デトロイト/米国 ~モーターシティ、デトロイト~

2021年02月04日

米州住友商事デトロイト店
石橋 龍雄

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 米国中西部に位置するミシガン州は、人口が約1,000万人(2019年)で全米10位、面積が25万493平方キロメートルで全米11位、最大都市はデトロイトです。1700年代まではネイティブ・アメリカンが居住する地域でしたが、1837年に26番目の州になり、欧州から移民が移り住んだ歴史があります。現在の人種構成は白人系が約80%、アフリカ系が15%、その他5%になっています。在留邦人は約1万5,000人、日系企業も500社を超えています。

 

 

左からデトロイト市ウッドワードアベニュー(1942年当時)、T型フォード(出典: Wikimedia commons)
左からデトロイト市ウッドワードアベニュー(1942年当時)、T型フォード(出典: Wikimedia commons)

 デトロイトといえば「モーターシティ」の名声を誇り、20世紀初頭から米国自動車産業の中心として栄え、デトロイト3と呼ばれるゼネラルモーターズ(GM)、フォード・モーター・カンパニー(FORD)、旧クライスラー[*1]各社の本社、開発拠点、数多くの製造拠点を市周辺に持っており、現在もミシガン州の製造業の約半分は自動車関連です。トヨタをはじめ日系自動車メーカーも開発・販売拠点を構えていることから、米国で唯一、中部国際空港に直行便が飛んでいる都市です(現在は新型コロナウイルスの影響で運休)。街中では各社の試作車や自動運転車が一般道を走行し、それらが開発者の自宅ガレージに止めてあるのを見ることもよくあります。

 

 

 世界で初めて自動車の量産を始めたのがフォードであるのは有名な話ですが、他にも数多くの世界初や米国初がミシガンにはあります。米国初の舗装道路ウッドワードアベニュー(1909年)や三色信号機(1920年)ができたのも、世界で最初に一般向けの電話機が生産・普及されたのもデトロイトだといわれています。

 

 

 このような産業を支える人材の供給という点では、1817年に設立された世界屈指の研究大学であるミシガン大学があります。同校は研究開発費の拠出額において全米国立大学中トップを9年間維持しており(2019年時点)、科学技術をはじめとする多彩な分野で世界から注目されています。宇宙飛行士も多数輩出しており、ジェミニ4号(1965年)、アポロ15号(1971年)のクルー全員が同校卒業生でした。他にもフォード第38代大統領、ラリー・ペイジ(グーグル共同創業者)、ルーシー・リュー(俳優)などの有名人も卒業生に名を連ねています。同校を中心とした産学共同体はイノベーティブなエコシステムを形成し、自動車産業をはじめ優秀な才能に裏打ちされた強固な経済基盤を築いています。

 

 

自宅近くのキャス・レイクの風景と著者友人のボート(筆者撮影)
自宅近くのキャス・レイクの風景と著者友人のボート(筆者撮影)

 ミシガン州は、ミシガン湖など美しい大自然に囲まれています。ミシガン州内の湖沼の数は6万2,000以上もあり、内陸にもかかわらず約100基の灯台があるといわれています。

 

 

 4大プロスポーツリーグでも、野球のデトロイト・タイガーズ、バスケットボールのデトロイト・ピストンズ、アメリカンフットボールのデトロイト・ライオンズ、アイスホッケーのデトロイト・レッドウィングスと、プロチームがそろっています。またミシガン大学およびミシガン州立大学のアメリカンフットボールはプロスポーツ並みの人気を誇っています。近年はPGAツアーのゴルフトーナメントがデトロイトゴルフクラブで開催され、2020年にもコロナ禍の下で松山英樹など多くのプロ選手が参加しました。

 

 

NBA(ナショナルバスケットボールアソシエーション)デトロイト・ピストンズの開幕試合、MLB(メジャーリーグベースボール)デトロイト・タイガーズのナイター)(筆者撮影)
NBA(ナショナルバスケットボールアソシエーション)デトロイト・ピストンズの開幕試合、MLB(メジャーリーグベースボール)デトロイト・タイガーズのナイター)(筆者撮影)

 米国の自動車産業を象徴する都市デトロイトですが、湖などの大自然も豊かで、年中スポーツ観戦も楽しめる魅力ある町です。機会がありましたら、ぜひともお立ち寄りください。

 

 

 

 

 

 


[*1]旧クライスラーは、2014年に伊フィアットに買収されFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)に改名、さらに2021年1月に仏PSA(プジョー)と合併してStellantis(ステランティス)に再編された。現在デトロイト都市圏にはStellantisの北米本社が置かれている。

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