆者撮影)
延焼防止の小道(alley)とアメリカンサイズのゴミ箱(dumpsters)(筆者撮影)

 摩天楼といえばニューヨークをイメージする人が多いのは残念ですが、実はシカゴは超高層ビル発祥の地です。1871年の大火災で街の多くを焼失したシカゴは、米国中から集まった新進気鋭の建築家が再建に関わり、耐火に優れた近代最初の超高層ビル都市として再生しました。次いでニューヨークでも高層ビルの建設が本格化します。シカゴでは今もそのまま残る歴史的建造物を徒歩で容易に見て回る事ができます。延焼を防ぐために設けられた建物間の小道が圧倒的に多いことも特徴で、馬の繋留場所としても利用された小道(alley)は現在ではアメリカンサイズのゴミ箱(dumpsters)の収容場所となり、「ニューヨークより街が清潔」といわれるシカゴの景観美化を助けています。

 

 

シカゴのNew York Life Insurance Building (1900年頃の写真) (出典:Wikimedia Commonsより)
シカゴのNew York Life Insurance Building (1900年頃の写真) (出典:Wikimedia Commonsより)

 シカゴは美術館や博物館などの文化面でも世界有数です。また、大都市の中では物価上昇も控え目で、2018年「生活の質」が高い都市ランキングで世界主要32都市中1位にランクしています。一方、映画『アンタッチャブル』でも有名な禁酒法時代のギャング「アル・カポネ」はすでに昔の話とはいえ、今でも銃やギャングに象徴される犯罪のイメージがつきまとうのが、シカゴの長年の課題です。

 2019年4月に行われたシカゴ市長選では、同市史上初のアフリカ系女性で同性愛者であることを公言しているライトフット氏が当選を果たしました。同年にイリノイ州議会で可決された大麻の合法化法案は、違法薬物取引によるギャングの収入元を絶ち、合法化による税収で違法売買に関わらざるを得なかった貧困層の自立を援助する、画期的な政策ともいわれています。米国内陸部で独自の進化を遂げ、昔から最もアメリカらしい都市として古き良き米国が随所にみられる大都市シカゴですが、これらの出来事は将来に変化を求めるシカゴ市民の思いが表れた結果なのかもしれません。

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